「ロシア研究ノート」

 

 本コーナーでは、 政治・経済情勢の注目トピックス、現地マスコミの論評・分析、気になった話題などなど、ロシアに関する最新情報を掲載します。2010年に「INSIDE RUSSIA」としてスタートしましたが、2011年1月にリニューアルしました。

 

(2011年1月)

 

 

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No.0123:2011年12月31日:ロシアで有料テレビが急激に普及

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No.0122:2011年11月30日:ロシア市場でのiPhone 4Sの見通し

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No.0121:2011年11月30日:ロシアのWTO加盟で何がどう変わる

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No.0120:2011年11月30日:ユーラシア経済委員会の概要

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No.0119:2011年11月27日:選挙目当てのユーラシア統合

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No.0118:2011年11月22日:WTO加盟でハイテク製品関税引き下げ

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No.0117:2011年10月20日:ユーラシア経済共同体は2015年までに創設

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No.0116:2011年10月20日:キルギスの関税同盟加盟に向けた動き

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No.0115:2011年10月20日:拡大する関税同盟

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No.0114:2011年10月15日:シェレメチェヴォ空港がスカイチーム専用に

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No.0113:2011年10月14日:関税同盟で靴の輸入関税引き上げの動き

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No.0112:2011年10月1日:対外関係に大きな影響なし

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No.0111:2011年9月30日:ロシアでも景況感が悪化

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No.0110:2011年9月30日:ヤンデックスが米国の検索市場に進出

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No.0109:2011年9月30日:ロシア国民の宗教事情

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No.0108:2011年9月29日:プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(I.ブーニン)

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No.0107:2011年9月29日:プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(A.マカルキン)

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No.0106:2011年9月28日:プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(M.レミゾフ)

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No.0105:2011年9月28日:プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(V.フョードロフ)

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No.0104:2011年9月6日:Mヴィデオとエルドラドが合併へ

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No.0103:2011年9月2日:ガスでベラルーシとウクライナを揺さぶるロシア

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No.0102:2011年8月29日:ソ連映画ばかり観るロシア国民

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No.0101:2011年8月18日:トリヤッチ特区への入居広がらず

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No.0100:2011年8月18日:プスコフ州に工業生産特区

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No.0099:2011年8月18日:ロシア経済特区の新たな動き

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No.0098:2011年8月17日:ロシアで電子ブックリーダーの販売急増

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No.0097:2011年8月4日:各連邦管区に投資問題担当の大統領代表を配置

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No.0096:2011年8月2日:戦略イニシアティブ庁のその後

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No.0095:2011年8月1日:ロシアのFDIデータ、中銀に一本化へ

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No.0094:2011年7月30日:テフノプロムエクスポルトの株を放出

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No.0093:2011年7月27日:ペテルブルグ経済フォーラム:イノベーション分野の成果

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No.0092:2011年7月26日:ロステフノロギーとAvtoVAZ

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No.0091:2011年7月16日:ロステフノロギーを「開発公社」に転換へ

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No.0090:2011年7月13日:ロシアで相次ぐ大事故

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No.0089:2011年7月2日:モスクワの金融センターは世界68位

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No.0088:2011年6月30日:メドヴェージェフ予算教書の12ポイント

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No.0087:2011年6月30日:アルメニアにとって関税同盟は無意味

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No.0086:2011年6月29日:モスクワ新都心+金融センター構想、是か非か

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No.0085:2011年6月28日:関税同盟で関税の配分をめぐって悶着

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No.0084:2011年6月28日:アエロフロートがスホイ・スーパージェットを調達

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No.0083:2011年6月28日:メドヴェージェフ大統領、「国際金融センターは最優先事項」

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No.0082:2011年6月28日:マトヴィエンコ市長を上院議長に祭り上げか

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No.0081:2011年6月26日:モスクワ国際金融センターのメリット

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No.0080:2011年6月23日:キルギス、タジクが関税同盟加盟申請

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No.0079:2011年6月22日:クドリン副首相・蔵相が軍事費拡大を批判

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No.0078:2011年6月20日:メドヴェージェフ大統領、首都機能の郊外移転提唱

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No.0077:2011年6月20日:経済フォーラムにおけるメドヴェージェフ演説

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No.0076:2011年6月18日:ペテルブルグの開発プロジェクトは軒並み足踏み

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No.0075:2011年6月4日:メドヴェージェフのお株を奪うプーチン

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No.0074:2011年5月26日:「プーチン大統領・クドリン首相」で株価はどうなる?

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No.0073:2011年5月26日:メドヴェージェフ大統領の800人記者会見

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No.0072:2011年5月10日:プーチン報告に関する批判的論評

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No.0071:2011年4月5日:医薬品産業クラスターを形成するペテルブルグ

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No.0070:2011年4月4日:スカニアがペテルブルグでトラック生産

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No.0069:2011年4月3日:ペテルブルグが産業発展コンセプトを策定

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No.0068:2011年4月2日:ペテルブルグでプレス部品工場稼働

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No.0067:2011年4月2日:ペテルブルグにヒュンダイのサプライヤー団地

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No.0066:2011年3月23日:北カフカスの観光特区で新たな動き

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No.0065:2011年3月21日:ロシアの10大イノベーション企業

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No.0064:2011年3月14日:ロシア、非常事態省の部隊を日本に派遣

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No.0063:2011年3月13日:日本の大震災を受けたプーチン内閣の対応

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No.0062:2011年2月19日:ヤンデックスとカスペルスキーが世界的革新企業に

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No.0061:2011年2月19日:工業団地を政策として制定する動き

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No.0060:2011年2月1日:民族対立の背景としてのモスクワ不法滞在外国人

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No.0059:2011年1月31日:メドヴェージェフ大統領のダボス演説

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No.0058:2011年1月21日:スヴェルドロフスク州に特区「チタンバレー」

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No.0057:2011年1月21日:ムルマンスク港湾特区の続報

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No.0056:2011年1月20日:企業城下町で20万の雇用創出

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No.0055:2011年1月9日:スコルコヴォ、これだけの疑問

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No.0054:2011年1月8日:ロシア政府、イノベーションに4年で2,336億ルーブル支出

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No.0053:2011年1月3日:スコルコヴォの建設費は1,000億〜1,200億ルーブル

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No.0052:2011年1月3日:ロシアの航空会社ランキング

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No.0051:2011年1月2日:2010年のロシア総合10大ニュース

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No.0050:2011年1月2日:ノーヴォスチが選ぶ2010年の10大国際ニュース

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No.0049:2011年1月2日:2010年のロシア・スポーツ10大ニュース

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No.0048:2011年1月2日:2010年のロシア地域10大ニュース

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No.0047:2011年1月2日:2010年のロシア社会10大ニュース

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No.0046:2011年1月2日:2010年のロシア政治10大ニュース

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No.0045:2011年1月2日:2010年のロシア経済10大ニュース

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No.0044:2011年1月2日:ロシア・プレミアリーグに忍び寄る経営危機

 

バックナンバー 2010年

No.0123 2011年12月31日

 大晦日の夜くらい、紅白でも観てのんびりしようかなと思ったが、ノリがキツすぎて付いて行けず、他のTV番組も目ぼしいものはないので、自分らしくHPの更新をして過ごすことにした。

 これはしばらく前の記事だが、20111017-23日付(No.41)の『コメルサント・ジェーニギ』誌に、ロシアの有料テレビ放送に関する興味深い話が載っていた。私はこれまで、ロシアの地上波テレビ放送がデジタル化されるのはまだ先だし、有料の多チャンネル衛星放送のNTV-PLUSはデジタルだけど加入者は少ないしで、いずれにしてもロシアのテレビ視聴環境は依然として圧倒的にアナログだと理解していた。ところが、この『コメルサント・ジェーニギ』の記事によると、最近はだいぶ様相が変わってきているようなのだ。

 この記事によると、2011年半ば時点で、ロシアにおける有料テレビ(ケーブルテレビ、衛星放送、IPテレビ)の世帯普及率は44.5%に上っており、前年の同じ時期から15%ポイント上昇したという。金額ベースの市場規模は、2011年上半期の半年間で190億ルーブルに達し、これは前年同期比20%増である。

 この市場拡大は、「国民衛星会社」が展開する衛星放送サービス「トリコロールTVの躍進に負うところが大きい。同社の売上高は2009年の23.3億ルーブルから2010年には33.3億ルーブルに増大した。価格破壊で業界に殴り込みをかけた同社は、2011年上半期の時点で約600万件の加入者を抱え、業界首位に躍り出ている。以下は、2位がロステレコム(IP、ケーブル):550万件、3位がMTSIP、ケーブル):264万件、4位がER-テレコム(ケーブル):141万件、5位がアカド(ケーブル):106万件となっている。トリコロールTVは全面的にデジタルなのが特徴で、デジタル放送業者のなかでは圧倒的なシェアを占める。デジタルの2位は加入件数65万件のNTV-PLUS(衛星放送)だが、同社は客単価がはるかに高いので、実は売上高はトリコロールよりもNTV-PLUSの方が大きい。

 等々、この記事は色々なデータを挙げて、ロシアの有料テレビ放送事情を紹介しているが、以下省略。私も、最近のロシア出張で、トリコロールTVの広告を見かけ、「これは一体何だろう?」と興味はもっていたが、ここまで急成長している業者とは知らなかった。


ロシア市場でのiPhone 4Sの見通し

No.0122 2011年11月30日

 20111130日付の『コメルサント』紙が、近くロシアで発売されるiPhone 4Sの見通しにつき、以下のとおり報じている。

 iPhone 4Sは、ロシア市場では、本年12月中にも発売される見通し。先代のiPhone 4はロシアでは2010年秋に発売され、現在re:Storeにおけるその価格は、32GB3.7万ルーブル、16GB3.1万ルーブルとなっている(64GBは発売されなかった)。2011年1月から9月までに、MTSとヴィンペルコムは約10万台のiPhone 4を販売した。新しいiPhone 4Sの小売価格は、3.5万〜4.5万ルーブルとなろう(4.5万ルーブルは64GB)。

 iPhone 4Sに関しても、代表的な輸入業者となるのはMTSとヴィンペルコムであり、発注の20%を占める。すべての小売チェーンでiPhone 4Sは品薄になると予想される。ゆえに、ヴィンペルコムは初入荷分は、自らの系列であるエヴロセーチに供給することになる(同社の株の49.9%を保有)。同様に、MTSも、系列のRTKへの供給を優先する。


ロシアのWTO加盟で何がどう変わる

No.0121 2011年11月30日

 20111121日付の『ベラルーシ人と市場』紙(No.44)で、T.マネノク記者が、ロシアのWTO加盟で具体的に何がどう変わるのか、そして関税同盟にはどのような影響があるのかを、解説している。ベラルーシの新聞でロシアのことを調べるというのも妙だが、良くまとまった記事なので、以下要旨をまとめておく。

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 1216日に開催される閣僚会合でロシアのWTO加盟が最終的に決定されるが、否決された前例はなく、多分に儀式的な手続き。それを受け、ロシアは220日以内に批准手続きを完了する。かくして、遅くとも2012年7月23日までには、ロシアはWTOの正式メンバーとなる。

 ロシアのWTO加盟交渉団の議長を務めたM.メドヴェトコフによれば、ロシアがWTOに加盟した時点で、関税同盟の共通関税率は、ロシアがWTO加盟交渉で合意した義務に沿って変更される。

 その際に、関税同盟には、以下の2つの選択肢がある。加盟の最初の年に適用される関税率に自動的に一体化するか、あるいは特定の品目についてはより低い税率を適用するか(なぜなら一部の品目についてはWTO加盟に際して課せられた義務よりも現状で低い税率を適用しているので)である。

 全体として、90%以上の品目で、ロシアがWTOに加盟した日から、現行の関税同盟の関税率と同等かそれよりも高い税率が設定されうる。

 一方、ロシアが2009年から一部の品目に課しているいわゆる危機対策関税は、ロシアがWTOに加盟した時点で引き下げられる。具体的には、新車の乗用車、中古の乗用車、コンバイン、乳製品、鉄鋼製品などである。

 それ以外のすべての品目は、ロシアがWTOに加盟した最初の1年間は、関税率が引き下げられることはない。最初に関税が引き下げられるのは、早くとも加盟から1年後である。その後の関税の引き下げは、最初の引き下げから1年以内ごとに実施されていく。

 新車の乗用車は、ロシアがWTOに加盟した時点で、危機対策関税の30%を25%に引き下げ、その後3年間はそのまま、その後4年間で毎年ほぼ2.5%ずつ引き下げていき、加盟から7年後に15%となる。

 3〜7年の中古車、5〜7年の中古車に関しても、ロシアがWTOに加盟した時点で、現状の税率から25%に引き下げられ、その後5年間はそのまま、その後2年をかけて20%にまで引き下げる。

 ロシアの20082010年の平均輸入関税率は、10.3%であったと推計されている。うち、農業製品が15.6%、工業製品が9.4%であった。ロシアのWTO加盟の時点で、平均関税率は11.8%に上がる可能性がある(農業製品15.2%、工業製品11.2%)。その後、移行期間を経て、ロシアは税率を引き下げていく。通常、移行期間は2〜3年で、最もセンシティブな品目については5〜7年である。この移行期間を経ると、ロシアの平均関税率は7.1%に低下する(農業製品11.3%、工業製品6.4%)。

 WTOの義務には、700品目の輸出関税に関するものもある。それらは3つのグループに分かれる。第1のグループはエネルギーであり、ロシアは一定の公式にもとづいて輸出関税を課しているが、ロシアはそれを今後も無期限に適用できる。原油、石油製品、30%の天然ガスの輸出関税も、公式が維持される。第2に、木材に関しては、税率割当が制定される(注:意味不明)。第3に、ロシアが輸出関税の引き下げ義務を負っている品目グループがある。ニッケルは4年間で5%から0%へ、銅は10%から0%へとなる。銅屑に関しては、ロシアは10%の税率を制定しうるが、4年間でゼロにしなければならない。

 食肉の輸入に関し、冷凍牛肉に関しては年間53万tの、生鮮牛肉に関しては4万tの割当が設けられる。割当の枠内では輸入関税は15%、それを超えると55%となる。牛肉の割当廃止の期限は定められていないが、仮にロシアが自主的に割当を廃止したら、税率は27.5%となる。一方、豚肉の輸入割当は40万tで、それ以内は関税ゼロ、それを超えると65%となる。2020年からは豚肉の輸入割当が廃止され、ロシアは25%の一本化された税率を導入する。鳥肉についてもほぼ同様。

 ロシアは、2013年7月1日から、トランジット貨物の鉄道輸送料金を、WTOのルールに沿って課さなければならない。つまり、同じ品目の同じ距離の国内輸送料金と同等の料金を設定しなければならないということである。

 (自動車の工業アセンブリ措置についての解説も掲げられているが、専門的な話なので、省略。)


ユーラシア経済委員会の概要

No.0120 2011年11月30日

 今般、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの3国間で設立が決まった「ユーラシア経済委員会」につき、20111121日付の『ベラルーシ人と市場』紙(No.44)でT.マネノク記者が解説しているので、その要旨を以下のとおり整理しておく。

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 従来の関税同盟委員会は、2012年7月1日をもって活動を停止する。今後はユーラシア経済委員会が、関税同盟および共通経済空間の枠内でのすべての統合プロセスを調整する。今回、3大統領は委員会の活動規則にも署名を行った。

 シュヴァロフ・ロシア第一副首相は委員会の性格に関し、「国益を超越して存在する」と説明した。ただ、現在の関税同盟委員会にしても、基本的には超国家的な機関である。むろん、関税同盟委員会の権限が小さいのに対し、ユーラシア経済委員会は共通経済空間の主要な指導機関であり、前者とは根本的に異なる。

 委員会は、評議会、参与会という2つのレベルから成る。評議会には3国それぞれの副首相が参加し、関税同盟と共通経済空間の統合過程の全般的な統制に当たる。一方、日常的な業務を担当するのが参与会であり、各国から3名ずつの計9名からなる。参与は4年の任期で任命されるが、延長も可能。委員会の最高機関は、「最高ユーラシア経済評議会」で、首相および元首のレベルで開催される。

 ユーラシア経済委員会の権限は関税同盟委員会のそれよりもはるかに広い。とくに、ユーラシア経済委員会は部局や諮問機関を設けることができる。また、これまでのように関税問題だけでなく、マクロ経済、競争、エネルギー、通貨政策などでも決定を採択し、国家独占規制や産業・農業・国家調達・運輸・移民・金融市場等々の問題も扱う。さらに、第三国との通商レジームの制定にも当たる。

 合計で委員会には175の権限が委譲される。しかし、18日にナザルバエフ大統領が発言したところによると、3国は一切主権を喪失しない。なぜなら、委員会の決定は全会一致で下されるから、であるという。

 シュヴァロフ第一副首相は、委員会の決定採択方式をどうするか、つまり全会一致にするか、特定多数決にするか、その他の方法にするか、また委員会が下した決定に対する管理をどのようにするかが、最も難問だったと認めた。情報筋によれば、ベラルーシとカザフスタンは「一国一票」という原則を主張した。委員会に関する条約がなるべく早く締結されるよう、結局ロシアが譲歩し、かたくなに主張していた特定多数決の方式を取り下げた(それによればロシアが票の57%を持つことになる)。

 18日にペトリシェンコ・ベラルーシ外務第一次官は、委員会に関する条約ではベラルーシのほぼすべての提案が盛り込まれたと発言した。同第一次官は、センシティブな問題に関してはより高い最高評議会のレベルまで持ち込めることにより、ベラルーシの利益を守ることが条約によって保証された、と喜びを表した。

 ベラルーシを代表して評議会に参加する人物に関しては、ロシアのマスコミで、シドルスキー前首相の名前が挙がっている。

 ロシアはすでに、フリスチェンコ産業・商業相を送り込むことを決めている。また彼は参与会の議長を4年間務めることになっている。これについてナザルバエフ大統領は、2年間のローテーションが望ましいが、最初は軌道に乗せなければならないので4年とすることに同意した、と発言している。フリスチェンコ自身は、3国の統合の原則について、それをWTOおよびEUの規則と調和化することが肝心だと発言している。

 ユーラシア経済委員会のスタッフは1,200名から成る。現在の関税同盟委員会は150名である。委員会の「首都」をどこにするのか、最後まで綱引きがあったが、モスクワとすることで決着した。すでに、モスフィルム通りにある、買い手のついていなかったVTB銀行保有の不動産が、割り当てられている。


選挙目当てのユーラシア統合

No.0119 2011年11月27日

 出張に出かけるバタバタで、取り上げる順番が前後してしまったが、1118日に重要な動きがあった。同日、モスクワに集まったロシア・ベラルーシ・カザフスタンの3大統領が、「共通経済空間」の創設開始を宣言し、「ユーラシア経済委員会」と称する3国の統合機構を立ち上げる条約に調印したものである。本件に関する1119日付『コメルサント』紙の報道振りの要旨を、以下のとおりまとめておく。

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3国は昨日、一気に複数の成功を高らかに謳い上げた。クレムリンに集まったメドヴェージェフ、ルカシェンコ、ナザルバエフの3大統領は、既存の関税同盟を超えて、統合の次の段階である共通経済空間の創設に着手することを宣言した。そしてそれは最終目標ではなく、2015年までにはユーラシア経済連合なる統合体が誕生することになり、昨日の条約調印はそれに向けた第一歩であると3大統領は説明した。

 メドヴェージェフ大統領は、「我々の本日の会合は、今年の重大事件の一つになりうる。我々はユーラシア経済連合の形成に向けたさらなる一歩、きわめて力強い一歩を刻んだ。ユーラシア経済同盟は、疑いなく、我々諸国の未来を決めるものとなる」と述べた。

 もしも3国の議会が条約を年内に批准すれば、早くも2012年1月1日から共通経済空間は稼働を開始する。おそらく3国がそれを滞らせることはなかろう。メドヴェージェフ大統領は昨日中に条約を批准のために下院に送付し、ルカシェンコとナザルバエフもそれにならう立場を示している。

 創設されるユーラシア経済委員会は、3国の副首相によって構成される「評議会」と、3国から3名ずつの代表が参加し9名で構成される「参与会」から成る。委員会は、超国家的で中立的な機構であり、全会一致の原則で決定を下す。参与会については、フリスチェンコ・ロシア産業・商業相が議長を務めることになっている。他のロシアの代表については、現在調整中だが、大臣または次官クラスになる模様。

 委員会がまだ活動していないにもかかわらず、3人の大統領は自画自賛に躍起となった。ルカシェンコは、「もしもロシア指導部がこのような実践的な動きを見せなかったら、この統合構想はずっと構想のままだったかもしれない。今日、それは現実のものとなった。3国はすでに関税同盟を結成しているので、すでに多くの点で現実となっている」と述べた。

 ナザルバエフは、「我々は本日、首脳レベルで、ユーラシア経済評議会の最初の会合を開いている。我々は生みの親として、これを本物の統合機構としていく、旧ソ連で最高レベルの統合、他の国民も参加を望むような最も魅力的なものにしていくという決意で満ち溢れている」と述べた。

 ナザルバエフはさらに、「我々は今日の調印まで、非常に複雑な道を歩んできた。5年前にソチで関税同盟について合意したのだが、たった5年である! EUは、石炭鉄鋼共同体を創設してからここまで、40年かかった。3国のGDPは2兆ドルに迫っている。世界には240に上る統合組織が存在しているが、今や我々の統合体が最も強力で具体的だ」と述べた。

 今日のユーロ圏のような問題に見舞われることはないのかとの質問に、メドヴェージェフは、「我々は開かれた統合体だが、どんな国でも加われるわけではない。加盟にあたってはそのためのロードマップが示され、加盟には1年、2年、3年、10年、15年とかかるかもしれない。EUの経験を加味して、適切に行動していく」と応じた。

 ただ、本紙が得た情報によると、3国大統領は当初、野心的な統合計画を12月の末に発表する予定だった。しかし、「歴史的なサミット」を下院選の前に開催することが、2週間前に決まったというのだ。周知のとおり、下院選ではメドヴェージェフ大統領が統一ロシアの候補者名簿の筆頭に立って直接選挙を戦うことになっている。昨日の公式的な説明では、11月にサミットを開催することはルカシェンコが提案したとされていたが、下院選と無関係であったとは思えない。現にナザルバエフは、「まさにメドヴェージェフ大統領のおかげで、我々は前進できた。来る選挙で、貴殿と統一ロシアの勝利を祈る。ロシア国民も、過去数年の貴殿の活躍をしかるべく評価してほしいものだ」と発言している。


WTO加盟でハイテク製品関税引き下げ

No.0118 2011年11月22日

 こちらのニュースによると、ロシアはWTOに加盟することにより、ハイテク製品に対する輸入関税率を引き下げる義務を負うことになる。それには、モニター、コンピュータ部品、メモリー、固定電話、計算機、集積回路などが含まれる。

 WTO作業部会は、ロシアが加入するに際しての要求事項を取りまとめている。そのなかでロシアは、現在平均5.4%となっているハイテク製品に対する関税を撤廃することを義務付けている。その品目の一覧は、1996年にシンガポールで調印されたIT分野の貿易に関する政府間協定のなかで列挙されている。

 ロシアは協定参加に同意しており、関税撤廃のスケジュールを提出しなければならない。ただ、ロシアはもともと、協定のリストにある多くのリストに関税を課しておらず、完成品のコンピュータ、ハードディスク、デジカメ、エレクトロニクス産業向け設備の多くなどは無税であった。また、現在ではすでに重要性を失っている品目もある。

 これから関税を撤廃しなければならない品目としては、消費者向けでは、モニター、CDおよびメモリー、固定電話機、コピー機およびFAX機、マイクロチップ、メモリーカード、LAN用装置、計算機、電子辞書、テレビアンテナなどがある。法人需要では、プロッター、レジ用機器、集積回路、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ、シリコン、光ファイバーケーブル、テレコム信号伝送・制御用装置、液晶インディケーターなどがある。

 また、ロシアはベラルーシ・カザフスタンと関税同盟を結んだことで2010年から暗号機器の輸入にライセンス制を導入してきたが、ロシアはそれも撤廃することをWTOに約束している。

 関連して、こちらの記事によると、ロシアはWTO加盟から3年間で、コンピュータおよびそのコンポーネントの関税を撤廃しなければならない。経済発展省の文書によれば、家電およびエレクトロニクス製品の関税率は、現行の15%から、7〜9%に下がる。

 ロシア家電協会のA.グシコフ会長は、以下のように述べた。関税率以外にもロジ、為替、部品コストなど様々な要因がからんでくるので、現段階で関税引き下げが最終的な価格にどのように影響してくるかを予想するのは困難。また、引き下げは一気に行われるわけではなく、3年の移行期間が設けられる。販売価格に占める関税の比率は大きいので、全体として家電業界にとってはWTO加盟は朗報である。ただ、すべての品目の関税率を引き下げる必要ははく、冷蔵庫や洗濯機といった大型家電に関しては国内生産を保護するため関税を維持すべきだ。他方、コンピュータおよび同部品、携帯電話に関してはロシアで生産されていないので、家電協会でもその引き下げをずっと主張している。


ユーラシア経済連合は2015年までに創設

No.0117 2011年10月20日

 プーチン首相が新たな統合構想に関する論文を発表するなど、最近『イズベスチヤ』紙が旧ソ連空間の再統合に関する論壇として重要性を増してきた印象がある。で、私が泊っているモスクワのホテルのロビーに、『イズベスチヤ』が無料で置いてあったので、ちょっと目を通してみた。やはり、旧ソ連諸国間の関係に関する記事が充実している印象だ。

 そんなわけで、20111020日付の『イズベスチヤ』紙に載った、「ユーラシア経済連合は2015年までに創設が可能」と題する記事を、気になった部分だけ抜粋してみる。

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 ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの首相は、当該の宣言に調印し、ユーラシア経済連合を創設する意向を文書で示した。プーチン首相は本紙の質問に答え、その設立作業が関税同盟の際と同様に集中的に進めば、2015年にも設立することが可能だと述べた。首相によれば、作業の過程で、大量の法令を採択し、既存の法令に修正を加えなければならない。新たな統合の枠内で、当事国はより深遠な統合を継続し、ビザ体制も簡略化しなければならない。ただし、当事国は、あまりに密接な統合を志向した過去の過ちを繰り返すことはしない、という。

 首相たちは、現在苦境に立たされているEUを、引き合いに出した。カザフのマシモフ首相は、EUの経験からも、先走りすぎてはだめであり、実行不可能な義務を負ってはならないと、本紙に語った。

 プーチン首相は、ルーブルの将来について、楽観的な見通しを示した。現在ベラルーシとの非現金決済はルーブルで行われているし、今度はウクライナが相互決済にルーブルをより広範に使用することを提起している。現在、ユーロからは離脱する国が出そうな雲行きだが、ユーラシア経済連合ではそれは許容できない。

 サンクトペテルブルグでもう一つのテーマとなったのが、関税同盟にキルギスが加盟することだった。次はタジキスタンの加盟が見込まれている。ただ、タジクは現在の関税同盟諸国との国境を有していないので、タジクは自国と国境を接するキルギスが関税同盟に最終的に加盟するのを待つ必要がある。

 マシモフ・カザフ首相は、キルギスの関税同盟加盟はカザフにとってデリケートであると述べた。これまで、キルギスとの間では国境らしきものはなかったのだが、関税同盟の加盟国として対キルギス国境の整備を迫られた。これによりキルギス企業が影響を受け、クレームが来ているのだという。

 プーチン首相はウクライナに関して、ウクライナの関税同盟加盟はウクライナ国民の主権的な選択であるとする一方、実利的な観点からは加盟することがウクライナにとって有利であると指摘した。いずれかの時点でウクライナが冷静な判断を下せるようになり、それが有益だという結論になれば、我々は直接対話を開始する用意があると、プーチンは述べた。

 プーチン首相は、ルカシェンコ・ベラルーシ大統領が『イズベスチヤ』に寄せた旧ソ連空間の統合に関する論文を読んだとしたうえで、その中身や提案に賛成であると述べた。また、プーチンは、確信的な無神論者だったルカシェンコが論文のなかで聖書を引用していたことを歓迎し、両国は経済だけでなく精神面でも接近しつつあると述べた。

 プーチン首相によれば、ガスプロムはベラルーシとのガス交渉を終え、2012年にベラルーシはロシアのガスを「統合割引」を考慮した新しい価格で受け取ることになる。ただし、今後は段階的に引き上げられることになり、最終的な決着は両大統領間で図られる、とのことである。


キルギスの関税同盟加盟に向けた動き

No.0116 2011年10月20日

 これはロシアそのものの話題ではないが、ロシアを中心とした関税同盟の動きなので、ここに載せる。20111020日付『モスクワ・ニュース』紙がキルギスの関税同盟加盟に関し報じているので、以下のとおり要旨をまとめておく。関税同盟の話ばかりで恐縮だが、今年度私は、関税同盟の調査事業を実施しているので。

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 キルギスの関税同盟加入につき専門家は、経済的というよりは政治的な動きであるとしている。キルギスにも経済的ポテンシャルはあるのだが、政治的安定なくしてそれを実現することはできない。

 旧ソ連空間の統合は、現首相で、次期大統領候補であるプーチン氏の活動において、重点分野となった。『イズベスチヤ』紙上でユーラシア連合の創設構想を発表してから2週間後、ロシアはCISの多数の国と自由貿易圏について合意し、またキルギスは関税同盟に加入する意向を表明した。もっとも、その2つとも、多分に暫定的な合意である。

 キルギスの加盟に向けた作業が、すぐにでも進展すると期待するわけにはいかない。今回の会合の2日前、ババノフ・キルギス首相代行は、キルギスは2012年初頭までに関税同盟に加入する用意はできていないし、関税同盟の側も我が国を受け入れる用意はできていないと発言した。

 専門家らによると、加盟のためには解決しなければならない問題がいくつかある。キルギスが最初に加盟を希望したのは2011年春だったが、当時浮上した問題は、何一つ解決されていない。最大の問題は、関税同盟をキルギスにまで拡大すると、同盟の南部国境が管理困難になることである。現在はカザフが自国の国境をコントロールできているのに対し、キルギスの場合ははるかに困難である。これにより、過激派勢力や密輸品がロシアに入りこむ恐れが出てくると、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所のアレクサンンドル・クルィロフは指摘する。理論的にはそれへの対処法も存在し、それはキルギスとの国境に特別な通過体制を敷くことだが、それでは完全な関税同盟ではなくなってしまう。

 もう一つ生じうる技術的な問題は、キルギスがWTOの加盟国であることである。キルギスは、自らがコミットした関税率を、見直さなければならなくなると考えられる。

 ただ、政治情勢研究センターのドミトリー・アブザロフによれば、最大のネックは、キルギスの政治情勢である。一昨年の革命後、秩序が回復されておらず、協定を結ぼうにも、常に交渉できる相手がいない状態である。ただ、政治的に見れば、キルギスのロシアへの接近の利益はあり、たとえばカントなどキルギス国内の軍事基地の存在がある。アブザロフによれば、キルギスの経済的価値は過小評価されており、労働力は安いし、消費需要も増大する可能性がある。電力、機械関係の企業にとっても、水力発電などの分野で、ポテンシャルがある。

 専門家らによれば、作業が理想的に進んでも、キルギスが完全に関税同盟に加われるのは、2012年後半になる。現在、キルギスはロシアの貿易相手国として1%強のシェアしかしめていないが、キルギスの側から見ればロシアは貿易全体の4分の1を占める相手国である。

 昨日プーチンは、合意されたCIS自由貿易協定に関してもコメントした。彼は、自由貿易圏が一連の例外を伴っていることを認め、たとえばロシアは重要な予算財源であるエネルギー、金属等への輸出関税を保持することを主張した。まさにそれゆえに、アゼルバイジャン、トルクメニスタン、ウズベキスタンといった国は協定に加わっていないが、彼らにもまだ年末までの時間が残されている。

 高いレベルの経済統合だけでなく、おそらくは国境管理も廃止することになるユーラシア連合に関して言えば、その創設が実現するのは早くて2015年だろうと、プーチンは述べた。


拡大する関税同盟

No.0115 2011年10月20日

 ロシア・ベラルーシ・カザフスタンによる関税同盟が、地理的に拡大する方向に向かっている。

 こちらの記事によると、1018日にサンクトペテルブルグで開催されたユーラシア経済共同体の首相会合で、キルギスが関税同盟に加盟する方針が決定された。キルギスのO.ババノフ首相代行が明らかにしたもので、加盟に向けた具体的な手続きを詰めることになったという。

 一方、まだ具体性には欠けるが、こちらのサイトによると、モルドバにおいても、同国の関税同盟加入の是非が、争点として浮上しつつあるようだ。加入を主張しているのはヴォローニン元大統領の共産党で、通商障壁の撤廃、安いガス、ロシアがモルドバ国民の労働移民を受け入れることの保証、投資の受入可能性といった経済的メリットに加え、沿ドニエストル問題の解決が促されるとまで主張しているという。一部の専門家は、共産党は野党陣営の中でも埋没しつつあり、来たる選挙をにらんで有権者の歓心を買いうる同党独自の主張として、関税同盟加入を言い出した、としている。しかし、モルドバでは(ルーマニアとは一線を画す)モルドバ独自のナショナリズムが定着しつつあり、モルドバの独自性を唱えるためにはロシアとの関係を重視することが不可避で、かつてヴォローニンがロシア・ベラルーシ連合国家への加入を唱えながら政権に就くと反故にしたのとは異なり、今度はヴォローニンは本気でその方向性を打ち出さざるをえなくなるかもしれないという分析が、この記事では示されている。

 以上は小国2ヵ国の動きだが、ウクライナは問題が大きすぎるので、別途ウクライナのコーナーで扱う。


シェレメチェヴォ空港がスカイチーム専用に

No.0114 2011年10月15日

 空港や航空会社の話題は、専門知識もないのに、出張の際に利用するので身近に感じ、ニュースなどを目にするとつい取り上げたくなる。

 それで、1013日付のロシア『コメルサント』紙に、標記のような記事が出ていたので、その要旨を整理しておく。

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 アエロフロートは、またもや、国から特権を獲得した。近く、シェレメチェヴォ空港とヴヌコヴォ空港が、会社として統合することになっている。それを受け、2012年夏から、アエロフロートと、同社が加入する航空連合「スカイチーム」が、シェレメチェヴォ空港の利用を独占できることになったのである。スカイチーム以外の航空会社は、現在シェレメチェヴォの発着便の25%を占めているが、彼らはヴヌコヴォ空港に移転することになる。現在、シェレメチェヴォの旅客数の約10%を占めているトランスアエロは、これに反対し、交渉にすら応じない構えである。

 スカイチームのメンバーは、アエロフロートの他に、アエロメヒコ、エアーヨーロッパ、エールフランス、アチタリア、チャイナ・エアーラインズ(台湾)、中国東方航空、中国南方航空、チェコエアー、デルタ、ケニヤエアーウェイズ、KLM、大韓航空、TAROM、ベトナムエアーラインズである。

 かくして、運輸省は、アエロフロートの要望をかなえたわけである。3月にアエロフロートのV.サヴェリエフ社長がプーチン首相に陳情し、シェレメチェヴォ空港が過度に混雑しており、これがアエロフロートの発展を妨げていると訴えているとして、スカイチーム以外の航空会社をシェレメチェヴォから締め出すよう求めていた。

 追い出される形の航空会社は反発しており、とくにトランスアエロでは本年4月末に戦略的協力関係に関する覚書をおシェレメチェヴォと結んだばかりだと訴えている。この文書によれば、トランスアエロはシェレメチェヴォでの旅客取扱量を年間10%拡大していくことになっていた。トランスアエロでは2011年にシェレメチェヴォで200万人の旅客を処理する計画で、これは空港の旅客取扱量の10%に相当する。一方、アエロフロートとその子会社の旅客数は、全体の75%を占める(他のスカイチームの占める比率は不明)。

 シェレメチェヴォでは、移転の必要性は疑いの余地がないとしている。2012年夏には滑走路の処理能力が限界に達し、同年夏にはさらに混雑が増して、何らかの手を打たないと航空会社が互いに発展を抑制する状況になるという。アエロフロートによれば、運輸省はこれまで移転に反対してきたが、もはや他には方法がなくなった。

 ヴヌコヴォとシェレメチェヴォの統合は、2012年夏には始まる予定。ヴヌコヴォの共同オーナーの一人であるV.ヴァンツェフは、モスクワ市行政府と連邦政府はヴヌコヴォの株式の移転方式に関し合意している。モスクワ市はヴヌコヴォに対し150億ルーブルの現金と300億ルーブルの有価証券を受け取ることになり、当該の出資は2011年の連邦予算の修正に盛り込まれている。本件が遅延するとしたら、それはシェレメチェヴォ空港本体と、(アエロフロート、VTBVEBが保有する)シェレメチェヴォDターミナルの統合が遅れた場合であると、ヴァンツェフは述べた。


関税同盟で靴の輸入関税引き上げの動き

No.0113 2011年10月14日

 ロシアの『RBCデイリー』紙の20111012日号に、標記のような記事が出ているので、その内容を簡単にメモしておく。

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 ベラルーシが関税同盟に、革靴の輸入関税を10%から20%に引き上げることを提案していることが明らかになった。ロシアの靴生産者は、ベラルーシの提案を支持し、それにより自分たちの国内市場における競争力が高まることに期待を寄せている。それに対し、輸入業者や小売業者は、関税引き上げは価格の高騰と製品の多様性が失われることにつながるとして、猛反対している。1017日に関税同盟委員会が本件を検討することになっている。

 ベラルーシ外務省が2011年8月25日付で関税同盟のグラジエフ書記局長に宛てた書簡では、関税率10%から20%への引き上げに関し、次のような根拠が示されている。すなわち、2011年第1四半期に革靴の輸入は種類によっては10倍も増大しており、輸入製品の価格は関税同盟諸国の平均価格よりも低く、地元業者を駆逐している、というものである。

 公式統計によれば、2010年にロシアに輸入された靴は1億3,980万足で、ロシアの国内生産は6,310万足であった。しかし、実際にはロシアの靴の市場規模は5.7億足であり、市場の90%近くは輸入によって満たされ、うち半分は非合法に輸入された商品によって占められている。国内生産者のシェアは3%にすぎない(注:全体に計算が合わないような気がするが)。こうした状況ゆえに、ロシア皮革・製靴業者同盟は201011月、本件が検討された際に、ベラルーシの提案を支持した。

 しかし、EU2006年に靴の関税を引き上げ、その際に念頭にあった中国やベトナムからの輸入は確かに減ったものの、マカオ、マレーシア、カンボジアといった国からの非合法な輸入が増え、結局値上がりを招いただけで、EU2010年に関税を元に戻すということもあったという。


対外関係に大きな影響なし

No.0112 2011年10月1日

 こちらのサイトで、A.メドヴェージェフという専門家が、プーチンの大統領復帰が対外関係に及ぼす影響につき分析しているので、その大意をまとめておく。大統領と名前が同じだが、もちろん何の関係もない人だ。

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 世界のリーダーたちは、大多数がプーチン復帰を織り込み済みだったので、今回の決定を冷静に受け止めた。例外は、ロシアに敵対する形で世界共同体を構築しようとしていた一部の国だけである。

 米国家安全保障会議のトミー・ヴィトル報道官は、「米国はいかなるロシアの大統領とも仕事を続ける用意がある。なぜならそれが両国の利益だけでなく、全世界の利益に適うからだ」と述べた。ドイツのメルケル首相も、ロシアのいかなる大統領とも協力する用意があるという立場を示した。英国の反応は、現在のところ非公式だが、冷ややかなものだった。BBCは、「プーチン大統領の決定の影響は、全世界にとっても明らかである。西側の指導者たちは、以前プーチンと協力するのに苦労したが、またその苦労をせざるをえなくなった」と伝えた。

 外国政治家の冷静な反応は、驚くに値しない。第1に、プーチンのクレムリン復帰は織り込み済みであり、ロシア国内以上にそのことを想定していた。第2に、西側のマスコミや政治家のコメントから察するに、ロシアも世界危機の影響を被ることになり、それによりプーチン持ち前のアグレッシブさが抑えられるのではないかという読みがある。第3に、今後ロシアの外交政策の舵をとる人と今のうちから対立しても始まらないからである。

 ただ、すでにロシアとの関係が悪く、失うものがほとんどないような国は、今回の決定についてきわめて否定的な反応を示している。リトアニアのA.クビリュス首相は、ロシアの近代化や刷新は望めなくなったという見方を示しているし、グルジアの政界ではプーチン氏の復活で再び軍事衝突の危険性があるから、それから逃れるためにEUNATOへの統合を加速しなければならないという意見が支配的である。

 メドヴェージェフ大統領の残り7ヵ月の任期に関して言えば、退任が決まったことで、外交政策面の可能性が削がれることが考えられる。メドヴェージェフがレームダック化したあとの世界との接触は、有効性がだいぶ低まる。それでなくても、これまでも完全な外交の主体とは必ずしも見なされていなかったが、さらにステータスが下がることになる。


ロシアでも景況感が悪化

No.0111 2011年9月30日

 こちらの記事によると、ロシアでも経済の景況感はにわかに悪化しつつあるようだ。

 これによれば、実業ロシアのN.オスタルコフ副会長は、「ここ1年、景況感指数は低下している」と述べている。その原因は、増税、公共料金の値上げ、需要の低下、世界経済危機第二波の影響などである。

 「ロシアの支柱」のS.ゼリョノフも、ロシアの企業家たちは不確実性に不安を抱いていると指摘。増税をめぐってクドリンとドヴォルコヴィチが論争をしたりという状況が、経済環境を神経質なものにしている。懸念の材料となっているのは主に、金融危機の第二波、政権幹部の交代である、という。

 鉱工業の指標も、ロシアの企業家たちの不安を裏付けている。産業・商業省のイニシアティブで自然独占問題研究所が作成している指数によれば、2008年危機以降の鉱工業生産の回復は一段落し、今後の成長のための牽引車を欠いている。2011年通年の数字として研究所は、生産は3.6%増、需要は4.2%増を予想している。ちなみに、2010年はそれぞれ7.8%増と10%増だった。まだ3〜4%の伸びがある以上、停滞とは言えないが、伸び率の大幅な減速であることは間違いない。

 ウラルシブ・キャピタルのA.ジェヴャトフ主任エコノミストによれば、危機の可能性はかなり低いものの、成長率が鈍化することは現実味を帯びており、その場合成長率は3%程度になる。すでに銀行は直接の融資を停止し、金利も上がっている。現在の状況が2008年と違う点は、現在は法人部門も国家部門も流動性と債務の筋順が低いことであると、ジェヴャトフは指摘した。

 グランディス・キャピタルのD.バラバノフ分析部長は、ロシア経済にとっての主たるリスクは、高い油価にもかかわらず赤字の財政であると指摘する。20122013年に、油価が1015%低下すると、ロシアは財政赤字が急増するという。世界経済の困難を考えると、そのようなシナリオは現実味を帯びている。したがって、2011年の指標が悪くないにもかかわらず、2012年については悲観的にならざるをえず、GDP成長率は3%を大きく割り込むことが予想されるという。


ヤンデックスが米国検索市場に進出

No.0110 2011年9月30日

 No.0062およびNo.0065の記事で、ロシアの代表的イノベーション企業について触れ、とくにヤンデックスというロシア版検索サイトの会社が世界ランキングでも26位につけているということを紹介した。

 そして、こちらの記事によると、今般ヤンデックスは、米国のblekko社の増資を引き受け、同社の少数株主になった。blekkoは同名の検索サイトを展開しており、同サイトは質の高い情報だけを選んで検索結果を表示する点に特徴があり、ヤンデックスは同技術を有望と判断して出資に踏み切ったという。


ロシア国民の宗教事情

No.0109 2011年9月30日

 ロシアの「レヴァダ・センター」による社会調査で、ロシア国民の宗教事情に関するものがあったので(こちら)、その内容を簡単にメモしておく。ロシアに関してはこういうテーマは専門外だが、ウクライナやベラルーシに関しては一応民族・言語・宗教といったテーマも守備範囲であり、ロシアをそれらの国と比較するという必要が生じないとも限らないので。

 当該情報は、2011年8月にロシア全国の45地域の130居住区で18歳以上の国民1,624人に行ったアンケート調査の結果である。1991年から2011年までの時系列的な数字が掲載されているが、最新の2011年の数字だけを取り上げることにする。

 まず、「貴方は宗教に帰依しているか。しているとしたら、いかなる宗教か」と尋ねたところ、回答は以下のように分かれた。

1.正教:69

2.イスラム:5

3.カトリック:1%未満

4.プロテスタント:1%未満

5.ユダヤ教:1%未満

−.その他の宗教:1

−.無宗教:22

−.回答困難:4

 次に、宗教儀式に参加しているかどうかを尋ねたところ、回答は以下のとおりとなった。

ほぼ毎週:3

月に1回くらい:7

年に1回くらい:11

年に1回も行かない:10

行かない:47

回答困難:2

 洗礼を受けているかという問いの回答は、以下のとおり。

はい:86

いいえ:13

回答困難:1


プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(I.ブーニン)

No.0108 2011年9月29日

 今度は「政治工学センター」のI.ブーニン所長による論評で、こちらのサイトに掲載されたもの。

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 プーチンが大統領に復帰するとの発表への反応は、両極端だった。エリート層には歓迎ムードがある一方、ブログでは、これから国外移住が相次ぐとか、ブレジネフ時代の再来だといった声が聞かれた。テレビでは楽観論を強調しているのに対し、ネットでは悲観論が広がっている。

 プーチンの大統領復帰は、多くの者が予期している一方、危惧されていた事態でもある。とくに、メドヴェージェフ依拠しているエリートにとっては、今回の決定は、メドヴェージェフ政権はプーチンの3期目のための中継ぎにすぎないということになってしまう。他方、保守派にとっては、プーチンの復帰は自然の成り行きであり、メドヴェージェフの実施している改革は不安定化を招きかねない危険なものということになる。

 プーチンは、以前から大統領復帰を決めていたと発言したが、それは事実に反すると思われる。両雄は過去3年、誰が次期大統領になるかはその時点の情勢次第と繰り返し発言してきた経緯がある。メドヴェージェフも出馬を否定せず、補佐官のA.ドヴォルコヴィチはメドヴェージェフが再選出馬したがっていると明言していた。

 プーチンが、すべては最初から決まっていたと発言したことは、実質的に、メドヴェージェフが代理にすぎなかったということを意味する。しかし、多くの政治的制限にもかかわらず、メドヴェージェフの言動は、単に自立しているだけでなく、しばしばプーチンの優先事項に反するようにも見えた。となると、両者が以前からプーチンの大統領復帰に関して確約し合っていたという説明とは、矛盾することになる(とはいえ、大統領任期の6年への延長は形式的にはメドヴェージェフがやったものの実質的にはプーチン主導だったわけで、プーチンが最初から復帰を念頭に置いていた可能性はある)。

 プーチン復帰の最終的な決定は、8月の末から9月の初めにかけて下された可能性がある。その兆候となったのが、社会保険料率を引き下げるというメドヴェージェフの提案が葬られたこと。メドヴェージェフはこの決定に尽力したが、数日前、2014年の各種社会保険基金の予算が従来の34%の料率にもとづいて立てられていることが明らかになった。春の時点のメドヴェージェフ・ドヴォルコヴィチの発言にもかかわらず、2012年から計画されている引き下げは、「実験的」とされた。つまり、保険料率の大幅な引き上げというプーチンの決定を、いったんはメドヴェージェフが変更させたにもかかわらず、財務省がメドヴェージェフのイニシアティブをわずか2年で停止するようプーチンを説き伏せたということになる。

 プーチンの大統領復帰ということを決定付けた要因は、2つほどある。第1に、世界経済危機の第2波が迫るなかで、最大限の政治的安定性が求められたこと。第2に、メドヴェージェフが一定の独自性を示したことである。昨年末にユコス事件や対野党関係でプーチンと不一致が生じ、3月にはリビア問題の不一致もあった。しかし、5月には記者会見でメドヴェージェフがプーチンとの不一致を否定し、マスコミを落胆させた。夏になるともう、(ユコス事件の)プラトン・レベジェフの仮釈放拒否といった強硬策に、反対しないようになった。おそらく、メドヴェージェフは自らのなかで、大統領の座から去る準備を始めたのだろう。

 注目すべきことに、春には大統領は「プラヴォエ・ジェーラ」のプロジェクトを熱心に推進し、その新たなリーダー探しが試みられた。しかし、最終的な決定が下された以上、このプロジェクトの重要性は薄れ、スルコフ大統領府副長官と対立したプロホロフは、大統領の近代化委員会のメンバーから外された。西側の指導者も情報をキャッチしており、メルケルはメドヴェージェフの行事であるヤロスラヴリ・フォーラム参加を見送ったし、オバマの訪露日程も調整がついていない。

 プーチンの大統領復帰は、タンデム民主主義の終焉を意味する。第1に、メドヴェージェフは支持率、人材、資源、政権党との関係といった点でプーチンに大きく劣るので、メドヴェージェフ首相は現在のプーチンのような影響力を発揮できない。メドヴェージェフの非公式な政治的資源は平凡だが、彼が大統領というポストで制度的に権力を有することが、それを埋め合わせていた。制度的な権力がなければ、メドヴェージェフの影響力はさらに削がれることになる。その意味で、プーチンの大統領復帰は、ロシアにとってより馴染みのある単一中心モデルへの回帰を意味する。むろん、誰が大統領府や内閣に入るかでも変わってくるが、基本的に、2007年モデルの修正版に回帰すると考えていい。

 第2に、首相という立場では、メドヴェージェフは自らの近代化路線を実施するのが、はるかに困難になる。大統領の座にあっても、内閣から多くの抵抗を受けた。プーチンが大統領に返り咲いて以降は、メドヴェージェフは大統領の決めた国家政策を遂行することになる。むろん、プーチンは近代化路線に一定程度譲歩することが必要になる。プーチンがメドヴェージェフ路線の後継者であり、両者の路線は共通であるということを誇示する必要があるからだ。プーチンは人権や司法といった分野でもメドヴェージェフに歩み寄るような姿勢を示している。しかし、プーチンの演説は相変わらず、GDPの成長、事業環境の改善、税負担をより富裕な層にシフトし分散すること、軍装備の近代化といった点を強調している。そして、財源は不明なるも、積極的な社会政策が最重要視されている。

 そこで生じる問題は、これまでの二頭体制が失われ、内閣が政策決定の中心ではなくなるという新たな構造のなかで、メドヴェージェフの運命はどうなるかということだ。どうやら、リスクを低減するため、メドヴェージェフは政権党に接近し、その選挙名簿の筆頭に立つことになったようだ。メドヴェージェフが筆頭に来るというのは、一部マスコミがその観測を伝えていたとはいえ、想定外の事態である。直前まで、プーチンが筆頭になるはずという報道が伝えられていた。いずれにせよ、統一ロシアがメドヴェージェフをトップに選挙を戦うというのは、奇妙な構図である。そのことは、二重の影響を及ぼしうる。すでに、メドヴェージェフであることに失望し、それを公言している向きもある。メドヴェージェフが候補者名簿の筆頭になっても、同党がプーチンの党であることに変わりはない。メドヴェージェフが名簿に入ったことにより、メドヴェージェフのリベラル路線と、プーチンの保守路線が、垂直に構築された単一のプロジェクトに合流した。プーチン→統一ロシア→メドヴェージェフ首相という構造である。

 メドヴェージェフ大統領の再選に賭けていた側近たちの運命は、別の問題である。彼らにとっては、プーチンの大統領復帰は不意打ちだったようだ。プーチンの政府に(個人的にはクドリン副首相・蔵相に)敵対している代表格のA.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官はツイッターで、「喜ぶべきことではない」とつぶやいた。ビジネスマンのO.チニコフ、政治学者のG.パヴロフスキーも失望を露わにしている。「プーチン大統領・メドヴェージェフ首相」という新たな体制に不満な向き、ドヴォルコヴィチ氏やクドリン氏は、政権を去る以外にない。

 権力構造が変わるからといって、近代化路線が放棄されるわけではないし、対米関係が悪化するわけではない。内政でも外交でも、ロシアの政策は全体として継続性を有している。しかし、新政権には、世界経済危機の第2波という試練が待ち受けている。


プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(A.マカルキン)

No.0107 2011年9月29日

 さらに前の記事の続き。今度は「政治工学センター」のA.マカルキン副所長の論評。

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 私はメドヴェージェフが首相になるとは思っていなかった。首相になった場合、厄介な課題を抱え込むからである。今日の状況は、2008年にプーチンが首相に就任した時とは異なる。その時には、これから4年間で何も変わらず、プーチンが粛々と大統領に復帰すると考えられた。しかし、その後疑念が生じ、状況が変わった。より迅速な決定を下す必要が出てきた。最終的に、プーチンは自らの立場を確認した。8月の末にプーチンとメドヴェージェフが合意した。私の理解するところ、メドヴェージェフは大統領以外ではどんな処遇も与えるということを確約され、そして彼は自らが実権を得ることになる選択肢を選んだ。メドヴェージェフは、プーチンほど強力な首相にはならないだろうが、フラトコフやズプコフのような弱い首相にもならない。この合意の枠内で、メドヴェージェフが統一ロシアの比例名簿筆頭という役割を引き受けたことは、明白である。メドヴェージェフは、内閣内で自分の子飼いを増やそうとするかもしれない。というのも、大統領在任中、まったくそれができなかったからである。ロシアの憲法によれば、首相が閣僚候補を提案することになっていて、この原則が今後も保持されることになろう。現在は閣僚や政府高官になりたい者はプーチンの執務室に陳情に行くが、(今後は?)メドヴェージェフの執務室に行かなければならない。クドリンが来たる新内閣で働くことを拒否したという事実は、メドヴェージェフが本物の首相になることを意味している。

 統一ロシアにとっては、メドヴェージェフが党名簿の筆頭になるということは、歓迎すべきことではない。彼らはプーチンの資源に期待していたのであって、それが不意にメドヴェージェフに代わってしまったので、それに対応しなければならない。

 前回も、プーチンが後継者(または自らの三選出馬)の名を明らかにするまで、党は規律正しくその最高決定を待った。今回は、その最高決定が、やや早まったということになる。エリートも、一定の確実性を欲した。

 メドヴェージェフが、首相就任直後に痛みを伴う改革に乗り出すか、それとも経済情勢ゆえにそれを強いられる形になるのかは、来年明らかになる。おそらく、メドヴェージェフには現在、不人気な政策を実施しようという意向はないだろう。だが、現実に解決すべき経済問題がある以上、それが打ち出されることは充分にありうる。メドヴェージェフがどのような組閣をするか、誰が蔵相になるかに、多くがかかっている。

 ロシアで、実際に政治的な闘争があった最後の選挙は、2000年の大統領選だった。その選挙では、プーチンが第1回投票で勝つか、決選にもつれ込むかが焦点となった。この選挙以降は、不文律が定まってしまった。

 アラブ革命の前までは、権威主義体制はより強固であると考えられていた。だが実際には、それはより惰性に陥りやすく、状況への感受性が鈍く、柔軟性を欠く。メドヴェージェフ自身、統一ロシアの弊害を指摘していた。問題は権力だけでなく、エリートにあり、彼らは変化を望まず現状維持を欲するということ。彼らにとって変化とは不確実性であり、自らの立場が低下しかねないリスクである。統一ロシアの名簿には、多くの新顔が見られるが、かれらは主に以前から党周辺にいた人々であり、ロシアのシステムはより一層硬直化する恐れもある。

 メドヴェージェフにはいくつかの計画があるが、政治的な理由で現在は棚上げしている。国民の間では不満が広がっているが、それが政治システムを転換すべき世論にはつながっていない。国民は役人と汚職を嫌い、未来への楽観論は減退し、変化を求めている一方、80年代末以降のゴルバチョフ〜エリツィンの混乱期を覚えているので、変化を恐れている。国民は安定を求めているが、安定がポジティブなことというイメージは減退し、「停滞」が語られることが多くなっている。

 かくして、政治的打算で動く権力と、変化を望まないエリートと、変化を望むと同時に恐れてもいる社会という構図のなかで、変化は生じないだろう。


プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(M.レミゾフ)

No.0106 2011年9月28日

 前の記事の続き。今度は「国民戦略研究所」のM.レミゾフ社長の論評。

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 今回の決定は不意なものだった。選挙戦でのリスクを低減すること、下院選での「統一ロシア」の結果が両雄のうちいずれかにとっての好材料と見られないようにすることが目的だったのかもしれない。大統領と首相が、「統一ロシア」がなるべく良い成績を残すことについて、共通の利益を抱くためである。今回、実際そのとおりとなり、統一ロシアの勝利に両者が同等の利益を抱くこととなった(そうでなければ、プーチンだけの利益になりかねなかった)。もう一つの要因は、グローバル危機の第二波の兆候が現れるなかで、より強固な動員的な権力モデルが選択されたのかもしれないということだ。

 今回の決定の発表のされ方を見ると、すべてが個人的な合意として説明され、しかもそれが数年前に決まっていたとされている点が特徴的。たとえば、経済危機が迫っているから、また2010年代は厳しい10年になるから、より強力なリーダーが最高指導者にならなければならないという説明もできたかもしれないが、そういう理屈に訴えると現職大統領にとって屈辱的なものになってしまうので、個人的な友情関係を前面に出したのだろう。

 今後半年間は、メドヴェージェフ大統領にとって困難なものとなる。メドヴェージェフは明確に大統領選出馬に意欲を見せていたので、その名声という点では、レームダックになってしまった。しかし、彼はロシア・エリートへの影響力という点では、レームダック化しない。というのも、彼らはメドヴェージェフが首相として大物の座にとどまるということを承知しているからだ。西側社会も、ロシア社会もメドヴェージェフに一目を置き、それがロシア・エリートの態度にも影響する。彼らはメドヴェージェフを警戒し、持ち上げようとするだろう。

 私見によれば、メドヴェージェフにとって首相就任は、大統領の座から降りる方法として最良なものではない。本人の名声にとっては、たとえば二大政党制の穏健野党の党首といった地位の方が、まだ良かった。だが、ロシアでは政治的名声というのは支配的なファクターではなく、行政的要因やプーチンとの個人関係、支配層内部での人的関係がモノを言うのであり、したがってメドヴェージェフも首相という地位でかなりの影響力を保持する可能性がある。

 ロシアでは、権力モデルも、また国民の意識も、大統領中心になっている。したがって、形式的な権力の中心(大統領)と実際の権力の中心が合致しない時期は、ロシアの政治システムにとって一定の試練となった。両者が合致する状態への復帰は、体制の強化を意味する。首相よりも、大統領のカリスマ性や人気の方が重要である。かつて、プーチン大統領の下では首相というものは技術的な存在だった(前政権から引き継がれたカシヤノフ首相を除く)。メドヴェージェフのいきさつを考えれば、彼は技術首相にはならないだろう。それでも、今後は二頭制というよりも、超大統領制のヒエラルキー的なモデルに近付くことになろう。

 メドヴェージェフは不人気な改革を実施することになるが、不安定をもたらすのはそのことではなく、ロシアで不人気な改革が日程に上っているという事実である。不人気な改革は、あまり人気のない人物が実施すべきものである。クドリン首相というシナリオがどれだけ真剣に検討されたかは不明であるが、クドリン本人は発言からしてその気だったようだ。問題は、ロシアでは無駄な政策プログラムも多いのに、社会保障の削減のような不人気な政策が不可避であるかのように見なされていることだ。無駄な政策とは、北カフカスへの資金投入とか、ミストラル級強襲揚陸艦の買い上げなどで、サッカーワールドカップの開催などは言わずもがなである。これらのプロジェクトの歳出を削減すれば、きわめて人気の高い政策となろう。

 今や、議会選挙と大統領選挙は、2008年と同じく、プーチンおよび支配体制に対する信任投票となった。ただし、現在の条件は、現政権にとって前回よりも悪い。経済成長が止まり、過去4年間は失望を招いたからだ。現在は悲観論が強く、国民は変化を求めている。本来であれば、こうした条件下では特定の人物に依拠してキャンペーンを行うより、争点をはっきりさせることが得策だと思うのだが、現実には人物頼りとなった。

 直近の選挙で、政権党がやや数字を落としながらも成功を収めるであろうことは、疑いを容れない。議会に進出する会派はおそらく3つであることを考えれば、統一ロシアは前回よりは数を減らしつつも、3分の2の多数を維持するだろう。最大の問題は、議会選挙と大統領選挙が終わるとすぐに直面する。それは、いかにして社会の信頼を取り戻すか、政権と国に対する悲観的な見方を払しょくできるかということ。私は、選挙戦が、単にこの亀裂と悲観主義を深めてしまうのではないかと危惧する。


プーチンの大統領復帰に関する識者コメント(V.フョードロフ)

No.0105 2011年9月28日

 ロシアで9月24日、政権与党「統一ロシア」の党大会が開かれた。メドヴェージェフ大統領はこの大会での演説で、2012年3月の大統領選挙にプーチン現首相を擁立することを提案。これで、かねてから可能性を指摘されていたプーチン氏の大統領復帰というシナリオが実現することが、確実となった。現大統領のメドヴェージェフ氏は、首相に就任する方向である。

 これに関し、『エクスペルト』誌のサイトに掲載されたこちらの記事で、3人の専門家が論評を寄せている。そのなかから、まずは世論調査機関「VTsiOM」のV.フョードロフ所長のコメントを、以下のとおり抄訳して紹介する。

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 今回の発表は、非常にうまく行った。とくに素晴らしかったのは、まったく不意の発表だったことである。皆が、この決定を待つことに、飽きていた。結局発表がなされた時には、誰もそれを予期していなかった。プーチンがしないだろうということをまさにやるというのが、プーチンお得意のやり方だ。世界危機の第二波がロシアに迫ろうとしており、そのことも決断を早めたはずだ。

 「統一ロシア」は支配政党であり、支配政党の宿命として、領袖の決定がそのまま党の決定になり、党大会は単にそれを発表する場となる。党がプーチンをつくったのではなく、その逆。したがって、プーチンが政界から引退しない限り、党は彼の決定を受け入れ続ける。プーチン引退後に党が残れば、その時にはまた別の方法で決定が下されることになり、これはすべての支配政党が通ってきた道である。

 過去1年ほど、政界も、財界も、2012年問題の解決という一点に関心が集中していた。それが政府の活動や、投資環境にも響き、資本が逃避し、公的資金によるものを除いて大きなプロジェクトはストップした。その観点からすると、決定の発表は政界にとっても財界にとっても早いほど良い。ビジネスにとって重要なのは確実性で、これまではそれがなかったが、ようやくそれが現れた。

 メドヴェージェフとプーチンは強い絆で結ばれている。メドヴェージェフが大統領の地位を利用してプーチンを権力の座から降ろすと予想した向きが多かったが、その正反対の状況が生じている。彼らは本物のパートナー同士であり、互いを100%信頼している。したがって、プーチンがメドヴェージェフと袂を分かつなどと予想するのは、完全に見当違いだ。他方、改革はむろん必要だが、その程度と方法は政治にかかっている。従来は、改革の大部分が失敗したが、それは細部に注意を払わず、国民にしかるべき説明をしなかったためである。その点、メドヴェージェフにはこれまでとは違った改革を国民に示せるチャンスがあり、メドヴェージェフがそれを活かせるかどうかは2012年に明らかになるだろう。

 選挙というのは、時と場合によってまったく意味合いが異なる。2008年の大統領選は実質的に、プーチンとその後継者に対する信任投票で、選挙が終わり皆が満足だった。しかし、経済危機の後である今回は、状況が異なる。将来は不確実性に満ち、荒海に頼りない船で乗り出していくかのうようである。おそらく、このことがプーチンが大統領出馬を決めた理由の一つであり、彼は船を静かな湾にまで導くという困難な責任を感じているのだろう。

 ロシア政治は、本質的に非競争的なものである。それが、過去500年続いてきたロシア政治システムの論理だ。競争が生じた途端、それは破壊的な性格を帯び、皆がそれを痛感し、したがってエリートも庶民も競争を回避して皆をまとめてくれるリーダーを探すようになるのである。17世紀もそうだったし、20世紀初頭もそうで、それが21世紀初頭まで続いている。これは異常なのではなく、これこそがロシアの常態なのであり、他の国の違う文化のなかで長年にわたり培われてきた基準を我々に当てはめようとするのは無意味だ。


Mヴィデオとエルドラドが合併へ

No.0104 2011年9月6日

 最近はあまり機会がないが、私は一頃、ロシアの家電・エレクトロニクス分野の調査をよくやっていた。そんな私にとっては、やや驚きのニュース。ロシアの家電量販チェーン大手2社、ヴィデオとエルドラドが合併に向けた準備を進めているというのである。こちらの記事の要旨を、以下まとめておく。

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 ヴィデオとエルドラドが、合併する可能性がある。実現すれば、規模でドイツ系のメディア・マルクト社に匹敵する。合併を促しているのは、ネット販売の拡大と、外国の家電小売り業者のロシア進出である。

 ヴィデオの社長であり、共同オーナーの一人であるA.ティンコヴァンはロイター通信に、「我々は合併を合理的なことだと考えている。我々のビジネスが困難で、利益率が低いことを考えれば、合併をしてブランドコストを節約することは経済的に理に適っている。今やエルドラドにもプロのオーナーが誕生したので、彼らと交渉をすることが可能になった」と述べた。

 エルドラドの株式をチェコの投資会社PPFが取得したのはわずか2週間前のことなので、まだ具体的な交渉は始まっていない。ティンコヴァン社長は、合併は1〜3年のうちに実施が可能であり、その期間に実現しなければ断念する旨表明している。対するエルドラド側も、合併に興味を示しているという。他方、ヴィデオ幹部のA.パンテレエフは、検討しているのは合併ではなく、いくつかのプレーヤーのシナジーであり、様々な協業の形態を模索することになると述べている。

 2011年上半期現在で、ロシアの100の都市に、ヴィデオの店舗232が営業しており、その総売り場面積は59.25万平米である。エルドラドは328店舗だから、合併により560店舗にまで拡大することになる。ドイツのメディア・マルクトは、世界15ヵ国に614店舗を有している(うちロシアでは15都市に31店舗)。


ガスでベラルーシとウクライナを揺さぶるロシア

No.0103 2011年9月2日

 天然ガスの供給をめぐり、ロシアとベラルーシ・ウクライナとの関係が再び騒がしくなっている。一連の動きにつき、この記事がよく問題を整理していると思うので、少々長いが、以下抄訳する。

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 ベラルーシに対して、ロシアのガスの値下げが約束された。それは政治的思惑というよりも、経済的現実の要請によるもので、ベラルーシにとってガスが安くなるわけではない。

 ロシアの政権幹部は、ベラルーシ向けの価格決定方式の変更につき、派手に発表した。8月15日の首相会談終了後、プーチン首相は、両国は経済主体の平等な条件に移行する、その際に重要なのがエネルギーだ、ロシアは2012年からベラルーシ向けのガス価格決定方式に統合値引き係数を導入すると明言した。メドヴェージェフ大統領もまた、ベラルーシの特別待遇の必要性につき発言した。メドヴェージェフは、両国は関税同盟の枠組みで統合しつつあり、しかもベラルーシ側が自国のガス輸送インフラをガスプロムに売却することに同意したので、これにより特別な条件が生じたと述べた。ミャスニコヴィチ・ベラルーシ首相は、近いうちに2012年のガス・石油供給の条件に関し両国が合意することになると述べ、ロシアの善意に謝意を表した。

 この間、価格が上昇していたにもかかわらず、ベラルーシの天然ガス消費は(経済危機で低下した2009年を除いて)拡大していた(図1参照)。ベラルーシの消費のほぼ全量がロシアからの輸入で賄われており、2010年には195億㎥と過去最高に達した。これは、ガスプロムのガス輸出の10%に相当し、ベラルーシはウクライナ、ドイツ、トルコに次いで4番目の顧客となっている。ベラルーシ経済はエネルギーバランスに占める天然ガスの比率が大きいのが特徴で、2010年には72%にも及んでいる。これは世界的に見ても高く、ロシアの42%よりずっと上である。住宅はガスによって暖房されているし、窒素肥料、セメント、化学などのベラルーシの大手輸出企業はガスを大量消費している。当然、ガス価格はベラルーシ経済の競争力、国家歳入に大きく響いてくるわけで、ベラルーシの政治家にとっては死活問題だ。

 ベラルーシは、ロシアとの関係が近かったために、東欧諸国では最も長くガスの特別価格を享受することができた(図2参照)2006年の47ドルという単価は、EU諸国向けの4分の1から5分の1の水準だった。それによるロシアの損失は年間20億ドル程度と言われ、ロシアが欧州にガスを輸送する際のベラルーシ領を通過するトランジット料の値引きや、ロシア軍基地の安い地代といったロシア側が受けるわずかな恩恵とは、まったく見合わなかった。

 2006年秋の、CIS諸国向けおよび国内需要家向けの卸売価格を引き上げるキャンペーンのなかで、ベラルーシ向けの従来の固定価格を取り止め、欧州水準に引き上げるという原則的な決定が下された。むろん、ベラルーシ側は反発したが、なすすべはなかった。ロシアにとってはベラルーシの機械・設備、繊維、農産物はいくらでも代えが利くのに対し、ベラルーシ側はロシアのエネルギーに代わるものは見出せないからである。2006年の大晦日に、ガスのトランジットおよび供給を全面的に停止するという脅しに屈し、ベラルーシ側はロシア側が用意した20072011年の契約案を飲んだ。この契約によれば、価格はお隣のポーランド向けに連動するが、ポーランド向けの方が輸送距離が長い分輸送料が上乗せされているのと、ベラルーシ向けには輸出関税が課せられない。また、ロシアは衝撃を緩和するため、一時的な値引きに同意した。値引き係数は、2008年は0.672009年は0.82010年は0.92011年は値引きなしというものだったが、世界経済危機にかんがみ、ガスプロムは2009年の係数を0.8から0.7に引き下げている。値引きはベルトランスガスの株の50%をガスプロムに売却する問題とリンクされていた。この合意はその後、ベラルーシ側から再三にわたって非難を浴び、2010年夏にはベラルーシが上昇した契約価格ではなく、より低い2009年の価格で支払いを始めたため、またも紛争が生じた。ベラルーシが関税同盟に加わるに当たっても、エネルギーの輸出価格が最大の対立点となった。通常、こうした同名においては加盟国間の関税障壁や制限措置は完全に撤廃されるが、ロシアは石油・ガスについては例外扱いすることを主張した。ルカシェンコはこれに激怒し、一連の激しい発言を行うとともに、関税同盟への不参加をちらつかせた。プーチン首相は、関税同盟はベラルーシ抜きで始動すると発言せざるをえなくなり、ようやくその発言を受けて、ベラルーシ側は前言を撤回した(ベラルーシが関税同盟から受ける恩恵はロシアのそれよりも大きいというのが専門家のもっぱらの見方)。

 こうした経緯にもかかわらず、なにゆえに今になってロシアの政権幹部たちはベラルーシへの譲歩を打ち出したのか。そして、その規模はいかなるものになるのか。

 ロシアのほとんどの専門家やマスコミは、今回のベラルーシへのプレゼントを、ロシア・ベラルーシ関係よりも、ロシア・ウクライナ関係の文脈で分析している。ウクライナに、正しい統合モデルの何たるかと、その報酬を教えてやっている、というわけだ。

 実際、ロシアはここ何年か、ウクライナに向けてエネルギー分野の提案をいくつか示してきた。その一つは、ガスプロムがナフトガス傘下のウクライナのガス輸送インフラに出資する、さらにはそれをコントロールするという案だった。これは1990年代から取沙汰されている案であり、ウクライナの歴代政府はそれを一貫して断ってきた。ウクライナのパイプラインが老朽化し、近代化投資を必要としていても、それは国家主権の一部と考えられ、それを手放すことは政治的自殺行為と考えられた。

 過去数ヵ月、ウクライナ政府は2009年初頭のロシア・ウクライナ契約の見直しを迫り、対ロシア関係を緊張させている。2009年の合意を主導したのはティモシェンコ前首相で、彼女は現在国家背任および越権行為の罪に問われている。ウクライナの高官たちは、契約の基礎価格があまりにも高すぎると主張している。実際、現在ウクライナ向けの価格は中東欧諸国向けの価格に接近しており、これは黒海艦隊駐留延長と引き換えにガスを30%値引きすることを決めたハルキウ協定にもかかわらずそうなっているのである。それ以上の値下げは、ウクライナが関税同盟のような統合プロジェクトに参加するのが条件だというのが、ロシア側の立場である。一方ウクライナは長らくEUと自由貿易交渉を行っており、ロシアの要求は受け入れられない。キエフからは、2009年の契約の一方的破棄や、国際司法への提訴といった声も聞こえてくる。

 ベラルーシ向けの値引き提案は、ソチでメドヴェージェフ・ロシア大統領およびミレル・ガスプロム社長がボイコ・ウクライナ・エネルギー相と会談した直後に表明された。ロシアとウクライナの会談は成果がなく、両者の溝の深まりを示す形となった。ロシアの国家幹部はほのめかすにとどまったが、ミレル社長は直截に、ウクライナとの関係はベラルーシと同じような統合原理で構築しうると明言した。国家エネルギー安全保障基金のK.シモノフ会長は、「価格問題の対立が長引き、ウクライナの立場が強硬なことが、ロシア側がウクライナに急いで『ベラルーシの飴玉』を見せた一因だろう。これまでウクライナは、ガスプロムがルカシェンコと対立し、サウスストリームが完成した後はベラルーシ経由トランジットが削減されるだろうと期待していたが、実際には両者は和解してしまった」と指摘。もっとも、その数日後にアザロフ・ウクライナ首相はベラルーシ方式の受入を拒否する旨発言している。他方、ウクライナとの対立がなかったとしても、ベラルーシ向けの値引きは遅かれ早かれ、今年の秋くらいには浮上していただろうというのが、シモノフの分析である。

 現在ガスプロムは、ヨーロッパ向けに非常に高い価格で売っている。ライバルであるアフリカやノルウェーの石油ガス会社、LNGの供給者は、20082009年に値下げに踏み切り、現在その価格はベラルーシ向けのガス価格と同じくらいか、むしろ安くなっている。経済危機の際、ガスプロムも大口需要国向けの若干の値下げに応じたが、代替エネルギーを確保するインフラのない多くの中東欧諸国はその対象とならず、ベラルーシ向け価格がリンクされているポーランドもそうした国の一つだった。本年初頭、ポーランドの石油ガス・コンツェルンPGNiGは少なくとも10%の値下げをめざしたロシア側との交渉に乗り出し、それが失敗すると法的手段も辞さないとの立場を示した。ポーランド当局によれば、ポーランド向けの価格はオランダやドイツ向けよりも1025%も高いという。

 ガスプロムの長期契約の条件は、価格を原油および石油製品のバスケットにリンクしたものを、約半年のタイムラグで適用する、というものである。本年第2四半期から、ロシア産ガスの価格は石油価格のピークを受けて欧州で急上昇し始め、ベラルーシもそれに続いた。セマシコ・ベラルーシ第一副首相によれば、本年第4四半期には300305ドルにまで上昇するという。ベラルーシ向けにはロシアが輸出関税を課さないといっても、その価格はウクライナが輸入しているLNGやガスに近く、米国が輸入している価格の2倍である。

 現在のベラルーシの経済的窮状を考えると、ロシアがこうした高い価格の維持を望むのは、ルカシェンコおよびベラルーシ経済を痛めつけたいというねらいがある場合だけである。しかし、ルカシェンコはその言動にもかかわらず、結局ロシアを中心とした統合にも参加し、ガスプロムにベラルーシ領のガスインフラの支配を許し、民営化を実施してロシア資本に門戸を開こうとしている。

 こうなると、ガスの値下げは譲歩というよりも、品格の表明、または独占供給者たるガスプロムが史上条件に適応するという意味合いの方が強い。ただ、問題は、どの程度の値下げが、いかなる条件で提供されるかである。

 ロシア首相が大々的に、ただし一般論として述べたことから、様々な解釈を呼んでいる。前出のシモノフは、「ベラルーシの専門家やジャーナリストには、非常に大きな達成感が見られる。彼らは皆、ロシア国内価格でガス供給を受けられると考えているようだ」と指摘。ロシアのマスコミでも、たとえば『ヴェードモスチ』紙などは、「政治的考慮が経済を上回った。ガスプロムは2012年だけで30億ルーブルを失う」と書き立てている。しかし、「値引き」という言葉自体、今後ベラルーシにはロシア国内価格ではなく、より高い欧州価格が適用されることを意味している。プーチンの報道官であるD.ペスコフも本誌に対し、「本件は欧州価格を元に、そこから値引きをするということに尽きる。プーチンのもう一つの発言、平等な競争条件というものにより、プーチン発言が誤解されているのではないか」と述べた。ただ、ロシア政府は2015年までに国内のガス価格を輸出と同等のレベルに引き上げようとしており、そうなればベラルーシとロシアのガス需要家の条件は値引きがなくても同等になる。それゆえに、値引きは3年間という期限で提供され、年ごとに値引き率が低下していくわけである。その具体的な規模については、まだ不透明である。

 2012年のベラルーシと隣接している地域のロシア国内価格は135ドル程度になると見られ、一方ベラルーシに適用される欧州決済価格は現状の石油価格では250330ドルになると予想される。当然、値引き価格はその両者の間のどこかになるが、専門家の見方によれば、上限の方に近く、値引き率は1520%か、最大で30%程度になりそうだという。

 具体的な値引き率は今後の交渉に委ねられる。プーチンは、値引きはプレゼントなどではないと明言している。双方とも本件を、ガスプロムがベルトランスガスの残りの株50%を買収する問題とリンクしており、ペスコフもそれを認めている。だが、公に言われているほど、それは大きな意味があるのだろうか。第1に、本件交渉はもう合意直前で、あとはルカシェンコの承認を待っているだけの状態である。第2に、シモノフが指摘しているように、ロシア側は50%の株の値段につき、ルカシェンコの言い値に相当する割高な25億ドルという価格で同意している。ペスコフは認めないものの、我々の見るところ、値引き率はベルトランスガスではなく、それ以外のベラルーシ企業の民営化とリンクされている可能性がある。

 ベラルーシ政府は20112013年の国有資産売却計画を制定しており、ベラルーシカリーやMAZをはじめとする機械メーカーなどはロシア資本の関心となりうるので、ロシアの政治家も自国企業の利益をロビーする構えだ。ただ、とくにロシアが買収した場合は、投資が効果を挙げるか、疑問もある。ベラルーシ当局は高収益企業については、とくにロシア資本の傘下に置かれた企業については、重税を課すパターンがあるからだ。ベルトランスガスにしても、各種の社会分野や様々な基金への貢献を迫られている。ロシアの政治エリートは、資産の拡張により影響力を拡大できると単純に考えがちだが、買収による利益とコストを冷静に判断すべきである。


ソ連映画ばかり観るロシア国民

No.0102 2011年8月29日

 ちょっと本コーナーでは珍しい話題。ロシアでは、ソ連崩壊後、映画産業が衰退した。ただ、私自身はまったく不案内ながら、最近は「ナイト・ウォッチ」のような我が国でも話題になるロシアの映画作品もあり、ロシアの映画産業も復活してきたのかなというイメージもある。

 そうしたなか、当のロシア国民は、現代ロシアの映画作品を観るということがほとんどなく、むしろソ連時代の映画を好んでいることを示す調査結果が発表された。こちらの情報によれば、2,521人のロシア国民に今般、現代ロシアの映画作品についてアンケート調査を行ったところ、回答は以下のように分かれた。

1.古いソ連映画しか観ない。ロシアの新しい映画は、ソ連映画の足元にも及ばない:56.2

2.一部には良いロシア映画もある:15.8

3.ロシア映画は酷すぎて観るに堪えない:12.8

4.ロシア映画よりも外国映画の方が好き:5.1

5.大多数の映画はハリウッドのコピーだから、ほとんど観ない:5.0

6.観るのは外国映画が半分、ロシア映画が半分:2.4

7.そもそもロシアで映画は撮られているのか?:1.8

8.最近のロシア映画はだいたい好きで、ロシア映画は発展しつつあると思う:0.6

9.ロシア映画は常に喜んで観る:0.3

 このように、現代のロシア映画への支持はきわめて低く、また外国映画への支持も意外に低いようだ。圧倒的に人気があるのは、ソ連映画である。私なども以前は、ソ連の映画など社会主義のプロパガンダでつまらないのではないかと想像していたのだが、実際には人情味のある人間ドラマなどで秀作が多いらしい。むろん、多くのロシア国民は古典的なソ連映画作品を繰り返し観ていて、場面やセリフを全部覚えているほどなのだと思う。日本でそういう位置付けの映画作品はあまりないと思うが、強いて言えばジブリのアニメみたいな感じだろうか。いずれにせよ、ロシア国民の映画というものの受容の仕方は、次から次へと新しい刺激を追い求める欧米や日本の国民のそれとは、少し違っているようだ(むろん、ロシアの映画産業がビジネスとしてしっかりと確立され、見応えのある作品が数多く生み出されるようになれば、事情は変わってくるのかもしれないが)。


トリヤッチ特区への入居広がらず

No.0101 2011年8月18日

 さらにしつこく、特区の話題。ロシア経済発展省のD.レフチェンコフ経済特区・プロジェクトファイナンス局長が、7月8日付の『RBCデイリー』紙のインタビューに答えている(こちらに掲載)。主な話題は自動車産業の工業アセンブリー措置に関する方針であるが、最後の方で私の研究分野である経済特区についても語っているので、その部分の発言要旨を整理しておく。

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 (トリヤッチ特区の入居企業リストには2社が入っているが?)現在、経済発展省で申請を審査しているのが2社あり、それはTPV Rus社とジェレーズヌィ・パトーク社である。トリヤッチ特区の核となる入居企業として、伊ピレリ社とロシアの国家コーポレーション「ロステフノロギー」との合弁が挙げられていたが、現在のところ経済発展省は、ピレリ社とも、合弁とも、トリヤッチ特区での事業実施に関し協定を結んでいない。一時期は核になるプロジェクトとされていたが、現在のところ彼らから申請はない。今のところ、自動車またはそのコンポーネントの生産をトリヤッチ特区で手掛けるという申請は、経済発展省に一切届いていない。

 リペツク特区で建設中の横浜ゴムの工場は、最終段階にあり、設備の納入、ライフラインの接続などが行われているところ。本年9月の操業開始を予定している。

 (ガスプロム・ネフチェヒム・サラヴァルト社がバシコルトスタン共和国で全ロシアガス化学センターの枠内で特区を創設するプロジェクトに関しては)経済発展省はその構想について先方と話し合ったが、具体的な結論は出ていない。入居企業・投資家を選定し、インフラを確定する必要があり、現在検討中。


プスコフ州に工業生産特区

No.0100 2011年8月18日

 節目の100本目の記事のわりには地味な話題だが、前の記事の補足。No.0099の記事に、プスコフ州に工業生産特区が設けられるという話が出てくる。それは初耳だったので、こちらこちらの記事をもとに、事実関係を調べてみた。

 プスコフ市から北側に8kmの地点に、「モグリノ」という名称の工業団地がある。プスコフ州行政府はこのモグリノ工業団地を工業生産経済特区に転換すべく、2011年5月、ロシア連邦政府の経済発展省に申請を出した。モグリノの面積は215haで、ハイテク産業分野(エレクトロニクス、電子機器、設備等の生産)、ロジスティクス企業などの誘致をめざしている。現在までにすでに、エレクトロニクスやボイラー生産分野の一連の企業がプロジェクトを表明している。

 そして、7月19日には、連邦の経済発展省立会いのもと、プスコフ州発展庁とシンガポールのJurong Consultants社との間で、協定が結ばれた。Jurong社は、1年間にわたって、プスコフ州行政府とともに、特区のマスタープラン作成に携わることになる。インフラの整備は、20122013年にかけて行われる予定。


ロシア経済特区の新たな動き

No.0099 2011年8月18日

 ロシア『RBCデイリー』紙のこちらの記事が、ロシアの経済特区に関する新たな動きにつき報じているので、それを整理しておく。今般、経済発展省が経済特区の税制優遇措置に関する法案を起草し、それにより利潤税、土地税、資産税の税率がゼロになる可能性があり、また、経済特区の一覧に削除および追加がなされる方向となっているという。

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 経済発展省の発表によれば、入居者に税制優遇措置を与えている経済特区法への修正を、同省が準備した。とくに、税制優遇が他の特区に比べて低い観光・リクリエーション特区がその対象となる。利潤税、土地税、資産税がゼロにまで引き下げられる。優遇措置の適用期間も変更になり、現在は特区の種類ごとに3〜5年であるものを、10年にすることを打ち出している。また、経済特区のインフラへの資金提供をする会社に、追加的な優遇を与える。

 法案はまた、地域的なタイプの経済特区を創設することも盛り込んでいる。連邦レベルの特区と異なり、地域特区には関税優遇は適用されないが、その代わり地域レベルの税制優遇が導入される。一連の基準を満たした連邦構成体はどこでも、連邦政府との合意のうえで、こうした特区を設立しうる。そのねらいは、各構成体において、新たな生産を立ち上げる点にあり、そうした生産への資金供給は優先的に実施される。経済特区法への修正は、早ければこの秋の議会で可決される可能性がある。

 民間の専門家の指摘によれば、初期の経済特区は税制のうえで保守的で、本格的な優遇措置を与えるものではなく、それゆえに最初の数年は入居者が思うように伸びなかった。税制の思い切った軽減により、特区の生産・イノベーション活動の活発化が促される可能性はあるが、特区に入居を希望する投資家が殺到するような事態にはならないだろう、とのことだ。別の専門家は、経済発展省の動きは理解できるが、現実には税制優遇は企業が当該地域への進出を決定する決め手になっておらず、むしろしばしばその悪用をもたらす、と指摘している。

 現在、ロシアの特区には、工業生産特区、技術導入特区、観光・リクリエーション特区、港湾特区の4種類がある。ただ、現在、外国企業がロシアのロジスティクス拠点への進出を検討していることから(たとえばトルコ企業がタタルスタンのエラブガ特区への入居を申請中)、工業生産特区の枠内で「生産・ロジスティクス特区」という新たな枠組みが誕生する可能性がある。

 現在までにロシアでは24の特区が設けられているが、近いうちにその顔ぶれが変化するかもしれない。新たにプスコフ州とリャザン州に工業生産特区が誕生する可能性があり、前者では家電生産と建設セクターが、後者では無線機器の輸入代替生産が想定されている。一方、スタヴロポリ地方とカリーニングラード州は逆に特区を失う恐れがある。それは、現在までのところ入居企業がゼロであるからで、今後1ヵ月半で入居企業探しの最後の努力を行うことになる。


ロシアで電子ブックリーダーの販売急増

No.0098 2011年8月17日

 こちらの情報によると、ロシアで電子ブックリーダーの販売が急増しているということである。たとえば、チェーン店「エヴロセーチ」の2011年上半期の販売台数は、前年同期比14.8倍に達したという。ロシア全体の2011年上半期の販売台数は65.8万台で、金額ベースの市場規模は30億ルーブルに達したということである。

 電子ブックリーダーは新しい商品だから、その販売が急激に伸びるのは、当たり前と言えば当たり前である。しかし、ロシア市場での可能性については、懐疑的な見方をする専門家が多かっただけに、好調な売れ行きが驚きをもって受け止められているということのようである。

 さて、ハードが売れているのは分かったが、肝心のロシア語電子書籍はどうなっているのだろうか? 興味が沸いたので、ロシア版のアマゾンとも言うべき、OZONのサイトをチェックしてみた。こちらのページが、電子書籍のコーナーになっている。

 これって、意外と良いかもしれないなあ。たとえば、この『ウクライナ:地域の対立』っていう本、私はモスクワの書店で紙バージョンを買ったんだけど、その際は310ルーブルだったのに、電子書籍のダウンロードは95.7ルーブルになってる。まあ、出張に行って、書店に立ち寄り、本棚を探索して、重いながらも日本にそれを持ち帰ってくるというのは、自分の生き甲斐のようなものだけど。でも、もし仮にオンラインで日本に居ながらにしてこれだけ安い値段で買えるのならば(実際にやったことはないので可能かどうか知らないが)、そっちの方向にシフトしていくのもアリかもしれないなあ…。クレジットカードで電子書籍を買った場合に、所属組織内部で資料費として処理できるかどうかは微妙だけど、200300円の世界だから自腹でもいいし。自分、iPadもってないけど、ロシア語表示できるのかなあ? まあ、できるんだろうなあ、ロシアでもiPad売ってるくらいだから。


各連邦管区に投資問題担当の大統領代表を配置

No.0097 2011年8月4日

 メドヴェージェフ大統領が新機軸を打ち出した。8月2日、ロシアに8つある連邦管区に、投資問題担当の大統領代表を配置することを決定したものである。それに関する大統領指令はこちら、大統領主宰の会議の模様はこちら、『コメルサント』紙の報道振りはこちら

 私は多忙でフォローできていなかったが、3月にマグニトゴルスクで近代化委員会の会合を開いて、そこでメドヴェージェフ大統領が投資環境改善策の一つとして本件を提起していたらしい。ロシアで事業を行おうとする際に、様々な行政的障害に直面するのは、ロシアの投資家も、外国の投資家も同じ。とくに、メドヴェージェフ大統領の指摘によれば、行政的障壁の3分の2は、地域(州など)および市町村の行政府によって生み出されるという。そこで、投資家の声に耳を傾け、問題の解決を図る専門のポストを設けるというのが、今回の決定の趣旨だろう。ただ、それをいわば大統領のお目付け役という位置付けにしている点が注目される。なお、各連邦管区にはすでに大統領全権代表がいるわけだが、私の理解によれば、今回それらの副代表が任命され、副代表が投資問題担当の大統領代表という形になるようである。ただし、メドヴェージェフ大統領は、代表たちに対し、あなた方自身が行政的に肥大化しないように、あなた方は検察になる必要はない、と釘を刺した。

 具体的に任命された各連邦管区の投資問題担当代表の顔ぶれは、以下のとおり。

中央連邦管区:I.ズプコフ

北西連邦管区:S.ジミン

南連邦管区:V.グルブ

北カフカス連邦管区:M.ブィストロフ

沿ヴォルガ連邦管区:A.クブリン

ウラル連邦管区:Ye.クイヴァシェフ

シベリア連邦管区:V.プサリョフ

極東連邦管区:A.レヴィンタリ


戦略イニシアティブ庁のその後

No.0096 2011年8月2日

 No.0075の記事で、プーチン首相が経済のリベラル化を演出するため、「戦略イニシアティブ庁(ASI)」なる組織を新設しようとしているということをお伝えした。今般、そのASIのトップが任命されるという動きがあったので、簡単にまとめておきたい。

 こちらおよびこちらの記事によると、今般ASIの総裁にアンドレイ・ニキチン氏が任命された。公募が行われ、応募した2,368人のなかからニキチン氏がその座を射止め、プーチン首相が発表したものである。これを受けニキチン氏は、自分はまずビジネスにとっての障壁撤廃、ビジネス環境の改善に取り組みたい、「肝心なのは、障壁撤廃という視点から、プロジェクトを支援していくことである。それは、法的障害、行政的障害であり、それらは無責任を生み、破局的な結果をもたらす」と述べた。ただし、業界では、「ASIとは一体何をする組織なのか」という疑問の声が依然として強い。

 ニキチン氏はこれまで、S.ファフレジノフ氏の率いる持ち株会社「ルスコンポジト」の幹部として働いてきた。同社はグラスファイバーおよび混合材料の2つの大きなメーカーを傘下に収める。具体的には、ウファのスチェクロニト社と、トヴェリのトヴェリスチェクロヴォロクノである。


ロシアのFDIデータ、中銀に一本化へ

No.0095 2011年8月1日

 先般、「2010年のロシアの外国投資統計」というレポートを発表した。毎年恒例のレポートだが、実は最近、ロシア連邦国家統計局が外国投資に関する統計をデータベース化してウェブサイト上で無料公開するという新たな動きがあった。これまでロシアの外国投資統計はあまりにも情報が薄く、使用に堪えない面があったのだが、新データベースのおかげで利用者の関心に沿ったクロス検索が自在にできるようになり、これで同統計に関する情報量の面の不満はほぼ解消された。先のレポートでは、データの入手可能性に関する限りは、「これで一件落着」といった感じで締め括っていた。

 ところが、ロシアの外国投資統計をめぐって、また新たな動きが出始めたようである。これは知り合いの先生に教えていただいたのだが、OECDがロシアの外国直接投資(FDI)の方法に関し、注文を付けているとのことである。その先生から頂戴したフィンランド銀行移行期経済研究所のニュースレターには、以下のように記されている(BOFIT Weekly, No.19, 2011.5.13 備忘録なので、コピーしちゃって、失敬)。

 Statistical data on foreign direct investment in Russia are kept by two separate government agencies, the CBR and Rosstat. Their statistical methods differ considerably from each other, as do their statistical figures. The methodology for preparing central bank statistics complies with internationally accepted standards, but the CBR does not release all breakdowns of its figures. Rosstat provides breakdowns, but the figures are prepared according to its own methodology. The OECD has focused attention on Russia’s two-track statistics problem as part of Russia’s OECD membership negotiations and provided assistance in developing statistical reporting. Legislation is currently being drafted to give responsibility for compiling official statistics on foreign investment solely to the central bank. The CBR has begun to prepare figures on the structure of investments, which would dramatically improve the quality of current reporting. At the beginning of May, the CBR published such data for the first time.

 要するに、これまでロシアではFDI統計を中銀と統計局の両方が作成・発表してきたが、統計局の方は内訳が得られるメリットはあるもののその方法は国際的標準に合致しないロシア独自のものである。OECDとしては、ロシアのOECD加盟交渉の一環として、ロシアに本件に関する問題を提起している。現在起草中の法案により、将来的にはFDI統計の作成はもっぱら中銀に委ねられることになる。中銀はその準備作業にすでに着手しており、今後は統計の中身が格段に充実するであろう、というのである。

 せっかく統計局のデータベースが立ち上がり、その利用上のツボも押さえたところなのに、統計局はお役御免になってしまうのだろうか?


テフノプロムエクスポルトの株を放出

No.0094 2011年7月30日

 No.0091No.0092の記事で披露したように、ロシアの国家コーポレーション「ロステフノロギー」についての情報を収集しているところである。その関連で、こんな記事を目にしたので、軽くメモしておきたい。

 何ともマニアックな話題だが、ロステフノロギーが、傘下企業の一つである公開型株式会社「テフノプロムエクスポルト」の株式50%−1株を、ガスプロムバンクに売却する方針を決めたとのことである。テフノプロムエクスポルトはエンジニアリング会社で、ロシア国内および海外市場で発電所や送電網の建設などを手掛けている。設立は1954年で、これまで建設した総発電容量は85GW。2008年までは国有だったが、その後国の出資分としてロステフノリギーの所有に移された。受注残高は800億ルーブルを超えている。2010年の売上高は188億ルーブル、純利は3.2億ルーブルだった。テフプロムエクスポルト株の売却に関しては過去1年ほど議論が続いていて、Inter RAO YeESやルスギドロが買い手として名前が挙がったこともあった。本年春になってプーチン首相が50%−1株の売却をうたった指令に署名していた。それが今回、ガスプロムバンクが買い手に内定したということである。売却価格は約50億ルーブルとされる。ただし、ガスプロムバンクにとってエンジニアリングは異質な分野であり、購入の動機については謎となっている。


ペテルブルグ経済フォーラム:イノベーション分野の成果

No.0093 2011年7月27日

 ロシアでは国際的な経済・投資フォーラムの類が多数開催されているが、そのなかでも最もプレステージが高いのはサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムであろう。内外の政財界の重鎮が参加して、議論が交わされる場となっている。本年も、6月16日から18日にかけて、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが開催された。No.0077の記事では、同フォーラムにおけるメドヴェージェフ大統領の演説骨子を紹介した。

 サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムは、近年では投資プロジェクトのお披露目の場としても重要性を増している。報道によれば、今年のフォーラムでも、様々な分野で数十件の契約が結ばれ、その総額は700億ドル以上に上った、とされている。ここでは、そのなかから、私の研究対象であるイノベーションセンター「スコルコヴォ」と、ロスナノ社が調印した投資プロジェクトを整理し、今次フォーラムでイノベーション関連でどのような成果があったかを確認しておくことにする。

■スコルコヴォ

●スコルコヴォ財団とマサチューセッツ工科大は、「スコルコヴォ工科大」を設立するうえでの協力関係の主要条件に関する予備協定に調印した。署名には、シュヴァロフ・ロシア第一副首相が立ち会った。協定は3ヵ年の協力関係をうたっている。スコルコヴォ工科大は、ビジネスとイノベーションを教育プログラムおよび開発に完全に統合する世界で最初の教育・研究機関となる。

●スコルコヴォ財団と米ジョンソン&ジョンソン社ロシア支社は、主な共同事業分野における協力、ハイテク・センターの組織をうたった予備協定に調印した。

●米国のダウ・ケミカル社は、イノベーションセンター「スコルコヴォ」に研究開発センターを開設することになった。ビル効率ソリューションの研究開発を行う。

■ロスナノ

●ロシアのロスナノ社、サンクトペテルブルグ市行政府、韓国先端テクノロジー研究所、Samho Green Investment Venture Capital(韓国系)、シンガポール経済発展局、360ip(シンガポールの研究投資機関)は、「アジア・ナノテクノロジー基金」の創設に関する意向書に調印した。基金は韓国をベースに活動し、ペテルブルグにロシア・チームを置く。こちら(http://www.sgivc.com/upload/uploadFile/Articles/l7xktj12an.pdf)に概要が出ている。

●ロスナノ社は、ウラル連邦管区の開発公社である「産業のウラル・極地のウラル」、ハンティ・マンシ自治管区行政府、ポーラー・クオーツ社と協定に調印した。こちら(http://www.rusnano.com/Post.aspx/Show/31908)に概要が出ているが、すでに4月11日に投資協定が結ばれており、今回の協定はポーラー・クオーツ社の株主間の権利・関係を定めるもの。プロジェクトは、ロシアにおいて微細な水晶粉末を生産する垂直統合複合体を形成するというもの。

●ロスナノ社は、アルコア社、MRSK社と、送電ネットワーク用のナノコーティングを生産するための協力意向書に調印した。


ロステフノロギーとAvtoVAZ

No.0092 2011年7月26日

 前のNo.0091の記事の続き。RIAノーヴォスチのこちらの記事で、やはり国家コーポレーション「ロステフノロギー」の新戦略、改革の問題が論じられている。以下では、ロシア最大の乗用車メーカーであるAvtoVAZとロステフノロギーの関係に関する部分を中心に、記事の要点をまとめておきたい。

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 今般承認されたロステフノロギーの戦略について、IKアトン社のアナリストであるM.パク氏は、「まだ公表されていないので論じるのは時期尚早」としながらも、おそらくそれは、傘下企業のリストラを実施するのに必要な大規模な財政資金の投入、優遇的な融資を想定したものになるはずだと指摘。しかも、資金投入の効果が表れ始めるのは5〜10年後のことになるから、ロシア財政に多大な負担を負わすことになる、と指摘。

 一方、ノモスバンクのI.ゴルベフ部長は、新戦略の策定は重要であり、当然の動きではあるが、実施は困難と指摘。ゴルベフによれば、ロステフノロギー傘下の企業で投資魅力があるのは一握りだけであり、大多数の企業はIPOを行えるようになるまでに事業を軌道に乗せる必要があり、それには資金も時間もかかる。したがって、大多数の資産については需要がない恐れが強く、ロステフノロギーの戦略には早晩修正が求められるようになるだろうというのが、ゴルベフの見立てである。

 ロステフノロギーは2005年にビジネスプロジェクトに乗り出し、ロシア最大の乗用車メーカーAvtoVAZへの支配権を取得、その後世界最大のチタン生産者VSMPOアヴィスマも管理下に置いた。ロステフノロギーのS.チェメゾフ社長とそのチームは、AvtoVAZ経営に乗り出した数ヵ月後に、同社への全面的な投資計画を表明。4つのプラットフォームにもとづき12の新モデルの生産を開始して製品ラインナップを一新することで、早くも2009年にはAvtoVAZは世界レベルの企業になるとぶち上げた。また、トリヤッチに新たなエンジン工場を建設すると表明した。チェメゾフ、当時連邦産業庁(ロスプロム)の長官だったB.アリョーシン、当時AvtoVAZ社長でその後サマラ州知事に就任したV.アルチャコフは、50億ドルを投資し、独自に技術革新を遂げると表明した。AvtoVAZCプラットフォームをベースとする新型車の独自開発に着手し、それを2008年のモスクワ国際サロンでお披露目すらした。しかし、現在のところ同プロジェクトは、AvtoVAZの長期戦略に盛り込まれておらず、同社で最も売れ筋の車はソ連時代に開発されたクラッシック・シリーズとなっている。おそらくCプロジェクトの開発予算は帳消しにされると予想され、プロジェクトの提唱者であったM.ナガイツェフ技術部長はすでに解雇されている。その後、カナダの部品メーカー「マグナ」と合弁企業を設立するとか、自動車部品メーカーを誘致してサマラ州をロシアのデトロイトに転換するなど、様々な構想が浮かんでは消えた。その間、ロステフノロギーはAvtoVAZの拒否権行使可能株をフランスのルノーに売ることに成功した。当時は、ロシア乗用車市場の販売がピークで、世界の各メーカーがロシア市場への足掛かりを築こうと必死になっていた時期だった。ルノーが抱いた関心と、ロシア政府がトリヤッチで社会的爆発を起こしたくないと望んだため、AvtoVAZは破産しないで済んだ。とりわけ、政府は、経済危機発生後、600億ルーブル以上の直接的資金を注ぎ込んだ。ルノーがアリョーシン社長および経営陣の退任を望んだため、ノリリスクニッケル社出身のI.コマロフが新社長に就任し、それ以来ルノーとの協力の下で新たな発展の道を歩み始めている。


ロステフノロギーを「開発公社」に転換へ

No.0091 2011年7月16日

 ロシアに、国家コーポレーション「ロステフノロギー」という国策会社がある。このほど同社で、2020年までの戦略という文書が承認され、組織形態を国家コーポレーションから「開発公社」に転換する方針が打ち出されたという。やや古くなってしまったが、2011年6月29日付の『コメルサント』紙が報じているので、記事を要約しておく。

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 ロステフノロギーは、国家コーポレーションというステータスを保持する方法を見出した。同社は「開発公社」に衣替えをし、自社傘下の20社以上の株式を公開、その時価総額は計1.5兆ルーブルに上る見通しである。これは、ロステフノロギーの理事会でこのほど承認された2020年までの発展戦略のなかに記されている。大統領補佐官のA.ドヴォルコヴィチは、国家コーポレーションの枠組みを再三批判しているが、この戦略については「何も聞いていない」と発言した。

 戦略によれば、「開発公社」という形態の主目的は、傘下にある企業を基盤に、ワールドクラスの国際産業コーポレーションを創設し、市場参入することである。A.セルジュコフ国防相を議長とし、E.ナビウリナ経済発展相、V.フリスチェンコ産業相、V.プリホチコ大統領補佐官が名を連ねる理事会がこのほど承認した。ただし、開発公社に衣替えをするといっても、ロステフノロギーの株式会社化の方針に変わりはなく、戦略によれば、ロステフノロギーはこれまでの予定通り、2014年に公開型株式会社に改組される。

 一連の国家コーポレーションを公開型株式会社にする必要性は、そうした形態には将来性がないとして、2009年にメドヴェージェフ大統領が表明した。それ以来、2000年代に設立された全部で7つの国家コーポレーションは、独自の改組の準備を始めた。最初に法的形態を変えたのは、2011年1月1日付で公開型株式会社に転換したロスナノであった。

 戦略によれば、現時点でロステフノロギーの産業資産を基盤に、24の持ち株会社が設立されている。うち9は国防産業に属す(「マシノストロイーチェリ」「バザリト」「スラヴ」「プリボール」など)。11は戦略的重要性を帯びた民需および汎用分野に属す(「ロシア・ヘリコプター」「RTビオテフプロム」「合同造船公社」「シリウス・コンツェルン」など。2は非戦略部門の民需に属す(「RTアフト」「RTストロイテフノロギー」)。さらに2が、非専門分野または問題分野に属す(「RT冶金」「イジマシ」)。「市場における条件が良好なら」、軍需関係の各持ち株会社におけるロステフノロギーによる出資比率は、今後5〜7年で50%+1株にまで低下する。汎用分野では同じく20%+1株、非戦略的な民需分野では0〜25%となる。非専門分野または問題分野に関しては、資産のリストラ・財務健全化の後に、ロステフノロギーから切り離し、問題資産に関しては当該持ち株会社の管理下に移す。

 ロステフノロギー傘下各社のIPOは、2014年に開始する予定。最初は最も投資魅力の高い2〜3の持ち株会社の株が放出され、民営化のピークは2016〜2020年になり、この時点ではすべての持ち株会社のIPOが実施される。ただし、完全に国家発注や国家支援に依存しており、ゆえに資本化が不可能なものは除外される。しかし、その数や、具体的な名前は、戦略には明記されていない。また5月にIPOが延期された「ロシア・ヘリコプター」のIPO実施時期についても、ロステフノロギーはコメントしていない。

 今回の戦略を起草したのは「ストラテジー・パートナーズ・グループ」というところだが、そのA.イドリソフ氏によれば、ロステフノロギーの改組につき最初は3つのビジネスモデルが検討されたという。すなわち、@投資ファンド、A産業公社(イタリアのFinmeccanicaのようなもの)、B開発公社(中国のSASAC=The State-owned Assets Supervision and Administration Commissionのようなもの)の3案であった。イドリソフ氏らは、国家的な課題を執行することがロステフノロギーの生命線であり、これは特別かつ商業的な目的とは反することから、Bを選ぶことを理事会に助言した、という。

 イドリソフによれば、ロステフノロギーの構造は、2003年に設立された中国のSASACに最も近い。SASACには、中国のほぼすべての国有企業、すなわち約200の大規模持ち株会社、15万の主に赤字企業が加入している。Aの産業公社という形態では、20以下の相互に関連したセクターを扱うのが普通である。それに対し、ロステフノロギーやSASACは、分野が多様であり、お互いにシナジー効果がないバラバラの資産である。しかも、下位持ち株会社として資本化した方が時価総額がずっと大きくなり、シナジーのないコングロマリットではそれが半減してしまう(?)。

 専門家のS.カラバエフによれば、「開発公社」といった概念はロシアの法令にはなく、国家コーポレーション「ロステフノロギー」がそうであったように、開発公社「ロステフノロギー」の活動も特別法によって規定されることになると見られる。ロシアにはすでに1つの開発公社があり、それは「対外経済銀行」であり、同社は特別な連邦法にもとづく国家コーポレーションとして存在している。ただ、いずれにしてもロステフノロギーは株式会社化されるので、民法や株式会社法も適用されることになる(とくに会計報告)。国家コーポレーションを、民法に規定のある組織形態の一つに改組することは、ロシアの市場経済の発展にとって重要な一歩であると、カラバエフは指摘した。


ロシアで相次ぐ大事故

No.0090 2011年7月13日

 先日ロシアでは、北部のカレリア共和国というところで大きな航空事故があった。ウィキペディアの記事をそのまま拝借すると、6月21日に、ロシアの航空会社ルスエアーのTu-134型旅客機(乗客乗員52人)が、ペトロザヴォツクの空港に向かっていたが、空港から約1キロ離れた幹線道路に緊急着陸しようとした際に着陸に失敗して火災が発生、50名近くが亡くなったというものである。

 それに続き、7月10日にはタタルスタン共和国のヴォルガ川で遊覧船「ブルガリア」号が沈没する事故が起きた。遊覧船には208人が乗船しており、うち79人が救助されたが、子供を含む多くの人々が犠牲となった。

 さらに、7月11日には、シベリアのトムスクからスルグトに向かっていたアンガラ航空のAn-24機が、オビ川の川岸に緊急着陸しようとして失敗し、現在までに7名の死亡が確認されている。

 こちらのニュースによると、間が悪いことに、メドヴェージェフ大統領が11日の航空機事故についての一報を受けたのは、遊覧船「ブルガリア」号の事故を受けた対策会議の席であったという。大統領は、「私が最近Tu134について述べたことは、同じくらいAn-24についても当てはまる」と述べた。大統領は、先のペトロザヴォツクのTu-134機事故を受け、2012年からTu-134機の運航を取り止めるとの指令を発令していたが、An-24についても同様の立場を示した形だ。

 なお、Tu(ツポレフ)-1341960年代から運航されている双発のジェット旅客機で、1984年に製造は終了しているから、現在飛んでいる機体はいずれも製造から四半世紀以上経過していることになる。一方、An(アントノフ)-241960年が初飛行という年代物のプロペラ機で、現在は300機程度が現役として残っているという。

 むろん航空機事故はロシアにとって災厄であるが、メドヴェージェフ政権としてはそれを契機に旧式の航空機を廃棄し、No.0084で紹介したような新型機への切り替えを加速し、もって経済近代化をより一層推進していくという思惑もあることだろう。


モスクワの金融センターは世界68位

No.0089 2011年7月2日

 このところ、このコーナーでモスクワ国際金融センターに関する情報を取り上げてきたわけだが、月報用に当該テーマに関するコラムを書き終えたので、それももう終わりだ。で、調べ物をしている過程で、ZYENという会社が発表している国際金融センターの世界ランキングというものがあることを知った。2011年3月に発表された最新版は、こちらからダウンロードできる。

 これによれば、国際金融センターの最新世界ランキングは、以下のようになっている。

1.ロンドン

2.ニューヨーク

3.香港

4.シンガポール

5.上海

5.東京

7.シカゴ

8.チューリッヒ

9.ジュネーブ

10.シドニー

10.トロント

12.ボストン

13.サンフランシスコ

14.フランクフルト

15.深セン

16.ソウル

17.北京

17.ワシントンDC

19.台北

20.パリ

 そして、モスクワは、だいぶ飛んで、68位ということになっている。ちなみに、その下の69位にサンクトペテルブルグが入っている。上位への道程は厳しそうだ。


メドヴェージェフ予算教書の12ポイント

No.0088 2011年6月30日

 ロシアのメドヴェージェフ大統領は6月29日、20122014年の予算教書に署名し、政権幹部の会合でそれに関し発言した。こちらのサイトで、発言のテキストを読むことができる。

 このなかで、メドヴェージェフ大統領は、当面ロシアが追求すべき財政政策の12の主要な方向性があるとして、それを列挙している。以前も述べたように、「メドヴェージェフは物事を列挙するのが好き」というのが私の持論だが、またもやその得意技を披露した形だ。

 メドヴェージェフ大統領は、「新たな3ヵ年予算は、新たな成長モデルの始動を促し、リスクを低下させ、マクロ経済の安定性を保証するものでなければならない。ゆえに、我々は一連の方向性につき体系的な措置を実施しなければならない。それらは12項目存在する」として、以下のような12項目を挙げている。

1.予算計画と、その他の様々な長期計画を、一体化させる。

2.2015年以降、石油ガス収入の利用にルールを設け、連邦財政の赤字規模に制限を設定する。

3.企業が支払う社会保険料率を引き下げる。

4.ロシアの税制は、経済のグローバル化という状況下で、今日の要請に適うものでなければならない。

5.財政政策は生活の改善に向けられるべき。

6.国・自治体によるサービスを向上させる。

7.経済における国家の役割を低下させる。インフラや安全保障関連は別。

8.国家調達制度を抜本的に改革する。

9.官民パートナーシップ。ロシア直接投資基金、輸出信用・投資保険庁を始動させる。

10.本年中に財政法典に修正を行い、予算の監督を厳格化する。

11.地域および地方自治体の権限を増やす分権化。

12.ロシア政府は、電子予算、すなわち公的資金の管理に関連する統一的な情報システムを導入すべき。


アルメニアにとって関税同盟は無意味

No.0087 2011年6月30日

 ロシアを中心とした3ヵ国関税同盟に関し、アルメニアの首相がコメントしている記事を見付けたので、内容をまとめておく。6月8日にウィーンで開かれた国際フォーラムの「ロシアについての見方」というセッションで、T.サルキシャン・アルメニア首相は以下のように発言したとのこと。

 いわく、これまでも我々が再三立場を明らかにしてきたとおり、3ヵ国関税同盟にアルメニアが入るのは無意味である。それは経済的な理由による。アルメニアは2003年からWTOに加盟しており、相当にリベラルな税制、輸出入政策が実施されている。また、アルメニアは関税同盟諸国と国境を接しておらず、第三国を経由して取引を行い、関税業務をしなければならない。世界では、共通の国境を持たない国同士が関税同盟を結成したり、それに加入したりした例はない。しかも、もしも加入するとしたら、我が国の関税率をすべて関税同盟のそれに合わせなければならず、その際の経済構造に及ぶ影響は想定が不可能なほど。


モスクワ新都心+金融センター構想、是か非か

No.0086 2011年6月29日

 No.0081、No.0083の続きで、しつこくモスクワ国際金融センターの話をさせていただく。メドヴェージェフ大統領は先日、モスクワの郊外に 新都心的なエリアを形成し、そこにモスクワ国際金融センターの拠点も置きたいという構想を示したわけだが、こちらの記事に本件に関する民間の専門家のコメントが出ているので、その要旨をまとめておく。

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 D.ソコロフ(Cushman & Wakefield社の調査・戦略コンサルティング部長):国際金融センターとは、何か抽象的・人工的なものではなく、金融セクターの企業向けに条件が整えられ、ロンドン・ニューヨーク・モスクワとどこで仕事をしても条件が同じになるようにすることである。ただし、ロシアには特殊事情があり、大手金融機関は、省庁や国営企業の近くにとどまらなければならず、何らかの形でモスクワの中心に居を構えることにならざるをえない。金融センターは、大資本を管理する会社や人々で埋まるので、彼らにとっては時間と移動がきわめて重要であり、この点でも金融機関のオフィスの立地が決まってくる。モスクワにおいて、国際金融センターにふさわしいのはモスクワ・シティーであり、また地下鉄ベラルーシ駅界隈やナミョートキナ通りである。ベラルーシ駅界隈では、コンサルティングや法務関係の企業が集中している。ナミョートキナ通りでは、資源会社が集中している。シティーでは、銀行や金融機関。だが、その際に肝心なのは、各クラスターが最終的に形成されるのには、15〜20年の月日が必要ということである。そうしたセンターを人為的にゼロから形成するのは、きわめて困難だ。国際金融センターが形成されうるとしたら、国家機関が(モスクワ市と州の境界となっている)外環状線の外側に移転した場合に限られるだろうが、国家機関がそれに応じるとは思えない。モスクワの交通渋滞が激しいのは、主に金融機関や資源会社のバックオフィスに原因がある。それらのバッオフィスをモスクワ郊外に移転させれば、モスクワ金融センターに残るフロントオフィスが、道路事情に悪影響を及ぼすことはないであろう。

 A.ザクレフスキー(Knight Frank社の上級副社長):モスクワ国際金融センターは、それに打って付けなモスクワ・シティに置かれるべきだ。世界の先進国と同じように、バックオフィスは郊外に、ビジネスセンターはメガロポリスに集積、という形になるべき。モスクワ・シティ以上の場所はなく、シティはまさにそのためにつくられた。現時点の課題は、モスクワ・シティのレベルと、国際ビジネスセンターにふさわしいものにすることである。一両年中は、シティには世界の主要企業をすべて入居させる面積が充分にある。しかも、大シティには、さらに1,000haを追加建設する余地がある。交通問題を解決する必要があるが、それは問題ではなく課題である。モスクワにはその他のビジネスセンターはありえない。

 S.スタナフォード(CB Richard Ellis社のロシア支配人):国際金融センターが国家機関と隣接している必要は必ずしもないが、市内になければならないことは間違いない。米カリフォルニアでは、皆サンフランシスコやロサンジェルスに住み、州都のサクラメントのことなど知らない人すらいる。必要なのは、オフィスの近くに、従業員が住みたいと思うような場所があることである。たとえば、UBS銀行がニュージャージーの辺鄙なところにオフィスを建てたが、現在従業員離れに苦しんでいる。モスクワの金融センターも、ホテル、公園、劇場、レストランのあるところでなければならず、シェレメチェヴォ空港やドモジェドヴォ空港の近くというのは駄目である。

 Yu.ニクリチェヴァ(Jones Lang Salle社の戦略コンサルティング部長):国家機関を環状線の外に移転し、そこに金融センターを設けるというのは、充分理に適っている。近年、郊外に複合施設、衛星都市を建設するプロジェクトがいくつか持ち上がっており、その一つを移転先にしうる。モスクワの西の郊外には、役人や実業家のほとんどが住んでいるので、モスクワの西というのが有力な選択肢になる。また、ヴヌコヴォおよびシェレメチェヴォ空港へのアクセスも良いので、西側企業の社員にも好都合だし、バックオフィスの職員の通勤も難しくない。西方には地下鉄も2路線伸びている。


関税同盟で関税の配分をめぐって悶着

No.0085 2011年6月28日

 こちらの記事が、ロシア・ベラルーシ・カザフスタン関税同盟で、関税収入の配分をめぐる悶着が生じていることを伝えている。要旨は以下のとおり。

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 関税同盟では、2010年9月1日から、関税収入が3国の間で以下のように配分されることになっている。ロシア:87.97%、ベラルーシ:4.70%、カザフスタン:7.33%。事務局である関税同盟委員会のデータによれば、2010年9月から2011年3月までに120億ドルの関税収入があり、ロシアが105.77億ドル、ベラルーシが5.65億ドル、カザフが8.82億ドルを受け取った。関税同盟事務局の5月の発表では、関税収入の配分、各国国庫への納入につき問題は生じなかった、とされていた。

 しかし、ロシア連邦関税局のA.ベリヤニノフ長官は、不適切な関税業務により、ベラルーシとカザフはロシアに対し220億ルーブルのみ未払いを生じさせており、ゆえに配分比率をロシアに有利な方向で変えるべきだと発言した。これに対しベラルーシ国家関税委員会は、不適切な関税業務という指摘は現実に合致しておらず、配分比率を変更すべきではないとの立場。カザフ財務省は、ロシアに対する未払いなど存在せず、何を指摘されているのか理解できない、としている。

 ベリヤニノフ・ロシア関税局長官によれば、ベラルーシ63.8億ルーブル分、またカザフは155.7億ルーブル分、ロシアに対する未払いを起こしている。ロシア側によれば、その原因はベラルーシ・カザフ両国の不適切な関税業務にある。それゆえに、配分比率の変更という、思わぬ提案が飛び出したわけである。

 ロシア関税局のデータによれば、関税同盟諸国は2010年9月1日から2011年6月9日までに5,310億ルーブルの関税収入を配分した(約190億ドル)。ロシア関税局のV.イヴィン分析部長によれば、ベラルーシはそこから250億ルーブルを受け取り、カザフは390億ルーブルだった。ロシアの取り分は4,670億ルーブルと大きいので、そこから220億ルーブルが「盗まれた」にしても、それほど死活的ではない。しかし、ベラルーシとカザフの本来の取り分からすれば、250億ルーブルというのはかなり大きな数字である。

 ベラルーシ関税国家委員会では、ロシアの同僚の指摘を「不正確で、関税同盟の法令を無視している」としている。ベラルーシ側によれば、配分比率は当時の実情にもとづき関税同盟委員会方法論により決まったものだ。むしろ、現在ロシアは過度に受け取るようになっている。というのも、ロシアの輸入は増大しており、その関税はロシアで支払われるが、その後の商品の一部はベラルーシに流入している。つまりそれらの輸入は実際にはベラルーシの輸入であり、その関税収入はベラルーシの財政に繰り入れられてしかるべきだ。ベラルーシの関税業務が不適切だというのも誤りで、現にEU調査団もベラルーシの関税業務の質は高いと評価している。これがベラルーシの言い分である。

 カザフも未払いを認めていない。債務など存在しない。配分は自動的に、毎日行われており、いかなる漏れもない。ロシアが何のことを言っているのか、理解できないと、B.ジャミシェフ・カザフ蔵相は語った。


アエロフロートがスホイ・スーパージェットを調達

No.0084 2011年6月28日

 アエロフロート・ロシア国際航空から、ニュースレターが届いた。それによれば、同社ではこのほど、国産の小型ジェット旅客機「スホイ・スーパージェット-100」を調達したということである。ロシアの産業政策の観点から重要であり、また個人的にもロシア出張などの際に利用する可能性もあるので、やや安直だが、ニュースレターの記事を以下そのまま転載しておく。

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 2011616日、アエロフロートはロシア製のリージョナル・ジェット「Sukhoi SuperJet 100」を導入しました。アエロフロートのSSJ-100による初飛行はモスクワ発サンクトペテルブルグ行、SU1839便でした。同機はソ連時代の伝説的なパイロットにちなみ、ミハイル・ヴォドピヤノフ号と名づけられました。総座席数は87席(ビジネスクラス12席、エコノミークラス75席)となっており、最大航行距離は2300kmです。記念すべき初便にはロシア連邦副首相セルゲイ・イワノフ氏、ロシア連邦経済発展相エリヴィラ・ナビウリナ氏、ロシア連邦副運輸相ヴァレリー・オクロフ氏、アエロフロート代表取締役社長ヴィタリー・サヴェリエフ、「スホイ・シビル・アビエーション」社ミハイル・ポゴシャン社長が搭乗しました。同機が到着したサンクトペテルブルグ・プルコヴォ空港では歓迎セレモニーが行われました。アエロフロートはすでにSSJ30機発注しており、今後更に10機を発注予定です。今後はモスクワ〜ペテルブルグ線、モスクワ〜カザン線、モスクワ〜ニージニー・ノブゴロド線、モスクワ〜ウファ線、モスクワ〜サマーラ線で順次導入予定です。また将来的には国際線での運用を開始する予定です。


メドヴェージェフ大統領、「国際金融センターは最優先事項」

No.0083 2011年6月28日

 No.0081の記事の続き。モスクワに国際金融センターを設けるための準備会合が3月に開催されており、その際のこちらのニュースの内容をまとめておく。

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 準備会合でメドヴェージェフ大統領は次のように語った。モスクワにおいて国際金融センターを創設することは、国内の経済発展の課題を解決するだけでなく、ロシアをグローバルな金融マーケットの主要プレーヤーにするうえでも助けとなる。国際金融センターが機能を始めたら、どれだけ我々の経済的な展望が広がり、それが近代化にとって有益か、我々は理解している。金融センターには、グローバルな規模の意義がある。今日、金融のビッグプレーヤーたちは、グローバルな金融システムになるべく大きな影響力を行使しようとしている。その際に各国が追求している目的は一つであり、それは自国の金融安全保障を確保することである。ゆえに、国際および地域金融センターは、国の影響力と課題解決の最も効果的なセンターにとどまるのである。ロシアにとって、金融安全保障というのは単なるスローガンではなく、ゆえに我が国はG20の枠組みで活発に動いているのであり、またやはり同じ理由で自前の国際金融センターを設けようとしているのだ。国際金融センターは、我が国の発展における疑いのない優先事項だ。その成功は2つの課題にかかっている。第1に、国際金融センターの金融制度設計である。ロシアには、すべての種類の金融手段が整備されなければならない。財務報告基準に関して、国際的な基準を導入すべきであり、それによりグローバルな金融システムの形成への参加の度合いが改善される。第2に、モスクワ国際金融センターの都市インフラである。とりわけ交通問題があり、この点は国際金融センター云々は抜きにしても解決されなければならない。

 一方、大統領から準備作業を急ぐように迫られている政府の側では、クドリン副首相・蔵相が次のように述べた。政府は国際財務報告基準を本年中にロシアに導入すべく、基本的にすべての措置を準備している。国際財務報告法が採択され、銀行や保険会社の有価証券を発行するコンサル・グループや会社の財務報告の評価に適用されることになっている。ロシアで現在適用されているスタンダードの一部は、すでに国際スタンダードに近付けられている。だが、国際スタンダードをロシアの現実に適合させるために、政府としては今しばらく、1月1日まで猶予がほしい。政府が期限どおりに作業を完了すれば、2012年から国際財務報告基準が適用されることになる。

 他方、国際金融センターが形成されるモスクワ市では、ソビャニン新市長が就任するとただちに、大統領の指摘した都市インフラ・交通の問題の解決に優先的に取り組むことを迫られた。モスクワ市は14の優先的プログラムを策定した。最大の課題は、やはり公共交通の発展である。ただし、ソビャニンは、他の国際金融センターも常に発展を続けているのであり、モスクワ市のランキングがすぐに上がるわけではないと述べた。

 なお、メドヴェージェフ大統領は、金融市場における国家管理を改善するための大統領令に署名している。これにより連邦保険監督局は、連邦金融市場局に吸収され、後者が保険監督業務も果たすことになった。


マトヴィエンコ市長を上院議長に祭り上げか

No.0082 2011年6月28日

 ロシアでは、サンクトペテルブルグ市議会が連邦上院に派遣しているS.ミロノフ氏が、上院議員を務めてきた。しかし、野党「公正ロシア」党首である同氏が、ロシア現政権およびマトヴィエンコ・ペテルブルグ市長に批判的な発言を行ったことから、ペテルブルグ市議会は5月18日にミロノフの上院議員としての資格を任期満了前に取り消す決定を下し、それ以来連邦上院議長が空席となっていた。そして今般、マトヴィエンコ・ペテルブルグ市長を上院議長に据えるという案が浮上した。これは表向き、ハミトフ・バシコルトスタン大統領を中心とする7人の地域首長が共同でメドヴェージェフ大統領に提案したものとされている。しかし、(日本の国会両院議長と同じで)ロシアでも上院議長は「上がりのポスト」ということらしく、マトヴィエンコ市長も権力のある地位から遠ざけられるというニュアンスが強いようで、その背景には与党「統一ロシア」の支持率がペテルブルグで低いことがあるという。以上についてはこちらの記事などが伝えている。

 マトヴィエンコを上院議長に祭り上げるという観測につき、現地シンクタンク「政治工学センター」のA.マカルキン副社長は、こちらのサイトで以下のようにコメントしている。

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 マトヴィエンコを上院議長に据えることによって、いくつかの課題を解決できる。

 第1に、(連邦下院および大統領)選挙を前に、ペテルブルグの市長を交代させられること。この課題を解決しなければならないのは、当地においてマトヴィエンコが毀誉褒貶が激しいからだ。彼女は野党、とりわけ「公正ロシア」から批判を浴びており、公正ロシアのペテルブルグ支部長はカリスマ性のあるO.ドミトリエヴァである。新しい市長が就任すれば、就任時の信任の貯金があるので、当面批判が難しくなる。

 第2に、かつて副首相を務めたというマトヴィエンコのステータス自体が、連邦レベルで数多くのコネクションを有している。マトヴィエンコは政治の世界に足を踏み入れたのがより古いので、プーチンの側近というわけではないが、それでもマトヴィエンコはプーチンと良好な関係を築くことができ、プーチン大統領時代のクレムリンはマトヴィエンコをペテルブルグ市長選で推した。

 第3に、メドヴェージェフ大統領が再出馬するうえで、様々な可能性が生じる。つまり、ペテルブルグ市長の人選や、その他の地域の人事の可能性が出てくる。おそらくペテルブルグ市長には、モスクワにいるペテルブルグ出身者で、現在連邦の要職を占めている人物が就任することになろう。それにより、連邦レベルで、少なくとも1つの空きポストができる。メドヴェージェフは、こうした人事を、自らの支持者を増やす手段として活用できるのだ。


モスクワ国際金融センターのメリット

No.0081 2011年6月26日

 No.0059、No.0077、No.0078の記事で言及したとおり、メドヴェージェフ・ロシア大統領が力を入れている政策に、モスクワにおいて国際金融センターを創設するというものがある。こちらのサイトで、A.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官が、そのメリットについて語っているので(既存の国際金融センターである香港訪問時に語ったもの)、補佐官の発言要旨を以下のとおりまとめておきたい。

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 モスクワ国際金融センターには、いくつかの利点がある。

 まず、ロシアには地理的な特性がある。香港とロンドンの間に位置しており、1日24時間のうち、ピーク時の処理量の一定部分を引き受けることができる。金融市場は休みなく機能しなければならないのであり、モスクワはこのニッチを埋めることができる。また、モスクワの市場を、近隣諸国、パートナーが活用することができる。

 第2に、我が国の天然資源がある。ロシアの証券市場でエネルギー大手の株式や債券を取引できる可能性は、多くの人にとって大いに関心があるだろう。

 第3に、ロシアにおける民営化の新たな波が挙げられる。大手企業の国家保有株が売りに出されることになる。これにより、ロシア市場への関心が高まることは自然の成り行きだ。

 現在、預金および清算に関する規則を制定する作業を行っている。2つの取引所を接続する作業も進んでいる。これらにより、ロシアの取引所における活動条件が改善されることになろう。

 ただし、モスクワが世界の国際金融センターのランキングにおいて占める順位を高めるために、明確な目標期限が設けられているわけではない。いずれかの時点で高い順位に達するとは思うが、それがベスト30なのか、20なのか、10なのかは、我々の働き次第だ。かなり早い時期にベスト20入りできるチャンスは大きいと思う。そこからの前進は、きわめて困難なものになるだろう。

 以上がドヴォルコヴィチ大統領補佐官の発言要旨であった。一方、モスクワ金融センター創設作業グループのA.ヴォロシン・グループ長は、モスクワが順位を上げるうえで香港の経験はきわめて有益である、ロシアは香港のような指標を4〜5倍速く達成したい、モスクワの最大の問題はインフラである、と述べた。ただし、ヴォロシンは、ロシアの条件は香港とは違うので、香港とまったく同じ形にはならない、国際金融センターは当該国の経済と切り離せないと指摘。たとえば、香港にはオフショアビジネスの要素があるが、モスクワではそれを認めることはできないと、ヴォロシンは述べた。


キルギス、タジクが関税同盟加盟申請

No.0080 2011年6月23日

 ロシアそのもののニュースではないが、ロシアを中心とした関税同盟の話なので、とりあえずこのコーナーに。こちらの記事にあるとおり、2011年3月、キルギスとタジキスタンが、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの3国から成る関税同盟への加盟を申請した。

 それに関連し、最新の情報によると、キルギスのR.オトゥンバエヴァ大統領は、キルギスはロシア・ベラルーシ・カザフスタンの関税同盟にすぐに加入することはないだろうと発言した。現在のところ、加入がもたらす影響につき、シミュレーションができていないからである。しかし、大統領は、加入には道理があり、それはカザフにしてもロシアにしても市場がしっかりとしており、それは商品市場だけでなく労働市場しかり、資本市場しかりであるとも述べた。いずれにしても、本件に関しては、キルギス政府が決定を下すことになる。4月初頭、キルギスの関税同盟および統一経済空間加盟に関する省庁間委員会が活動を始めたが、その際にA.アタムバエフ首相は、キルギスが1月1日から統一経済空間に加入すると発言していた。また、U.タシバエフ経済管理相は、5月および9月に関税同盟諸国と会合を開き、その後にキルギスは関税同盟加盟協定を批准することになると発言した。2011年初めにロシアはキルギス向けの石油製品輸出関税を廃止した。200710月6日にロシア・ベラルーシ・カザフスタンが統一関税空間および関税同盟の創設に関する条約を締結し、2010年7月に発効した。7月1日には3国の内部で相互の関税ポストおよび国境のシンボルが撤去されることになっている。ロシア・カザフ国境では入管だけだ残り、関税業務は関税同盟の外部国境で行われることになる。


クドリン副首相・蔵相が軍事費拡大を批判

No.0079 2011年6月22日

 こちらの記事によると、ロシアのクドリン副首相・蔵相はメドヴェージェフ大統領の言動に一貫性がないとして、それに批判的な見解を示した。クドリンによれば、クレムリンは政府に身の丈に合った財政歳出を求める一方、軍事費を拡大しようとしている。クドリンはこの誤りを正すべく、メドヴェージェフ大統領に面談を求めている。とりわけ、サンクトペテルブルグの経済フォーラムにおけるメドヴェージェフ大統領の演説を聞いて、クドリンは危機感を抱いたという。過去半年に軍事費をGDP1.5%分拡大する決定を下したのは、まさに大統領であった。クドリンは「私はそれに反対である」と明言している。

 クドリンは5月24日の政府会合で行った報告でも、将校および職業軍人の増員に反対する姿勢を示し、それにより毎年1,598億ルーブルを節約できるとした。それのみならず、財務省は、3年間で軍の規模を15%縮小し、兵器調達を毎年1,000億ルーブル縮小し、内務省の維持費も2012年に970億ルーブル、2013年と2014年に各991億ルーブル縮小することを提案している。財務省の試算では、合計すると3,862億ルーブルの追加支出を断念することになり、これは歳出額の3%に相当する。なお、2011年のロシアの国家安全保障支出は1.5兆ルーブルだが、プーチン首相は今後10年間で合計20兆ルーブルを支出し装備を充実させると発言していた。

 専門家の指摘によれば、クドリンの立場には一理あり、というのも社会保険料率が引き上げられた結果ビジネスは地下経済化する一方、軍事費が引き上げられているからである。その結果、ロシアはますます資源価格に依存するようになった。連邦議会選挙、大統領選挙と続くなかで、歳出の削減は、社会的不満の増大につながる可能性がある。

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 関連した話題として、こちらの記事によれば、メドヴェージェフ大統領が社会保険料率の引き下げを早急に実施するように政府に求めており、プーチン首相がその政策を剽窃して「手柄」を横取りしようとしているなか、クドリン副首相・蔵相は引き下げに反対し、実施するとしても1年(つまり選挙後に)先送りにすることを主張している。その際に、クドリンは直接メドヴェージェフを批判するのではなく、主に政府を批判している。クドリンはプーチン首相に、最後通牒を突き付けている。クドリンはまた、多くの省庁が自らの管轄分野を支援するために予算を増額要求している状況に、危機感を募らせている。かくして、クドリンとメドヴェージェフの関係は、ますます微妙なものとなっている。両者の人間関係が疎遠であるのは有名で、税制や、経済成長および近代化のために公的資金を利用することについても、両者の見解は異なる。他方、省庁のロビイズムに対抗し、民営化を加速し、経済における国家の役割を低下させるためには、両者は同盟を組まざるをえない。クドリンがプーチンの側近中の側近であることを考えれば、重要問題についてクドリンとメドヴェージェフがイデオロギー的に近いとしても、両者が共闘するという保証はない。それでも、プーチン内閣にリベラル派がいるという事実は、大統領にとってのプラス材料だ。以上が記事の要旨である。


メドヴェージェフ大統領、首都機能の郊外移転提唱

No.0078 2011年6月20日

 No.0077の記事で紹介したように、ロシアのメドヴェージェフ大統領は6月17日、サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで演説を行った。そのなかで、メドヴェージェフ大統領が、投資環境改善策の一環として、首都モスクワ市と、その郊外部分に相当するモスクワ州の境界を見直し、連邦の行政機構のかなりの部分をモスクワ市の拡張部分に移転させるということを提唱し、話題となっている。メドヴェージェフ大統領の当該箇所の発言は、以下のとおり。

 「モスクワ金融センター創設のために、モスクワ・メガロポリスの発展を改善し、また単におびただしい数の国民の生活を容易にするために、モスクワ市の境界を拡張することも検討に値するかもしれない。つまり、従来のモスクワの境界を超えた首都連邦管区を創設すること、さらには連邦レベルの行政機能と、それに関連し国家機関のかなりの部分も従来の境界外に持っていくということである。」

 実は、私(服部)自身、ロシアにおけるモスクワの位置付けは特殊すぎるので、中央連邦管区とは別に、モスクワ市とモスクワ州から成る「モスクワ連邦管区」といったものを設置したらいいのではないかと考えていた。今回のメドヴェージェフ大統領の提案はそれに一脈通じるものだが、大統領の案はモスクワ市を拡張し、現在「特別市(正確には「連邦的意義を有する市)」というステータスのモスクワ市を、モスクワ連邦管区に格上げするものらしい。領土の一部を切り取られたモスクワ州は、そのまま中央連邦管区にとどまるということのようだ。メドヴェージェフ大統領としては、2012年大統領選をにらみ、派手な花火を打ち上げることで、強いリーダーであることを誇示しようとしているのかもしれない。ただ、本件を、モスクワにおける 国際金融センターの創出という文脈で唱えている点には、やや唐突感があることは否めない。

 この大統領の新提案に関し、こちらのサイト、T.スタノヴァヤ女史という論者が論評しているので、その要旨をまとめておく。

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 メドヴェージェフ大統領の今回のモスクワ市拡張・連邦機能移転に関し、ソビャニン・モスクワ市長は、これはモスクワ市と州の合併ではないとしている。その実現には、新たな線引きという難問があり、市と州の論争や野心を考えれば、容易ならざる道程となろう。

 市と州の境界の問題は、最初から困難なものだった。市は急激に発展し、すべての近隣地域からあらゆるものを引き付ける引力を発揮した。市と州の社会・経済水準およびインフラ発展度の格差により、常に問題が生じた。州の住民は、市で就職・就学しようとし、これはたとえばそれでなくても幼稚園や学校の不足に苦しんでいる市の住民を苛立たせた。州は、社会保障プログラムでも、インフラの発展でも、幼稚園や学校の建設でも、まったく市にかなわなかったのだ。それでも、市と州の経済がきわめて密接に結び付いた状態が続き、ルシコフ前市長などは、市の交通問題が解決しないのは州のせいであるとして、州行政府を非難したりした。

 他方、もう発展のための場所がない市は、州で建設工事のための土地を買って、州にある種の「飛び地」を形成してきた。市ではこれまでずっと給与も年金も高く、優遇措置も充実してきたので、市居住証明を保持していることは最低限の社会保障が約束されていることを意味した。

 市と州の合併の議論も、唱えられて久しい。ところが、地域の大合併が推進されていた時期でさえ、本件は最も信憑性が低かった。2009年には、グロモフ・モスクワ州知事に代わって、当時官房長官だったソビャニンが州知事に就任し、同氏に市・州合併交渉が委ねられ、最終的には合併地域の首長になるといった噂が流れた。だが、事態は違うシナリオに沿って進み、ルシコフ市長とメドヴェージェフ大統領の対立を受け、ソビャニンはモスクワ市長に就任したのだった。市長就任後、ソビャニンは合併の可能性を否定し、本件はしばらく忘れ去られていた。

 今回のメドヴェージェフ案は、合併ではなく、市の境界を広げるというもので、実質的に市が州領土の一部を奪うことを意味する。実現のためには、市・州双方の住民投票で承認され、さらにそれが連邦上院で承認されなければならない。だが、ソビャニンは、住民投票は回避可能であり、おそらく正式な形では境界を変更せずに市が州の土地を買い上げるという方式がとられることになりそうだと述べている。モスクワ市のステータスを「特別市」から「連邦管区」に変更するとなると、憲法の改正が必要になってくる。A.ドヴォルコヴィチ大統領補佐官は、市の拡張は、市の衛星都市が州内に設けられることによって実施されると発言した。今回の大統領案で、州の住民は首都の住民になれることへの期待を抱いたわけだが、ドヴォルコヴィチの言うような拡張方式なら州民は大いに落胆することだろう。

 ソビャニン市長は、市の拡張は、もっぱら連邦機関を市の外部に移転させる問題であるとしている。州内の具体的にどのような場所が市に編入されるのか、今のところ定かでなく、作業は難航しそうだ。市と州の間にはすでにいくつかの領土紛争があり、本件は今回提案された境界変更の過程で解決する必要がある。ソビャニン市長にはより技術的で与しやすい交渉相手が必要であることから、州のグロモフ知事が解任される可能性もある。


経済フォーラムにおけるメドヴェージェフ演説

No.0077 2011年6月20日

 6月1618日、第15回サンクトペテルブルグ国際経済フォーラムが開催された。17日にメドヴェージェフ大統領が、公式セッション開幕に当たっての演説を行った。そのテキスト全文はこちらで読むことができる。主な発言がこちらの記事にまとめられているので、抄訳しておく。

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 本日私は、ロシアの発展プロジェクトについて語る。そのプロジェクトは、今後数年間で誰がどんな役職に就こうとも、社会全体の尽力の賜物で、実現するはずである。

 汚職の克服、効率的で公開的な権力なくして、資源への依存からの脱却と、生活水準の向上は、おぼつかない。資源価格の国際市況に翻弄されることは、我が国の長期目標に合致しない。

 近代化政策は、小さくはあるが、最初の成果を挙げ始めた。2年間でブロードバンドインターネットに接続している家庭の数は倍増し、ロシアは1年間の宇宙機器の打ち上げ数でトップとなっている。世界の製薬、エネルギーの大手企業は、すべてロシアに進出している。ロシアは、ポスト・フクシマの基準を満たした原子炉を建設している。スコルコヴォのようなプロジェクトは、大規模な変革のメカニズムを作動させるための火花のようなものだ。変革のスピードを上げるために、私は多くの知事を入れ替えた。たとえば、モスクワ市では新指導部が建設事業に必要な規制の数を半減させた。

 ただし、一定の成果にもかかわらず、近代化が難航していることは事実である。それを加速するためには、次のような措置が必要だ。

 第1に、国有資産の民営化を拡大する。第2に、各レベルの政治権力間の関係を、分権化の方向で改革し、連邦主義を活用する。第3に、司法の質を上げる。第4に、汚職の根絶。第5に、モスクワにおける 国際金融センターの創出を大きく前進させる。そのためには、EUとのビザなし関係、モスクワ市の拡張とそこへの連邦機関の移転および首都連邦管区の創設が一案である(これについては次のNo.0078の記事参照)。

 ロシアで本格的なビジネスを展開する投資家・企業家、またスコルコヴォでのイノベーション・プロジェクトやモスクワ金融センター関連の仕事に従事する向きには、長期ビザを出すことを検討する。

 ロシアは外国投資家への障壁を引き下げ、WTOへの加盟プロセスを完了したい。その後はOECDである。ロシアはWTO加盟を長らく待たされており、許容できないような多くの譲歩を取り付けようとする向きもある。ロシアはあからさまに不利な決定は下さない。諸外国がロシアの加盟を認めないなら、それは悪いシナリオであり、我々はそれを回避しなければならない。

 ロシアにおける社会保険料率を、34%から30%に引き下げ、非商業中小企業については20%とする。あまり大きな引き下げではないが、これはあくまでも過渡的な措置である(これまで2つの案が検討されており、第1案はこの大統領が述べた案、第2案は大企業34%、中企業26%、小企業20%というものだった)。


ペテルブルグの開発プロジェクトは軒並み足踏み

No.0076 2011年6月18日

 私はロシア研究の一環としてサンクトペテルブルグ市の情勢を定点観測的にウォッチしており、かつて同地に建設されようとしている「ガスプロム・タワー」につきこんな記事を書いたこともある。今般、その後日談を含め、ペテルブルグの大規模不動産開発計画が軒並み足踏みしているという趣旨の雑誌記事を見付けたので、要約しておきたい。現地『エクスペルト』誌2011年5月30日号(No.21)の記事で、出所はこちら

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 経済危機の前まで、サンクトペテルブルグでは不動産分野の大規模開発プロジェクトが多数発表されていた。それはたとえば、ガスプロム・タワーであり、市中心部で旧市街を復元する「ニューオランダ」プロジェクトであり、「アプラクシン宮殿」であり、湾における新たな埋立て工事「海の玄関」であった。ロシア初の大規模な中華街「バルトの真珠」の建設すら着手された。しかし、時とともに開発計画は修正され、現在までに完成したものは多くない。コンセプトを変えたり、延期されたり、場所を変えたりしたものばかりである。

 ガスプロム・タワーは「オフタ・センター」と名前を変えつつ、5年間物議を醸し続けてきたが、2010年12月に論争にも終止符が打たれた。オフタから新たな建設地であるラフタへの建設地変更は、ロシア指導部の決定により決まったものである。だが、市民が喜ぶのはまだ早い。新たな建設地はフィンランド湾と海岸街道に挟まれた場所に位置し、14haの敷地を占める(オフタでは5haだった)。この場所は市中心部から9kmの距離にあり、景観保護規制の対象にならない。開発側は、ビジネス、住宅、文化・娯楽施設を兼ね備えたセンターを建設するとしているが、おそらくはオフタで設計されていたのと同じものが建てられるのだろう。施設を誘致することにより、不況地域のラフタ地区は活性化が期待できる。建設者は新しい場所でも、建設基準の高さ規制の例外措置を取り付け、ビルがペテルブルグの景観を汚さないことを証明すべく、市当局と交渉しなければならない。ちなみに、思いがけない障害が一つ持ち上がった。それは、建設地が渡り鳥の飛行ルートに当たるということで、鳥類専門家との交渉も難航しそうだ。

 ニューオランダとアプラクシン宮殿は、ともに再検討中である。前者ではクリス・ウィルキンソンが、後者ではノーマン・フォスターが国際入札に勝利して設計を手掛けたが、両方とも設計を見直すことがすでに決まっている。

 グラヴストロイSPb社によるアプラクシン宮殿建設作業は、予定から3年も遅れている。英国の建築家ウィルキンソンによる設計は、断念せざるをえくなった。これは決して経済危機のせいではなく、プロジェクトが拙速で、行政当局の仕事の仕切りがまずかったため、投資家にリスクと不確実性を与えてしまったものだ。市当局が承認した開発コンセプトでは、30〜40ほどの建物を撤去することになっていたが、2年半に及ぶ歴史・文化調査の結果、アプラクシン宮殿の建設地では歴史的建造物が一つも撤去してはならないと結論付けられたのだ。不動産を所有する市はアプラクシン宮殿の敷地の賃借人を2012年末までに退去させなければならないが、まだそれに着手していない。この現状では、グラヴストロイSPb社が新たな物件を建築するのは不可能であり、既存建造物の修復にならざるをえない。結果、賃貸収入は当初の予定より少なく、逆に建築費は高くなる。

 もうひとつのニューオランダ・プロジェクトは、ゼロからの再スタートとなる。本プロジェクトは、ペテルブルグ市中心に位置し、18〜19世紀の建築群が残っているニューオランダ島の開発計画である。2006年にデベロッパーとして、Sh.チギリンスキーとI.ケサエフのSTニューオランダ社が選定された。しかし、同社が2010年までにやった仕事は、一連の歴史的建造物を「障害になる」として取り壊しただけであり、その結果残った歴史的建造物は5つだけとなった。結局、当初の計画は放棄され、2010年11月に入札をやり直した結果、R.アブラモヴィチのミルハウスの関連会社であるニューオランダ・デベロップメントが落札した。新たな設計はより現実的なものであり、総面積は18万平米から10万平米に縮小され、またフェスティバルホールの建設も義務付けられなくなった。

 ヴァシリエフ島の西の湾を埋め立てる「海の玄関」プロジェクトでは当初、400haの土地が新たに造成され、住宅、オフィス、200メートルの高層ビルを建設することが計画されていた。すでに180haが造成され、32haの区画に旅客ターミナルが設置されている。埋立て作業は2009年に一時的に停止され、需要の変化に合わせて新たな計画が立てられた。開発業者は、すでに造成された土地の開発に集中するとしている。

 例外的に当初のスケジュールどおりに作業が進んでいるのが、VTB銀行グループのプロジェクトである。2010年に複合施設「ネフスカヤ・ラトゥシャ」の一期工事が、市行政府庁舎の近くで始まった。もっとも、本プロジェクトでは、総面積18万平米のうち、11万平米に市行政府が入居することになっており、きわめてリスクの低いプロジェクトとなっている。2012年のオープンを予定しており、二期以降の工事の着手はオフィス需要を見極めて決めるとのことだ。VTB銀行ではまた、「沿岸ヨーロッパ」という複合施設のプロジェクトも推進しており、2012年に建設開始予定である。

 ペテルブルグで最も鳴り物入りで始まったのが、「バルトの真珠」だった。上海華僑の投資会社が開発を手掛け、5つの華僑資本が株主となっている。市南西部のフィンランド湾沿いの開発が遅れた地域205haの本プロジェクトは、2004年に開始され、市内の複合開発を主導する存在になると思われた。中ロ政府間の合意によって生まれた戦略的プロジェクトであり、市行政府からも最大限の行政的・インフラ的支援を受け、新たな火力発電所すら建てられた。2012年までに100万平米以上の住宅、70万平米の商業不動産ができるはずだった。プロジェクト総額は30億ドルとされ、質的にまったく新しい街ができるとされていた。しかし、設計を現地の規制に合わせるのに手こずり、プロジェクトはすぐに停滞した。最初の高級住宅ブロック8.3万平米が竣工したのはやっと2010年6月で、しかもその建築は専門家を落胆させた。住宅の宣伝は2008年から続けられているが、割高感や周囲のインフラの不備がネックとなり、現在までに売れた家は80%にとどまっている(高架鉄道を整備するとの市の約束の実行も遅れている)。中国の投資家は、各事業への共同出資者を募り始めたところだ。


メドヴェージェフのお株を奪うプーチン

No.0075 2011年6月4日

 2012年大統領選に向け、メドヴェージェフ大統領とプーチン首相の水面下の主導権争いが続いている。そうしたなか、最近になって、プーチン首相が、メドヴェージェフ大統領のリベラルな経済政策を取り入れ、言わばそのお株を奪うような動きを見せているようだ。こちらのサイトで、T.スタノヴァヤという専門家がそれに関して論評しているので(5月30日付記事)、論旨をまとめておく。

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 先週プーチン首相は、中小企業の問題に注力し、また自動車の車検の1年間猶予という政策を導入した。これらの政策は、メドヴェージェフ大統領の最近の発言から取り入れたものである。どうやらプーチンは、統一ロシア党の選挙公約の基礎となるべきいくつかのテーゼを、推進し始めたようだ。これまで政府は、大統領の指示を執行していないとか、仕事が遅いとかいうことで、何度となく大統領から批判されてきた。その政府を率いるプーチン首相が今や、メドヴェージェフ大統領のリベラルな政策を熱心に推進し始めたのである。現在は新たな選挙サイクルの開始時期であり、プーチンにとっては公務員や年金生活者だけでなく、中小企業との関係も改善しておくことが必要なわけだ。

 車検の問題に関しては、5月24日にプーチン首相が政府決定に署名した。これは「二兎を射止める」ものであり、マイカーの所有者たちから歓迎されているだけでなく、早急に当該の法案を提出することを求めていたメドヴェージェフ大統領との関係で、時間を稼ぐことも可能になる。

 もうひとつ、プーチン首相がメドヴェージェフ大統領のイニシアティブを横取りしたものとして、社会税の減税案がある。5月26日に第7回ビジネスフォーラム「実業ロシア」で演説したプーチンは、今後の選挙マニフェスト(少なくとも統一ロシア党の党首として)の骨子の一部をプレゼンした。3月末の近代化委員会会合でメドヴェージェフ大統領は、34%という現行税率は多くの業種にとって過重であり、2012年1月1日から引き下げたい旨述べた。大統領の示した期限は、6月1日に切れる。政府では大統領の提案をナーバスに受け止め、政府幹部会合でプーチン首相は、各種社会保障基金の歳入が4,000億〜8,000億ルーブル減額する可能性がるが、それを石油ガスからの移転で補うことは考えないようにと、経済発展省に釘を刺していた。それが、今やプーチンは公然と減税を主張するようになったわけだ。プーチンは明らかに態度を変えており、それにより減税の手柄を自分のものにする可能性が生じる。

 注目されるのは、プーチンが再び、資源型の経済モデルは可能性を使い果たしたと主張し始めたことである。過去2年ほど、そのテーマはメドヴェージェフ大統領の専売特許という観を呈し、プーチン首相にとっては二次的なものと思われた。あるいは、資源セクターへの依存度を軽減するうえで、メドヴェージェフがより深遠な改革を志向し、プーチンは慎重という違いがあるのかもしれない。しかし、現時点で焦点になっているのは、いかにその依存度を軽減するかというよりも、選挙に勝つためのアイディアを見付けることであり、プーチンがかつてのリベラルな言辞に戻りつつあるのも合点が行く。

 もうひとつ、目玉となるのが、「戦略イニシアティブ庁(ASI)」の設置である。専門家は当初から、プーチンによるこの動きを、大統領が推進しているスコルコヴォ・プロジェクトに相当するものだと捉えていた。5月25日、プーチンは直々にASIのプレゼンを行い、ASIは権力とビジネスの仲を取り持つことになると述べた。プーチン首相の報道官のペスコフによれば、ASIは独立した非営利組織で、約50人のスタッフ、年間1億ルーブルの予算をもつことになる。資金は予算外のものとなり、すでに中小企業支援プログラムを有する開発機関や国営銀行が出資する。プーチンが監査役会の会長を務めることになる。プーチンはASIが政治的な意味合いをもっていることは否定しており、周辺も2012年大統領選やスコルコヴォ、「全ロシア国民戦線」とは何の関係もないと説明している。もっとも、ASIは政府付属ではなくプーチン付属という位置付けになり、純然たるプーチン案件であることは事実だ。大統領府の筋では、今後はASIがイノベーション組織として最高峰となり、メドヴェージェフ大統領のイニシアティブは後退することになり、規制権限も資金の流れもASIに集中していくと認めている。もっとも、これは数あるシナリオの一つにすぎず、ASIが行政の圧迫からビジネスマンを守るといった機能を果たすようになる第2のシナリオも考えられるが。

 ロシアの実業界はかなりノンポリであり、権力には、とくに政権党には批判的である。同時に、彼らは実利的であり、落ち目の連中に投票するようなことはせず、そしてリベラル派というのはまさに落ち目の最たるものである。したがって、プーチンはビジネスにアピールするために、新たな諸機構を設置する必要があった。その意味でASIは、「手動統治」、機構の弱さの、端的な表れである。

 車検の規制緩和、減税の支持、ASIの設置は、リベラル政策のセットであり、明白に選挙目的のもので、プーチンがメドヴェージェフからお株を奪ったものである。リベラル政策の剽窃には、2つの意味合いがある。一方では、2人の最高指導者の公式的な立場が、接近するということである。しかしながら他方では、競合の要因も排除できず、プーチンが経済プログラムに行き詰って、大統領の政策からアイディアを拝借した可能性もある。実業界の一部はメドヴェージェフの方に共感を寄せており、プーチンとしては選挙を前にその点を無視できない。問題は、それが統一ロシア党が議会選挙で成功するためだけのものなのか、それともプーチン自身の大統領野心を実現するためのものなのかだ。


「プーチン大統領・クドリン首相」で株価はどうなる?

No.0074 2011年5月26日

 ロシア『RBCデイリー』紙のこちらの記事では、来年プーチン首相が大統領に返り咲き、現副首相・蔵相のクドリンが首相に就任するという予測を示すとともに、それがロシアの証券市場にどう影響するかを展望している。要旨は以下のとおり。

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 メドヴェージェフ大統領は予想に反して、記者会見で再選出馬宣言をしなかった。どうやら投資家たちは、2012年にプーチンが大統領に返り咲き、クドリン現副首相・蔵相が首相に昇格するというシナリオを描いているようだ。ロシアの資源会社などの証券に投資を行っているスウェーデンの投資会社Vostok Naftaが、そのようなリリースを流した。ただし、同社では、現状が維持される可能性も否定できないとしている。

 Vostok Naftaによれば、プーチン大統領・クドリン首相の組み合わせになると、メドヴェージェフ現大統領は憲法裁判所長官に就任することになるという。政治評論家のA.ムーヒンは、注目されることに慣れてしまったメドヴェージェフは、憲法裁長官のような地味なポストでは満足しないはずで、憲法裁、最高裁、最高仲裁裁判所すべてを支配下に置くような司法組織の長になる可能性があると指摘する。

 CFグローバル社のアナリストによると、西側の投資家は、プーチンの大統領復帰を望んでおらず、そのあかつきには株価は横這いとなる。一方、メドヴェージェフが大統領にとどまると、株化は短期的に10%上昇する。アナリストによれば、メドヴェージェフはそのリベラル改革ゆえにロシアにとってより望ましく、プーチンは古い体制を代表している。

 ロシアの証券会社ルネサンス・キャピタルのO.オガニシャンは、選挙の年は証券市場が収益を挙げやすいことを指摘するとともに、クドリンが首相に就任するとなれば非常にポジティブであると述べている。というのも、クドリンは政府のリベラル派のリーダーであり、証券市場にも明るいし、長年政府で働いているので新参者が首相になるよりも市場関係者に安心感が生じるからだ。また、タンデム政権で、誰が政策を決めているのか不透明な状態よりも、プーチンが大統領になった方が投資家にとっても明快だと指摘する専門家もいる。

 政治工学センターのA.マカルキンは、次のように指摘する。投資家はタンデム、2人のリーダーの存在を矛盾した捉え方をしており、資本逃避も生じているし、一部は待ちの姿勢をとっている。企業家たちは、とくに大資本家は、単一のリーダーを望んでいる。

 BNPパリバの専門家は、以下のように指摘。来たる選挙が、ロシアの証券市場に否定的な影響を及ぼすのは事実。これは、どういう選挙結果がもたらされるかに関係しているわけではなく、全般的な不透明感によるもの。これは、選挙には付き物で、ある程度の量の投資が流出するのが普通。2011年1〜4月には、ロシアから約250億ドルが流出したと推計される。

 他方、プーチンもメドヴェージェフもビジネスに関する政策に大差はなく、実業界にとってはどちらが2012年に大統領になっても同じであり、ロシアの真の問題は投資環境の悪さだと指摘する向きもある。


メドヴェージェフ大統領の800人記者会見

No.0073 2011年5月26日

 ロシアのメドヴェージェフ大統領は5月18日、モスクワ郊外のスコルコヴォ・ビジネススクールにおいて、鳴り物入りの大規模な記者会見を開いた。何か大きな発表(とりわけメドヴェージェフ大統領の再選出馬宣言)があるのではないかということで、内外800名もの記者が集まった(うち外国人記者は300人だったという)。会見の模様は、日本語を含む4ヵ国語に同時通訳された。会見での発言はこちらで読むことができる。

 結論から言えば、メドヴェージェフ大統領は、「そうした決定は、すべての機が熟した時、それが最終的な政治的効果を挙げる時に下すべきである。そうした決定を発表するのは、記者会見とは若干違う形であるべきだ」などと述べるにとどまり、再選出馬についての明言は避けた。ただ、「これ(現体制から誰が出馬するのかが不明確な状態)は永遠に続くわけではない。……その発表はかなり近い」とも述べ、出馬への意欲をうかがわせてはいる。

 このメドヴェージェフ大統領の記者会見に関して、ロシアの民間シンクタンク「政治工学センター」のA.マカルキン第一副社長が出したコメントがこちらのサイトに出ているので、以下その要旨を整理しておきたい。

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 メドヴェージェフ大統領はこの記者会見により、自分がしかるべき権限をすべて備えた大統領であり、本物の強力な政治家であり、決して代理や一時的な人間ではないことを誇示しようとした。メドヴェージェフは再出馬宣言に向け、また小さな一歩を記した。反面、メドヴェージェフに似つかわしくない今回のような派手な舞台だっただけに、記者会見を前に一部の記者たちは期待を膨らめ、少なくとも大統領選への出馬宣言はするだろうと予期していた。しかし、実際には、メドヴェージェフは出馬をほのめかしたものの、最終的な決断とは言いがたいものだった。メドヴェージェフがそれを避けたこと自体は理解でき、というのも一方的に出馬を表明したらプーチンとの関係を悪化させるからである。もっとも、ジャーナリストの期待が過剰に高まっていたこと自体は理解でき、そのことは記者会見終了後の記者たちの反応に見て取れた。

 メドヴェージェフは記者会見で強力な大統領として振る舞おうとし、来たる大統領選への準備と見なしうるテーゼを打ち出した。誰が候補者になるのかは2人の人間が決めるのであり、まだ選挙戦が始まったわけではない(注:この部分、翻訳自信なし)。メドヴェージェフも、プーチンと争うことはないと、明言している。

 決定が2人の人間にかかっている以上、メドヴェージェフが2期目を務めるチャンスがあるかどうかを判断するのは、現時点ではほぼ不可能である。一つ確かなのは、プーチンには大統領選に参加したいという意向があることであり、そうでなければ彼は「全ロシア国民戦線」など立ち上げなかっただろう。この政治団体の主たる課題は、議会選挙において「統一ロシア」がしかるべき得票を収められるようにすることであるが、同時に大統領選挙においても大いに活用できる。一方、今回の記者会見で明らかになったのは、メドヴェージェフにも同じ意向があるということだが、その際に彼は既存の政治体制に大きな打撃を与えないよう、対立も避けたがっている。記者会見以前から明白で、会見により一層はっきりしたのは、メドヴェージェフとしては自分の大統領としての任期が長く残っていて、実権を握っているうちに、なるべく早く問題に決着を付けたいということである。それに対しおそらくプーチンにとっては、後継者が12月になってようやく決まった2007年の時と同じように、決定が議会選挙の後になった方が有利である。というわけで、誰が現体制を代表する大統領候補になるのかは、いつの時点でそれが決定されるかに、かなりの程度かかっていることになる。


プーチン報告に関する批判的論評

No.0072 2011年5月10日

 だいぶ遅れ気味のフォローだが、ロシアのプーチン首相は4月20日、連邦議会の下院で前年の内閣の活動実績に関する報告を行った。報告の内容は、こちらのサイトに掲載されている。この報告は憲法で毎年実施することが義務付けられているそうだが、今年は2時間20分にもわたってプーチン首相が大演説をぶつという異例のものとなった。この報告に関し、ざっと見たところ、『エクスペルト』誌のサイトに出ていた論評が批判的で面白かったので、以下その要旨をまとめておきたい。

 プーチンは演説の最初の方で、「戦略-2020」の練り直し作業を進めていることを明らかにした。この文書の名称自体が、向こう数年間にわたる多くの長期計画が存在していることを示している。プーチンは、「ロシアには、数十年にわたる安定的な、平穏な発展が必要である。無思慮な実験による、しばしば失敗に終わるリベラリズムによる激変も、社会的デマも無用の長物であり、それらはいずれも国を発展の道から逸らせてしまう」と指摘した。この数十年にわたる「激変のない、安定的な発展」というのは、ストルイピンをはじめ、ロシアの歴代為政者たちが昔から抱いていたお決まりの夢だ。むろん、プーチンにしても、今回の報告のなかで「近代化」について語っているが、今日のロシアではそのような言葉は何にでも使える。政府は、農業、航空機産業、防衛産業、インフラ、教育、医療などを支援する構えだが、特徴的だったのはその際にプーチンが長年にわたる計画、巨額の費用、大きな将来性について語っていることである。「今後10年間で、軍の装備を一新する」「今後10年間で、我が国の新たなインフラを形成する」といった具合であり、これこそが今回の政府報告の特徴である。その論理は、賢者が国を正しい道に導くというものであり、国民はその主体というよりは、政府がもたらした成果を享受する存在と位置付けられている。面白いのは、この報告のなかでプーチンが大統領について1回しか言及していないことである(大統領教書で人口政策が重点的に取り上げられた、という文脈)。プーチンの報告のなかには、「民営化」「自由化」「グローバリゼーション」「国際分業」といった言葉が一切出てこない。端的に言って、プーチンの表明した戦略は、19世紀的な国益概念にもとづいており、ヴィッテ、ストルイピン、メンデレエフらの時代のものである。「民間ビジネス」という概念が欠如しており、より正確に言えば、それが国民経済発展のパートナーとしてではなく、単なる国家からの支援の対象として位置付けられている。どうやら政府は、2つのカテゴリーのビジネスマンしか、頭にないようだ。第1は、国有資産の私有化ならぬ「私物化」で財を成した連中であり、資金を国外に持ち出してはそこで邸宅、マスコミ、サッカーチームなどを買い漁っている連中。第2は、変わらず国の支援を必要としている中小企業。政府は、祖国にとどまって当地で誠実に働こうとしている数千に上る中堅企業の存在を見ようとしておらず、これは自国経済発展のためのパートナーを政府が見出せないということであり、由々しい問題だ。


医薬品産業クラスターを形成するペテルブルグ

No.0071 2011年4月5日

 さらに、ペテルブルグの経済動向。現在ロシアでは、医薬品の輸入代替が推進されており、その関連でいくつかの地域が医薬品産業クラスターの形成に名乗りを上げている。そのなかで、とくに先進的な取り組みを見せているのが、サンクトペテルブルグ市である。そのあたりの事情につき、この記事の要旨を以下のとおりまとめておく。

 2010年12月17日、マトヴィエンコ市長の主宰の下、「サンクトペテルブルグ市医薬品産業発展調整評議会」の第1回会合が開かれた。評議会は市行政府の下に設置されており、市の各部門委員会の長、製薬会社、地元大学の代表が参加する。

 マトヴィエンコ市長は、以下のように熱弁を振るった。「我々はすでに自動車産業クラスター、自動車コンポーネント・クラスターを形成し、ハイテク分野も急激に発展しつつある。これに対し、医薬品産業クラスターは、若い分野だが、急成長を遂げつつある。1年前、ロシア連邦産業・商業省が戦略『医薬品2020』を採択すると、ペテルブルグ市は実質的に一番乗りで、『医薬品産業クラスター発展コンセプト』を採択した。医薬品関連企業は、経済特区のノイドルフ区およびノヴォ・オリョール区、またプーシキンスカヤ区にも居を構えることになる。ペテルブルグ市は医薬品産業発展のため自らの優位性をすべて活用していく。それはとくに、人的および研究面でのポテンシャルであり、ユニークな投資環境であり、その他のクラスターを形成した経験だ。我々は投資家に良好な条件を保証し、初期投資を節約させ、投資リスクを軽減し、税制優遇を拡大する。しかも、市がインフラの整備を引き受ける。我々のやり方は、自らが負った義務を迅速かつ厳密に履行するというものだ。医薬品クラスターでは、とりわけ研究分野に重点を置く必要がある。研究室、研究センター、特許局と、すべてのインフラを揃えなければならない。関連大学の大学間センターが設置され、現在この作業に鋭意取り組んでいる。企業、研究センターは、戦略『医薬品2020』への参加を申請し、ペテルブルグ医薬品クラスター発展のための資金を大いに獲得してほしい。」

 評議会の席でマトヴィエンコ市長は、ノヴァルティス、ヴェルテクス、ファルマシンテズ、イムノ・ゲムといった製薬会社と協力関係に関する意向書に調印した。最近1年間だけでペテルブルグでは製薬分野の9つの投資プロジェクトが浮上した。それらはペテルブルグに製薬企業を設立するというもので、しかも工場は一貫生産となる。マトヴィエンコ市長も、「我々は製薬産業をつくりたいのであり、ペテルブルグを梱包作業場にするつもりはない」と述べている。マトヴィエンコは、ペテルブルグが「医薬品2020」戦略のリーダーになるべきだと強調した。


スカニアがペテルブルグでトラック生産

No.0070 2011年4月4日

 引き続き、サンクトペテルブルグの経済動向について。情報の後追いばかりだが、2010年11月、スウェーデン系のスカニア社がサンクトペテルブルグでトラックの現地生産を始めたという話題があるので、こちらの記事の要旨を以下のとおりまとめておく。

 11月17日、ペテルブルグの自動車産業に新たな発展の方向性が生まれた。「スカニア・ピテル」社が、シュシャリ地区にトラック生産工場を稼働させ、ロシア北西地域でトラックの本格生産を手掛ける最初の外資になったのだ。ちなみに、今回の工場稼働はくしくも、スカニア社のロシア進出100周年と重なった。100年前にスカニアは、路面電車の用の電線を修理する車両をペテルブルグに供給したのだった。時代は下って、2002年からスカニアはペテルブルグでバスを生産しており、ロシアおよび欧州市場向けに販売している。

 マトヴィエンコ市長は開所式で、「トラック生産の立ち上げは、我々の協力関係の新たな1ページだ。ペテルブルグの自動車産業クラスターがまた一歩前進したことを意味する」と強調した。マトヴィエンコ市長は生産現場を視察していた際に、エリン経済発展委員会議長に、スカニア製の車両、とくに除雪車を調達することを検討するよう指示した。

 スカニア・グループは1891年創立。ペテルブルグ地域では1999年に設立された「スカニア・ピテル」がその代表を務める。2002年から今日までの期間に、ペテルブルグで1,000台以上のバスが生産され、ロシアおよび欧州市場(スウェーデン、デンマーク、オランダ)で販売された。2010年に有限会社「スカニア・ピテル」は需要減から一時的にバスの生産を停止し、シャーシ、車体を含むトラックという新たな生産に乗り出した。同プロジェクトへの投資額は1,000万ユーロに上る。初期段階では1日当たりトラック2〜3台の生産となり、所要従業員は70名。フル稼働すると、500〜600人に達する。生産能力はトラックが年間5,000台、車体生産が年間1,500台である。初期段階の現地調達は、トラックで28%、トラック車体で15%を予定している。


ペテルブルグが産業発展コンセプトを策定

No.0069 2011年4月3日

 引き続き、サンクトペテルブルグの話題 。同市の最近の経済政策を調べていたら、「2020年までのサンクトペテルブルグ市の産業発展コンセプト」と題する戦略文書が策定されつつあるということが判明したので、それについて簡単にまとめておきたい。詳しい報道としてはこちらの記事があり、あとはこちらこちらにも情報が出ている。それで、結論から言うと、同コンセプトはまだ最終的に採択されたわけではないようだ。したがって、まだ同コンセプトの最終的なテキストがウェブサイト等に掲載されているわけではない模様だ。かろうじて、こちらのサイトに、その草案が載っているのを見付けることができた。こういうのも、そのうち消えてしまうかもしれないので、ダウンロードしてこちらにPDF化しておいた。

 サンクトペテルブルグ市行政府の下に、「サンクトペテルブルグ市産業評議会」という諮問機関が設置されている。そして、評議会でコーディネーターを務めているのが、セルゲイ・ボドルノフという人物である。同氏は軍需産業で働いた後、2009年にペテルブルグ市行政府の経済発展・産業政策・商業委員会の議長を務め、同議長職からはすぐに退いたものの、2009年から現在までマトヴィエンコ市長の経済・産業政策顧問を務めているという人物である。今回の「産業発展コンセプト」も、ボドルノフ氏がまとめ役となり、産業評議会によって起草されたようだ。

 マトヴィエンコ市長は2010年11月の産業評議会の会合で、提出された「産業発展コンセプト」の内容を是認するとともに、コンセプトを実施するための具体的なプログラムを2011年3月30日までに準備し、コンセプトおよびプログラムの双方を市行政府が承認して正式に採択するようにとの指示を出した。しかし、市行政府のサイトや報道などでは、今のところ具体的な動きは伝えられていない。


ペテルブルグでプレス部品工場稼働

No.0068 2011年4月2日

 引き続きペテルブルグの話題で、これも同市において自動車産業クラスターが形成されつつあるという動き。鉄鋼大手のマグニトゴルスク冶金コンビナート傘下の「インテルコスW」社のプレス部品工場およびスチールサービスセンターが、このほど稼働したというものである。

 なお、このプロジェクトに関しては以前、「日本からの設備導入も決まったインテルコスW」というレポートを『ロシアNIS調査月報』2008年11月号に書いたことがあるので、まず以下でそれを紹介しておさらいしたい。

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日本からの設備導入も決まったインテルコスW

 はじめに 外資系自動車メーカーのロシアにおける部材の現地調達は、総じて苦戦を強いられている。しかし、自動車用プレス部品の分野では、進展しているプロジェクトがある。サンクトペテルブルグのインテルコスW社の大規模設備投資である。もともとインテルコスは内外の自動車・家電メーカーに付属設備や金属プレス部品を供給する優良企業だった。そして、2007年に鉄鋼大手のマグニトゴルスクが同社を買収し、大掛かりな設備投資に乗り出したことで、近い将来にロシアで自動車用プレス部品の本格的な現地調達が可能になる展望が開けている。この9月には日本のH&F社が、インテルコス向けのプレスラインを受注したというニュースも飛び込んできた。

 マグニトゴルスク傘下で大規模投資 インテルコスWは1991年に、軍需産業出身の4人のエンジニアによって設立された。その後、ロシアおよび近隣諸国の自動車メーカーからの付属設備、金属プレス部品の受注に次々と成功し、成長を遂げていく。2002年にはEBRD(欧州復興開発銀行)が同社に出資している。その頃から家電メーカーへの供給も手がけるようになった。

 他方、ロシアの鉄鋼大手のなかでも、自動車鋼板の分野で積極的な投資に動き出したのが、マグニトゴルスク冶金コンビナートであった。2007年8月、マグニトゴルスクはインテルコスWの株式75%を、2,000万ドルで取得した。これに続いて、同年9月には、マグニトゴルスク社とサンクトペテルブルグ市との間で、協力協定が締結された。これは、マグニトゴルスクの傘下に入ったインテルコスを主体として、ペテルブルグで新たに自動車用プレス部品工場およびスチールサービスセンターを建設するというものである。マグニトグルスク自身の供給する鋼板を利用し、自動車車体・車台用のプレス部品、家電製品用の部品を生産する。1,500人の雇用が見込まれている。

 スチールサービスセンターは2010年第1四半期までの稼動を予定している。処理能力は、当初は年間20万tとされ、自動車産業の他にも建設、造船業からの受注もめざすという。プレス部品工場は、20102011年の稼動開始を予定している。当面は年間12.5万tの鋼板が加工され、将来的には30万t規模に増強される可能性もある。供給先としては、当然のことながら、トヨタ、日産、スズキ、フォード、GM、現代といった地元を中心とする外資系自動車工場が想定されている。それのみならず、Bosch und SiemensElectroluxなどの家電工場向けの供給にも力を入れる予定である。すでに潜在的な需要家とは交渉を開始している。

 その後の建設および設備調達 インテルコスのプロジェクトに投資される資金は約3億ユーロに上り、うち2.7億ユーロはマグニトゴルスク社の自己資金から拠出され、残りはプロジェクトの利益によって賄う。この投資額の大きさにかんがみ、サンクトペテルブルグ市は本件を「戦略的プロジェクト」と認定し(その決定が正式に下されたのは2008年7月の模様)、優遇策を適用している。同プロジェクトはコルピノ地区の、イジョラ工場の敷地内に設営される(48haの土地を利用)。コルピノ地区というのは、トヨタ等の工場があるシュシャリから南東に5kmほどのところにある。市は土地を格安で提供するほか、電力網への接続などの便宜を図る。インテルコス新工場の起工式は200712月に挙行され、これにはプーチン大統領(当時)も出席した。

 入札が実施された結果、2008年4月、スチールサービスセンターに納入される設備の供給契約が結ばれた。切断ユニット4セットの受注に成功したのは、イタリアのFIMI社である。契約総額は1,200万ユーロとされており、設備の設置は2009年7〜9月に実施される予定。また、ブランキングラインの供給契約は、ドイツのSchuler Automation社と結ばれた。契約総額は670万ユーロとされており、200910月に納入予定。なお、イタリアのMagnetto社が、インテルコスの工場で、自動車プレス部品を合弁生産するという構想も浮上しているようだ。

 そして、このほど、日本の潟Gイチアンドエフ(H&F)は、インテルコスW社向けのタンデムプレスラインを受注したと発表した。H&Fは日立造船グループのプレス機械メーカー。2008年9月18日付のH&F社プレスリリースは概略以下のとおり。「潟Gイチアンドエフは、このほど、住友商事鰍ゥら、ロシア連邦のインテルコスW社(サンクトペテルブルグ市)向けのタンデムプレスラインを受注いたしました。……インテルコスW社は、ロシア連邦における自動車業界向けに、鋼板及びプレス部品の供給をするために、スチールセンター及びプレス工場を建設中で、今回受注したプレスラインは、1,300tプレスをトップにした5台の全自動タンデムプレスラインです。」

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 以上が、以前発表したレポートのコピーであった。それで、今回紹介したいのは、そのプレス部品工場およびスチールサービスセンターが2010年11月にいよいよ稼働したというニュースである。こちらのサイトによれば、以下のとおり。

 ペテルブルグで、マグニトゴルスク冶金コンビナートのプレス部品工場およびスチールサービスセンターがオープンした。本日、プーチン・ロシア連邦首相、マトヴィエンコ・サンクトペテルブルグ市長、マグニトゴルスク冶金コンビナートのラシニコフ会長が、生産開始のセレモニーを行った。マグニトゴルスク傘下の閉鎖型株式会社「インテルコスW」は、ペテルブルグの工業地区「メタロストロイ」で操業を開始した。プーチン首相は挨拶のなかで、「この会社は我が国に、自動車の一貫生産を構築することを可能とする」と述べ、インテルコスWがロシアに進出しているすべての自動車メーカーに製品を供給することへの期待を示した。工場建設に関する契約は2007年9月にペテルブルグ市行政府とマグニトゴルスク社の間で交わされたが、本日その生産の最初のラインが稼働したわけである。投資総額は40億ルーブル。生産能力はプレス部品年間25万t。インテルコスは2011年中に第2のラインを稼働させることを計画している。製品は、自動車産業だけでなく、家電メーカーや建設産業向けにも供給される。


ペテルブルグにヒュンダイのサプライヤー団地

No.0067 2011年4月2日

 サンクトペテルブルグ市の経済に関するレポートを書くことになり、それに向けた下準備として、情報をいくつかまとめておきたい。まずこちらの情報。外資系自動車工場の設立が相次ぐサンクトペテルブルグ市だが、2010年9月には韓国の現代自動車が工場をオープンさせた。そして、今回の記事は、その現代工場にコンポーネントを供給するサプライヤーの工業団地が2010年12月に開設されたというものである。概要は以下のとおり。

 ペテルブルグにヒュンダイのサプライヤーたちの工業団地がオープンした。工業団地は7つの工場から成り、ヒュンダイ・ペテルブルグ工場向けのコンポーネントが一貫生産される。オープニング・セレモニーでマトヴィエンコ市長は概略以下のように述べた。「わずか1年半前に定礎式が行われたばかりなのに、本日私たちは、夢が実現する目撃者となった。この工業団地は、ロシアにも、世界にも類例がない。韓国の皆さんがこのようなユニークなプロジェクトの実施場所として我が市を選んでくれたことを、私は大変嬉しく思う。先日メドヴェージェフ大統領が訪韓し、ロシア・韓国の一層のパートナー関係に向け前進がなされたが、今回の工業団地の開設はハイレベルで達成された政治的合意の実現だ。工業団地の開設は、韓国とペテルブルグの経済関係の新時代の到来を意味する。ペテルブルグの自動車産業クラスターの形成、北都のイノベーション的発展がまた一歩前進したことになる。韓国自動車産業のリーダーであるヒュンダイがペテルブルグで組立工場にとどまらず、高品質の自動車一貫生産を立ち上げたことは、大変喜ばしい。ヒュンダイにとっても、ペテルブルグにとっても有益で、関係者の尽力に感謝したい」。なお、一連の自動車コンポーネント工場建設には2億ドル以上が投資され、工業団地では熟練労働者1,300人分の雇用が創出された。工業団地の生産能力は、自動車生産年間15万〜20万台を可能とする。


北カフカスの観光特区で新たな動き

No.0066 2011年3月23日

 私の専門研究分野であるロシアの経済特区で新たな動きがあったので、まとめておきたい。具体的には、北カフカス地域の観光特区に関連する動きだ。ただ、実際に動きがあったのは2010年のことで、ここで取り上げるのがたいぶ遅くなってしまった。というのも、私は主にロシア連邦経済発展省のウェブサイトで特区のテーマをトレースしているのだが、当該の情報は同ウェブサイトにはまったく載っていなかったので気が付かず、今般別件で情報を整理していてようやく気が付いた。本来ならもっとこまめに報道などをチェックできればいいのだが、お恥ずかしい限りだ。

 まず、201010月5日付のロシア連邦政府決定第752により、クラスノダル地方の観光・リクリエーション特区「ノーヴァヤ・アナパ」が廃止された。同特区では、アナパ町、ゲレンジク市、ソチ市、トゥアプセ地区においてリゾート開発を推進することになっていた。なお、2005年の経済特区法にもとづいて設立された経済特区が廃止されるのは、これが初めてである。

 ノーヴァヤ・アナパが廃止された理由については、こちらの報道が詳しい。これによれば、経済特区法第6条には設立から3年間で投資家との協定が1件も締結されなかった場合には特区は廃止されうると規定されており、今回のケースはそれに該当した。ナビウリナ経済発展相は、原因はクラスノダル地方行政府の不活発さにある、現在我々は地元行政府が熱心に働いている地域に資源を集中していると述べた。クラスノダル地方行政府は怠慢を指摘された形だが、今後ノーヴァヤ・アナパは地域レベルの観光特区として維持されるので、これまでに整備されたインフラ等が無駄になることはないという。本来ならノーヴァヤ・アナパに参画してしかるべき投資家が、ソチ五輪の建設事業の方にシフトした結果、特区が失敗したという側面もあった模様。そもそも、特区内にホテルや娯楽施設を建てるよりも、住宅地に住宅を建てて売った方が儲かるのであり、多少の優遇措置があっても特区進出の決め手にはならないという指摘も。クラスノダル地方当局は、経済特区のメカニズムを、今後はカジノ特区で活用していきたい構え。現在、クラスノダル地方とロストフ州の境界地点にあるカジノ特区「アゾフシティー」を、アナパあたりの黒海沿岸に移転することを熱心に働きかけているが、連邦政府の承認は得られていない。

 そして、廃止されたノーヴァヤ・アナパに代わるように、新たな観光特区が創設された。20101014日付のロシア連邦政府決定第833により、北カフカス連邦管区、クラスノダル地方、アディゲ共和国に「観光クラスター」を創設することが打ち出されたものである。なお、北カフカス連邦管区で具体的に同特区の対象となっているのは、カラチャイ・チェルケス共和国、カバルダ・バルカル共和国、北オセチア共和国、ダゲスタン共和国であり、抜けているのがチェチェン共和国およびイングーシ共和国である。2005年特区法にもとづく特区が複数の連邦構成主体にまたがって創設されるのは、これが初となる。今回の特区創設は特例としてコンクール手続きを省略して決定された。

 政府決定に明記されているわけではないが、「北カフカス観光クラスター」は、山岳・高原リゾートの開発を目的にしている。現に、クラスノダル地方の指定地域に選ばれているのはアプシェロンスク地区というアディゲ共和国に隣接した内陸の丘陵地帯であり、従来のノーヴァヤ・アナパが海岸リゾートの開発を目的としていたのとだいぶ趣が異なる。

 北カフカスの民族共和国は低開発にあえいでおり、その問題への取り組みを強化する意味合いもあり2010年初頭にメドヴェージェフ大統領が南連邦管区から分離する形で新たに北カフカス連邦管区を創設した経緯がある。こちらの記事によると、メドヴェージェフ大統領が2010年初頭にフロポニン北カフカス連邦管区大統領全権代表に、北カフカス観光クラスターの創設を検討するよう指示した由であり、おそらくメドヴェージェフ政権としては北カフカス経済底上げの起爆剤として観光クラスターということを発案したのだろう。そして、その提案が起草され、2010年6月のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで提唱され、10月の政府決定につながったということのようである。なお、各地域がこれを歓迎している様子に関しては、こちらこちらの記事を参照。


ロシアの10大イノベーション企業

No.0065 2011年3月21日

 No.0062の記事で、Fast Companyという雑誌が制定している「世界で最もイノベーション的な企業50社ランキング」の2011年最新版に、ロシア企業2社がランク入りしたということをお伝えした。その後、Fast Company誌がロシアだけに絞ったイノベーション企業ベスト10というものを発表していることが判明したので、それを紹介したい。出所はこちら。トップ10の顔ぶれと寸評の要約は以下のとおり。

1.ヤンデックス:ロシア本国の検索市場でグーグルの3倍のシェアを誇るだけでなく、今般英語検索エンジンも立ち上げた。その優位性は、ロシア語の曖昧検索に対応している点にある。

2.カスペルスキー・ラボラトリー:ロシア人の天才ハッカーたちを起用するという逆転の発想で、アンチウイルスソフトの開発で成功を収め、世界4位のアンチウィルスソフト開発者となっている。

3.ABBYY:光学文字認識技術のパイオニア。旧ソ連系の企業としては稀有なことに、シリコンバレーにも事務所をもつ。

4.ロシア・ナノテクロノジー・コーポレーション(ロスナノ):ロシアのナノテク分野のイノベーションを主導する。なお、同社については服部レポート「ロシアのナノテク戦略とロスナノ社」を参照。

5.ロシア原子力公社(ロスアトム):最近ではその活動領域を原発や核弾頭から放射線医療の領域にまで広げている。

6.M2M Telematics:ロシア独自のGPSシステムであるGlonass向けのチップ市場を押さえている。その製品にはノキア、モトローラ、クアルコムも関心を示す。

7.オプトガン:サンクトペテルブルグに本格的なLED生産工場を開設。特許を有する高輝度LEDを年間3.6億個生産可能。

8.ミクロン:シトロニクス社の子会社であるミクロンは、パスポートや地下鉄乗車券などのICカードを生産するネットワークを構築し、ロシア・NIS諸国や中国・東南アジア向けに供給。

9.科学生産合同「サターン」:軍用航空機分野。最近では、ロシアの第5世代戦闘機T-50向けエンジンを開発。

10.ルクオイル:ロシア最大の民間石油会社は、石油精製、石油化学、クリーンエネルギー、二酸化炭素貯留などの分野での研究開発に積極投資。


ロシア、非常事態省の部隊を日本に派遣

No.0064 2011年3月14日

 前回の記事で、ロシアは日本に災害救助の支援を申し出ていないような書き方をしてしまったが、実際にはエネルギーの供給拡大だけでなく、救助部隊も差し向けている。

 こちらのサイトによれば、昨日3月13日、メドヴェージェフ大統領はショイグ非常事態省と電話で連絡をとり、ショイグ大臣が大統領に日本に災害救助部隊を派遣したことを報告した。同日モスクワ時間夕刻、非常事態省の2つの救助部隊が日本に向け飛び立った。まず、モスクワ郊外のラーメンスコエ空港からイリューシン76型機が飛び立ち、それには「中央救援部隊」の隊員50名が乗り込んでおり、また3台の車両、必要な機材も積んでいた。次に、極東のハバロフスクからヘリコプター「ミル26」が飛び立ち、極東地域捜索・救助部隊の25名と、車両1台を乗せている。ショイグ大臣が報告したところによると、日本政府からの要請が届けば、追加の部隊を派遣する用意もできている。

 こちらのサイトによれば、本日14日、メドヴェージェフ・ロシア大統領と菅直人総理は電話会談し、今後の支援について意見を交わした。


日本の大震災を受けたプーチン内閣の対応

No.0063 2011年3月13日

 日本における大震災を受け、3月12日にロシアのプーチン首相、セーチン副首相、キリエンコ・ロスアトム(ロシア原子力公社)長官、ツァリコフ非常事態省次官が協議を行った。その概要がロシア政府のウェブサイトに掲載されているので、以下それを抄訳して紹介する。福島原発がダウンしたことによるエネルギー不足という状況で、最後の方でセーチン副首相が述べていることがきわめて重要。多くの国が災害救助や人道支援で動こうとしているなか、「エネルギー」で貢献しようというのが、いかにもロシアらしい。

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 プーチン:極東の隣国、日本で起きた状況について話し合いたい。ロシア政府を代表し、改めて日本政府にお悔やみを申し上げる。我が国の通報システムはきちんと作動した。しかし、隣国では、大きな災害と悲劇が起きている。これに関連し、各省庁、各企業に対し、我が国からの支援について、むろんそうした支援が必要であればということだが、日本の友人たちと協議してもらいたい。ロスアトム(ロシア原子力公社)、非常事態省、エネルギー省などのルートでだ。日本での原子力発電量が低下していることに関連し、必要があれば、日本への炭化水素資源、とくにLNGの供給を拡大することも検討してほしい。繰り返しになるが、もしもそのような必要があればということだが。

 キリエンコ:すでにガスプロムに接触があった。

 プーチン:結構。周知のとおり、(サハリンでのガスの)採掘と液化は、外国企業と共同で実施されている。我が国には代替供給の能力がある。すべての側面を考慮するように。これが第1の問題である。次に重要なのは、きわめて注意深く極東地域でのあらゆるモニタリングを続けることである。私はロシア極東各地域の首長たちと話をしたばかりだ。現在のところ情勢は、人の配置(?)という観点からも、放射能という観点からも、正常だ。どの箇所でも数字は基準以下で、サハリン州などではそれを大きく下回っているとのことだ。とはいえ、状況は常にモニターし、24時間管理下に置く必要がある。もう一点述べると、こうした事態が発生した場合に備えて我が国が立てている計画で想定しているパワーや資源が、本当に備わって用意ができているかということを、もう一度精査する必要がある。キリエンコ長官、ロスアトムでは状況をどのように評価しているか?

 キリエンコ:ロスアトムでは本部を組織した。原子力分野の専門家、またクルチャトフ研究所、アカデミーの諸研究所の研究者を集め、すぐに分析に着手できるようにした。というのも、最初の段階で得られた情報は不十分だったので、独自にモデルをつくった。発生したことの評価に関して言えば、むろん、隣人たちにとってきわめて困難な状況が重なった。東京時間11日14:45の地震発生後、原子力発電所11機が停止した。指摘すべきは、当該機は古いにもかかわらず、自動停止装置がきちんと作動したことだ。問題の福島第1原子力発電所の当該機は1971年に製造され、もう40年になる。

 プーチン:GE製か?

 キリエンコ:GE製である。米国製で、40年前のもの。操業しているのは東京電力であり、ロスアトムは同社に核分裂物質を供給していることから、同社のことはよく承知している。(以下、福島原発の事故に関する技術的な説明が続く。) 日本の当局は、福島第1原発1号機で爆発したのは原子炉ではなかったと発表したが、それは我々が少し前に行った独自の分析と一致している。

 プーチン:データは客観的なのか?

 キリエンコ:客観的なデータであり、これは確かに原子炉そのものの爆発ではない。おそらく、水素爆発が起きたと見られる。(以下、再び技術的な説明が続く。) プーチン首相からの電話での指示を受け、我々は世界原子力協会東京事務所とも、東京電力とも連絡をとり、我々があらゆる支援を行う用意がある旨を伝えた。現時点では、多分に、情報の交換ということになろう。だが、日本側に何らかの必要が生じた場合には、すべての必要な情報を提供する用意がある。

 プーチン:むろん、先方の原子炉は我が国のそれとはタイプが異なり、我々の技術的支援が必要ということはまずないだろう。しかし、いずれにせよ、何らかの支援が必要になったら、進めるように。

 キリエンコ:いかなるタイミングにおいても、支援の用意がある。同時に、ロシア極東に原発はないが、原潜解体を行う企業などがある関係で放射能を独自に測定できるので、モニタリングも続けていく。データは恒常的に収集しているが、それらすべては極東の知事たちがプーチン首相に報告したことと一致しており、状況は完全に安定しており、放射能の上昇は一切見られないことを示している。

 プーチン:ツァリコフ第一次官、非常事態省の方はどうか?

 ツァリコフ:モスクワ時間11日08:46(つまり日本時間14:46)、シグナルをキャッチした。08:47、津波の早期警戒システムが作動した。ご報告したいのは、このシステムはまさに、インド洋大津波が起きた後に、プーチン大統領(当時)がロシア気象・環境モニタリング局およびロシア科学アカデミーと共同で、設置を指示してくださったものだということだ。設置が完了したということはご報告申し上げたが、昨日それが威力を発揮したわけである。モスクワ時間08:47にシグナルをキャッチし、08:52には警報を出し、09:40には住民はもう安全な場所に避難していた。これは4つの居住区の11,300人強の住民である。というわけで、非常事態省が行った第1の仕事は、津波の危険のある住民の安全確保であった。第2の仕事は、専門家による救援作業への準備である。その部隊には2種類があり、極東での部隊と、全連邦の部隊を準備した。部隊はすでに準備が完了し、必要な装備を行っており、それには放射能対策も含まれる。しかし、当然のことながら、そうした部隊が動くのは国家指導者の決定があった場合のみである。第3の仕事は、状況のモニタリングであり、この面ではロスアトム、ロシア気象・環境モニタリング局、ロシア科学アカデミーといった機関と協同している。

 プーチン:セーチン副首相、日本のパートナーはすでに、エネルギーの供給拡大を依頼してきているだろうか?

 セーチン:然り。というのも、日本のエネルギーバランスにおいて原子力は約30%を占め、あとの17%はガス、22%は石炭その他のエネルギー源となっている。当然のことながら、日本側は現在、減少しつつある原子力のキャパシティの代わりとなるものを必要としている。その関連ですでにガスプロムにLNGの供給拡大を検討するよう依頼してきている。我々はすでにガスプロムと調整を進めており、別の契約による4〜5月分のLNGを積んで日本に向かっているLNG船2隻を引き返させることをできないかと、可能性を探っているところ。これが10万t×2になる。日本側のパートナーから要請があり、サハリン2のパートナーとの交渉が行われれば、最大50万tのLNGを上限に、かなり迅速に、おそらく本年の間中、この(日本側のエネルギー源不足の穴埋めという)問題を解決できる。すでに述べたように、日本のエネルギーバランスで石炭が22%を占めていることにかんがみ、石炭供給の増量に関しても交渉する用意がある。来週にはSUEKの代表団が訪日し、メチェルも関与したい意向を示しており、ロシアはかなり迅速に供給を300万〜400万t拡大しうる。(服部注:2010年のロシアから日本へのLNG輸出は603万t、石炭輸出は1,067万t) それとは別に、インフラ、ネットワーク的な解決が図られれば(たとえばサハリンから日本への海底ケーブルが敷設されるなど)、我々は日本との間でより長期的な協力を行う用意もある。ロシア極東では発電キャパシティが過剰となっている。プーチン首相もご記憶のとおり、昨夏にも新しい発電所を稼働させたばかりだ。余剰の発電キャパシティを日本に提供することが可能である。我が国には、日本とそのような協業を行う用意がある。むろん、これはより長期的な性格を帯び、投資を要する。ただ、我が国には発電能力自体はあり、そうした可能性はあるということだ。我々は交渉を行い、こうした提案を示す。

 プーチン:日本は我々の隣人で、友好的な国だ。両国間に過去から引き継がれた問題があることを、我々は承知している。しかし、日本は我々にとって、長年にわたる、頼りがいのあるパートナーだ。この状況において、日本を支援するために、すべてを行わなければならない。むろん、我々に可能な範囲内で、日本に必要な場合であるが。むろん、我が国で同様な状況が生じた際に即応する準備をしておくためにも全力を尽くさねばならず、現在の状況を精査しなければならない。


ヤンデックスとカスペルスキーが世界的革新企業に

No.0062 2011年2月19日

 2011年2月18日付の『RBCデイリー』紙によると、Fast Companyという雑誌が制定している「世界で最もイノベーション的な企業50社ランキング」の2011年最新版に、ロシア企業2社がランク入りした。インターネット検索のヤンデックス社が26位、ソフト開発のカスペルスキー・ラボラトリーが32位だった。ロシア企業がこのランキングに登場したのは初めて。

 ヤンデックスについてFast Companyでは、ロシアの検索市場で65%という高いシェアを誇っており、また英語による検索を開始するなど、世界の巨人グーグルに挑戦している点を評価。一方、カスペルスキー・ラボラトリーに関しては、ロシア人の天才ハッカーたちを起用するという逆転の発想で、アンチウイルスソフトの開発で成功を収めている点が評価された。

 なお、2011年のランキングの上位は以下のとおり。マイクロソフトはベスト10圏外で、37位だった。

1.Apple

2.Twitter

3.Facebook

4.日産

5.Groupon

6.Google

7.Dawning Information Industry

8.Netflix

9.Zynga

10Epocrates


工業団地を政策として制定する動き

No.0061 2011年2月19日

 2011年2月18日付の『RBCデイリー』紙は、ロシア連邦政府の経済発展省が、工業団地(インダストリアル・パーク)に関する政策を立案していることを報じている。記事の要旨は以下のとおり。

 工業団地がロシアの投資環境改善のための新たな場所となる。経済発展省はこのほど、地域発展省および「実業ロシア」と共同で、すでに名目的には存在している国営の工業団地を活性化すべく、新たに民間のライバルを創設するか、あるいは民間の管理会社に国営工業団地の経営を委託することを提案している。

 公式統計によれば、現在ロシアには250の工業団地が宣言されているが、稼働しているのは今のところ30だけで、うち半分は地域の所有、残りの半分は民間の所有となっている。65の工業団地プロジェクトがインフラを備えて投資家を受け入れる準備ができている。残りは、何の準備もできていない土地区画であり、開発構想もなければ文書も作成されていないという代物である。

 「実業ロシア」の総会が開かれた後の201010月、プーチン首相は経済発展省、財務省、地域発展省に、民間の工業団地の設立を促進し、また国有または自治体所有となっている工業団地の経営を民間に委ねることに向けた提案を策定するよう、指示した。経済発展省による当該の報告は、2月10日に政府に送られた。

 この報告書によれば、民間の工業団地を設立するうえでの最大の障害は、地域行政府からの支援の欠如にある。状況を打開するためには、民間の工業団地も国営と同等のものとして地域の支援プログラムに含める必要がある。また、ワンストップ・サービスの体制を構築し、州行政で文書処理の担当者を明確にすることも奨励する。投資家に興味をもたせるために、民間の工業団地創設プロジェクトを、地域の投資誘致プログラムに加える方向である。投資家が融資を受けられるよう、地元行政府が支援する。経済発展省では、工業団地の創設は、民間と地域の共同投資で推進されるべきだとの立場。土地区画は、長期契約で賃貸され、成果に応じて賃借期間が延長される。

 「実業ロシア」では、工業団地の入居企業を対象とした表彰制度を設け、受賞した入居者には納税額の5〜10%を返還することを提案している。また、工業団地の創設期には、タックスヘイブンを設けるべきだとしている。

 経済発展省および地域発展省では、国営の工業団地の経営を民間に委ねる決定を、地域の知事に委ねる意向である。ただし、その移管が義務付けられることになる条件が明記されることになる(工業団地開設の遅れ、出資の遅れ、入居企業が計画の半分以下しか集まらないこと、雇用や生産に関する指標の未達成、など)。民間の運営会社は入札で選ばれ、地域の行政府と少なくとも5年以上の契約を結ぶ。経営会社は、同様の事業の経験を有していなければならない。


民族対立の背景としてのモスクワ不法滞在外国人

No.0060 2011年2月1日

 モスクワ・ドモジェドヴォ空港の爆弾テロの背景はまだ解明されていませんが、政権側はさしあたりチェチェン分離派の犯行という見方は否定したようです。いずれにせよ、12月のモスクワ中心部の暴動といい、モスクワにおけるロシア人と非ロシア人の対立、とりわけカフカス地方出身者の問題が、改めてクローズアップされるところです。

 まあ、個人的にこういった問題は門外漢ですが、それなりに関心もあったし、少しだけ情報を物色したところ、『ロシア・レポーター』という雑誌の2011年1月20日号(No.1-2)に、興味深いデータが掲載されているのを見かけました。私はこちらのウェブサイト版で読みました。

 モスクワで民族間対立が起こるのは、コーカサス地方等から非ロシア人が多数流入しているからですが、不法滞在が多いので、公式的な統計では把握しきれないないわけですね。そうしたなか、この『ロシア・レポーター』の記事には、実際に非ロシア系住民がモスクワにどれだけいるかに関する推計値が載っていて、非常に参考になるわけです(もしかしたら、専門家にとっては既知の数字かもしれませんが)。そこで、これをグラフにまとめて、ご紹介することにします。

 まず最初の縦棒グラフを参照。左の列に見るように、公式統計では、ロシア人+非ロシア人のモスクワの総人口は、1,013万人とされています。それに対し、実態では、非ロシア人の数が630万人にまで膨らみ、総人口は1,511万人に達するわけです。そして、その630万人の民族別内訳を見たのが、次の円グラフということになります。すごいなあ。アゼルバイジャン人って、モスクワに150万人もいるのか。

 ちなみに、この記事には、「貴方はどんな民族を嫌いですか?」とロシア国民に問うた調査結果も出ていますが、2010年5月時点のその回答は、カフカス諸民族(アゼルバイジャン人、アルメニア人、グルジア人、イングーシ人、ダゲスタン人、チェチェン人等):29%、中央アジア人(タジク人、ウズベク人、カザフ人):6%、中国人:3%、ユダヤ人:3%、ロマ(ジプシー):2%、アジア人:2%、アラブ人・ムスリム:2%、アメリカ人:2%、ウクライナ人:2%、バルト民族(エストニア人、ラトビア人、リトアニア人):1%、嫌いな民族はない:56%という結果が出ています。


メドヴェージェフ大統領のダボス演説

No.0059 2011年1月31日

 ロシアのメドヴェージェフ大統領は1月26日、ダボスで開幕した世界経済フォーラムで、オープニング演説を行いました。演説のテキストはこちら。このなかでメドヴェージェフ大統領は、例によってロシアの近代化の課題について語ったうえで、「近代化がロシアでのビジネスを成功させる新たな可能性」として、10のポイントを挙げました。メドヴェージェフお得意の「列挙」スタイルですが、「時間を短縮するため」と称しておきながら、10も挙げるところが、この人らしいところです。ともあれ、メドヴェージェフが述べているのは以下の10点。

 第1に、国営大企業の民営化。自分の大統領令により、戦略重要企業の数は5分の1に減った。歳入だけでなく、企業自体の効率向上が肝心。

 第2に、近くソブリン・ファンドを創設することになっており、これが外資と共同で近代化投資を行う。

 第3に、金融セクターの改革が恩恵をもたらす。モスクワを国際金融センターにし、それがロシアだけでなく旧ソ連空間、願わくば中東欧も含めた金融セクターの中核としたい。

 第4に、共通のルールをもった新たな大市場(複数)を形成する。今年中にWTO加盟プロセスを完了させたいし、その後にはOECD加盟も続く。最終的には、EUと共通経済空間を形成していく。最近我が国はベラルーシ・カザフスタンと関税同盟を結成したが、これはヨーロッパのそれに近いモデルであり、EUとの共通経済空間にとってむしろプラス。

 第5に、ロシアはイノベーション、ベンチャーを支援している。大学が知財をもって起業できるようにした。この分野の最大のプロジェクトがスコルコヴォである。

 第6に、我が国にはエネルギー効率の大掛かりなプログラムがある。また、エネルギーがイノベーションの主要な牽引車となるべきで、それはグローバルなパートナーシップにもとづいて実施される。ロスネフチが今般結んだ提携は、その第一歩。

 第7に、ロシア産業の近代化のため、技術移転を全面的に利用する。それには軍事分野も含まれ、だからこそわれわれは、ミストラル級ヘリコプター空母建造に向けたロシア・フランス・コンソーシアムの結成を歓迎する(注:こちら参照)。

 第8に、ロシア全土にブロードバンド・インターネットを普及させるプログラムを推進しており、それを利用したいかなる合法的ビジネスも歓迎する。

 第9に、世界の有能な人々がロシアに来て働けるように、世界の大学で取得した学位をロシアで自動的に認める計画であり、すでに有能な専門家の入国手続きは簡素化した。

 第10に、我々はインフラ開発の大規模なプロジェクトに着手しており、これは大規模なスポーツ大会の開催目的のものも含む。そのために官民パートナーシップを活用する。

 以上の10ポイントは、ロシアの近代化問題に関して開催される明日のセッションで、詳しく論じられる(注:こちらのこと)。

*            *            *            *            *

 以上がメドヴェージェフが述べた近代化が投資家にもたらす10の可能性でした。メドヴェージェフ大統領は、ドモジェドヴォ空港のテロ事件の対応策に当たるため、この演説を終えると、経済フォーラム参加の予定を短縮して、帰国しました。


スヴェルドロフスク州に特区「チタンバレー」

No.0058 2011年1月21日

 これも経済特区の話です。専門分野なので、すいません。今度は、ウラル管区のスヴェルドロフスク州に、工業生産経済特区が設置されることになりました。以前、マンスリーエッセイのコーナーで、ニジニタギルという街を紹介しましたけれど、特区設置が決まったのは、そのニジニタギルから程近いヴェルフニャヤサルダという街です。ここにはVSMPOアヴィスマというチタン生産で知られる有力企業があって、世界の航空機メーカー向けのチタン供給のかなりの部分を同社が担っているのですね。で、同社を中心に経済特区「チタンバレー」をつくるという構想が数年前から取り沙汰されていたのですが、経済危機を受けロシア連邦政府が特区の創設を柔軟に行うようになって、今回の創設決定と相成ったわけです。

 昨年5月にニジニタギルで現地調査を行った際に、足を伸ばしてヴェルフニャヤサルダも視察してきました。まあ、とにかく完全な企業城下町で、巨大なVSMPOアヴィスマ社以外は何もないというところでした。街自体は相当田舎で、馬車がうろうろしているような光景も見られました(写真)。

 以下では手始めに、経済特区の監督官庁であるロシア連邦経済発展省のサイトに掲載された情報の要点だけ整理しておくことにします。

 まず、11月26日付のこちらの情報。2010年11月26日、モスクワでナビウリナ経済発展相とミシャリン・スヴェルドロフスク州知事の会談が行われ、スヴェルドロフスク州に工業生産経済特区を創設する問題が話し合われた。大臣は、特区の条件は、州においてハイテク生産を組織する刺激になり、それは外資の導入によるものも含むと指摘。金属加工、医療機器生産、チタンの高度加工などの企業の発展の可能性が広がると述べた。なお、同特区の潜在的な投資家が表明している投資額の合計は、400億ルーブル以上に上る。VSMPOアヴィスマのパートナーとなっている外国企業を含め、20以上の投資家が関心を寄せている。プロジェクトの実現により、州において2万以上の雇用が創出される。

 次に、12月21日付のこちらの情報。2010年12月16日付のロシア連邦政府決定第1032号により、ヴェルフニャヤサルダに特区「チタンバレー」が創設されることが決まった。面積は721ha。優位点は、原料へのアクセス、専門人材および養成機関、研究機関、部材および関連サービス業者の存在、インフラ、ロジ網、将来の入居企業の輸出ポテンシャル。特区の提唱者であり、主なプレーヤーとなるのが、VSMPOアヴィスマ。世界最大のチタン生産者であり、ロシアおよびCISの1,000社以上、45ヵ国の350社以上が同社の製品を購入している。そのなかには、ボーイング、エアバスなど名立たる航空機メーカーもあり、VSMPOアヴィスマはそれらによる最新機種すべての開発に参加している。特区創設により、以下の効果が得られる。@チタン原料の加工度を高めることにより、世界の航空機産業によるロシアの主導的地位を保持・強化できる。A国内の産業におけるチタンの利用を拡大できる。Bロシアの航空機産業のチタン合金製品需要を満たせる。C雇用を拡大できる。Dスヴェルドロフスク州の投資魅力を改善できる。運輸・エンジニアリング・社会インフラは、潜在的な投資家のニーズに合わせて、州のプログラムの枠内で、州予算および予算外資金を活用して設計される。

 最後に、12月27日付のこちらの情報。2010年12月27日、サヴェリエフ経済発展次官とミシャリン・スヴェルドロフスク州知事が経済特区「チタンバレー」を創設する協定に調印(写真)。特区は、投資を呼び込み、新たな生産を組織し、モノゴーラドであるヴェルフニャヤサルダおよびニジニタギル、そしてスヴェルドロフスク州全体の社会・経済発展を改善する課題のために創設される。特区の創設に関する連邦政府決定は、2010年10月10日付のプーチン首相の指示を受ける形で、またスヴェルドロフスク州の諸提案に関連して、選考手続きを省略して準備された。各種のインフラ建設には10億ルーブルを要するが、州予算と予算外資金で行われ、連邦財政は必要とされない。世界の主な航空会社のチタン製品購入に占めるVSMPOアヴィスマのシェアは、ボーイング:35%、エアバス:55〜60%、Embraer:90%、Goodrich:90%、ロールスロイス:25〜30%、Pratt&Whitney:10〜15%となっている。特区の創設は、スヴェルドロフスク州の外資導入の有力な手段となる。

 とりあえず今回は事実関係の整理だけで、分析はもうちょっと情報を集めてから試みてみたいと思います。


ムルマンスク港湾特区の続報

No.0057 2011年1月21日

 No.0028で書いたムルマンスク港湾特区に関する続報です。

 こちらの記事によると、2010年11月17日、モスクワで、ロシア連邦経済発展省のサヴェリエフ次官と、ムルマンスク州のドミトリエンコ知事が協定に調印し、これによりムルマンスク経済特区が正式に設立された。特区の面積は30.5平方km(3,050ha)。現時点では、以下のような投資家がプロジェクト実施に関心を示している。

  • 閉鎖型株式会社「シンテズ・ペトロリウム」:原油および石油製品の積み出し施設の建設。

  • 公開型株式会社「貿易港ラヴナ」:石炭積み出し専用ターミナルの建設。

  • 公開型株式会社「ゴルフストリーム」:漁船の修理および水産物加工・保管の港湾ターミナルの改修。

  • 公開型株式会社「スプリメクス」:インフラの総合的開発。

 これらのプロジェクトによる投資総額は1,500億ルーブルに達し、1,500名分の雇用が創出される。特区の外部インフラの建設は、2001年12月5日付ロシア例府決定によって承認された「2010〜2015年のロシア運輸システム発展プログラム」と、コラ・エネルギーシステム開発のための公開型株式会社「YeES連邦送電会社」のプログラムの枠内で実施される。


企業城下町で20万の雇用創出

No.0056 2011年1月20日

 1年ほど前に「ロシアのモノゴーラド(企業城下町)問題」というレポートを発表し、それ以降気にはなっていたものの、本テーマのフォローがなかなかできませんでした。

 そうしたなか、プーチン首相は1月12日、ロシア労組連盟の第7回大会に来賓として招かれ、そこで行った演説において、モノゴーラド問題にも言及しました。こちらのサイトによれば、プーチンは次のように語りました。

 2010年に、35のモノゴーラドの発展プログラムが開始された。2011年には、さらに15の市・町に同様の資金援助を行う。工業団地の創設、中小企業やハイテクビジネスのためのインフラも含め、その近代化のための総合投資計画が策定されている。2015年までに、モノゴーラドで20万以上の雇用創出を計画している。これにより、モノゴーラドで登録されている失業率が、現状の4.5%から、2015年には2%になる。

 以上がプーチン発言でした。なお、「モノゴーラドにおける失業率が現状4.5%なら、悪くないのでは?」とお思いになる方もいらっしゃると思いますが、これはおそらく、国家機関にしかるべく登録している公式失業者の比率ということだと思います。たとえば、2010年11月現在、ロシア全体における公式登録失業率は、2.0%にすぎませんでした。しかし、ILOの基準による失業率、すなわち労働能力があるにもかかわらず職がなく、現在それを活発に探している失業者の比率は、6.7%でした。したがって、ILO方式によれば、モノゴーラドにおける失業率は、おそらく十数%に上るであろうという推測が成り立つわけです。

 近いうちに、モノゴーラド問題に関するレポートをリバイスできればと思っています。


スコルコヴォ、これだけの疑問

No.0055 2011年1月9日

 前回のNo.0054の記事の関連で、同じイヴァン・ステルリゴフ氏が、スコルコヴォ・プロジェクトに関する懐疑的な見方を示した文章を発表していますので、以下のとおり抄訳してご紹介します。

*            *            *            *            *

 米グーグルのエリック・シュミットの名前に惹かれて、スコルコヴォ財団で開催された理事会には、数十人のジャーナリストが集まった。しかし、理事長のヴェクセリベルグが、「ご関心を寄せていただき、ありがとう。今後ともご支援よろしく」と述べると、会議は非公開となり、記者たちは会場から閉め出されてしまった。このちょっとした茶番により、プロジェクトへの憶測が否が応にも高まることとなる。一体何を討議しているのか?

 もしもスコルコヴォが普通のテクノパークや投資基金ならば、これほど豪華な顔ぶれの評議会は不要だ。考えてみていただきたい。彼らは、すでにイノベーション的マネジメントの課題を部下たちに委ねて久しい超VIPたちで、そのうちの半分はロシアの現実についてほとんど何も知らない。そんな連中が年に一度集まって、どうしようというのか?

 もしも世界的大企業を誘致することが目的なら、CEOやオーナーではなく、研究開発担当の副社長クラスを集めて理事会を設置する方がはるかに有益だ。しかも、スコルコヴォでは研究活動が行われるとされているのに、理事会には学者はほぼ皆無で、唯一ミハイル・コヴァリチュークがいるだけである。どういうわけか、他の学者は「諮問・科学評議会」の方に入っており、その共同議長であるジョレス・アルフョーロフとロジャー・コーンバーグは理事会のメンバーにはなっていないのだ。その代わり、別途、「名誉理事会」「都市建設評議会」なるものが設置されている。

 ロシア指導部は、諸外国の経験から学ぶと称しているが、スコルコヴォの組織形態はそれに反している。ロシアが模範としうる近年で最高の成功例は、シンガポールのバイオポリスであろう。バイオポリスは、「国際学術評議会」一つだけで充分に機能しており、同評議会では委員のローテーション制がとられている。スコルコヴォの理事会の顔ぶれ、共同利用のための先端設備導入計画が欠如していることから考えると、ロシアはシンガポールに学ぼうとはしていないようである。

 言い換えれば、基礎研究と、応用的な研究開発との間をスムーズに橋渡しするようなことは、計画されていない。スコルコヴォで主流となるのは、コンピュータで仕事をする人だけになりそうである。こうした形態であれば、外国企業の既存のロシア支部がすでにやっており、別にノーベル賞学者を理事に招く必要はない。Nokia、Ciscoなど、スコルコヴォへの参加を表明している企業は、単により高い賃金を払って、スコルコヴォに軒を並べればいいだけの話である。

 Ciscoのジョン・チェンバースあたりは、ロシアのイノベーションを促進するためというよりは、ロシアにおける自社の利益を擁護するためにスコルコヴォの理事就任に同意したと見るべきだろう。ロシアのテレコム市場は巨大であり、Ciscoはロシア市場を制覇すべく、中国ファーウェイと熾烈な競争を繰り広げているのだ。同じような動機は、理事を出している他の外国企業、たとえばTataグループあたりにも当てはまるだろう。ロシア市場をえられるなら、小規模な研究所をつくることなど、安いものである。

 これまでの同様の政策の経験からして、スコルコヴォの評議会がロシア経済をイノベーション的に改造できるかと言えば、疑問視せざるをえない。国際的な著名人たちは、汚職や公金横領を阻止できるだろうか。フィンランドの元首相でNokia副社長のエスコ・アホがスコルコヴォの理事になっているが、以前アホがロシア・ベンチャー会社の取締役会に加入していたにもかかわらず、オレグ・シヴァルツマンが公金を横領するのを防止できなかったという前例がある。

 果たして、今回はどうなるだろうか。


ロシア政府、イノベーションに4年で2,336億ルーブル支出

No.0054 2011年1月8日

 ちょっと興味深い資料を見付けたので、備忘録として残しておきます。イヴァン・ステルリゴフ氏という論客がおり、ロシア版『フォーブス』誌のサイト上で、現政権のイノベーション政策を批判する論陣を張っている人のようです。それで、この記事に、ロシア連邦政府が過去4年間に支出してきたイノベーション促進目的の歳出額をまとめた表が出ていたので、それを下表のとおり翻訳してご紹介いたします。ただし、航空機産業、原子力、衛星測位システムGLONASS、マイクロエレクトロニクス関係は額は大きいものの、ソ連時代以来の軍需産業と結び付いていること、資金配分の競争的な要素がないことから、意味合いが異なるという判断で、この表からは除外されているとのことです。ステルリゴフ氏自身、試行錯誤しつつ同表を作成したようで、ご批判・コメント歓迎というようなことを書いています。

 ともあれ、ステルリゴフ氏の試算によれば、ロシア連邦政府は過去4年間で2,336億ルーブル(ざっくり言って100億ドル弱)のイノベーション関連予算を計上してきた、ということになります。


スコルコヴォの建設費は1,000億〜1,200億ルーブル

No.0053 2011年1月3日

  目下、ロシアのイノベーション都市「スコルコヴォ」のプロジェクトに関するレポートを書いているところです。で、私が最近眺めることの多い「The Voice of Russia」の日本語版に、「ロシアのシリコンバレー建設には1,000億ドル」という記事が出ていました。ロシアが2018年ワールドカップに向けて支出すべき総額が、約500億ドルとされていますからね。スコルコヴォは都市建設だけでその2倍もカネがかかるのかと、一瞬驚いたわけです。

 疑問に思ったので、確認をとったところ、これは1,000億ルーブルの誤りであることが分かりました。現在、1ドル=30.35ルーブルですからね。1,000億ルーブルということは、約33億ドルで、これならば納得です。まあ、単位や通貨の単純ミスというのはありがちで、私も時々やりますので、他山の石としたいと思います。

 改めて、ノーヴォスチ通信に出た当該記事の要旨を、紹介しておきましょう。これによれば、スコルコヴォ財団のマネージャーであるヴィクトル・マスラコフは2010年12月25日、スコルコヴォ・コンセプトの都市建設実現には1,000億〜1,200億ルーブルを要すと発言。建設は2015年までかかると予想される。その際に、建設費の拠出は、国と民間ビジネスが対等の形で行う。スコルコヴォ財団のヴィクトル・ヴェクセリベルグ会長は10月15日、スコルコヴォ・プロジェクトには2011〜2013年に連邦予算から850億ルーブルが拠出されることになると発言していた。スコルコヴォ財団の都市建設評議会は12月20日の会合で、建設コンセプト・コンクールの決勝に残る2者を決定、フランスのAREP社とオランダのOMA社が決勝に残った。


ロシアの航空会社ランキング

No.0052 2011年1月3日

 「マンスリーエッセイ」のコーナーで、S7(シベリア航空)の悪口を書きましたが(やっぱりあれは単なる悪口だったのか)、それでふと、ロシアの航空会社の業界地図というか力関係はどうなっているのかということが気になりました。そこで、検索したところ、こちらのサイトで、2009年の大手15社のランキングというものが簡単に見付かりました。下表のとおり紹介します。ロシアだけでなく、NIS諸国も含めたランキングになっています。ただ、2009年は経済危機の影響が大きかった年ですし、変化の激しい業界ですので、もうちょっと長期的なデータを見てみたい気がします。

2009年のロシア・NIS諸国の航空会社ランキング

順位

航空会社名

旅客数×km

(100万)

旅客数

(100万人)

1. アエロフロート(Aэрофлот) ロシア
25,986
8.8
2. トランスアエロ(Трансаэро) ロシア
18,732
5.0
3. S7(シベリア航空)(S7 Airlines) ロシア
10,459
4.6
4. ロシア(Россия) ロシア
6,150
3.0
5. UTエアー(UTair) ロシア
5,828
3.5
6. オレンエアー(Orenair) ロシア
4,940
1.6
7. ウズベキスタン航空(Uzbekistan Airways) ウズベキスタン
4,931
1.9
8. エアー・アスタナ(Air Astana) カザフスタン
4,525
2.2
9. ウラル航空(Уральские авиалинии) ロシア
4,035
1.5
10. ウラジオストク航空(Владивосток Авиа) ロシア
3,875
1.1
11. VIMアヴィア(ВИМ-авиа) ロシア
3,214
1.3
12. アエロスヴィット(Aerosvit) ウクライナ
3,207
1.3
13. ノルドウィンド航空(Nordwind Airlines) ロシア
2,898
0.9
14. グローブス(Глобус) ロシア
2,696
1.1
15. ウクライナ国際航空(Ukraine International Airlines) ウクライナ
2,676
1.5

 


2010年のロシア総合10大ニュース

No.0051 2011年1月2日

  というわけで、ロシア・ノーヴォスチ通信が選ぶ主なジャンルの10大ニュースを見てきましたが、最後に、すべてをひっくるめた2010年ロシア総合10大ニュースをチェックしてみましょう。出所はこちら

1.ロシア、酷暑・森林火災・健康被害に見舞われる

2.声を上げ始めたロシア社会:ガスプロム・タワーや森林伐採への反対、年末にはフーリガン騒乱

3.モスクワ地下鉄でテロ事件、北カフカス各地でも

4.ロシアと米国、戦略核兵器に関する新条約

5.カチンスキ・ポーランド大統領の事故死を機にむしろ同国との和解ムード高まる

6.クレムリン、ルシコフ・モスクワ市長など古株の首長を一掃

7.ロシアが2018年のFIFAワールドカップ開催権を獲得

8.ウィキリークス騒動

9.米国でロシアのスパイ逮捕される

10.警官不祥事の多発受けメドヴェージェフ政権が警察改革を断行


ノーヴォスチが選ぶ2010年の10大国際ニュース

No.0050 2011年1月2日

 今度は、ロシアのニュースというよりも、ロシアのノーヴォスチ通信が選んだ2010年の10大国際ニュースです。ただし、ロシアの関係したものが多くなっています。出所はこちら

1.ウィキリークス騒動

2.ロシアと米国、戦略核兵器に関する新条約

3.米国でロシアのスパイ逮捕される

4.タイで収監されていたロシア市民ヴィクトル・ブットが米国に移送される

5.アイスランドの火山噴火でヨーロッパ各地の空港閉鎖

6.ウクライナで「オレンジ時代」終焉

7.キルギスで新たな政変

8.チリの鉱山労働者、無事救出

9.チリとハイチで大地震

10.南北朝鮮の対立激化

No.0049 2011年1月2日

 さらに行きましょう。今度はスポーツ10大ニュースです。出所はこちら

●ロシア、バンクーバー冬季五輪で惨敗

●バンクーバー五輪の失態を受け関係幹部の粛清人事

●ロシアのフィギュア・チーム、北京のグランプリファイナルで好成績

●FIFAワールドカップ南アフリカ大会、スペインが優勝

●ロシアが2018年のFIFAワールドカップ開催権を獲得

●ロシア・サッカー、フルセンコ新協会会長の下で秋春制移行などの改革

●世界バレーボール大会でロシア女子が優勝

●シンガポールのユースオリンピックでロシア総合2位

●女子テニスのデメンチエヴァ引退、ズヴォナリョヴァは躍進

●2014〜2020年のF1はロシアのソチで開催


2010年のロシア地域10大ニュース

No.0048 2011年1月2日

 今度は、ロシアの地域ニュースの2010年ベストテンです。出所はこちら

1.異常な熱波によりロシア中央部で森林火災、22の連邦構成主体に広がる

2.クラスノダル地方で犯罪グループによる住民殺戮事件

3.ケメロヴォ州ラスパツカヤ炭田で大事故

4.北カフカス連邦管区創設

5.北カフカスでテロ事件が増加

6.時間帯の体系を改革、2つの時間帯が消滅

7.アゾフ海での臨海学校で引率教師の不注意により児童死傷

8.クラスノダル地方の洪水で多数の死者

9.8月にサンクトペテルブルグ市とレニングラード州で大規模停電

10.チェリャビンスク州ミアス市のロックフェスで銃乱射事件

 こうやって見ると、とくにクラスノダル地方で悲惨な事件が起きた年だったのかなと思います(2、7、8)。

No.0047 2011年1月2日

 引き続きまして、ロシア社会10大ニュースです。出所はこちら

1.夏季の酷暑と森林火災スモッグで住民に健康被害

2.子供の安全や人権を脅かす事件相次ぎ、大統領がアスタホフ氏を全権代表に起用

3.10月に全国国勢調査実施

4.貧困問題解消すべく年金水準を引き上げ

5.一部の地域で宗教教育の実験始まる

6.養子縁組をめぐる国際的スキャンダル

7.政府が飲酒・喫煙対策に本腰

8.初等教育、新学習指導要領に移行

9.2002年にロシアで撲滅されたポリオが一部地域で再燃、タジキスタンから流入

10.保健省がロシア全国統一の医療方式・基準の策定進める

 日本の社会ニュースというと、「何が流行った」とかいうものが多い気がしますが、ロシアはだいぶ様子が違いますね。


2010年のロシア政治10大ニュース

No.0046 2011年1月2日

 続きまして、同じく政治10大ニュース。出所はこちら。政治の方は、ニュースに番号がふってあるので、たぶん重要な順だと思うのですが(以下同様)。

1.サッカー事件きっかけにモスクワで若者の騒乱、民族間緊張高まり、治安部隊が鎮圧

2.警官不祥事の多発受けメドヴェージェフ政権が警察改革を断行

3.ペテルでは反対運動受けタワー建設の場所移転、モスクワでは道路建設による森林伐採に歯止めかけられず

4.カチンスキ・ポーランド大統領の事故死を機にむしろ同国との和解ムード高まる

5.チェルノムィルジン元首相が死去

6.メドヴェージェフ大統領主導で一連の政治改革

7.メドヴェージェフ大統領、国後島を訪問

8.ウクライナとの接近、ベラルーシとの反目

9.クレムリン、ルシコフ・モスクワ市長など古株の首長を一掃

10.北カフカス連邦管区を創設

 以上のとおりですが、感想を言うと、5と7には意外感がありますね。チェルノムィルジン氏は完全に過去の人という感じだったし。また、北方領土訪問は、どちらかというとサラっと実行した印象があり、ロシア国内でここまで(年間政治ニュースの7位に挙げられるほど)重要な意義付けがされているとは思いませんでした。


2010年のロシア経済10大ニュース

No.0045 2011年1月2日

 ロシアのノーヴォスチ通信は毎年暮れに同国の10大ニュースを発表しており、しかも各ジャンルごととか地域ごとの10大ニュースも出しているので、同国の最近の動きを総括するうえで便利な資料となっています。ここでは、そのなかから、2010年のロシア経済10大ニュースを紹介してみたいと思います。なお、順番が重要性を意味するのかどうかは不明。出所はこちら

●夏季の干ばつの試練

●ロシア政府、経済危機対策から徐々に通常の経済政策にシフト

●民営化に向けた新たな政策イニシアティブ

●一部のEU加盟諸国が財政危機

●ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの関税同盟が発足

●ウクライナの政権交代で同国との経済関係が活発化

●ロシア中銀、体力の弱い零細銀行を淘汰へ

●ノリリスクニッケル社の支配権をめぐる紛争

●東シベリア〜太平洋石油パイプラインの中国向け支線完成

●TNK-BP傘下のルシア・ペトロリウム破産、コヴィクタ鉱床が主を失う


ロシア・プレミアリーグに忍び寄る経営危機

No.0044 2011年1月2日

 こちらの記事を見て驚きました。ロシアのサッカー・プレミアリーグの「サトゥルン」が財政難を理由にプレミアからの撤退を決め、しかも今年に入ってから同様の決定を下したのはもう3チーム目だというのです。そのなかには、巻誠一郎の所属するアムカル・ペルミも含まれており、アムカルは自主的に2部リーグへの降格を決めたとのこと。

 早速、現地の報道を確認したところ、確かにそのような動きが生じているようです。アムカルのサポーターがチームを支えるための募金活動を始めたとか、サトゥルンのサポーターがプーチン首相に直訴するとか、色んなニュースがあります。ただし、正確に申し上げると、サトゥルンの場合はプレミアからの撤退というよりも、チームの解散ということが取り沙汰されているようです。2018W杯向けにモスクワ州に建設するスタジアムを、サトゥルンが使用することになっているのに、早くもその青写真が狂い始めたことになります。

 他方、上掲のニュースではプレミアからの撤退を決めたのは3チーム目とされていますが、私が確認した限りでは、直近で話題になっているのはサトゥルンとアムカルだけであり、おそらく誤報ではないかと思われます。あるいは、2010年のシーズン初めにFCモスクワというチームがスポンサーを失いプレミアから離脱しているので(2010年12月にクラブ解散)、それを含めているのかもしれません。

 なお、先に執筆したレポートに掲載しましたが、2010年ロシア・プレミアリーグの最終結果は下表のとおりです。10位のチームと14位のチームが離脱の危機に直面しているわけですね。アムカルは、得失点差で辛くもプレミア残留を決めのに…。なお、両チームが実際にプレミアから離脱した場合は、1部から上位のチームが順次昇格することになります。ただ、今後の成り行き次第では、降格するはずだったアラニアとシビリが特例で残留するといったこともあるかもしれませんね。


 

 

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