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北斗百裂拳
ほくとひゃくれつけん



流派: 北斗神拳
使用した人物: ケンシロウ (対 ZEED)・・・原作(1話) アニメ版(1話)
       (対 KING兵)・・・アニメ版(5話) ※2回
       (対 カーネル)・・・アニメ版(8話)
       (対 ウイグル)・・・アニメ版(40話)
       (対 モヒカンボス)・・・ラオウ伝殉愛の章(小説版)
       (対 幻王軍)・・・ケンシロウ外伝
       (対 シン)・・・北斗の拳(FC)
       (対 シン)・・・SEGAMarkIII版
       (対 リュウガ、ラオウ)・・・パンチマニア
       (対 ラオウ)・・・激打2
霞拳志郎 (対 ヤサカ)
トキ (トキ伝、北斗の拳5、セガサターン版)
ラオウ (北斗の拳5、パチンコ)
北斗4主人公 (北斗の拳4)
リュウ (北斗の拳4)
リュ−ド (北斗の拳4)
登場した作品: 北斗の拳/アニメ版/蒼天の拳/劇場版/ラオウ伝殉愛(小説)/
トキ伝/ケンシロウ外伝/Legend of Heroes/北斗の拳(FC)/
北斗の拳3/北斗の拳4/北斗の拳5/北斗の拳6/北斗の拳7/
SEGAMark3/SEGA2500/激打2/激打3/激打ZERO/PS版/
サターン版/パンチマニア/DS版/審判の双蒼星/ONLINE/
北斗無双/真北斗無双/パチスロ系/実写版




◆百裂拳 概要

 ケンシロウが使用した北斗神拳の奥義の一つ。相手の体に連続で拳を叩き込み、身体に点在する複数の秘孔を指突する。3秒間に50発というスピードで叩き込まれる拳は、相手の体を徐々に浮き上がらせるほどの威力を誇るが、打撃によるダメージを与えるのではなく、的確に秘孔を突くことを目的とした拳であるため、実際には蚊に刺された程の痛みも残らない。しかし致命の秘孔を突かれたその肉体は既に死んでおり、数秒後に相手はその身を爆ぜて死亡する。

 第一話ジードに対して使用。頭部から上半身にかけて無数の拳を叩き込まれたジードは、その巨体をゆっくりと宙へと浮き上がらされ、そのままダウン。同時に、その手に捕らえられていたリンを解放させる結果となった。その後、ジードは無傷のまま起き上がり、再びケンシロウに襲い掛かろうとしたが、指突された秘孔の効果により、その体を飛散させた。



◆各作品における百裂拳

 TVアニメ版では、ジードに使用したものを含めて計5回百裂拳を使用している。

 原作では名の無かった、カーネル秘孔瞳明を突くために行った連続拳に、百裂拳の技名が充てられている。背後からの爪撃を躱し、右腕を捉え、そのまま至近距離から無数の拳を放った。原作では拳で殴りつけているだけだが、アニメではジードの時と同様、秘孔突きに重きにおいた型の百裂拳になっている。

[北斗百裂拳:対カーネルver]




 ウイグルへの止めとなった連続拳も、アニメでは百裂拳として扱われている。原作では右即頭部を殴って頭突きを迎撃した後に頭部に連続拳を浴びせるというだけだったが、、アニメでは頭突きを回避→背後から右即頭部に裏拳→横に吹っ飛んだウイグルを追いかけて左即頭部を殴打→連続拳、という形になっていた。

[北斗百裂拳:対ウイグルver]



 アニメオリジナル回である第5話では、KING兵を相手に二度使用。

 一度目は、城の通路にて襲い掛かってきたモヒカン5人を相手に使用。百裂拳を複数の相手に対して使用したのはこれが初である。その他にも、駆け抜けざまに拳を繰り出していたり、合間に蹴りを挟んでいたりなど、他の百裂拳と一線を画している部分が多い。

[北斗百裂拳:対KING兵ver(A)]



 二度目は、城の広間にて襲い掛かってきたモヒカン四人を相手に使用。全員を一斉に殴りつけて葬った。その破裂の様は、アニメ版の中においてはかなりグロめの描写になっている。技を炸裂させた後、四人を飛び越える形で前方に跳躍しているが、その行為の真意は不明。

[北斗百裂拳:対KING兵ver(B)]



 蒼天の拳では、霞拳志郎ヤサカに対して繰り出している。だがケンシロウの百裂拳とは大きく様相が異なっており、交互に拳を繰り出すのではなく、無数の拳を一斉に相手へとぶつけるような奥義として描かれていた。ヤサカはこれを受けきることが出来ず、全身に拳を受けて後方へと吹っ飛ばされたが、全くの無傷であった。体に拳痕が刻まれていたことから考えると、おそらく拳は当たったものの、うまく秘孔を外して無効化したものだと思われる。尚、ゲーム作品を除くと、北斗百裂拳を受けて生き延びた人物はヤサカだけである。

[北斗百裂拳:霞拳志郎ver]



 ラオウ伝 殉愛の章(小説版)では、盗賊のモヒカンボスに使用。額に二本貫手を添えた後、無数の拳を叩き込み、ダウンさせた。その後の相手の行動も含め、ジードの一件をほぼなぞっている。
 小説 ケンシロウ外伝では、幻王軍に対して使用。襲い掛かってきた数百もの兵士を相手に繰り出し、眼にも止まらぬ速さの豪拳を叩き込んで爆死させた。断末魔は「どべし」「ずわ」「えげろ」。

 真救世主伝説 北斗の拳 トキ伝では、北斗寺院にて修行中のトキが、演舞のような形で北斗百裂拳を披露。針の穴を通すほどの正確な指突によって、舞い落ちる銀杏の葉を穿ち、その中心に孔を作った。その拳は氷の刃の如くだとケンシロウは例えている。

[北斗百裂拳:トキver(トキ伝)]




 数々のゲーム作品にも登場しており、その登場数は全奥義の中でも最多を誇る。RPG三部作である北斗の拳3〜5においては、敵1グループをまとめて攻撃できる奥義として登場しており、序盤の雑魚戦において非常に重宝する。格闘ゲームやアクションゲームなどでも、ボタン連打で手軽に発動させられるなどといった理由から、その使用頻度は高い。だが裏を返せば、ゲームの中における百裂拳の扱いは『北斗神拳奥義の中でもっとも威力が低い技』というものであり、その評価は高いとは言えない。そんな中、北斗の拳 審判の双蒼星 拳豪列伝では、「一撃必殺奥義」としてのポジションを与えられており、これは同ゲーム内において無想転生天破活殺よりも上の奥義という高い評価を与えられている。



◆愛される奥義、百裂拳

 ケンシロウを、いや北斗神拳を、いや北斗の拳を代表する奥義。そして歴代のジャンプ漫画を代表する必殺技ベスト3に入ってくるであろう存在。それがこの北斗百裂拳という技だ。北斗の拳の前にも後にも「パンチ連打」の技はいくつもこの世に送り出されてきたが、未だ百裂拳以上のパンチ連打技は現れていない。パンチ連打っつったら百裂拳。この公式は、おそらく永久に我々の頭から消えることはないし、変わることもないだろう。どれだけ売り上げで負けようとも、ゴムゴムのガトリングなどに取って代わられる筈が無いのだ。

 この北斗百裂拳が、読者の脳裏に強く刻まれることになった要因はいくつもある。劇中で最初に登場した奥義である事も、その一つだろう。以前ジードの紹介でも書いたが、北斗の拳の第一話にはあまりにも多くの魅力が詰まり過ぎている。百裂拳は、間違いなくその魅力の一角を担う存在だ。いや、中心的存在と言ってしまってもいいかもしれない。世紀末の世の「絶望」をジードが描き、「悲哀」をリンが描き、「希望」を「ケンシロウ」が描き、そのケンシロウの「強さ」を、北斗神拳奥義「北斗百裂拳」が描いた。その中でも、読者の大多数である子供達が注目するのは、やはり「強さ」であることは間違いない。当時、子殿たちの視線の先にあったのは、ケンシロウではなく、北斗百裂拳のほうだったのではないか。

 「あたたたた」と「おまえはもう死んで(い)る」がセットになっている点も大きい。原作でケンシロウが「あたたたた」を言いながら放った奥義は、百裂拳と柔破斬の二つしかなく、「おまえは〜」に限っては百裂拳のみだ。つまり「あたたたた」と「おまえは〜」を誰かが使った時点で、そこにはもう目に見えない百裂拳が存在しているわけだ。

 そしてなにより百裂拳を有名たらしめたのは、物真似がし易いという点であろう。3秒間50発は無理でも、あたあた言いながら拳を交互に出せば百裂拳の出来上がり。そのあと「お前はもう死んでいる」をそっと添えてやれば完璧。勿論本当に死んでなくても良い。相手がデキる奴なら、勝手にあべしひでぶ言いながら崩れ落ちてくれるだろう。たったこれだけで凄まじくクオリティの高い北斗の拳ごっこの完成だ。かめはめ波なんて出ねーし、流星拳は片手だから再現し難いし、肉バスターは下手すりゃ大怪我して親御さんを交えての話し合いに発展しかねない程危険。腕も伸びないし、卍解は見た目わからんし、スタンドも、霊丸も、天翔龍閃も、螺旋丸も、どれも再現が難しい。その中で、誰しもがケンシロウになれてしまう北斗百裂拳という存在は、当時の子供たちにとって、ライダーベルトに匹敵するなりきりアイテムだったのである。あのパンチマニアも、つきつめれば、プレイヤーに百裂拳の物真似をさせるためのゲームであった大人になり、百裂拳の真似事なんてしなくなった当時の読者達に、公然の場で堂々とあたあたして良いという免罪符を与えてくれたのがパンチマニアというゲームなのだ。数ある北斗ゲームの中でも、パンチマニアが未だに高い評価を得られ続けているのは、皆が如何に百裂拳を打ちたがっていたかの証とも言えるだろう。




◆百裂拳の真の姿に迫る

 そんなフェイマスでアイドルでポピュラーな百裂さんだが、その人気とは裏腹に、百裂拳という奥義の正しい姿をちゃんと理解できている人間は少ない。いや、皆無といっていいだろう。何故なら百裂拳の型はひとつでは無いからだ。

 手っ取り早い比較対象として挙げられるのが、原作北斗でケンが使った百裂拳と、蒼天で拳志郎が使った百裂拳である。

ケンシロウが使った百裂拳は、左右の手を交互に繰り出しながら、相手の上半身にある秘孔を「触れる」ほどのソフトタッチで突きまくるものだった。その手形も、拳であったり、貫手であったり、二本貫手であったりと様々で、中にはもう完全に「秘孔に指を添えるための手」も混じっている。

一方、拳志郎が使った百裂拳は、とにかく沢山の拳を「同時に」相手へと叩き込むというものだった。「あたたたた」など言う暇も無い。一瞬で百の拳が飛んでいく、そんな感じだ。こちらの手形はコブシオンリーであり、ヤサカの吹っ飛び方や拳痕を見る限りでは、パンチ攻撃としての物理的ダメージもあるように見える。物真似はし難そうだ。

その他の百裂拳――――、主にゲームに登場する百裂拳は、上記の二つのバージョンを混合したような形で登場する事が多い。つまり、「左右の拳を交互に繰り出す」が、「コブシで殴りつける」ような百裂拳だ。一般的には、これが百裂拳の基本スタイルだと誤解されている場合が多い。何故このイメージが広がってしまったのかというと、それはケンシロウが普段から繰り出す「百裂拳もどき」ともいうべきパンチ連打が、このスタイルだからだ。世間一般の人にとってはケンシロウがあたあたやっていればそれはもう百裂拳なのだ。

更に異色なのが、蹴りが間に挟まってくるパターンの百裂拳。アニメ第5話でKING兵に出したのや、審判の双蒼星に登場する百裂拳などがそれだ。「拳」って言ってるのに蹴り使っていいの?という意見もあるかもしれないが、獄屠拳飛衛拳がある以上、その質問は野暮というもの。


・・・とまあこんな感じで、百裂拳と一口にいっても様々な型が存在するわけだが、ハッキリ言ってこの中に「正解」などといったようなものは存在しないと私は考える。その時の状況や、相手の強さ、人数、その者の熟練度などによって、奥義の形も千変万化する。それが北斗神拳が最強たる所以でもあるからだ。

 ただ、ジードに使用したのは比較的「弱め」の百裂拳だったのではないかと私は思う。百裂拳に様々な型あれど、その狙いは常に「敵の体にある複数の秘孔を突く」というものだ。ジードに放った百裂拳は、その一点の目的を達成するための、まさに教本とも言うべき拳であった。しかし、この百裂拳を、北斗の強者達に決めたとして、果たして効果はあっただろうか?
 秘孔というものは、ただ突けばいいというものではない。突いたその箇所から渾身の気を送り込まねば、秘孔の効果というものは表れないのだ。それが相手の肉体を破壊する秘孔であれば、より強い気が必要となり、ましてや相手が北斗南斗クラスの拳士ともなれば、彼らがその体内に巡らせている闘気に押し返されぬほどの圧倒的な気が必要となる。そんな莫大な気を、あんなソフトタッチな百裂拳で送り込めるものだろうか。私は無理だと思う。
おそらく、←こんな感じで無効化されてしまうのがオチだろう。

 求められるのは、より強い気を叩き込める百裂拳。そう、それこそがあの全殴り百裂拳なのだ。ソフトタッチよりも殴りのほうが強い気を送り込めるという明確な根拠は無いのだが、ケンシロウが強敵レベルの相手との決着に用いるのが殆どの場合において「ソフトタッチ」ではなく「強烈な拳」であることを考えると、まずそう考えて間違いないだろう。従来の「正確に秘孔を突く」という目的はそのままに、「渾身の気を送り込めるだけの拳を当てる」という要素をプラスした、より威力の高い百裂拳、それが全殴り百裂拳なのである。

 ただ、威力を高める事にリスクがないわけではない。闘気の消耗量が多くなるであろうことがまず一つ。指先から拳に変わることで、正確に秘孔を狙うことが困難になることも考えられる。そして拳の威力が高まれば、一撃のパンチによって相手が後方へと吹っ飛んでしまうため、連続で拳を当てることが難しくなるという可能性も考えられる。クリアしなければならない課題は多い。真の百裂拳を体得するまでの道のりは、決して容易ではないのだ。

 では殴りの百裂拳が強いというなら、霞拳志郎バージョンの百裂拳が最強ということになるのだろうか。否、そうとも限らない。確かにあれだけの拳を一斉に叩き込めば、ほぼ間違いなく相手は全身に拳を喰らうだろう。だがあの派手な技を成すためには、何かを犠牲にしなければならない。あの百裂拳の場合は、まさに先ほど語った百裂拳のキモである威力と正確性の欠如が考えられる。
 格闘技などの実戦において百裂拳のようなパンチ連打技を誰も使用しないのは、威力が弱く、パンチも正確でないからだ。勿論、北斗の拳士が放つ百裂拳は、その両方共を兼ね備えているだろうが、拳志郎が放ったような超・百裂拳ならばどうだろう。いくら拳志郎といえども、通常の百裂拳よりは、威力と正確さが欠けてしまっていたのではないだろうか。事実、ヤサカはあの百裂拳を体に受けまくったが、ほぼ無傷のまま切り抜けていた。これはヤサカの実力もあるだろうが、あの百裂拳に欠陥があっただという可能性も捨てきれない。大事なのは拳を当てることではない。正確且つ強力に秘孔を打ち抜く事なのだ。ケンシロウの百裂拳でも、霞拳志郎の百裂拳でもない。劇中で登場する名も無きパンチ連打の百裂拳こそが、まさに理想の百裂拳の姿なのである。

←理想的百裂拳

 ちなみに、何故わざわざジードを弱めの百裂拳で倒したのかというと、それはあそこで強めの百裂拳をぶっぱなすとリンまで一緒に吹っ飛んでしまうからだ。あの場面では、ジードの巨体がゆっくりと浮き上がる程度の弱・百裂拳がベターだったのである。






◆さらに百裂拳の真の姿に迫る


 しかし、この全殴り百裂拳(以下便宜上「百裂拳」と表記)を技として成立させるには、ある大きな問題がある。上でも触れたが、いわゆる百裂拳を喰らった相手は、何故吹っ飛ばされないのかという謎だ。あの百裂拳の一撃一撃が強烈なパンチであるなら、相手は最初の一撃を喰らっただけで後方へと吹っ飛ばされる筈であり、その後のパンチを連続で喰らう事などありえないのだ。

 また同時に、何故相手は無数のパンチを無防備に全弾喰らってしまうのかという謎もついてくる。これは百裂拳に限ったことではない。同系統の連続パンチ技も、最初の一撃がヒットしただけで全弾命中確定というのが当たり前になってしまっているフシがある。雑魚ならともかく、上級の拳士ならば、連打途中からガードできてもおかしくない筈だ。

 本来なら「マンガだから」の一言で済まされてしまいそうなしょうもない謎なのかもしれない。だがこれらの問題について考えることで、百裂拳の正体について更にもう一歩踏み込んでみたい。

 まず、殴った相手が後方に吹っ飛ばないようにするための方法だが……そんな事は不可能である。無理やり考えるなら、秘孔の効果で相手をふんばらせているとか、闘気か何かで拳先に相手を吸着させているとか、足を踏むなどして強制的に固定させているとかくらいだが、どれもスマートな答とは言えない。これだとまるで秘孔を突く事よりも、相手を吹っ飛ばさない事に重点を置いているかのようで、全くもって美しくない。

 では一体ケンシロウは、この矛盾をどのようにして解消しているのか。考えられる答は一つ。あれは実は殴ってはいないのだ。裂帛の拳を叩き込んでいるように見えるあの殴りつけ百裂拳も、実はソフトタッチ百裂拳と同じく、軽く拳先が触れているだけの寸止め百裂拳なのである。

 しかしあの技を炸裂させた時、相手は無数の拳を叩き込まれたようなリアクションをとっているし、実際に体に拳痕が刻まれたりしている。明らかにジードにやったソフトタッチ百裂拳とは別の効果が見て取れる。寸止めしていたとしても、あのパンチに威力が無いわけではないのだ。一体ケンシロウはあの瞬間に何をしているのだろうか。

 強烈な一撃であるのに相手が後方に吹き飛ばない技…。世の中には、それを成す便利な技がある。「浸透勁」だ。添えた掌から放たれる勁による攻撃は、防具すら貫通し、敵の体内にダメージを与えるという中国拳法の秘技。衝撃が体を通り抜けるため、相手はむしろ背中側に痛みを感じるという。もしかしたら百裂拳は、この技法を用いているのではないか。
つまり、寸止めにて相手の体に接着させた拳骨から、浸透勁のような攻撃を行うことで、相手の体内にダメージを与えているとは考えられないだろうか。これなら衝撃は全て体内を通り抜けるため、相手を押し出す運動エネルギーが発生せず、いくらでもパンチを当て続けられるのだ。

 ただ厳密には、浸透勁とは若干異なる技術であるような気がする。「浸透勁のような攻撃」という表現を用いたのはそのためだ。「勁」とは力のことであり、重力などの様々な力を集約して相手にぶつけるのが「発勁」と呼ばれる技法であり、それを体内に浸透させるのが、一般的に「浸透勁」と呼ばれる技法なわけだが、このような高度な技をあの高速のパンチ一発一発に乗せるなどという面倒くさいことをやっているというのは流石に現実味が無い。ただでさえ秘孔を突くので忙しいのに、そんな事をやってられる余裕は無いだろう。では一体ケンシロウは、どのような方法で、この擬似浸透勁を行っているのか。

 その答えは、秘孔突きのシステムに隠されていた。北斗の拳士が秘孔を突く際に行っていること、それは、相手の体に気を送り込むことだ。ケンシロウはこの秘孔を突くために行う気の伝送を利用し、浸透勁の如く体の内部を攻撃しているのではないか。この方法であれば、秘孔を突く際の気の送り込み方を工夫するだけでよいので、然程難しいことではないだろう。まさに一石二鳥だ。「気の力で体内にダメージを与える」なんてそれこそ漫画の世界だが、北斗の拳とはそういう漫画なのだから何の問題も無い。

 そして、この浸透勁の効果を用いることで、もう一つの問題も解消される。何故相手は百裂拳のパンチを無防備に喰らい続けるのか。それは、この擬似浸透勁による体内へのダメージを連続で喰らい続けているからだ。通常、人間は内臓にダメージを与えられると、まともに動くことが出来なくなる。ボクシングでボディーブローを打って内臓を攻撃するのも、相手の動きを止めたり、ガードを下げさせるたりするためだ。どれだけ体を鍛えようとも、内臓へのダメージは防ぎようが無いのである。そんなものを3秒間に50発というスピードで叩き込まれている状態で、ガードしたり、後ろに引いたりすることなどできるはずがないのだ。。



以上のことをまとめて図解してみよう。

(1)
拳は振りぬかず、相手の体に触れた瞬間に停止させる。こうすることで、相手を後ろへと押し出す運動エネルギーを発生させないようにする。
(2)
拳が触れた瞬間、拳に集約させていた気を相手の体へと叩き込む。パンチの速度と同等の速さで放たれた気は、相手の体の中へと浸透していく。
(3)
撃ち込んだ気を、人体に点在する経絡秘孔へと送り込む。気は経絡(神経)を通じて全身に流れ込み、爆発をはじめとした、常識では考えられないような身体異常を引き起こす。
(4)
高速度で叩き込まれた気は、経絡秘孔を貫通しても止まることなく、更に深く相手の体内へと浸透。臓器に微量のダメージを与えながら、やがて背へと通り抜ける。
(5)
これを連続して行うことで、相手は止むことなく体の内部にダメージを受け続け、動きを封じられる。これにより、相手は無防備に拳を浴び続けることになる。


 この解釈が正しいとすると、北斗百裂拳は、最初の一発目さえ当たればその後の連打も全弾ヒット確定という事になる。そういえば百裂拳を放つとき、最初の一発目は結構強めの一撃を撃っていることが多い気がする。あれは、その後の連打に繋げる為の布石として、初弾の一発で動きを封じれるほどの特別強い気を打ち込んでいるからなのかもしれない。



◆百裂拳の威力


 百裂拳という奥義が実は物凄く高度な技術が幾重にも積み重ねられた秘拳であるという事は解ってもらえたかと思うが(単に私が言っているだけだが)、その難易度の高さに「実」が備わってなければ、真の秘技とは言えない。即ち、その威力のほうはどうなのか、という事だ。これだけ手間のかかる奥義であるのに、ゲームでの扱われ方のように、大した破壊力も無い奥義なのだとすれば、割に合わない。

 結論から言おう。百裂拳は、無茶苦茶強い。必殺度という点から言えば、北斗神拳の奥義の中でも最強に近いと私は思っている。審判の双蒼星における「一撃必殺奥義」というポジションは、見事に的を射ていたのだ。

 何故百裂拳が強いのか。答えは至ってシンプル。複数の秘孔を突いているからだ。北斗神拳における攻撃の要は、やはりなんと言っても秘孔突きである。剛掌波のように圧倒的な闘気をぶつける技も確かに凄まじい破壊力ではあるが、肉体を内側から粉砕させるほうがどう考えても致死率は高い。その圧倒的な必殺度を誇る秘孔突きを、あれだけ叩き込んでいるのだ。そんなもん強いに決まっているでは無いか。

 しかし秘孔突きとは本来一撃必殺。指先一つでダウンが常識である北斗神拳の秘孔術において、複数の秘孔を突く行為など単なる過剰攻撃、オーバーキルであり、特に意味は無いんじゃないか。そう思われる方もいるかもしれない。だがそれは大きな間違いだ。

 複数の秘孔を突くことによるメリット。まず一つは、秘孔の無効化を防げるという事だ。作中において、秘孔は幾度か無効化されている。ファルコの細胞滅殺や、ヒョウの秘孔抉り取り、他にも自らに秘孔を突くことで、相手に突かれた秘孔を無効化するという場面などもしばしば見受けられる。しかしこれらは、一箇所の秘孔を突かれた場合にのみ適用される事例だ。しかし秘孔突きが全身に及んでいた場合、彼らは秘孔効果を無効化することが出来ただろうか。いや、出来はしない。どんな方法であれ、一度にあれだけの秘孔を突かれれば、解除が間に合わずに死に至ることは確実であろう。つまり複数の秘孔を突くことは、一撃必殺の「必殺率」をより高めるために必要な事なのである。

 もう一つのメリットは、複数の秘孔を突くことで、秘孔の効果、つまり人体破裂の破壊力が増す可能性があるという事。ある特定の秘孔を複数個突くことで、一つの強力な秘孔効果を生み出す。これは蒼天の拳でヤサカが行っている技だ。ただヤサカが突いたのは、いずれも急所を外れており、単体では意味を成さない秘孔であった。それを複数突き重ねることで、ヤサカはまるでピースを組み合わせるかのように、一個の秘孔を形成したわけだ。もしこれがいずれも秘孔のド真ん中を捉えたピースであったならば、その威力はどうなっていただろうか。勿論、その威力は絶大……。強敵クラスの拳士ですら、モヒカン同様のヒデブプロージョンで吹き飛ぶほどの破壊力となっていただろう。つまり百裂拳が、ヤサカの技と同じく「複数の秘孔を突いて一つの秘孔と成す」という奥義であった場合、それほどの威力を秘めているということなのだ。

 よく思い出して欲しい。数ある経絡秘孔の中で、最も破壊力のある秘孔といえば何だったか。そう、ケンシロウがサウザーに突いた人中極だ。結果的には通用しなかったが、この時ケンシロウは、百裂拳と思わしき連続拳で全身の秘孔を指突していた。作中では明言されていないが、もしかすると人中極とは、あのように複数の拳を叩き込んで一つの秘孔と成すものなのではないのだろうか。なにしろ最強の秘孔なのだ。そこらの秘孔とは突き方からして特殊であってもなんら不思議は無い。可能性は高いだろう。

 そもそも北斗百裂拳が北斗神拳の初歩技のように考えられているのは、単なる偏見に過ぎない。そのイメージを生んだのは、第一話に登場した事とか、ゲームの影響等も勿論あるが、やはりケンシロウが使いすぎているからだという理由が大きいと思う。百裂拳(もどき)は確かに強敵にも使用しているが、一方で雑魚に対しても頻繁に使用している。これがいけない。とっておきの必殺技は、やたら使用せず、ましてや雑魚相手に披露するような物ではない。これが漫画の常識だからだ。
 しかし、そのセオリーを無視してでも、ケンシロウは雑魚に対して百裂拳を敢行する必要があった。それは、先述の通り、百裂拳が「高難易度」の技だからだ。あれだけの数の秘孔を高速で正確に突くというのは、並大抵の修練で身につけられるものではない。ましてや相手が強敵ともなれば、そう易々と正確に秘孔を突かせてくれる筈も無い。いくら歴代最強の伝承者といえども、日々の研鑽を重ねなければ、来るべき対決の時にミスってしまう可能性は大いにある。もうお解かりであろう。その研鑽こそが、雑魚に対して行う百裂拳なのだ。つまりケンシロウは、雑魚を相手に百裂拳の練習を行っているのだ。おいそこ、木人形とか言わない。
 いくら雑魚相手とはいえ、生死をかけた戦いの中で練習なんて・・・と思われるかもしれないが、「複数の秘孔を連続で指突する」などという特殊な修練は、イメージトレーニングや無機物相手ではどう考えても不十分。彼らのような生きた人間を相手にした実戦の中で行ってこそ初めて意味を成すものであり、その死に様を見届けることで効果の程も確認できるというわけだ。雑魚一匹を倒すのに、本来なら指突き一つで十分なところを、あえてコスト大の百裂拳を使用するのには、そういった理由が秘められているのである。

 秘孔解除というレアケースすら根絶し、更には秘孔による人体破壊の威力の増幅させた、まさに人体破壊の秘孔術の極み。無想転生や天破活殺等、より難度の高い奥義はあれど、人体破壊という一点においては比類なき威力を持つ、オーソドックスにして最強の必殺技。それが北斗百裂拳という奥義なのである。











◆まとめ



だぞ!じゃないぞ!


上で俺が語ったこととかどうでもいいから


これだけは覚えてくれ!