
仲直り
この頃、西脇さんの顔をまともに見ていない。
と言っても、喧嘩をしているのだから当然と言えば当然だ。
・・・でも、それは、少し・・いや、かなり寂しい。
何が原因かなんてもう覚えていない。それほど、大したことではなかったのだろう。
でも、私は、未だに謝れないでいる。
一言謝れば済むはずだ。でも・・それができない。
辛いけれど、できない−−−−
「Dr.」
「何ですか西脇さん。」
声をかけられて嬉しいのに、心とは正反対に冷たい口調になってしまった。
・・・どうしよう・・・
「今日の夜、時間ある?」
でも西脇さんはそれに気づかない振りをしてくれるのか、そのことには触れてこない。
まっすぐに私だけを見てくる眼差しが、痛い−−
「・・・ありません。」
「本当に?」
「・・・・・・・」
この人に嘘はつけない、といつも思う。
何をしても、見透かされている気がする。
「・・・少しなら。」
「それは良かった。」
にっこりと笑う西脇さんを見るのも、久しぶりだ。
「仲直りしよう?・・・紫乃。」
「・・・・・っ!」
そんな目で、見ないでください。
「失礼します。」
今これ以上あなたといたら泣いてしまいそうだ・・・。
「あぁ・・・じゃぁ、今夜。」
手を挙げる西脇さんをなるべく見ないようにして、私はその場をあとにした。
「ふぅ・・・」
2人分のコーヒーカップを置いて、一息つく。
・・・そろそろ西脇さんが来るかもしれない。
「Dr?俺だけど。」
やっぱり。予想通り西脇さんだ。
「どうぞ。」
シュッとドアが開いて部屋に入ってくる。
「どうも。」
「・・・こんばんは。」
2人でソファに座り、話す体制を作る。
どうしよう・・まずは何から言えばいい?
「この前のことだけど。」
「・・・はい。」
「ごめん、紫乃。」
「!!」
「俺が悪かったよ。」
「・・・・」
何故、あなたはいつもそうなんですか?
「・・・どうして謝るんですか?」
あなただけが悪いわけではないのに。
「だって、早く仲直りしたいからね、俺は。」
私だってそうですよ・・・。
「許してくれる?」
「・・・・あたりまえでしょう。」
私が言うと、西脇さんはふっと微笑んでくれた。
「それは良かった。」
それは嬉しいけれど、まだ私は西脇さんを直視できない。
それほど、尾を引いているということだろうか・・
「・・・・・」
「紫乃?」
じっと、私を見てくる。
けれど、私は・・・
「!」
気が付くと、西脇さんの両手に頬を包まれていた。
「やっとこっち向いてくれた。」
「西脇さん・・・・?」
やれやれ、と言った風にソファに座り直すと、西脇さんは続ける。
「・・そんなに辛そうな顔しないでくれよ。俺まで辛くなってくる。」
「西脇さん・・・・」
苦笑混じりの言葉。けれど言ってくれていることは多分、本当のことなのだろう。
「すみませんでした。」
少しずつ西脇さんの顔を見られるようになってくる。
「私の方こそ、謝らなければいけませんね。」
頑固な自分が嫌になってくる。
「いいよ。・・・・紫乃、笑ってくれる?」
「はい?」
何を急に・・・
「最近、紫乃が笑ってる姿を見てなかったから。」
「・・・そうですか?」
「うん。」
そういえば、私が西脇さんを避けていたから、面と向かっているのは久しぶりかもしれない。
「改めて言われてもすぐには出来ませんよ。」
「はは。確かに。」
笑う西脇さん。私だって、こんなふうにあなたを直視するのは久しぶりですよ。
「なんだ。出来るじゃないかDr」
「はい?」
「今笑っただろう?」
・・・・相変わらず、目がいいんですね。
「・・・そうでしたか?」
「そうだったよ。」
はぐらかそうとしても無駄だな、これは。
・・・自然と、微笑んでしまう。
「ほら、笑ってる。」
「西脇さん!」
からかわないでくださいよ。
「・・・よかった。嫌われたのかと思ったよ」
「そんなこと・・・」
あり得る分けないでしょう。
「紫乃。」
「はい?」
もう、さっきまでとは違う。まっすぐに、見ることが出来る。
そっと、優しいキスをくれる、貴方を。
「・・・・・さて、コーヒーをいただこうかな。」
「そうしてください。」
まだ口を付けていないコーヒーが2つ、ありますから。
「・・いただきます。」
「どうぞ。」
言って、私もコーヒーを口に入れた。
「おいしいね。」
「ありがとうございます。」
ほんの数時間前まではあんなに辛かったのに、今はもう大丈夫だなんて。
私の気持ちをこんなに変えたり出来るのは、多分貴方だけですよ、西脇さん。
終。
あとがき
やっと書けました。
西脇さんとDr大好きですvvv
もっといろいろ書きたいものです。
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