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2001年8月21日正午ごろ、エチオピアの首都アジスアベバにある温泉に行った。
その日まで各地の観光地の安宿を泊まり歩き、共同シャワーはあったが、温水ではなかったので、無性に温泉に入って見たかった。
利用料は四段階に分かれていた。「一等室百五十円、二等室九十円、三等室七十五円、四等室六十円」と書いてあった。庶民感覚を知って見たいと迷わずに二等室の代金を払うと、小さな石鹸とブリキで出来た三角形の番号札をくれた。
町なかであるのに園内は公園のような雰囲気で、等級別の建物が分散していた。入り口の建物には美容院や食堂があり、その前を通り抜けて二等室を目指した。
円形の建物の周囲に浴室が配置されていて、真ん中に管理室があり、利用客はその周りのベンチに腰かけて、自分の番号が呼ばれるのを待っているようであった。
音楽が時々とめられて、数字らしきものが呼ばれた。すると、管理室の付近に人だかりができて、小さな窓口から番号札を渡していた。とにかく勝手がわからない私は、周囲を見回して、人のよさそうな若者に英語で話しかけた。
自分で商売をしている二十五歳の彼は一か月に一回ここを利用していて、この日は友だち五人と来ていた。服装もピシッと決まっていて、今まで旅行途中に見慣れていた裸足の人も見かけず、エチオピアでも別世界ではないかと思った。
最初は旅行途中の話をしたりしたが、その後この施設の利用方法を説明してくれた。家族風呂以外は一人ずつ入浴し、制限時間は45分だそうだ。
二等室の建物は二棟に割り当てられ、全五十六室あり、午前6時から営業している。
私が話していると、目の前の扉が開けられて、浴室の中が覗けた。外部に面して一畳半ほどの浴槽があり、十畳以上はある浴室であった。
一等室には浴室脇にベッドがあるそうで、外国人が利用しており、どうして一等室にしなかったのか、彼は私に尋ねた。
しばらくすると三助が中に入り、浴槽に洗剤をまき散らしながら、柄のついたタワシで洗い流していた。
呼び出しの数字は公用語のアムハラ語だそうで、彼は私の番号札「九四七」になったら教えてあげると言ってくれた。
だいぶん時間がかかりそうだったので、私は食堂で昼食をとった。そこでツナサンドイッチを食べたが、パンがパサパサしていて味気なかった。
午後3時15分ごろ、彼から離れたベンチで腰かけていた私に、彼が目線を送ってくれた。待ちに待った十七号室の扉が開かれた。
室内に入るや洋服を脱いで、折り畳み椅子の上に載せた。自分専用タオルも置いてあった。浴槽は空っぽで、日本の温泉を連想していた私は、浴槽を前にしてはたと困ってしまった。浴槽左側の高さ二メートルぐらいの所にシャワーの配管が二本延びていて、蛇口が二カ所あった。
初めに温水と水の両コックを調節しながら、適温の温泉を浴槽に注いだ。
シャワーとは反対側の浴槽部分は一段低くなっていたので、高い方に頭を載せ、競りにかけられた鮪のような格好で思いっきり背伸びし、浴槽に体を浮かしていた。
30分ぐらいするとちょうどいいくらいの湯量になり、蛇口をとめた。浴槽を出たり入ったりしながら、十一日間の旅行の思い出を振り返っていた。
制限時間はすぐに来てしまった。日本から遠く離れたエチオピアで、日本人と同じように温泉を楽しんでいるのには驚いた。
浴室から出る時、十分に極楽気分に浸り、満足な気分で部屋を後にした。今度利用する時には、ぜひ一等室を利用したい。
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