2005年9月10日

9月
夏の終わりを告げる風がチリンと風鈴を鳴らして去っていく。どこか郷愁を誘う音色だ。28話の台本を頂いたのもこんな頃だったかもしれない。
台本を読み終えた私は本当に驚いた、なにがなんだかさっぱり訳が解らない。
台本を読むまで、誰からも夕子がいなくなる事はおろか、その打診すら受けた事はなかった。当然の事ながら自分からそれを希望した事などある筈もない。
全く寝耳に水の話だ。「視聴率」という魔物が夕子に襲いかかった瞬間だった。拾って来たのら犬を再び野に放つ時はきっとこんなものなのだろう。
すぐに私は決断した。やればいい、私は役者だ。
そして、この件については誰にも、何も、一言も、問う事はするまいと。私に何も言わずに、只いつもの様に当たり前に、黙って台本を手渡した事務所にすら。

何も考えなくていい、心を無にして最後の夕子を、あらゆる邪念を捨て去って、私の持てる全ての力をふりしっぼって表現してみたいと。せめて、せめて1話位は、思いっきり自分を解放して、誰に気兼ねする事なく己の芝居をして終わろうと、そう自分に言い聞かせてカメラの前に立った。

私の心は本当に無でいられたのだろうか、あの28話の、月に帰る南夕子の瞳には、私、星光子の怒りと悲しみが、心の叫びが宿ってはいなかったかと、今では少し気になっている。




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