プラズマ状態  放電

     放電管のプラズマ  プラズマの発光  ピンチ効果

 物質の温度が上昇すると,固体から液体に,液体から気体にと状態が変化します。気体の温度が上昇すると気体の分子は原子に分離され,さらに温度が上昇すると原子を構成している電子が原子から離れて,正イオン(電子を失った原子)と電子に分かれます。この電子と原子が分離する現象を電離(電離には溶液中の電離もあります)といいます。そして電離によって生じた電荷を帯びた粒子(荷電粒子)を含む気体をプラズマとよびます。プラズマには電子の密度や電子のエネルギーの違いによっていくつもの種類があります。

 


プラズマにはいくつかの種類がありますが、その1つとしてガスの一部がイオン化し、その中にいろいろな粒子(電子、原子、イオン、分子)を含み、プラズマは全体として中性の状態を保ち、熱的に平衡状態(単位体積への入熱(発生熱量)と放熱が同じ量で一定の温度に維持されている状態)にあります。そのプラズマの特性は、主にプラズマの温度によって特長付けられます。プラズマの輝きはプランクの法則に従い、色調はウインの変移則に従い、自由電子の運動エネルギーはマックスウエルの法則に従い、粒子の数はボルツマンの法則に従います。

放電管のプラズマ(アーク)  
電気のアークは電極間での持続的な放電現象の一つで、このアークはプラズマの一種です。
放電管はガスが密封されたガラス管の両端に電極を取り付け、その電極に電源を接続して、電極間の電界で電子を加速し、それを中性の原子に衝突させ、原子の持っている電子をはじき出すことで電子とイオンの数を増加させてプラズマ状態を作ります。  
  一般に電子の運動エネルギーは電界の大きさと走行距離(加速時間)に比例します。つまり、気体である分子が存在する空間の中で電子が電界によって加速されながら走行し、気体分子に衝突するまでの距離に電子の運動エネルギーは比例します。
電子が衝突してから次の衝突までの自由に移動できる距離を自由飛程(free path)といい、その平均を電子の平均自由飛程(electron mean free path)といい 、電子の自由飛程で獲得する電子の運動エネルギーの大きさがある一定の値を超えると分子(原子)から電子を弾き出す電離が発生します。
 電離される分子の種類によって電離され易いものとされ難いものがありますが、電離した電子と電離された電子が、更に次の気体分子に衝突して、2個が4個、4個が8個のように鼠算式に電子が急激に増加する現象(電子雪崩)が発生し、大きな電流が流れる(絶縁破壊)ようになります。これが、放電現象の基本的なメカニズムです。
 電子とイオンの量が増加するとプラズマが高温になり、プラズマからの熱放射が増加し、電源から供給するエネルギーと等しくなるとそれ以上電子とイオンの量を増加することができなくなり、熱的に平衡状態に達します。
 このような状態では電子とイオンの数が同じで、電気的には中性の状態です。
 

プラズマの発光  
 熱的に平衡状態にあるプラズマの中では電子の衝突によって中性の原子が励起され、もしくは電離されます、また、正イオンは電子を取り込んで再結合し中性の原子にもどり、励起された原子は余分なエネルギーを光として放出して安定な元の原子に戻ります。
 このようなプラズマ内部での粒子間の衝突には弾性衝突と非弾性衝突があり、弾性衝突では粒子間で運動エネルギーの交換が行われ、元の粒子が運動エネルギーを失い、その分衝突された粒子が運動エネルギーを獲得することになります。
 非弾性衝突では粒子間の運動エネルギーの交換の他に、粒子が持っている内部エネルギーの変化があります。内部エネルギーの変化は原子が持っている電子の回転軌道を変化させることになります。
  それは各軌道によって電子の運動エネルギーに取り得る値が決まっていてその軌道間のエネルギー差に等しいエネルギーの吸収があり、それによって軌道が変更され、元に戻るときには軌道間のエネルギー差に等しいエネルギーの放出(発光)があります。そのときの光の波長は軌道間のエネルギー差によって決定されます。(詳細は励起を参照して下さい)
 例えば水素の場合には幾つかの波長の電磁波が出ることが知られていて、その内目に見えるものが光でパルマー系列と呼ばれているものが光るをだし、ライマン系列は紫外線で、パッシェン系列は赤外線です。これらを水素のスペクトルと呼んでいます。


 放電灯の光は一般に原子を構成する電子がエネルギーを得て元の軌道からはずれ(励起)、それが元の状態に戻るときに貰った余分なエネルギーを電磁波として放出します。その電磁波の波長は余分なエネルギーの大きさに反比例(周波数に比例)しますので、その波長が可視光線の範囲で無ければなりません。
 プラズマは熱的に平衡状態になっていますので、その状態が維持されているのは電子の平均自由飛程が中性の原子(放電管の場合は主に希ガス)を電離するのに要するエネルギーを持ってい無ければなりません。一方、光を発生させるには、それに必要な励起を起こすエネルギーの電子が必要で、それは希ガスを電離するエネルギーとは異なるエネルギーの電子ですので、光を発生させるための原子を適正に選択しなければなりません。
 このように、 光は励起(または電離)された電子が元の状態に戻るときに発するものですから、励起する電子のエネルギーが次第に増加し、最も励起に要するエネルギーの少ない原子から励起しますので、その原子が持っている発光メカニズムによって発生する光の波長が決定されます。 一般に金属蒸気の原子には励起に要するエネルギーが低いものがあることから、ナトリュウムや水銀の金属蒸気がそれにあたり、放電管に利用されます。

ピンチ効果(pinch effect)  
 放電管のようにアークの経路が制限されたアーク(Wall stabilized arc) はプラズマの直径が制限されていることから、電流の密度が高くなると、電流が流れるとアンペア右ねじの法則に従って磁界が発生し、その磁界(フレミングの左手の法則)によって電子を中心に集める力が働き、電流が中心部に集中する現象が生じなす。
 中心部に電子が集中することから電子による電離は中心部に集中し、再結合を免れたイオンは周辺部に残ることから、イオンの鞘に取り囲まれた構造になっていて、これをプラズマシェルと呼びます。ここで、プラズマシェルの単位長さ当たりに存在する電子の数とイオンの数はほぼ同じですが、電流の運び手(電荷の移動)としては、高速の電子がそのほとんどを運び、イオンは電子に比較して移動速度が非常に遅いことから、電荷を運ぶ役目はしません。
  このように電流が中心に集中する現象をアークが圧縮されるといい、この現象が進むことをピンチ効果(pinch effect)といいます。これが極端になるとアークが不安定になり最終的にはアークが消滅すことがあります。

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