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2005年08月03日 開設    
2018年06月21日 更新

葉月

日本こころ歳時記

違いを知る若き国際人へ贈る日本文化ガイド~盆に踊る~

 夏の夜の風物詩といえば盆踊りだろう。紅白幕を引いた櫓(やぐら)の上では太鼓と笛の音(ね)が快く響く…その下では団扇(うちわ)を手にした浴衣姿の老若男女が輪になって踊る。吊り下げられた提灯の灯りが夏の夜の涼風に揺れている。

 会場は寺の境内か町の広場が最近、会場になっている。だが江戸の昔は月の明かりだけの演出だった様子は蕪村が詠んだ“四、五人に月落ちかかる踊りかな”からもわかる。俳諧で踊りといえば盆踊りをさし、盆の三日間、踊った。

 なぜ踊るのか?理由はあの世へ逝った死者が盆には供養を求めて帰ってくる。

 その精霊たちを慰めるために踊ったのが本来のようだ。と同時に餓鬼(がき)=死後、空腹に苦しむ亡者=を供養する意図もあった。餓鬼とは無縁仏や成仏できない怨霊(おんりょう)をさし、そうした霊のため、静かに踊ったのが本来の姿だった。その代表が富山・八尾(やつお)の「風の盆」。信仰心のあらわれであり、単なる観光ではない。8.png

 ところで盆踊りはなぜ夜なのか?楽しみの少ない昔、夜のレジャーとしたわけではない。もっと重要な意味がある。つまりわが国の祭りの古式では宵に神々を迎え、宵祭りの神事の後、神楽(かぐら)を奉納し直会(なおらい・神に捧げた供物による食事の宴)を行い、灯明(とうみょう)を絶やさず人々は夜籠りをする。夜籠りに祭りの本義が濃縮されている。当時、夜の闇は神聖なる空間だ。闇夜に映える提灯こそ、仏前に供える灯明と同じだ。

 盆は霊祭りとも言い、八月十五日、いわゆる旧盆に行う地方が多い。ビジネス街でもこの日の前後は暑中休暇となり空っぽになる。本来はこの期間に帰省したり墓参りをする。
 ちなみに盆の語源は何か?諸説あるが古代イラン語の「ウルバン」(死者の霊魂の意)に由来するという説もある。この霊魂を祀る風習が中国で仏教徒に受け継がれ日本へ伝来したものと思える。『枕草子』にも載っている事からも古くからの行事と言えよう。

 精霊を迎えるために庭先に供物を供える盆棚をつくり、座敷に盆提灯を灯し、十三日の夕刻、門口では苧殻(おがら)を焚き祖霊を迎える。そして三日後、精霊をまた火で送る。とくに京都で行う大文字の送り火が有名…この火は精霊の帰り道を明るく照らすもののため、大きく燃え上がる勢いのある火でなければならない。

 盆行事は正月と違い送り迎えの期間が慌ただしく心残りを感じる。この点、角川書店の創業者・角川源義が句に詠んだ。
  盆三日あまり短かし帰る刻(とき)

 いずれにしても盆には先祖がこの世へ帰ってくる。迎え火で祖霊を迎え、家族揃って墓参りをしょう。盆こそ祖霊と対話できる好機だが、外国ではどうやって祖先と対話するのだろうか?チッと気になるところだ。

 国際人とは自国の文化という鏡で異文化を映し“違い”を理解する事が第一条件だ。
 各民族が互いに違いを認め合ってこそ国際化といえよう。誇りをもって自己への認識を深め、相手国を理解するためにも、若人よ!確かな鏡をもとう!

S. Y. J