量子論的な電気抵抗の原因  top map map2  電気の基本法則 電気の法則物語 オームの法則 電気抵抗とは何か? 

量子論的な電気抵抗の原因
 1924年にパウリ(Wolfgang Pauli )がパウリの排他律を発表し、電子の軌道には同一種類の電子は1個しか入れないという法則を発見しました。(同一軌道にはスピンの異なる2個の電子が存在する)また、温度を絶対零にしても物質中の電子は運動エネルギーを持っていることを発見しあす。その運動エネルギーをフェルミエネルギーといい、そのときの電子の速度をフェルミ速度といいます。このフェルミ速度によってドルーデの緩和時間や衝突の回数等を計算すると、その値は現実的なものではありませんでした。(詳細は古典的なオームの法則を検証するを参照してください)

格子振動
物質が固体になるとき、個々の原子は規則正しく配列されていることが結晶格子として知られていました。
1848年にブラベー(Auguste Bravais)は結晶14種類の3次元格子モデル(ブラベー格子Bravais Lattice)が提唱されました。

格子振動の量子論的モデル

デュロン−プティの法則
  デュロン(Pierre Louis Dulong) もプティ(Alexis Therese Petit) もフランスの科学者で、この法則は独自に1819年に発表されました。
 「原子の数が同じなら比熱は同じ3NkB」(デュロン−プティの法則)N は原子の数,kB はボルツマン定数。
 1モルの理想気体において、ボイル=シャルルの法則より、P:圧力とV:体積の積をT:絶対温度除した値はR:気体定数で一定になります。
  アボガドロの法則より、定圧定温下では体積は物質量に比例するから、n モルの場合、アボガドロ数NAとボルツマン定数kB の積は気体定数Rに等しいことから、[ R = NA×kB ] となります。
 この関係をデュロン−プティの法則に代入すると、1 mol の原子の比熱は3Rで、比熱は温度に依存しないことになるのですが、実際には低温での比熱の値が小さくなることが確認されてきました。(詳細はデュロン−プティの法則を参照してください)

ヴィーデマン−フランツの法則(Wiedemann-Franz law)
1853年にグスタフ・ヴィーデマン(Gustav Wiedemann)とルドルフ・フランツ(Rudolph Franz)は熱伝導率と電気伝導率の比は金属の種類に拠らず一定で温度に比例することを発見したのがヴィーデマン−フランツの法則です。これは金属では熱の伝わり方と、電気の伝わり方に何らかの関係があることを示したものです。

デバイモデル
1912年ピーター・デバイ(Peter Debye)は結晶中で結合(格子)している原子の振動(ホノンphonon)によって固体の比熱を説明するデバイモデルを作り、低温での固体の比熱は絶対温度の3乗に比例することを明らかにしました。
 固体のモル熱容量は高温(デバイ温度をこえる温度)ではデュロン=プティの法則の値3R(Rは気体定数)とほぼ一致しますが、低温では、温度の3乗に比例して小さくなることが実験でも知られるようになります。
 固体の比熱は大部分が格子振動によるものですので、デバイモデルで大変よく説明することができますが、金属の場合、格子振動だけではなく、結晶中の電子(自由電子)があり、電子の運動による比熱が加わるはずですが、実際には、ごく低温を除いて、金属の比熱もほぼデバイ・モデルで説明出来ることから、ドルーデモデルのように金属の結晶中の電子を完全な自由電子として扱う(電子を理想気体中の分子のように扱う)には問題があることが熱力学の分野で明らかになってきました。ヴィーデマン−フランツの法則から熱伝導と電気抵抗には関連があることから、電気抵抗についてについてもドルーデモデルとは別なモデルが必要になってきました。

格子振動による電気抵抗に関するグリューナイゼンの式(Gruneisen Low)
  グリューナイゼンは格子振動による熱伝導の式を電気抵抗にも適用して、格子振動による電気抵抗に関する計算式(グリューナイゼンの式)を提案し、デバイ温度以上では、電気抵抗はTに比例し、デバイ温度以下ではTの3乗に比例し、抵抗は温度が低くなると急激に減少することが示されました。

ラマン散乱
 光が物質に当たって(入射)、飛び散る(散乱)とき、殆どの光の周波数は物質に当たる前の振動数と同じ周波数(レイリー散乱)ですが、飛び散った光の一部に物質に当たる前の光の振動数とは異なる振動数の光(ラマン散乱)が存在することが1928年インドの物理学者ラマンとクリシュナンによって発見されました。
 このような現象が生ずるには、光が物質に当たったとき、物質中の原子や分子が振動しているか、回転しているのであれば、ドッブラー効果によって振動や回転の振動数分だけ光の振動数が増加したり減少したりすることが考えられ、物質に当たる前の波長とは異なる波長の光が放出されると考えられました。
 これは1924年にド・ブロイ(de Broglie)が提唱した物質の粒子性と波動性を結びつける考えで、物質は物質の温度に応じた周波数で振動しているとする、物質波またはド・ブローイ波(de Broglie wave)が検出されたと考えられ、当時この発見はラマン散乱の発見は物質波の存在が確認されたと考えられました。

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関連事項
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