ビール好きのためのミュンヘン ビール&パブ ガイド


 

ミュンヘンのビール

ミュンヘンはドイツの南部バイエルン州の州都です。バイエルンのビールは北ドイツのビールに比べてモルトの風味が強く、ホップとのバランスがよくとれているのが特徴です。私は 99年にロンドンから移ってきて以来、ずっとこのモルティなバイエルンのビールを定番として飲んできました。近所で気軽に飲むビールが、こんなにおいしいということはとても幸せなことだと思います。また、このモルトの味がいろいろなビールを味わう上での基本にもなっています。わたしは、ドイツだけでなくベルギーやイギリスその他のヨーロッパのビールも大好きですが、わざわざそれらをドイツで手に入れて飲もうとは思いません。理由はこうです。ビール王国ドイツでは基本的に全てが地ビールなので、よその土地のビールを飲むことすら簡単には出来ません。新鮮な外国のビールなどとても不可能です。それに、その土地のビールを味わうのが一番良いことだと思うからです。ビールはできるだけ移動させないほうがいい飲み物です。ブルワリーから近ければ近いほど新鮮でおいしいのです。ドイツでは「Bier muss laufen」と言われます。「ビールは流れなければならない。」つまり、人々にどんどん飲まれて常に新鮮なビールが提供されなければならないということです。このビアガイドを読まれた方がミュンヘン滞在中に、バイエルンのビールとその新鮮さを楽しまれることを願ってます。

ミュンヘンのブルワリー

ミュンヘンには、AugustinerPaulanerHacker-PschorrSpaten-FranziskanerLöwenbräuHofbräu の6つのブルワリーがあります。オクトーバーフェストでビールを出すことを許可されているのは、この6つだけです。また、 ミュンヘン近郊の街を含めるといくつかのマイクロブルワリーもあります。 それらを加えると、全部で15ヶ所前後になります。

ちなみに、Paulaner と Hacker-Pschorr はグループ会社でオランダのハイネケン傘下、Spaten-Franziskaner と Loewnbraeu もグループ会社でこれらはつい最近(2003年9月)ベルギーのインターブルーに買収されました。Hofbraeu はバイエルン州所有、Augustiner は今やミュンヘンで唯一の独立したファミリーブルワリーです。

ミュンヘンで美味しいビールを飲むなら

どのパブやレストランに行っても、出されるビールの質にはそれほど違いはありませんが、新鮮なほどおいしいのは確かです。ブルワリー直営のレストランやにぎわっている店で飲まれることをお勧めします。このミュンヘンパブガイドをぜひ参考にしてください。

サイズについて

バイエルンのビールを普通に注文すると0.5リットルです。ビアガーデンでは最少単位が1リットル。ピルスだけは0.3リットルですが、あとは0.5リットル。ボトルもそうです。ちょっと飲みたいだけなのに・・・という場合、樽から直接注がれる Fassbier(ファスビア)あるいは vom Fass(フォム・ファス)とメニューに書いてあったら Schnitt(シュニット)を注文してしてみてください。シュニットはだいたい0.25リットルです。だいたい、というのは、0.5リットルグラスに約半分だけ入れて持ってくるため、泡が沢山だったり、適当に目分量だったりして、正確なとこはわかりません。私があちこちで試したところ、愛想良くシュニットの注文を受けてくれるところもあれば、絶対に0.5リットルしか出さない頑固なウエイトレス(例外なくおばさん)もいました。

 


 

ミュンヘンのビール

ビアスタイル 特徴 オーダーしよう

Helles  ヘレス


ビアガーデンなので、これは1リットル

ドイツのビールの名前は非常に単純です。このヘレスと呼ばれるビールも、ドイツ語で「淡色の」という形容詞 hell からきています。「なんだ、見たまんまじゃん。」...そうなんです。注文するときは(右欄参照)「色の薄いやつ、一杯ください。」と言っているようなものです。では淡色のビールは全てヘレスかというと、そうではありません。ピルスだって、ヴァイスビア(ヴァイツェン)だって色は薄いですが、ヘレスとは別物です。

「ヘレス」というビアスタイルとして知られているくらいですから、地味ながらもそれなりに特徴があるのです。よく言われる「モルトの風味が豊かで、ピルスほどホップの苦味はない」という表現は確かに合っていますが、それ では洒落っ気も何もないし、だいいち聞いて「ああ、そう。」で終わってしまうじゃないですか...。モルトの風味が強いのはバイエルンのビール全般的に言えることですが、ヘレスは他と違って、モルトが主役のようなビールです。それを引き立てるのが強すぎずかつ、弱すぎないホップ。その絶妙なバランスが最大の特徴だと私は思っています。そして、何よりも新鮮なのがヘレスをおいしく味わう条件です。モルトとホップの香り、新鮮さ、後味のモルトの甘みをぜひ味わってください。私はモルトファンなのでこのヘレスが好きです。

こんな素晴らしいビールも、子供の頃から飲んでいるバイエルンの人々にとっては、「フツーのビール」としてとらえられているところがあり、(贅沢だ!)、「ビール一杯ください。」と注文するとこのヘレスが出てきます。公園にたむろしているアル中の人たちが飲んでいるのもヘレスだし、シュナップス(強い蒸留酒)のチェイサーとして飲まれるのもこのヘレスですから、彼らにとっては水のようなものでしょう。「小さいのをください。」(右欄参照)と言わない限り、0.5L で出てきます。(下面発酵、度数:4.5 - 5%)

Ein Helles, bitte.アイン ヘレス ビテ(1杯)

Zwei Helle, bitte. ツヴァイ ヘレ ビテ(2杯)

Ein kleines Helles, bitte. アイン クライネス ヘレス ビテ
(小さいグラスで注文するとき:一杯)

Dunkles  ドゥンクレス ヘレスと同様に、これまた「見たまんま」の名前のビール。Dunkel (ドゥンケル=濃色の)だから Dunkles (ドゥンクレス)と言います。(注:時々見かける「デュンケル」という呼び方はちょっと違う。英語読みの「ダンケル」は論外・・・。)

明かりにかざしてみるとよく分かりますが、このビールは黒ビールではありません。濃い赤色をした美しいビールです。まず、この色を楽しんでください。その次は、あま〜いカラメルの香り。カンロ飴か黒飴のような甘く、香ばしい香り。飲んでみると、意外とホップが効いているものあり、モルトにアクセントをおいたものあり、ブルワリーによって様々です。お気に入りのドゥンクレスを見つける楽しみもあります。パンに例えると、カラメル入りのしっとりした全粒粉パンといったところでしょうか。非常に飲みやすいわりには、はっきりとした香りと味のビール。現在のようなペールモルト (色の淡いモルト)を作る技術がまだバイエルンになかった時代は、ビールは全てこのような色だったと言われています。Unionsbraeu では Altmuenchner Dunkel(アルトミュンヘナー・ドゥンケル)を飲むことができます。(下面発酵、度数:5% 前後)

Ein Dunkles, bitte. アイン ドゥンクレス ビテ (1杯)

Zwei Dunkle, bitte. ツヴァイ ドゥンクレ ビテ(2杯)

Truebes  トゥリュベス
Unfiltriertes
Kellerbier ケラービア

ヘレスやピルスが美しく透き通っているのは、ろ過によって酵母(イースト)を取り除いているからですが、あえてこれを残したビールがあります。呼び方は、それぞれが好きなように呼んだり、地方により呼び方が違ったりするので、これと1つに決まったものはありません。Truebes (トゥリュベス)や Natur-Trueb(ナトゥア・トゥリュプ)は見たままから来る名前(trueb = 濁った)で、Unfiltriertes は「フィルターにかけていない」という醸造過程から、そう呼ばれますが、いずれも濁ったビールです。また、Kellerbier は、Keller(貯蔵庫)から出してきた濁った状態のビールだということを表すほかに、バイエルン州の北の地方、フランケンでは通常、ガスが少なめでホップの効いたビールであることが多いです。

このように酵母が残っているビールはどんな風かと言うと、香りにも味にも「イーストっぽさ」が加わります。コクがあって、飲み物がちょっと食べ物に近くなった感じでしょうか。無理矢理例えるなら、ヘレスやピルスがすまし汁だとすると、Truebes は味噌汁というイメージです。

このタイプのビールを飲めるところは限られていて、ミュンヘンでも数ヶ所しかありません。造ったビールをその場で飲ませてくれるブルーレストランではポピュラーなスタイルです。新鮮だからこそ、最大限に味わえるビール。(下面発酵、度数:4.5 - 5%)

Ein Truebes, bitte. アイン トゥリュベス ビテ (1杯)

Zwei Truebe, bitte. ツヴァイ トゥリュベ ビテ (2杯)

Weissbier
ヴァイスビア
Weizenbier

ヴァイツェンビア

大麦モルトのほかに小麦を50%以上使用したヴァイスビアは濁っているのが普通です。ヴァイツェンとも呼ばれますが、バイエルン、特にミュンヘン周辺ではもっぱらヴァイスビアです。なぜ でしょう。

これがヴァイス(白)ビアと言われ始めたのは、ヘレスやピルスなどの淡色ビールが登場する以前の主流であったブラウン(茶色)ビアまたはロート(赤)ビアと同様に、単に色からそのように呼ばれていただけで、小麦が使用されていることと直接の関係があったわけではないようです。そこで「小麦使用」を明確にするための呼び方が出来たのが、「ヴァイツェン(小麦)ビア」ですが、さすがわが道を行くバイエルンではそのときすでに「ヴァイスビアとは小麦を使用したビールであるべし」という決めごとがあったため、あえて「ヴァイツェン」という言葉を使う必要がなかった、そして現在に至るということです。

しかも、ヴァイスビアには hefe (ヘーフェ = 酵母)が入っていると決まったようなものですから、わざわざ「ヘーフェヴァイツェン」 = 酵母入り小麦ビールなどど言うこともないわけです。さらに、「ヴァイスビア一杯ください」(右欄参照)と注文すると出てくるのは淡色のものと決まっています。濃色の「ドゥンクレスヴァイスビア」もありますから、それが飲みたいときだけ dunkles をつければよいのです。(右欄参照)実に紛らわしいのは、ドゥンクレスヴァイスビアしか造っていないところのビールを注文するとき、「ヴァイスビアください」と言うと出てくるのはもちろんドゥンクレス...。この場合、他にはないのでいちいち dunkles をつける必要も無しです。「ヴァイス」がもやは「白い」という意味を持たなくなっています。

ヴァイスビアは非常に特徴のあるビールなので、ドイツ人でも好き嫌いがあります。淡色、濃色に限らず共通するのは、よく「バナナ、クローブの香り」と表現されるドイツのヴァイスビアに独特のアロマと、上面発酵ビールに現れる「ブーケ」。フワフワ〜、モワ〜と漂ってきて鼻を包み込む(様なイメージの)香りです。それと、原料の小麦からくるやわらかい酸味。淡色のヴァイスビアは、それにシトラス系の爽やかさとホップの苦味が加わります。時々、ほとんど「味噌だ!」という風味のものにも出会います。濃色のほうは、甘く香ばしいカラメルの香りと、濃厚な味。私はいつも「昆布の佃煮」の風味を感じます。味噌にしても、醤油にしても、発酵食品ですから、ね。(上面発酵、5 - 5.5%)

Ein Weissbier, bitte. アイン ヴァイスビア ビテ (1杯)

Ein dunkles Weissbier, bitte. アイン ドゥンクレスヴァイスビア ビテ (濃色、1杯)

Pils  ピルス 1842 年にチェコの Pilsen で生まれ、またたく間に世界中へと広がっていったこのピルスナー。ドイツではピルスと呼ばれます。新鮮な苦味が特徴ですが、バイエルンのピルスはやっぱりモルティ。「どうだ、苦いだろう!」と言わんばかりの北ドイツのピルスとは異なり、南ドイツのピルスはホップの爽やかな香りとスパイシーな苦味の後に、モルトの後味を楽しむことができます。使用されるホップの種類は、ハラタウアーと言い、ミュンヘンの北に位置する世界的に有名なホップの産地ハラタウのものが典型。バイエルンのピルスを特徴付けるのは、この繊細なアロマをもつホップと後味に顕著なモルトの風味です。ビールを水のように飲むバイエルンの人たちも、このピルスだけはそこそこ上品な量(0.3リットル)で飲むものだと決めているようです。専用グラスは黄金色の透き通ったビールの上にふわふわの真っ白な泡が美しく映える、そんな形です。

世界中でピルスナーと呼ばれ、1つのビアスタイルとして確立されてもいるこのタイプのビールをドイツではなぜ「ピルス」という短い名前で呼ぶのでしょうか?それはドイツビールの名前の付け方と関係がありそうです。どんな小さな村にもその土地のビールがあると言っても過言ではないこの国では、単に土地の名前のあとに「er」をくっつけて銘柄にしてしまうことが少なくありません。ヴァイスビアで有名な「エアディンガー:Erdinger」はミュンヘン近郊の町 Erding で造られるビール。ドイツ代表サッカーチームのスポンサーで知名度を上げた「ビットブルガー:Bitburger」は Bitburg のビール。地元意識が高いのです。その感覚からすると「ピルスナー:Pilsner/Pilsener」は Pilsen で造るビールとなり、「いや、俺らの国ドイツで造るからには、ピルスナーとは呼べないだろう。そんなもんは俺らの誇りが許さん。どうだ、俺らのはピルスと呼ぼうじゃあないか。」とかなんとかいう会話があったかどうかは定かではありませんが、ピルスナーというまんまの呼び方を避けたという話を聞きました。 (下面発酵、5% - 5.3%)
Ein Pils, bitte.(1杯)Zwei Pils, bitte.(2杯)
Bock  ボック
Doppelbock
ドッペルボック

Starkbier(シュタルクビア、英:strong beer)とも呼ばれるボックビアとドッペルボックはともにアルコール度の高いビールです。ボックビアは 6% 以上、ドッペルボックはさらに強く 7% 以上にもなります。(ドッペル=ダブルとは言ってもボックビアの倍の強さではありません。)ベルギービールやワインを飲み慣れている人にはそれくらい何ともないと思えるかもしれませんが、ここは南バイエルン、皆1リットルジョッキ(マース)で飲むのですから、大酒飲みのおじさんと言えどもペース配分や量を誤るとフラフラです。 ご心配なく、0.5 リットルで出してくれるところもあります。

私個人的には、このシュタルクビアがそう呼ばれるのにはアルコールの強さ以外にもいくつかの訳がありそうな気がしてなりません。まずその色。濃い色はヘレスなどの淡色ビールよりも存在感を与えます。そしてアロマの強さ。ツーンとくるアルコールっぽさとローストされたモルトの香り。使用されるモルトの量も多い(アルコールの高さはモルトシュガーの量、つまり原料としてのモルトの量の多さによるもの)ので、当然香りも強い。それに負けじとホップのスパイシーな香りが次々にやって来て4秒以上嗅いでいると嗅覚が麻痺しますね。強さにやられた感。飲んでもそうです。強烈。後味も濃い。ついでに周りでそれを飲んでいるバイエルンのおじさんたちも、声はでかいし腹はでかいしで、雰囲気にやられて、数口飲んだらもうお腹いっぱいです。それもそのはず、シュタルクビアはその昔、坊さん(修道士)達が断食のときの栄養補給として飲んでいたのを一般にも飲ませるようになったというのですから。

この非常にバイエルン的なイメージのボックビアも、通説では北のアインベック (Einbeck) から伝わったと言われています。当時アインベックはハンザ同盟の都市として栄えており、商業的に造られて他都市へも売られていたこのビールはバイエルン王を魅了したのでしょうか。ミュンヘンのあのいわゆる「ホフブロイハウス」は、このアインベック風のビールを造るべく建設されたそうです。しかしながら、そう簡単に真似できるものではなかったようで、その後17世紀はじめアインベックからブラウマイスターを連れてきて、ようやくアインベック風の強いビールが造られ始めたという話です。さらに通説ではこの「アインベック」が訛り、短縮され、時と共に次第に「ボック」と変わっていったとのこと。21世紀の今でもバイエルンの田舎の訛りはひどいもんですから、当時の人々の訛りといったら相当なものだったに違いありません。彼らがよそから強引に持ち込み、自分達の呼び方に変えてしまい、毎年3月にはシュタルクビア・ツァイトと称してガブ飲みするこのビールは今やミュンヘンになくてはならない強いビールです。

語尾が「〜アートア」とほぼ決まっているのは、最初にパウラーナ(醸造所)の修道士たちが「サルヴァートア」(Salvator:救世主)という名のドッペルボックを造って一般にも振舞ったところこれが人気を博し、他がみんなして後に続いたためです。ほとんどが濃色ですが、Forschungsbrauerei の Blonder Bock(ブロンダー・ボック)や Andechs の Bergbock Hell(ベルクボック・ヘル)は淡色です。また、単にボック、ドッペルボックと言えば普通、下面発酵ですが、シュナイダーヴァイセの Aventinus(アーヴェンティヌス)などのヴァイツェンボックは上面発酵ビールです。

Ein Bockbier, bitte.(1杯)Zwei Bockbier, bitte.(2杯)
Oktoberfestbier
オクトーバーフェストビア

かの有名なオクトーバーフェストの会場にいくと、この美しい銅色のビールが飲めます。ヘレスよりもちょっと色濃く、もっともっとモルティ。アルコール度も高めなのでフェストに来た人はすぐにいい気分になること間違い無しです。あの大きな1リットルのジョッキは Mass (マース)と呼ばれ、飲める人も飲めない人もこれがオーダーするときの最少単位。

オクトーバーフェストビアは、ビールの本やビアスタイルの説明などを見るとよく「メルツェン」とか「ヴィエナ・スタイル」とも呼ばれる、などど記述してあります。これには最初混乱させられました。バイエルンのブルワリーが造るメルツェンはもっと色が濃いし、ヴィエナ・スタイルなんてウィーンに行っても誰も知らないそうだし。そしてフェスト会場ではなく街のレストランで飲む「オクトーバーフェストビア」は、会場版よりも濃く赤っぽい銅色をしているんです。いったいどれが本当のオクトーバーフェストビア(メルツェン、ヴェエナ・スタイル)なんだ?

それには、歴史がありました・・・下面発酵に適した純粋イースト菌の培養技術などまだなかった頃から、醸造に携わっていた修道士たちは3月に造ったビールをアルプスのふもとに掘った穴に貯蔵して、9月にまた醸造が再開されるまでの間の需要に応えていました。0度近い温度でゆっくりと発酵・熟成されるこのビールは低温発酵ビール、後にラガービアと一般的に呼ばれるビールの始まりでした。このビールに関する最初の記録は1420年とのこと。ラガービアの本当の革命が訪れたのが1830年代ですから、その間400年間ずっとこのような形で醸造がおこなわれていたことになります。

ラガービアの革命に関わった重要人物が2人。シュパーテン醸造所のガブリエル・ゼドルマイアー(Gabriel Sedlmayr)とウィーンのアントン・ドレーア(Anton Dreher)です。彼らは一緒に6年間に渡りヨーロッパを周って各地の醸造所を見学し、時にはくり抜いたステッキ内にビールや麦汁をサンプルとして盗んだりしながら、イギリスの蒸気エンジンを使った醸造やモルト製造技術などを学びました。ガブリエルは1836年に戻りシュパーテン醸造所を継ぎました。蒸気エンジンを導入した醸造設備、カール・フォン・リンデの発明した製氷機、地下に掘った貯蔵庫により、年間を通してラガービアを醸造することが可能になりました。当時のビールの色はドゥンクレスに近いものだったでしょう。また、低温貯蔵によりビールが腐って酸っぱくなるという心配が減ったため、イギリスのエールに比べてホップの使用量(ホップは天然の殺菌剤)も少なくて済むようになったと言われています。一方、ウィーンのドレーアは、ガブリエルと連絡を取りながら低温貯蔵の技術を作り上げ、「ヴィエナ・レッド」と呼ばれるアンバー・ブラウン(ドゥンクレスとピルスナーの中間)のビールを造りました。この色は、当時ミュンヘンで使用されていたモルトよりも淡い色のモルト(モルト乾燥技術の進歩による)を使用することにより出来上がりました。これが「ヴィエナ・スタイル」です。アルコール度は高めだったといわれています。この赤みがかったビールは残念ながら後のピルスナーの到来により1900年代初めにウィーンから消えたそうです。

そうしてドレーアのヴィエナ・スタイルがミュンヘンに与えた大きな影響が、フランチスカーナ醸造所を所有していたガブリエルの弟、ヨーゼフ・ゼドルマイアーが1871年にドレーア風に造ったアンバーカラーのラガーです。ドゥンクレスに比べて色の淡いこのビールは人気を博したとのこと。3月に醸造され(これゆえ「メルツェン」と呼ばれる)、秋まで貯蔵され、オクトーバーフェストの開会の儀式で栓が開けられたということから「オクトーバーフェストビア」とも呼ばれる・・・という長い歴史があったのでした。

このアンバー・ブラウンでモルティ、アルコール高めのビールが、いわゆる本来のオクトーバーフェストビア。しかし、現在フェスト会場やほとんどのブルワリータップで出てくるフェストビアはもっと色が淡く、貯蔵期間も短い下面発酵のビール。全世界から訪れるあれだけの人数の客に飲ませるには、色や貯蔵期間の変化も自然の流れといえばそうかもしれません。ただ、今でもいくつかのブルワリータップ(市内のレストラン)では、本来の色の濃いフェストビアを飲むことができます。

Eine (Mass), bitte.(1杯)Zwei (Mass), bitte.(2杯)

 


 

ミュンヘンで美味しいビールを飲むなら

Andechs am Dom
Weinstr. 7a
089 / 29 84 81
http://www.kloster-andechs.de
ミュンヘンの南に位置する小さな村アンデクスに修道院ブルワリー「アンデクス」はある。ブルワリーは Amersee 湖を見下ろす小高い丘にあり、もちろんアンデクスのビールビールは、そこで飲める。時間があれば、ミュンヘンを抜け出して美しい湖を眺めながら新鮮なアンデクスのビールを飲むのがお勧め。ミュンヘン市内からは S-Bahn(電車)とバスを乗り継いで行くことが出来る。時間がなければ、市内のこのレストランで同様に新鮮なビールを味わうことが出来る。バナナのようなフルーティなアロマ、シトラス系の酸味を持つ、ヘレスヴァイスビアをぜひ試して欲しい。夏場には特にぴったりのビールだ。寒い時期には、カラメルの風味が豊かでモルティなドッペルボックをゆっくり飲むのもいい。料理はバイエルン料理。
Nuernberger Bratwurst-Gloeckel
Frauenplatz 9
089 / 22 03 85
http://www.augustinerbraeu.de
街の中心にあるフラウエン教会の足元にちょこんと座っているような小さなレストラン。Andechs am Dom (↑)の斜め向かいにある。店の名前のとおり、ニュルンベルガーソーセージがおいしい。木の樽から注がれる Augustiner のヘレスは絶対に飲んでみて欲しい。料理はバイエルン料理。
Altes Hackerhaus
Sendlinger Str.14
089 / 260 5026
http://www.hackerhaus.de
ミュンヘン6大ブルワリーの1つ、Hacker-Pschorr のレストラン。街中にあって便利な上、いったん中に入ると騒がしくないので、ホフブロイハウスなどとは違い落ち着いて飲める。夏場は人通りの多い外のテラス(と言うか歩道)よりも屋根の開く中庭がおすすめ。 中庭の壁には、古い看板がたくさん貼ってある。

モルティで典型的なミュンヘンのヘレスと、ホップの豊かなアロマとモルティな後味のバランスが素晴らしいピルスがお勧め。

オクトーバーフェストの時期にここでは、本来のアンバー色をしたオクトーバーフェストビアが飲める。フェスト会場のものと飲み比べるのもおもしろい。料理はバイエルン料理。

Augustiner Grossgaststaetten
Neuhauser Str. 27
089 / 2318 3257
http://www.augustinerbraeu.de

http://www.augustiner-restaurant.com
観光名所のマリーエンプラッツと中央駅を結ぶにぎやかなショッピングストリートにあるこのビアホールは、観光客 や買い物に来た人々でいつもいっぱいだ。サービススタッフの制服やインテリアがとてもドイツっぽいビアホール。 太陽が出ていれば店の前にテラスが出されるので、通行人ウォッチングをしながらのんびりとビールを飲むのが最高に気持ちいい。

美しい黄金色のヘレス、 モルティなドゥンクレスはちょっと重いバイエルン料理を流し込むのに最適だ。

Augustinerkeller
Arnulfstrasse 52
80335 München
089 / 59 43 93

http://www.augustinerkeller.de/
夏にミュンヘンを訪れたらぜひ行ってみて欲しいところ。ビアガーデンが素晴らしい。感動するのは、その広さもさることながら、街中(中央駅から歩いていける)であるにもかかわらず緑の中でゆったりと新鮮でおいしいビールが味わえるところ。暑い夏の日差しも、青々とした葉がちょうど良いくらいに遮ってくれる。これが「ビアガルテン」なんだな、と思うこと間違いなし。ビールは木樽から注がれる「エーデルシュトフ」(エクスポートタイプ)。

屋内のレストランもこれまた広い。季節を問わずおいしいビールが味わえる。

Franziskaner Fuchsenstuben
Perusastr. 5
089 / 23 18 120
http://www.zum-franziskaner.de

http://www.franziskaner.info
このレストランは、表に掲げてある青と白のバイエルン州の旗が目印。爽やかでフルーティなヴァイスビアを、ヴァイスヴルスト (ゆでた仔牛の白いソーセージ)やソーセージの盛り合わせと一緒に。ヴァイスヴルストは午前中に食べるものだとされているけれど、そんなの気にしない。美味しいものは、いつでも食べたい。 バイエルン料理。  
Loewenbraeukeller
Nymphenburger Str. 2
089 / 52 60 21
http://www.loewenbraeu.de
道を挟んだすぐ近くにレーベンブロイのブルワリー があり、このビアホールは言わばブルワリータップ。新鮮なビールが味わえる。時々この辺り一帯に広がるあまーいモルトの香りで「ビール造ってるな」と分かってしまう。

天気の良い日は、おもてのビアガーデン が気持ちいい。新鮮で爽やか、フルーティなヘレスヴァイスビアは、結構ホップがきいている。中央駅からも近い。(地下鉄で1駅)

Spatenhaus an der Oper
Residenzstr. 12
089 / 290 7060
http://www.spatenbraeu.de
シュパーテンのちょっとおしゃれな感じのレストラン。レストランの名前にもあるように、目の前にオペラ劇場があるので、着飾った紳士、ご婦人がお食事をしていたりもする。 ホップとモルトのバランスの取れたヘレス、アロマホップのブーケが素晴らしいピルスをぜひ。バイエルン料理。
Weisses Braeuhaus
Tal 7
089 / 29 98 75
http://www.schneider-weisse.de
シュナイダーヴァイセを飲むならぜひここで。 まずは、定番のシュナイダーヴァイセを飲んで欲しい。いわゆる普通の(ヘレス)ヴァイスビアよりも色が濃く、リッチなアロマとフレーバーのシュナイダーヴァイセのファンはミュンヘンにも多い。何杯でもいけそうだが、ちょっと強めの(8%) Aventinus Doppelbock に移ってさらにリッチなフレーバーを味わってみるのもいい。それでも物足りない場合は、12%の Aventinus Eisbock (0.3ml) をお試しください。サービスの雑さも、ビールが美味しいから許せる。 バイエルン料理。
Paulaner am Nockherberg
Hochstr. 77
089 / 45 99 130
http://www.nockerberg.com
街の中心から閑静な住宅街に入ったところにあるパウラーナのレストラン。ブルワリーを見下ろす丘の上にある。数年まえに火災が起こり建物と醸造施設のほとんどが焼けてしまったが、2003年の3月シュタルクビアフェストに合わせて新しい建物がオープンした。しかし、ここではもうビールは造っていない。レストランの中にある銅製の釜は見かけのみ。

ハウスビアの Nockherberger(ノッカベルガー)はフィルターしていないビール。この小高い丘になった地域は Nockherberg(ノッカベルク)と呼ばれるので、この名前。毎年春のシュタルクビアフェストはここで飲むドッペルボック Salvator がおすすめ。レストランのほかにビアガーデンもある。


現在パウラーナはオランダのハイネケンが49%を所有しているのが心配だが、味が変わらないようにと願っている。

 
Isar-Braeu
Kreuzeckstr. 23 Grosshesselohe
089 / 79 89 61
WWW site

Brewpub

1988年に駅舎を改装して作られた素敵なブルーレストラン。 ミュンヘン市内からは S-Bahn で20分程のところ。(電車: S7,  Wolfratshausen 行き, Grosshesselhohe 駅下車) 結構遠いと感じてしまうが、雰囲気もビールもいいので、わざわざ行ってよかったと思う。テーブル席とバーがある。階下のトイレに行く途中の通路からは醸造設備が見えるようになっている。バイエルン料理。  
Paulaner Braeuhaus
Kapuzinerplatz 5
089 / 54461111
089 / 5446110
http://www.paulanerbraeuhaus.de

Brewpub

建物が古めかしいパウラーナのブルーパブ。新鮮なビールが飲める。金曜の午後には、早々と仕事を終えた 人々がネクタイを緩めてやってくる。裏のビアガーデンが気持ちいい。  
Unionsbraeu
Einsteinstr. 42
089 / 47 76 77
http://www.unionsbraeu.de

Brewpub

インディペンダントのブルーレストランと思いきや、レーベンブロイ所有。 レーベンブロイのビールは全体的にホップが強めな印象があるが、ここのハウスビアである「natur-trueb」もわりとビター。これはフィルターされてないのでうっすらと濁っていて、木の樽から注がれる。 もう1つのハウスビアは、シュタルクビアツァイトやオクトーバーフェストの期間を除いて、ミュンへナー・ドゥンクレス。これもフィルターされていない。1階はレストランで典型的バイエルン料理が味わえる 。地階の Keller でわいわいと楽しく飲んでもいい。夏場はぜひ裏のビアガーデンで。

NoMiYa
Woerthstr. 7
089 / 44 84 095
WWW site
ドイツ人に人気のとてもユニークな店。ビールにうるさい人でも、ここのよく選択されたバイエルンの美味しいビールには満足するに違いない。Altötting という小さな町にある Hellbraeu というブルワリーの Trübes が人気。(写真) 0.5 リットルの陶製のジョッキで出される。これはフィルターされていないのでうっすら濁っており、濁り加減によって味も微妙に違う。その違いを飲むたびに楽しめる。 ヴァイスビアは Haag という町の Unertl というブルワリーのもの。濃色のこのヴァイスビアは、典型的なバナナ−クローブのアロマと非常にリッチなフレーバーを持ち、まるでしっとりした黒パンのよう。 他のヴァイスビアが約50%の小麦モルトを使用して造られるのに対し、これは70%以上もの小麦モルト使用。アルコールは4.8%。もう少しカラメル風味が強く、アルコールも強めのヴァイスビア(5.8%)なら Ursud がある。いつも常連客でいっぱいだ。料理は巻き寿司と焼き鳥などでドイツ人向けにアレンジした日本食。

Airbraeu
Flughafen Muenchen (Munich Airport) 場所
089 / 975 93111
http://www.airbraeu.de

Brewpub

なんとミュンヘン空港内にあるブルーレストラン。入れ替わり立ち代り空港利用者がこのレストランにやってくるので、ビールはいつも新鮮。どのくらい新鮮かは、貯蔵タンクに書いてある日付を見てみればいい。レギュラービアは2つ。 FliegerQuell という名のフィルターされていないラガー。(写真) ホップが強め。もうひとつは、Kumulus というヴァイスビア。時期によって季節限定のビールがある。ミュンヘンでの最初の一杯、または最後の一杯を飲むことが出来る。

Forschungsbraeustuberl
Unterhahingerstr. 76
Perlach
089 / 670 1169

Brewpub

ミュンヘン郊外にある小さなブルーレストラン。現地の人達ばっかりだ。ビールは2種類。Pilsissimus Export と St. Jakobus Bock。どちらもアルコール強めな上、1リットルのジョッキででてくる。Pilsissimus Export (5.4%) は銅色のホップのアロマが新鮮なラガー。他のバイエルンのビール同様にモルティでもある。お店の人のお勧めは 8.7% の St. Jakobus Bock のようで Pilsissimus を下さいと言わなければ強いボックが出てきそうな雰囲気ある。色も濃い目で、味は Pilsissimus に比べ非常にリッチでモルトの甘みが強い。ビアガーデンが最高。料理は、バイエルン風で簡単なおつまみ程度。

ミュンヘン中心部からは離れているが、S-Bahn で行ける。月曜休み。

Wirtshaus Ayingers am Platzl
Platzl 1a
089 / 2370 3666
ホフブロイハウスの斜め前にあるのに、ホフブロイハウスにはみんな行くのに、ここはあまり知られていないかもしれない。ミュンヘン郊外の小さな村 Aying(アイインク)のブルワリー、「アイインガー」のビールをミュンヘンの中心地で飲むにはここ。

ほとんどの種類がドラフトで飲めて、しかもフィルターしていない Kellerbier がある。暖かい日に表のテラスに座って飲んでいると、ホフブロイハウスからどんどん出てくる千鳥足の観光客を見て楽しむことができる。

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