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北斗神拳奥義(1)
(北斗の拳に登場した奥義)


北斗神拳


 1800年に渡って受け継がれている一子相伝の暗殺拳。三国志の時代に中国で創始され、唐の時代に日本へと伝来。以降は日本で伝承され続けている。創始者はシュケン。北斗の拳の主人公 ケンシロウが第64代伝承者であり、その師父であるリュウケン(霞羅門)が63代、蒼天の拳の主人公 霞拳志郎が62代、その父 霞鉄心が61代の伝承者を務めた。伝承者ではないが、ラオウトキジャギといったケンシロウの義兄弟達や、過去には唐の時代の伝承者たちや、戦後時代の伝承者といった使い手もいる。


●奥義・強さ

 人体に708あると言われる「経絡秘孔」を突き、敵を内部から破裂することを極意とする。特殊な方法を用いない限りこの効果を解除する事は出来ないため、並みの相手であれば拳を一撃喰らっただけで死に至ることになる。他にも身体の一部のみを破裂させたり、相手を意のままに動かしたり、記憶を消したりすることも可能であり、北斗神拳の奥義の殆どがこの秘孔術を用いたものであるといっても過言ではない。また、死の秘孔の探求は、同時に生の秘孔の探求でもあり、突き方によっては怪我や病気を治癒する事も出来る。

 この拳を代表するもう一つの奥義が、潜在能力を100%引き出すという特殊な呼吸法である。人間の潜在能力は、常人では30パーセントしか使う事が出来ないが、北斗神拳ではこの残り70%を引き出すことを極意としている。これを行う事で、身体能力は飛躍的に上昇し、そこから繰り出される打撃は人間を一撃で粉砕する程の威力を持つ。

 その他にも、「怒りによって肉体を鋼鉄へと変える」「人間の動きの中にある七つの死角を辿る」「放たれた矢も止まって見える」「銃弾をも躱す軽功術を持つ」など、多くの超人的な奥義を有しているが、その中でも北斗神拳を地上最強と言わしめているのが「千変万化する戦いの中で奥義を見出し、常に進化を続けている」という点である。相手に応じて新たな奥義を生み出すことであらゆる状況を打破し、また一度戦った相手の拳を見切り、己の奥義とすることで、その拳は無限に強さを増す。

 この拳の真髄とされているのは「怒り」であり「愛」であり「哀しみ」。その哀しみ背負った者のみが成し得るのが、「無想転生」と呼ばれる究極奥義であり、北斗神拳の歴史の中でこの奥義を体得したものはいないとされていたが、霞拳志郎がその一端を見せ、ケンシロウ、ラオウの二人が史上初めてこの奥義を手にすることとなった。




●発祥

 およそ2000年前、中国は漢の時代。小勢力だった西方の浮屠教徒(北斗宗家)達が有していた無敵の拳「北斗宗家の拳」は、天帝の盾として世に平安を齎していた。しかし既に極められていたその拳は、歴史の中で受け技をも極められてしまい、やがてその威を喪失。世は天帝を失い、狂乱の戦国時代へと突入した。
 この戦乱を治めうる最強の暗殺拳を渇望した北斗宗家は、覇者となる子の誕生を待ち続けた。だが彼らに恵み与えられたのは、オウカの子・リュウオウと、シュメの子・シュケンの、二人の赤子であった。覇者が二人になれば国は再び二つに割れる。そう考えた北斗宗家の高僧達は、二人を狼の群れに晒し、一方を殺すことで、天の声を聞こうとした。だが結果を待たずして、シュメが我が子シュケンを連れて逃亡を図ったため、高僧達はリュウオウを伝承者に指名。しかしシュメのその行為が、余生短き己が息子に与えられる最後の愛であったことを知ったオウカは、シュケンを伝承者にするよう進言し、崖の上から投身。凄絶なその死を目の当たりにした高僧達は、今こそ天の声を聞いたとして、二人の母の愛を受けしシュケンを伝承者とすることを決定した。一方で、母に捨てられしリュウオウの子孫は愛に彷徨するであろうとして、その者達に愛を説く事が北斗神拳伝承者の使命だとされた。

 成長し、北斗宗家の拳を極めたシュケンは、新たなる最強の拳の創始のため、「西斗月拳」を伝える月氏族のもとを訪問。ヤーマとの運命的な出会いを経て、月氏族に門弟として迎え入れられたシュケンは、西斗月拳に伝えられる秘孔術を修得した。だが彼らのもとを去る前日の夜、シュケンは高僧達から与えられた使命遂行のため、西斗月拳の伝承者とその高弟12人を殺害(ただしヤーマのみ生存)。これにより、西斗月拳が邪悪な者の手に渡ることを防いだが、己が愛した者達をその手にかけた罪をシュケンは生涯忘れることなく、天に許しを請い続けた。

 その後、洛陽の白馬寺へと戻ったシュケンは、北斗宗家の拳と西斗月拳の秘孔の術を融合させ、史上最強の暗殺拳・北斗神拳を創始。この世に平和を齎す英雄の守護拳としてその力を振るった。だがその凄絶な力と創始にまつわる悲話ゆえに一子相伝とされ、歴史の陰で延々と受け継がれていくこととなった。




●分派・歴史

 北斗神拳が創始されて数年後、中国は三国時代へと突入。それに伴い、北斗神拳は、それぞれの国の英雄を守護するため、三派に分裂した。すなわち、呉の孫権を守護する「北斗孫家拳」、魏の曹操を守護する「北斗曹家拳」、蜀の劉備を守護する「北斗劉家拳」である。『北斗の拳×蒼天の拳 オフィシャルガイドブック』によると、三国時代への対応に頭を悩ませた北斗宗家は、白馬寺にて会合を開き、そこで三国に甲乙つけがたい英雄がいることを報告を受け、それぞれに北斗神拳伝承者候補を付けることになったのだという。その結果、三国時代においては劉家から伝承者が生まれ、以降も劉家が伝承者の座を引き継いでいくことになったとされている。他の二家も北斗神拳を支える存在として存続し、劉家に伝承者が生まれなかったときはこの二家から伝承者を出すという仕組みが出来上がったという。

 それから約600年後の唐の時代、真言密教の第七祖ある恵果和尚は、弟子である空海阿闍梨が日本へと戻る際、三人の少年を供に付けさせた。彼らこそが北斗神拳を伝承する者達であり、この空海の帰国に合わせ、日本に北斗神拳が伝来する事となった。以降、北斗神拳の伝承は日本で行われることとなり、一方で中国に残された北斗劉家拳の者達も、引き続き拳を伝承していった。日本に渡った後も、英雄を守護するという伝承者の宿命は引き継がれ、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康らを密かに守護していたとされている。

 北斗三家拳のほかにも、北斗神拳の流れを汲む拳法は幾つか存在する。400年前の伝承者争いに敗れた者が創始した修験の拳「北門の拳」や、北斗劉家拳の天才と呼ばれた魏瑞鷹が、その拳をベースにして創始した「極十字聖拳」、また、セガサターン版北斗の拳では、数百年前の伝承者争いに敗れたゼシンが創始した「北斗無明拳」なる拳法も登場する。




●伝承

 一子相伝の掟に従い、北斗神拳伝承者の座は基本的に親から子へと受け継がれる。だが伝承者が男児に恵まれなかったときは「北斗神拳に伝承者なき場合は、これを北斗劉家拳(北斗琉拳)より出す」という掟に従い、分派の一つである劉家拳の門下の者が北斗神拳伝承者の下へと送られることになる。ラオウ、トキ、ケンシロウの三人が、北斗琉拳伝承者ジュウケイの手からリュウケンの下へと送られたのはこのためだとされている。
 また、伝承者は、シュケンから引き継がれる「北斗宗家の血族」の者がなるとされている。これは、その血を引きし者が生まれながらにして拳の才能を持っているからであり、その血が濃ほど才能に恵まれていると言われている。だが上記の通り、伝承者が男児に恵まれなかったときは劉家拳から伝承者を出す事になっており、そう考えると、伝承者になるのは必ずしも宗家の血を引いていなければならないというわけではない。(実際はトキやラオウもリュウケンの子孫であり、北斗宗家の血を引いていたが、作中では本人達もその事を知りえなかった)。

 伝承者候補が複数になった場合は、その者達に同等の修練を課し、その中で伝承者が力量を見極め、最も次期伝承者に相応しき者を選抜することになる。その過程においては拳の才能が重視されるが、最終選考においては、考え方や性格、暗殺者としての資質等も大きな選考基準となる。伝承者争いに敗れた者は、今迄の修練で身につけた記憶や拳を奪われるとされているが、野に下った後の使用法に問題ありとみなされた者のみが拳を封じられるというのが通例になっている。

 こうして選ばれた一人が伝承者の座を引き継ぐ事になるのだが、もし北斗劉家拳にも優れた伝承者がいた場合は、その者と「天授の儀」を行い、勝利しなければならないという掟が存在する。女人像の前で劉家拳の伝承者と闘い、勝利して己の力を示すことで、初めて"真の伝承者"となるとされている。だが未だかつて歴史の中で、劉家拳伝承者が勝ったことは一度として無い。

 第六十二代伝承者である霞拳志郎は、もし自分が中国から帰らなかった場合は弟の霞羅門(リュウケン)が伝承者だと告げ、事実その言葉通りにリュウケンが次期伝承者となっている。この事から、兄弟間で伝承者の座を譲る事も場合によっては可能である事が解る。
 第六十三代伝承者となったリュウケンには、コウリュウなる兄弟弟子がおり、実力ではコウリュウの方が上回っていたものの、結果的にリュウケンのほうが伝承者となっている。これは、コウリュウが兄弟弟子同士で殺しあわねばならない事に疑問を抱き、自ら伝承者への道を辞退したためだと言われている。
 第六十四代伝承者の選考においては、一時はトキが伝承者に決定していたものの、不治の病を患ったために寸前で落選。ジャギを除くラオウとケンシロウの何れかから選ぶ事になり、拳ではラオウが大きく上回っていたものの、その強き野望をリュウケンに危惧され、最終的にはケンシロウが次期伝承者として選ばれた。
 第六十五代伝承者は、ゲーム『北斗の拳4 七星覇拳伝 北斗神拳の彼方へ』の中では、その作品に登場する北斗宗家の血を引く青年(主人公)が、ケンシロウから伝承者の座を継ぐことになっている。その他にも、ラオウの息子・リュウや、リュードといった北斗神拳の使い手が登場するが、リュウは自らの意思でこの主人公に伝承者の座を譲り、己の腕の腱を切って拳を封印している。



●他流派との関係

 北斗神拳と南斗聖拳は表裏一体の拳法であると言われている。敵を内部から破壊する「陰」の拳の北斗神拳に対し、力でもって敵の体を外部から破壊する「陽」の拳が南斗聖拳であり、この二つは常に二極一対の存在として並び称されている。リュウケンは、北斗と南斗は争ってはならないと遺言を残しているが、この言葉は北斗の拳の世界においてはまったく守られていない。また、互角の拳法であるが故に、双方が奥義を尽くして戦った場合は相打ちになると言われているが、作中で描かれた闘いでは殆どが勝敗が決している。ちなみにケンシロウは幼くして南斗十人組手に挑戦しているが、これはラオウが内密に企画したものであり、リュウケンの許しを得て行われたものではないとされている。

 元斗皇拳と北斗神拳は、かつてはどちらも天帝守護の拳とされ、北斗は天帝の戦車と呼ばれていた。だが作中では、悪政を続ける天帝に北斗が反旗を翻したため、元斗は逆賊である北斗を抹殺を目論んでおり、対立関係にある。(実際は天帝の名を騙るジャコウの指示であり、元斗の正統伝承者であるファルコには北斗への憎しみは無い)。かつては元斗皇拳が北斗神拳をも凌駕しているとも言われていた。
 
 「北斗の拳(読みきり版)」では、泰山寺拳法(泰山流)は、かつては北斗神拳と唯一匹敵する拳法だと呼ばれていたが、原作・北斗の拳とは設定が異なる世界での話なので、参考外と考えてよい。

 その他、大乗南拳北門の拳では、有事が起こった際に現れる救世主こそが北斗神拳伝承者であるとの言い伝えがあり、また北斗琉拳極十字聖拳北斗無明拳等からは、強い対抗心や憎悪を抱かれているなど、愛憎に関わらず、あらゆる拳法と関わりを持つ。