ニュージーランドのシンデレラ
ニュージーランド
■ニュ-ジ-ランドで牧場を営む夫のレックスと妻のニイナ。牧場の広さは後楽園ドームの55倍ありました。

 ニュージ−ランドには8年前に訪れて以来行っていませんが3泊4日のファームスティを今でも忘れられません。
 90年5月、オーストラリアのタスマニア島を私は旅行しましたが、その時一人で旅行していたニュージーランド人のニイナさんと知り合いました。
 92年5月、シドニーでのオーストラリア人カップルの結婚式に出席の帰途、かねてからの彼女の誘いを受けて、ニュージーランドに寄り道しました。
 「KENJI」と、マジックで大きく書かれた紙を空港到着ロビーで高くあげて、ご夫妻で温かく迎えてくれました。
 夫のレックスは二メートルぐらいある大男だったので、人込みの中でも私の名前は際立って目立ち、すぐに分かりました。
 北島のオークランドから信号機のない道路を2時間ぐらい走って、ようやく牧場に着きました。敷地全体が遠望できる丘の上の住居にたどり着くまで、門を入ってからも大分経ちました。牧場の広さは六百五十エーカーあり、東京ドームの広さで例えると五十五倍ぐらいありました。
 レックスは、牛八百頭、羊八百五十頭の面倒を一人で見ていました。北島には四季があって放牧には適しており、牧草がなくなると家畜を移動させたりして、干し草や飲み水の確保が仕事のようでした。
 各所に散らばっている水瓶はコンピューターで一元管理されていて、牛が飲んで水位が減ってくると、常時一定に補充されるようになっており、手間要らずでした。
 広大な敷地は手付かずの原生林で、湧き水だったり、自然に牧草も生えたりしていたので、元手もかかってないようでした。時おり彼はオートバイで牧場内を見回って、崖から墜落した牛がいないかどうかパトロールしていました。
 妻のニイナは牧場の仕事には関わっておらず、趣味の園芸に日がな一日、精を出していました。椿に興味があり、私の知らない品種の名前を、図鑑で教えてくれました。
 彼の趣味は狩猟と釣りでした。手が空くと銃を構えて、猟場にはもってこいの環境のなかで楽しんでいました。
 夫妻は私のために自家用車にボートをつないで、2時間ほどかけて琵琶湖に匹敵する大きさのタウポ湖へ鱒釣りに連れて行ってくれました。
 入漁料を支払って、エンジン付きボートは車から外され、湖岸から入水しました。人気のない神秘的な湖上をあっちこっちと走って、魚群探知器に魚影が確認されると、その場所で竿を下ろしました。手の届く場所に浮いていた軽石を拾い上げて、私は記念に持ち帰りました。
 このような贅沢な趣味は、日本では大会社の社長でもかなわないだろうと、彼に何回も説明をしました。私は船酔いをして昼食のサンドイッチが食べられなり、ご夫妻に迷惑をかけてしまいました。
 最後の日には、彼女の運転で近くの町のスーパーについて行きました。何を買うのか、とても興味がありました。パン、牛乳、チーズ、砂糖、きゅうりに似たズッキーニ、ポテトチップスと洗剤を買ってました。
 冷凍庫には牛肉の塊、野鳥や鱒が保存されており、鶏も飼っていました。毎日の生活で必要なのは調味量と嗜好品だけという自給自足の生活を知って、驚きました。
 ニュージーランドの女性にとって、牧場の奥さんになることは憧れの的で「シンデレラ」だそうです。彼も一緒になって食事を作るのを手伝っている光景を見て、その意味を私は理解しました。
 彼女からの昨年のクリスマスカードで、久しぶりに訪問しないかと、誘いを受けました。大切な人を案内したい気持ちがあり、まだ行けそうもありません。

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