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ラオウ/拳王


 登場:原作(42話〜) アニメ(32話〜)、ラオウ外伝、他多数
 肩書:世紀末覇者
 流派:北斗神拳&多数の拳法
  CV:内海賢二 宇梶剛士(真救世主伝説、天の覇王)

 
身体データ
 身長:210cm
 体重:145kg
 スリーサイズ:160・115・130
 首廻り:65cm


 北斗四兄弟の長兄。又の名を世紀末覇者「拳王」。カイオウトキとは実の兄弟。
 かつてトキ、ケンシロウと共に修羅の国を発ち、リュウケンのもとへ。北斗神拳の伝承者を目指し、圧倒的な強さを身につけるも、強き野望を持つが故に伝承者からは落選。その後、拳を封じようとした師父リュウケンを殺害し、覇道へ。自らを拳王と名乗り、巨大軍閥「拳王軍」を作り上げ、恐怖と暴力によるこの世の統治を目指した。

 カサンドラ崩壊後、マミヤの村に姿を現し、圧倒的な力でレイに勝利。ケンシロウ、トキをも退けるが、最終的には魂を肉体に宿したケンシロウと相打ちに。傷ついたまま愛馬・黒王号とともに荒野へと消えた。
 その後、聖帝サウザーを倒したケンシロウの姿を見て、ケンとトキを倒さない限り天は握れないことを確信。コウリュウと戦うことで肩の傷の完全回復させた後、実の弟であるトキとの勝負に臨み、死闘の末に勝利。病に果てた哀しき弟の為に、枯れたはずの涙を呼び戻した。

 覇道完成を目前に控えた頃、南斗五車星と呼ばれる者達との戦いの中で、「南斗最後の将」の正体がユリアであることを知り、南斗の都へ。城内へと攻め入るも、そこで対面したケンシロウの北斗神拳究極奥義 無想転生、さらにはその哀しき瞳の前に、恐怖を感じてしまう。その後、運良くユリアを連れ去る事はできたものの、恐怖を拭い去る事はできず、かつて己が唯一恐怖を感じた鬼のフドウとの戦いでそれを払拭する事に。だが結果、子供たちの目にケンシロウと同じ恐怖を感じてしまい、もはやケンに勝つには己も哀しみを知るしかないと決断。そのためにユリアを手にかけるという方法を選択した。しかしユリアが既に死の病を患っている事を知り、自らの幸せを放棄したその生き様に涙し、その哀しみによって無想転生を体得。ユリアを殺さず、仮死状態にすることで病状の進行を止めた。

 その後、北斗練気闘座にてケンシロウと最後の勝負に。互角の死闘を繰り広げた末、最後は互いに無想の一撃を打ち合い、僅かの差で敗北。強敵達との闘いの中で成長したケンシロウの強さを賞賛し、最後は体内に残る全ての闘気を天に打ち放ち、絶命した。

 死後も、あらゆる人物に影響を及ぼしていたことが明らかとなり、それ関する多数のエピソードが登場。かつて天帝の村を侵攻した際には、ファルコから片足を代償に村を素通りして欲しいと頼まれ、その男気を受けて申し出を承諾。修羅の国では、ラオウ伝説なる救世主伝説が存在し、いつかラオウが海を渡り、修羅の国を平定するつもりであったことが判明。また、リュウという名前の息子がいることも明らかになった。


 真救世主伝説 ラオウ伝 殉愛の章では、修羅の国の幼馴染でもあるソウガレイナの兄妹が拳王軍の幹部として登場。覇道を目前に控えるも、ソウガの命が残り少ない事を知り、その命を覇道の為に使いたいというソウガの願いを受諾。失態を犯したソウガを慈悲もなく殺すという誅殺劇を演じる事で、緩んだ部下達の心を戒めた。
 聖帝軍との決戦時には、レイナがその背に矢を受けて負傷。死ぬ間際に、いつか修羅の国に戻ってくる事の約束の証であるペンダントを返された。だがその後、秘孔によってレイナを死の淵から救出。改めてペンダントをレイナに渡し、修羅の国にて帰りを待つよう伝言を残した。

 真救世主伝説 ラオウ伝 激闘の章では、己がケンに負けた際に、「鬼」達がいれば魂の平和は訪れないと考え、悪しき将校たちを招集して抹殺。ケンとの死闘の後、遺灰となってレイナと共に修羅の国へと帰った。また、総参謀としてギラクなるキャラが登場。、南斗最後の将の正体をつきとめるよう命じ、判明後には己を謀ったとしてシンに激怒した。

 ラオウ外伝 天の覇王では、レイナとソウガと共に、覇道の第一歩を踏み出す所から物語が展開。カサンドラの制圧、居城「拳王府」の建設、愛馬黒王号との出会い等を経ながら、拳王軍の勢力を徐々に増大させていく。
 そんな中、旧知のライバルであるサウザーが覇道を推し進めていることを知り、互いに王として対面。一旦は同盟を結ぶも、直後に裏切られ、ユダに拳王府を制圧されてしまう。その後、ユダは難なく倒したものの、サウザーとの闘いでは秘孔の効かない身体の前に五分の戦いに。結果、サウザーのほうが折れ、改めて聖帝軍と不可侵条約を結ぶこととなった。
 その後、有能な将を求め、トキやリュウロウのもとを訪ねるが、いずれも断られる結果に。力による統治では真に平和は訪れないと忠告されるも、それを聞き入れず、逆に甘さを払拭し、鬼となりて覇道を邁進した。
 ウイグルリュウガといった将も加入し、順調に覇道を推し進めるも、謎の砂漠の村にてリュウガ、ソウガが相次いで負傷。裏で糸を引いていた冥王軍との直接対決に臨み、その最中、冥王軍を影で支配するガイヤと対面。姿を現さずに人を支配するガイヤのやりかたを否定し、圧倒的な支配こそが秩序を保てる方法なのだと告げ、その圧倒的な拳でガイヤの身を粉々に打ち砕いた。
 小説版TVアニメ版では、エピソードの順序が若干異なっている。

 トキ外伝 銀の聖者では、覇道の妨げとなるトキを捕らえる為、奇跡の村へ。トキとの対決に臨むが、病魔によってトキが自滅したため、そのままカサンドラへと幽閉した。




 北斗の拳の世界では、主人公は拳王様である。もし「北斗の拳」の世界の歴史を書に残すとなれば、ケンシロウよりも拳王様のほうを中心にして執筆されるだろう。ケンシロウなどはただのバカ強い拳客としか描かれないはずだ。なにより伝聞者がいない。一人の強い男が次々と大軍団を潰したというような細かな証言は「伝説」として残り、拳王様の壮大なる政治は「歴史」として残るのである。修羅の国では誰もケンシロウを知らず、拳王様のほうをを知っていたというのがいい例だ。おそらくあの世界における世間の知名度は拳王様>>>KING>>>>>>>>>ケンシロウくらいのもんだったのだろう。
 世紀末救世主伝説という肩書きも、実際のところ拳王様のほうがふさわしい。拳王様は核戦争の後、世界のために大変尽力された。恐怖でこの世を統一する。口で言うのは簡単だが、そのためにはどれぐらいの時間と労力が必要だろう。核から本編の時代までは、さほど時間の経過はない。良くて数年といったところだ。その短期間の間に大軍団を結成し、覇権をほぼ手中に収めんまでに急成長させているのだ。寝る暇もないほどに忙しかったことは容易に想像できる。その合間をぬって、格闘家達を葬ったり、新しい拳の体得にもいそしまれ、恐怖で統一する王としての威厳と尊厳を磨き続けていらっしゃったのだ。その激務は並の村人や奴隷達とは比べ物にはならない。この世で一番強く、そして忙しかったのが拳王様なのだ。
 その全ては、この世に光を取り戻すため。ユリアによれば、天を握った後はケンに倒され、自らの役目を終える覚悟であったらしい。数年にわたって己が築いてきた恐怖政治という名の復興作業の功績を、すべてケンシロウに譲ってご逝去なされたのである。偉大だ。その間ケンシロウはというと、女と旅に出ようとしたところを襲撃されて、長き北斗神拳の歴史を女の取り合いで終焉させかけたりしていただけの男である。北斗の掟を守るためではあっても、この世の平和を考えて動いていたわけではない。最終的には掟と平和のために拳王様を倒そうとはしているが、それは「俺を倒せば全てクリアだよ」と拳王様が非常にわかりやすいゴールを示してくれたおかげに他ならない。

 拳王様の偉大さは、どちらかというと御逝去されてからのほうが伝わり易い。その後のリュウ編まで含めても、結局描かれていることは一つ。いつまでたってもケンは拳王様を超えることが出来ないのだなあという事だ。
 帝都編における天帝幽閉事件のそもそもの発端は、拳王様の威圧によるジャコウの狂乱である。こういう言い方をすると拳王様が原因のようだが、要はファルコが勇気をもってその場でジャコウを殺していれば済んだ話で、拳王様は数年後に起こるこの事態を予知して警告していたのだ。事前に悪夢を防ごうとしていた拳王様と、多少遅いくらいの時期にノコノコ帰ってきたケンシロウとでは救世主としてのレベルが違う。
 修羅の国編ではラオウ伝説を引き継ぐと威勢よくいってみたケンさんだったが、結果これ以上無いほどの惨めな敗北を喫した。ジュウケイが言うとおり、来ていたのが拳王様ならラオウ伝説はすんなり成っていたはずであり、ケンシロウはまたも故人である拳王様の後塵を拝する形となった。その後のコウケツ編でもバラン編でも主人公は拳王様と御子息リュウであり、ケンシロウはその拳王様の偉大さを語り継ぐ伝聞者に過ぎない。
 ジャコウやコウケツにしてみても、ケンシロウのイメージというのは「ラオウを倒した男」という印象で固定されている。これは関根麻里の頭に関根勤の娘という紹介文がつくのと一緒の事で、ラオウありきではじめてケンシロウの強さが語られているということだ。ケンシロウという名前だけでは単なる超強い男というイメージだが、頭に「ラオウを倒した男」というレッテルがつくだけでその印象は10倍にも100倍にもなるわけだ。
 本来ならこれだけ自分の前にラオウの名を先行されて語られると嫌になりそうなものだが、どうやらケンシロウも己よりラオウのほうが偉大だったということを100%受け入れているようだ。それは強さだけではない。仕事ぶりも含めてである。既に故人である筈なのに、ケンは行く先々でこれでもかと言うほどラオウの名を耳にした。これは、ケンが女を拐われたり探したりという私用のためだけに生きていた頃、拳王様は大陸の統治と修羅の国を救うという二大陸制覇に向けて日々働いておられたが故だ。更には全ての拳法を後世に残すためのラオウ拳譜の製作。そのための拳法集め。時にはケンシロウの命を救うという雑務までこなし、身を粉にして時代のために動いておられた証なのである。そういった話を、ケンはリセキやハクリ辺りから耳にしたのだろう。ラオウが残したそれらの偉大すぎる功績を前にしては、ただただ尊敬する事しかできず、いつしかラオウを超えられないという事に対してなんの劣等感も感じなくなったのではないかと思う。拳王様の御子息であらせられるリュウを引き取ったのも、そういったケンの心境の現われなのではないかと思う。


 拳王様がそこまで偉大な存在になられたのも、やはりその強さがあってこそである。間違う事なく北斗の拳最強の男は拳王様だ。当然、愚兄カイオウなんぞより遥かに御強い。そんな事はリンですら知っている。上記でも少し触れたが、海を渡ってきたのがケンでなく拳王様であったなら、修羅の国はすんなり救われていたはずなのだ。なぜジュウケイはそう言い切ったのか?おそらくそれは、拳王様はすでに北斗琉拳の攻略法をつかんでおられたのであろう。まさかカイオウが魔界に入っていることをジュウケイが知らなかったとも思えない。ということは、暗琉天破だろうがなんだろうが拳王様には意味を成さないことを、ジュウケイは確信していたわけだ。一度海を渡ってきたときにジュウケイより攻略法を伝授されていたのかもしれない。北斗琉拳が脅威でなくなった場合にどうなるか、それはケンとカイオウのラストバトルから見ても判る通り、北斗神拳の圧勝に終わる。唯一気になるのは宗家の拳の存在だが、カイオウに生まれたときから染み付いていたということは拳王様にも染み付いていて当然であるわけだし、一方的に不利になるとは思えない。もし使えないとしても、さほど恐るべき存在では無いだろう。結局宗家の拳とは北斗神拳と琉拳のベースとなった拳に過ぎないわけで、1800年もまえに受け技が極められた拳など現代においては過去の遺物に過ぎない。現代に沢村栄治が蘇ったとしても現代野球には通じないのと同じことである。ジュウケイが必死で探し出そうとしたり、打倒カイオウの切り札と呼ばれていたのも、その正体がなんなのか知らなかった故なのだ。
 百歩譲って、カイオウを倒すにはあの宗家の拳の受け技が必要不可欠であるとしよう。その場合、拳王様はどうするか。答えは「秘拳の在り処を探し出すまでカイオウとは闘わない」である。サウザーの身体の謎が解けなかったが故に戦いを避けたのと同じ理由だ。その慎重さも拳王様の強さのひとつなのである。相手が格下に見えるからといって、ケンシロウのように無鉄砲に突っ込んでやられるという浅墓な真似は決してなされないのだ。拳王様にこの慎重さを与えたのは、おそらくリュウケンとの戦いであろう。あの時点の拳王様は、若さのせいか、どこか本編の拳王様より自惚れが強く見える。その自惚れを打ち砕いたのがリュウケンの七星点心であり、そして相手の力量を知り、確実に勝てると踏まねば無理に戦いを挑もうとはされなくなったのだ。
 
 最大の比較対象となるのはやはりケンシロウだ。結果的には拳王様が敗北しているわけだが、どう考えても力量的に劣っているとは思えない。そもそも最後の戦いで拳王様が負ける要素がない。ケンは勝因を「愛を捨てたものと愛を背負ったものの違い」だと語っているが、結局拳王様も愛を捨ててはいなかったので、それが真の理由ではなかった。やはり勝敗を分けたのは、ユリアの言う「愛を持つ者に倒されとってかわられる事を願っていた」点だろう。とはいっても、それで拳王様が手を抜いたと言うわけではない。どんな状況でも拳王様は戦いに全力を注がれる事は確かだ。しかし、決着は紙一重だった。あの時ケンシロウではなく、拳王様の全霊の拳のほうが炸裂していたなら、勝利していたのは拳王様だったろう。どちらに転ぶかわからない、そんな勝負において、僅かにふたりの差を分けたもの。それが「倒される事を願っていた」という僅かな敗北願望なのではないかと思う。あの勝負がこの世の平和を賭けた一戦なのではなく、純粋な拳力勝負であったなら、勝敗は五分―――いや、やはり一日の長がある拳王様のほうが有利だった筈だ。。
 他にもアニメ版では、ユリアを延命するために自らの闘気を分け与えるという治療を施されており、それが無ければ自分が負けていたかもしれないとケン自身が言っている。バラン戦でも「力では俺より勝るラオウ」とケンも言っている。勝利した後もケンは、拳王様のほうが上だと言う事を認めているわけだ。時をさかのぼると更に明らかで、南斗の城での戦いでは無想転生さえなければケンシロウは体を二回砕かれて死んでいるらしいので、拳王様が無想転生を得た段階で実力的に上になることは明白。マミヤの村まで遡れば、結果は引き分けだったが、その前に拳王様はレイとトキの連戦を行い、大量の闘気と傷を負っている状態であった。ハンデつきのこんな戦いをとても引き分けとはいえない。
 そもそもケンの強さは相対的すぎる。相手に対してそれなりに感情を高めなければ、本来の力を出せない男なのだ。拳王様に勝利する事ができたのも、様々な過程を経て怒り、哀しみを背負ったからであり、もし二人が空白の状態でぶつかったならば、マミヤの村での第1ラウンドと同じような結果になるだろう。例えばハンとの戦いなんかが良い例である。ハンは北斗琉拳の中でも三番手であり、(多分)宗家の血も入っておらず、魔界にも入っていない。かたやケンは北斗神拳の歴史上最強とも言われる男。こんなもんケンが圧勝してしかるべきなのだ。しかし勝負はグズグズのまま、すさまじい長期戦となった。これはケンがハンに対して、「リンを取り戻す」という目的以外の感情を持ち合わせていなかったため、本来の力を出せなかったからに他ならない。ハン如き、きっと拳王様なら、砂時計の砂が尽きる前にこの世から消滅させていらっしゃっただろう。

 まあいくら妄想したところで、結果は結果。実際に勝利したのはケンシロウであり、勝った者が強いという世の理に従うならば、ケンシロウが一番強いと認めざるを得ないだろう。勝利した後もケンが拳王様の強さを認めているように、我々も拳王様の敗北を受け止めた上でケンシロウの強さを認めるのが筋と言うものだ。だが・・・・・だがな・・・・・、拳王様最強説いまだ根強いのも、すべてはケンシロウの情けなさが原因だ。おまえがバラン如くに苦戦とかしてるから、それに負けた拳王様まで浮かばれなくなるんだよ!!やっぱお前のことなんて認めてやんねー!!!





〜悔いはなかった・・・けど読み違えていた〜

 
 拳王様は、ひとつ失態を犯した。ケンにきちんとラオウ伝説の継承を依頼しなかった事だ。ケンが修羅の国にたどり着いたのは全くの偶然であり、下手をすれば一生ラオウ伝説は放置されていた。何故拳王様は、修羅の国の事を残したまま一片の悔い無しなどと仰られたのだろうか。
 おそらくそれは、ラオウ様が思っている以上にケンが無知だったからだと思う。伝承者決定時、拳王様は兄カイオウが歪んでいたらその手で倒してくれと伝えた。これが、遠まわしなラオウ伝説の継承依頼だったことは間違いない。今は知らなくても、拳の道をいくならば修羅の国の事は嫌でも耳に入ってくる筈。そしてその国と兄カイオウを結びつくのは自然な流れであり、ケンシロウは己の言葉を守って海を渡るだろう。そしてその国で信ぜられているラオウ伝説を、ケンが引き継いでくれる。そう信じ、拳王様は悔い無くあの世に旅立たれたのだ。しかし、残念な事にケンには社交性が無かった。必要最低限以上の会話を好まない性格ゆえ、ケンは情報を得る術というものを持ちえていなかったのである。思い返してみると、ケンは本当に何も知らなかった。3人の兄が生きている事。拳王軍の存在。聖帝軍の存在。リュウケンの死因。天帝の存在。元斗皇拳の存在。北斗琉拳の存在。これらはいずれもケンシロウが知らなかった事であり、逆に拳王様は知りえていた事。拳王様にとっては知っていて当たり前の事も、ケンシロウにとってはへぇ〜ボタン連打ものの新事実だったのだ。
 しかし拳王様がラオウ伝説継承をちゃんと依頼していたとしても、ケンはああいう風にやられてしまった。結果的にラオウ伝説が成ったのは運が良かったからである。これは拳王様の見込み違いだったのではないだろうか。しかしここでも原因となっているのは、やはりケンシロウの無知っぷりなのだ。実際のところ、この情報収集能力のなさがケンシロウの大きな弱点の一つといえる。サウザーやカイオウに敗れたのも、相手をろくに知らないまま挑んだが故だ。サウザーに敗北したとき、拳王様はそのケンシロウを助けてもう一度チャンスを与えた。しかしケンは結局サウザーの謎を掴めぬまま再度挑み、拳王様を呆れさせている。しかしその戦いにより、ケンも相手を知るという事がいかに大切なものかを学んだだろうと、拳王様は考えたわけだ。しかしこれまた残念なことに、あの男は何一つ学んでいなかった。全く同じようにカイオウに挑み、暗琉天破の前に何も出来ずに敗北したのだ。天才であるケンシロウは、大抵の相手なら戦闘中に拳を見切れることが出来る。しかしそれが出来なかったとき、ケンの無鉄砲さは致命的な弱点となる。年齢を重ねても、結局ケンはその性格を直す事ができなかったのだ。拳以外の部分でのケンシロウの成長の無さ。それが拳王様が読み違えた最大のミスだったのである。






〜リュウの母は?〜

 
 今も昔も北斗サイトで一番多いのはこの質問だ。その謎の答えとなりそうな言葉が、2001年、某誌の記事にて、武論尊氏の口から漏らされた。その誌のインタビュアーに「リュウの母は誰か」と問われて
 
「あれはね、実はユリアなんだよ」
 
等とコメントしてしまわれたのである。だがその続きには
 
「僕の中ではユリア。でもそれじゃユリアが犯されたことになっちゃうでしょ?だから曖昧に描いてあるんだよ」
 
 と述べられていた(ハッキリ覚えてないが大体こんな感じ)。私はソレを見て安心した。要するに武論尊氏のアイデアはボツになったのである。武論尊氏は原作者ではあるが、絶対ではない。原氏や編集者と相談してストーリーを決める。その際に武論尊氏は母をユリアという設定を思いついた。だが諸々の事情故そんな事は描けなかった。故に「母不明」という設定で北斗の拳は進行することになったのだ。
 
 ボツになった原因は武論尊氏本人が言う「犯されたことになる」という点そのものであろう。これには二つの意味があると思う。
 一つは「少年誌の事情」。健全(?)な少年漫画誌ジャンプに、レイプを連想させるようなことは描けないからだ。
 そしてもう一つは「ラオウ様を汚せなかった」ためであると思う。武論尊氏は一番好きなシーンを「ラオウの登場シーン」と言ってしまうほどのラオウ好きである(ケンシロウは完璧すぎて嫌いらしい)。そんな原作者自らあこがれてしまうようなキャラに、武論尊氏はレイプという行為をさせたくはなかったのだ。武論尊氏自身「犯された」という表現を使っていることから、もし子供が出来たのだとしても同意の上ではないということである。確かに作中でユリアは結局ラオウに心を許さなかった。情けはかけても愛することはなかった。そんなユリアが拳王様と子供を作ったと言うことは、犯された事に他ならないのだ。おそらく武論尊氏は、ラオウ様の想いをユリアに届かせたかったのだろう。そして2人同意の上でリュウを作らせたかったのだ。だが結局そういう事実のないままラオウ様は死んだ。ということは、この後ラオウ様とユリアの子を出せば、ラオウ様がレイプを働いたことになる。それだけは出来ない。したくない。故に母不明という結論に達したのであろう。
 ゆえに私はこの記事を見てもさほど驚きはしなかったが、世間は違っていた。もうリュウの母=ユリアというのを事実として受け止め始めていたのだ。最初の発言がいけなかった。「あれはね、実はユリアなんだよ」。これを聞けば誰だって驚く。言い切っちゃってるんだもの。私だってびっくりしたさ。だが当の武先生の心情も考えず、この発言のみを鵜呑みにしているようではいけない。リュウの母をユリアだと認識する、それはつまり武論尊先生自体が嫌った「ラオウがレイプをした」と認識しているのと同じ事なのだ。漫画誌史上最高の漢・ラオウ様を強姦者に仕立て上げるとは甚だしい。怒りすら感じる。武論尊氏の言葉を信じているようでいて、逆に何も理解していないのである。何故ユリア母を描けなかったのか、よく考えるべきだ。というわけで私は完全に母ユリアを否定する理由を挙げることにした。
 
ラオウ様がユリアと接していたのは、ケンシロウがシンにユリアを取られる以前と、南斗の城での戦いの後〜練気闘座での闘いの間だけである。この2点で考えてみる。
 まず南斗の城から帰ってきて練気闘座で闘うまでの間の否定だ。
 
●強姦せざるをえない
これは冒頭にも書いたが、ラオウ様がユリアと交わるためには、強姦するより方法がない。同意は決してあり得ぬのだ。まあ劇中でそういうシーンがないから当然と言えば当然なのだが、描かれていないシーンで「悩めるラオウ様に母性本能が動いてつい心が揺らいだ」なんて事があったと言われても完全否定は出来ない。だが先日の武論尊氏のコメントがそれを否定している。武論尊氏は母親をユリアに出来ぬ理由を「犯したことになっちゃうから」だと言った。これはつまり、ユリアがラオウ様に心を許した瞬間などあり得ないということだ。ラオウ様はユリアを犯すより子供を作る方法がなかったということなのだ。無理矢理ユリアがラオウに惚れるシーンを描こうと思えば描けただろう。しかし武論尊氏自身がそうしなかったということは、結局ユリアの愛はケンシロウに一途なまま、動かすことは出来なかったという意味なのである。「同意の上での子作りはあり得なかった」のだ。
 
●タイミングがない
ユリアと子作りをするタイミングがない。ユリアをさらって帰ってきた拳王様は直ぐに眠り、起床と同時に自分に情けをかけたユリアに激怒した。ユリアがラオウ様にかけた情、それは、ケンシロウの哀しみの瞳に恐怖し負けたラオウ様へのものだった。つまりユリアは南斗の城での戦いを完全にケンシロウの勝ちだと思っていたのである。「天を握った自分にユリアがふさわしい」と拳王様は言っている。だがラオウ様はケンシロウの瞳に恐怖した。ラオウ様自身はあれを敗北と思ってはいなくとも、恐怖を感じた者が天を握ったなどと考えるはずもない。つまり恐怖を感じた時点で、ラオウ様はユリアにふさわしい人物ではなくなったのである。恐怖を克服し、再び天を握って自分がユリアにふさわしい男になるため、ラオウ様はフドウの元へと訪れた。だが結局そこで得たのは哀しみへの恐怖の再確認。そして帰ってきてからの拳王様は「今のおれにはケンシロウしか見えぬ」である。この頃のラオウ様にはユリアと交わる気なんか更々ないのだ。最愛の女の命を奪う決意をさせるほどにケンシロウしか見えていないのである。だからフドウ戦後もまず無い。可能性あるとすればユリアの言葉によって愛を知り、涙を流した後だが、その可能性の否定は以下でする。
 
●気の関係
ラオウ様はユリアが病気であることを知った後は、ユリアと交わることなど出来ない。まあ普通病人にはらませるという行為自体非常識なんだが、理由もある。それは気の関係だ。
ラオウ様はユリアに自らの闘気を与えてユリアの命を延ばした。闘気を与えるとどうして長生きするのか?それは病の進行を防ぐからである。人の体は「気」「血」「水」の3つの要素で成りたっている。このどれかひとつでも異常をきたせば人は健康のバランスを崩すのだ。逆に言えばこの3つさえ充実していれば、病は進行しないのである。つまり、ラオウ様はそのユリアの病の進行を何年も防ぐだけの気をユリアに与えたということなのである。現実には気を維持することなど出来ない。人は歩いても立ち上がっても呼吸をしても気を使う。食事をしてよく寝て気を養っても、常に気を使い続けている限り、常に気を充実させていることなど出来ない。病人となれば食事もろくにとれず、満足に気を養うことすら出来ぬ。病の進行を防ぐことなど実際には不可能なのだ。だがラオウ様の莫大な闘気、そして神秘の北斗神拳はそれを可能にした。ラオウ様は秘孔から気を送ることにより、ユリアが病を進行させずに生きていくための何年分もの気を与えたのだ。もちろん一度にそれほどの気を得ると普通なら死ぬだろうが、そこは北斗神拳。人智の及ぶところではない秘孔の力でなんとかしたのだろうとしか言えない。
本題に戻って、この後ラオウ様がユリアをはらませたかどうかだが、だいたい上記の文を見てもらえばそれがあり得ないことが解ってもらえるだろう。そう、SEXをするという行為は、気をひどく減少させるのだ。「気」は脊髄を下方に通ると「精」に劣化する。精交渉や其れに準ずる行為を行う事により、気は汚れて気でなくなるのである。つまりラオウ様がユリアと交われば、ユリアの気が劣化し、寿命がそれだけ短くなるということなのだ。これはあきらかに矛盾している。闘気を与えてまで寿命を延ばした女を、どうして気を失っている時を狙って無理矢理犯し、寿命を縮ませようとするのか。理解不能である。
 
●ラオウ様の性格
五車星もシンに言ってるし、自分でも言っているラオウ様の性格「想いが届かねば死あるのみ」。ラオウ様はユリアが自分に想いを寄せてくれぬ場合は殺す気まんまんだったのである。だが拳王様はユリアを殺さなかった。何故か?想いが届いたから?いや、それは「強姦せざるをえない」の項で書いたとおり、無い。答えは「そんなヒマがなかったから」である。というか、もはやユリアの想いが自分にあるかどうかなどどうでも良くなっていたのだ。拳王様の思考のベクトルが全て打倒ケンシロウに向いていたからこそ、ユリアはその命を奪われなかったのである。当然そんな期間に拳王様が性行為を求めるはずもない。興味がないのだから。
 
●ラオウ様は紳士
ラオウ様はユリアに秘孔を突いた後、「生まれて初めて女を手にかけたわ・・・」と言っている。紳士なのだ。決して暴力におぼれた野獣ではない。女子供を手にかけない人間の心を持っておられるのである。そんな紳士が「殺してはないけど犯したことはある」なんて事があり得るのだろうか。否、あり得ない。
 
●ラオウ様は拳法家
一流の拳法家はみだりに性行為をしない。性行為をするということは、「気の関係」で述べたとおり、気を精に変えて放出することだ。だからもし性行為をしたとしても、発射までには至らない。「接して漏らさず」というやつである。早い話が出る寸前で止めるのだ。当然これでは子供は産まれない。気のバランスが崩れると健康を維持できなくなる=体調が万全でなくなる。大事な試合を控えたボクサーがSEXを禁止されるのも当然これが理由である。拳王様の気は莫大な量だから少しくらい出しても、というのは素人の考えだ。気が多かろうが少なかろうが万全でないものは万全でないのだ。相手はあのケンシロウである。少しの体調変化とて許されるものではない。ただ、ラオウ様はユリアに気を与えた時点で万全ではなくなった。この後でならまあ「どうせ万全じゃないから」という考えでそういう行為に及ばれる可能性がないこともない。が、やはり病を知った後では「気の関係」で述べたとおり、ユリアに対しては性行為は出来ないのである。
 
●フドウ戦前にリュウの存在は確認されてい
実はこれが一番「南斗の城〜練気闘座間」でのユリア母親説の否定になるかもしれない。
バラン戦の時にケンシロウはこう言っている。
「ラオウがお前を切り捨てたのは、おまえの中に自分と同じ弱さを見たからだ。ラオウもまたおのれの子リュウを捨てることも忘れることも出来なかった」
つまりこの頃(バラン切り捨て時)既にラオウ様はリュウの存在を知っていたということだ。生まれていると断言しても良いが、まあ百歩譲って「受精確認」で勘弁しておこう。
ラオウ様が最後に部下を連れて行進したのは、フドウの元へと訪れるときである。この条件で「南斗の城〜練気闘座間」にラオウ様がユリアの受胎を確認するには、南斗の城から帰ってきてからフドウの元へと訪れるまでに、ユリアを犯し、妊娠を確認しなければ駄目なのである。これは非常に厳しい。フドウの元へユリアがさらわれた報が入れられたとの同時にラオウ様が到着していることから考えても、ラオウ様の行動が機敏であったことが伺える。流石に犯す時間はあっても受胎まで確認することは出来まい。更に自動的にフドウ戦以後の受胎は可能性ゼロとなるわけだ。
 
 
以上で南斗城〜練気闘座間の否定は終わり。バランの項でこれはほぼカンペキに否定できたのでは無いかという自身はある。続いてケンとユリアが旅立つ前(シンにユリアが拐われる前)にユリアがリュウを産んでいた場合の否定。これはもう言ってる傍から無理があるのだが、一応全ての可能性を潰しておく。
 
●年齢がおかしい
ユリアがシンに拐われたときにリュウが0〜1歳だとしてもその後シンにリベンジするまで1年、ラオウ様倒すまで2,3年。その後ケンが大人になったリン達に会うまでに6〜8年、修羅の国に渡ったりなんなりで1〜2年。トータルすると初登場時のリュウの年齢は約13歳〜15歳くらいにはなっていないとおかしい。物語が進むと共にリュウは多少成長していっているが、初登場時の姿はどう見ても8歳がいいところである。とても中学生には見えない。
 
●南斗の城にて初めてユリアを我が物に
ユリアに扮したトウを目の前にしたとき、ラオウ様は「永かった・・・あの日あの時お前がおれの心に焼き付いてから・・・」とおっしゃっておられる。つまりあの時(リュウケンにやられたラオウ様をユリアが癒したとき)からこの瞬間まで、ラオウ様はユリアを我が物に出来ていないということだ。子供を産ませたという行為は「我が物にする」という行為では達成されないのか?んなばかな。
 
●ラオウ様がケンシロウにリュウを預けた?
ケンシロウとリセキの会話から考えるに、ケンはまだ乳を吸う様な赤子のリュウをリセキに託している。つまりリセキに会う前、ケンシロウは誰かに産まれて間もないリュウの育児を任されていたのだ。
ラオウ様死後にこういう状態になったのなら話は分かる。父ラオウが居ないのだから、兄弟であるケンシロウにその役目が回ってきてもおかしくない。しかしユリアと旅立つ前の状況では不自然すぎる。ラオウ様がケンシロウにリュウの育児を頼むわけがない。ケンシロウだって引き受けるわけがない。
 
●普通に考えても
ユリアとの旅立ちの前にリュウが産まれていたのだとしたら、ケンは物語の冒頭からリュウのことを知っていたということになる。もしそうなら、ケンシロウは劇中にてラオウ様にもっと変わった接し方をしていたのではないか?それ以前にはらまされた時点で鬼のように怒っているのが普通だ。ユリアを拐ったシンと同等、もしくはそれ以上怒っていても不思議ではない。それなのにあんな幸せな顔で犯された女と共に旅に出れるかね。「産まれてしまったものは仕方がない」とでも思っていたというのか。
ラオウ様だってもう既にユリアに子を産ませていたのなら、そんなに目を血走らせてユリアを奪いには来ぬだろう。これ以上何を望むというのか。まだユリアを我が物にしていないからこそあれだけ疾風となって駆けたのだ。
 
●ユリアのことを話さないのは何故?
これはリュウの生まれた時期とかは関係は無い否定だ。ケンシロウはリュウとの旅の途中、父ラオウの偉大さを頻繁に話して聞かせていた。だが母の話はしたことがない。もし母がユリアだとすれば、ケンはきっと母ユリアのこともリュウに話していただろう。確かに父ラオウは素晴らしい人だったが、母ユリアも自らが愛した素晴らしい女性である。話さない理由がない。「お前は最強の男と最高のの女から産まれた子供だ」と言い聞かせた方が尚良い。なのに母のことを話していないと言うことは、やはりリュウの母はケンシロウが知らぬ人物なのではないだろうか。
 
 
とまあいろいろ羅列してみたが、これだけ挙げても完全に100%否定できたという自信は無い。可能性をゼロに出来ねば完全否定論とは言えない。だがこれだけは覚えていてほしい。ユリアがリュウの母だと信じている者にとって、拳王様は嫌がるユリアを無理矢理犯したゲスな強姦魔なのである。そういう目で北斗を見ることが果たして原哲夫氏や武論尊氏の本意なのかどうかは自分で考えるがよろしかろう。ラオウ様を尊敬する私にとって、リュウの母がユリアであってはならぬのだ。
 
っていうか、もうレイナでよくね?