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 『待ちぼうけ』

 

 ちっちっちっち……

 静まりかえった部屋に響く、機械音。

 その耳障りな時計の音に内心イライラとしながらも、わたしは今日の訓練のまとめと、明日のメニューの見直しを続ける。

 二人でも広く感じる部屋は一人だとひどく居心地が悪く、仕事は遅々として進まない。

「はぁ〜〜〜〜」

 ピッ、とモニターを消してベッドへ歩み寄り、勢いをつけて倒れ込む。

 ぼふっ、と小さく巻き起こる風と共にほんの少し香る、フェイトちゃんの匂い。

「遅いな〜フェイトちゃん」

 時計をちらりと見て一人呟く。

 いつもなら、お互い細かい仕事をしながら、のんびり雑談を交わして過ごす時間。

 けれど今日は、会議の後に開かれる食事会に出席すると言うことで、いつもよりも帰りが遅い。

「む〜」

 唸りながら、ごろごろと意味もなくベッドの上を転がってみるけれど、当然そんなことで気分は晴れることもなく、暇つぶしにもならない。

 いつもフェイトちゃんが寝ているあたりに突っ伏して、再び大きなため息をつく。

 時計の方に再び視線を向けてみるけど、針は怠けているのかちっとも進んでくれない。

 広いベッドに一人きりの間抜けな姿。

 無意識のうちにわたしの手は、いつも隣に感じているはずの大好きな人の存在を探す。

 ……やっと、手の届く距離にいられると思ったのに。

 今までを思えば贅沢とも言える環境だけど、一度味わってしまえば、その幸せはあって当然のもののように思えてしまう。

「欲張りかな、わたし」

 ベッドにほおづえをついて、ばたばたと両足で布団を叩く。

 ふと、見上げた枕元のボードに貼ってある写真に目が止まった。

 そこにはわたしの隣で優しく微笑むフェイトちゃんの姿――わたしは思わず問いかける。

「……フェイトちゃんは、どう思うかな?」

 

「私は、なのはがそう思ってくれて、嬉しいよ」

 

「えっ!?」

 一瞬、写真のフェイトちゃんが答えたのかと思って、飛び起きてまじまじと写真をのぞき込む。けれど、当たり前のようにそれに変化はない。

「さすがに、写真の私は話しかけないと思うよ?」

 背後からのくすくす、という笑い声に振り向くと、物陰からフェイトちゃんがひょい、と顔を出した。

「ただいま、なのは」

「フェイトちゃん!?」

 驚きの余り声が裏返ったわたしに、さらに吹き出す。

「ぷっ、あははは! ごめんね、びっくりした?」

 思い切り笑いながら、ベッドサイドへとやってくる。

「もう、本気で驚いちゃったよ。で、いつから見てたの?」

 ベッドの端に腰掛けて、着替えるフェイトちゃんを見上げる。

「いつからって、えっと……なのはがベッドに倒れ込んだあたりからかな?」

 ちょっと可愛かったよ、とからかうように笑う。

「うぅ、いじわるしないで声かけてよ〜」

「一応、ただいまって、声はかけたんだけどね」

 タイを外し、胸元のボタンを一つずつ外す指先。

 そんな姿を見ているうちに、何だかたまらない気分になってくる。

「えいっ」

 まだ、ボタンを外し終わってないフェイトちゃんを、わたしはいきなり引き倒す。

「な、なのはっ!?」

 胸に倒れ込んでくるフェイトちゃんを、しっかり抱き留める。

 鼻先をくすぐるのは、ベッドに残っていたのとは比べものにならないくらい強い、フェイトちゃんの香り。

 それはわたしの中の理性を眠らせ、心の奥底に潜んでいた欲望を目覚めさせる。

 さらさらと頬をくすぐる綺麗な金髪を、そっとかき上げる。

 くすぐったそうに細める目が、とてもやさしい。

「なのは。まだ、着替えの途中だよ?」

 諭すように言われるけれど、わたしは抱きしめた手を離さない。

 布越しに感じる、確かな温かさ。

 さっきあれほど待ち焦がれた人が、腕の中にいてくれる。その幸せを噛みしめたくて。

 でも、甘い時間はそう簡単には手に入らない。

「なーのは。私、まだ書類の整理とか残ってるんだけどな」

「うぅ、そう言えばわたしもまだちょっぴりデータ整理残ってたんだった……」

 フェイトちゃんの言葉で、わたしはさっきから放り投げたままになっている仕事のことを思い出した。

 ここでフェイトちゃんを離してしまうのはすっごく惜しいけれど、仕事は仕事。

 軽く唇を重ねて、ゆっくり腕を解く。

 先に起き上がったフェイトちゃんは、そっとわたしの手を取って起こしてくれた。

「なのはは、また訓練メニュー?」

「ん〜、大体の流れは出来てるんだけどね。今日の結果との照らし合わせで細かい内容をいじったから、その調整」

 コーヒーでも淹れて気分を入れ替えようと、会話をしながらベッドを降りる。

「フェイトちゃんも、コーヒーでいい?」

「あ、うん。ありがとう」

 戸棚からおそろいのカップを取り出し、コーヒーミルで豆を挽く。

 わたしの数少ない、人よりちょっと得意なこと……って、喫茶店の娘だから当然なんだけどね。

 でも、フェイトちゃんと二人きりで飲むコーヒーは、実はちょっと特別。

 お母さんに教えてもらった、本当に大好きな人とだけ飲む、秘伝のコーヒー。

 本人にも内緒だから、たぶんフェイトちゃんはほかのみんなとの違いには気づいてないと思うけど。

 大切な人との二人きりの時間を特別なものにしてくれる、ちょっとした魔法なのよ――とお母さんは笑ってたっけ。

 

「はい、どうぞ」

 ソファーに座って先に書類整理を始めているフェイトちゃんに、湯気の立つカップの片方を差し出す。

「あ、ありがとう、なのは」

 受け取るフェイトちゃんの隣に腰掛け、わたしもモニターを出す。

「フェイトちゃんは、会議のまとめ?」

「うん。でも今日のはそんなに時間、かからないかな」

 そう言って、カップを口に運ぶ。

 口をつけるほんの一瞬だけ、少し目を伏せるフェイトちゃんの表情。

 このときの横顔が、実はすごく好き。

「……どうしたの、なのは?」

 わたしの視線に気づいて、フェイトちゃんが不思議そうな顔をする。

「にゃはは。コーヒーおいしいかな、って」

「うん、すごくおいしいよ」

 ごまかしたわたしに、フェイトちゃんは笑顔でそう答える。

「なんかね、なのはと二人で飲むときのコーヒーって、いつもよりもっとおいしい気がするんだ」

「ん〜、わたしが隣にいるからかな?」

 内心どきっとしながら、軽くちゃかす。

「もう、真面目に言ってるのに」

 フェイトちゃんは少し顔を赤くしてわたしを肘で軽くこづきながらも、でも、と続ける。

「なのはと一緒にいるときは、色々なものが特別に感じる……っていうのはあるかな」

 照れ笑いを浮かべながら、嬉しそうにそう言うフェイトちゃんがあまりに可愛くて、思わずわたしはカップを持ったままキスをする。

 ほんのり苦みを感じるキス。

 甘さを求めて舌を差し入れると、すっと身を引かれてしまう。

「フェイトちゃん?」

「まだ……作業終わってないから」

 真っ赤な顔で俯きつつそんなこと言われると、逆に意地悪したくなっちゃうんだけどな。

 でも、確かにもうそろそろ真面目にやらないと、フェイトちゃんとじゃれ合う時間も無くなりそうだし、何かいい方法は……

「ん〜、じゃあ、勝負しよっか?」

「勝負?」

 突然のわたしの言葉に、フェイトちゃんは不思議そうに聞き返す。

「うん。今日の作業、先に終わらせた方が一つ言うこと聞いてもらえるの」

「それって、実はなのはの方が有利だったりしないよね?」

 怪訝そうなフェイトちゃんの顔。

 わたしはさっき途中で放り投げたデータ整理の残りをざっと見積もる。

「えっと、わたしのはいつも通りやったらたぶん一時間くらいで片付けられるかな?」

「それなら、私も同じくらいかな?」

 フェイトちゃんの方もざっと目を通し、確認する。

「お願い事は何でもいいの?」

「うん。わたしが出来ることなら何でも。そのかわり、フェイトちゃんも同じ条件だからね」

「うぅ、こういう時のなのは、いじわるだからなぁ……」

 ほんの少し、困った顔。

 でも、こんな時のフェイトちゃんの乗せ方は、よく知ってる。

「じゃ、さっきの続き、してもいい?」

 耳元に息を吹きかけるようにしてささやく。

「だ、ダメだよ〜」

「それじゃ、やる?」

「……やる」

 はぁ〜、と深いため息をついてフェイトちゃんがモニターに向かう。

 

「手加減、しないからね?」

「どーぞどーぞ。わたしも全力全開でやっちゃうから」

 お互い、牽制し合う。

 というか、渋ってたわりにはフェイトちゃん、結構ノリノリ?

 なんだかんだでフェイトちゃん負けず嫌いだもんね。って、わたしもなんだけど。

「じゃ、いくよ。よーい……スタート!」

 かけ声と共に、隣から聞こえてくる素早いタッチ音。

 わたしも負けじとモニターに向かい、作業に集中する……けど、やっぱり隣が気になる。

 ちらっと横目で顔を見ると、ひどく真剣な表情。

 ……これは、本気でやらないと負けるかも。

 フェイトちゃんなら勝っても無茶なお願いはしてこないと思うけど、ここはやっぱりわたしが勝って、ちょっとフェイトちゃんを困らせてみたい。

 

 頭に浮かんだ少し邪な想像と戦いながら、わたしはいつもの倍くらいのスピードで作業を片付けていった。

 

         ×   ×   ×

 

「よしっ! おーわりっと」

 ピッ、とモニターを消して、先に声を上げたのはわたしの方だった。

「ええっ!? もうちょっとだったのに〜」

 わたしに振り向き、残念そうに声を上げるフェイトちゃん。

「にゃはは。とりあえず、フェイトちゃんの作業終わるまで待ってるね。コーヒーもう一杯飲む?」

「うぅ、お願いします……」

 軽く落ち込みながら、フェイトちゃんは再びモニターに目を落とす。

 少しテンポの落ちたタッチ音にわたしは苦笑しながら、さっきより少し薄めのコーヒーを淹れて、フェイトちゃんに渡す。

「なのはは、ほんとにこういう勝負は強いよね」

「好きな人のことなら誰にも譲れないからね。たとえ相手が本人でも」

 ちょっと得意げに笑うと、フェイトちゃんの顔が少し赤くなる。

 気づかれまいと一生懸命平静を装ってみるものの、逆に顔がこわばってしまっているのがちょっと面白い。

 ちょっとからかってみたいけれど、ここで時間を取ると後のお楽しみが減るしなぁ……

 ぎこちなく入力を続けるフェイトちゃんの隣で、わき起こるいたずら心と格闘する。

「フェイトちゃーん、まーだー?」

 じっと待っていられなくて、フェイトちゃんの肩に寄りかかってモニターをのぞき込む。

「なのは、あんまり見られたらなんかやりづらいよ。もう少しで終わるからおとなしく待ってて」

 小さな子供に諭すように軽く頭を撫でられ、わたしは渋々体を離した。

 ソファーに横になり、フェイトちゃんの髪を指先でもてあそびながら作業の終わりをじっと待つ。

 時折ちらっとフェイトちゃんが視線をくれるのがちょっと嬉しい。

「……うん。今日の作業、終わり」

 ピ、とモニターを消してフェイトちゃんは残りのコーヒーを飲み干した。

 一息つくと、身体をほぐすようにんーっ、と身体を伸ばす。

「お待たせ、なのは」

 笑顔で振り向いたフェイトちゃんを、待ちかねていたわたしは飛びつくように押し倒す。

「な、なのはっ?」

 うろたえるフェイトちゃんにかまわず、ちょっと強引に唇を重ねる。

 一瞬抵抗を見せるけれど、優しく舌で唇をくすぐるとふっと力が抜けていく。

 そのまま静かに口内へと舌を差し入れ、フェイトちゃんの舌をもてあそぶ。

「んっ……ふぁっ……」

 時折こぼれるフェイトちゃんの甘い吐息が、わたしの中の欲望に火をつける。

 深く唇を重ねたまま、服の裾から手を差し入れ、素肌に触れる。

「んうっ!?」

 びくん、とフェイトちゃんは体を反応させて、身をよじって抵抗するけれど、わたしはその体を押さえ込み、なめらかな素肌を堪能する。

 重ねていた唇を滑らせるように移動し、耳たぶを軽く噛む。

「やぁっ、だめっ! こんなところでっ……」

 フェイトちゃんは必死に抵抗するけれど、その姿がむしろ可愛くさえ見えてしまう。

 そのままフェイトちゃんの抵抗を無視して、わたしはさらに行為を続ける。

「本当に、嫌なの?」

 首筋を舐め上げながら、わざと意地悪く尋ねる。

「こ、ここじゃ、嫌なの……」

 顔を真っ赤にして恥ずかしげに告げるフェイトちゃんがひどく可愛くて、わたしはさらに意地悪をする。

「そんなこと言ってるわりには……ほら、ここ堅くなってるよ」

 ブラを押し上げ、姿を現した綺麗な丘の先端を、軽く指でつまむ。

「ああっ、ダメぇっ!」

 びくっ、と身をのけぞらせ、半ば叫ぶようにフェイトちゃんは声を上げた。

「敏感だね、フェイトちゃん」

 息を荒げ瞳に涙を浮かべるフェイトちゃんの耳元に、息を吹きかけるようにささやく。

 潤んだ瞳が、懇願するようにわたしを見つめる。

「おねがい、なのは、ベッドに行こう? ソファーの上じゃ狭いし、その、恥ずかしいよ……」

 真っ赤な顔で訴えるフェイトちゃんの髪を撫でて、わたしはにっこり微笑む。

「だーめ。もう一秒だって待てないもん」

「な、なのはぁ」

「じゃあ、逃げられないようにしちゃおうかな? さっきのお願い……今日はここでする、っていうのはどう?」

「えぇ〜」

 涙目のままフェイトちゃんは抗議するけれど、その唇をキスでふさぎ、わたしはそのまま続きを再開した。

 軽い抵抗を見せるフェイトちゃんを、激しいキスで無力化して、その隙に服をまくり上げる。

 明るい部屋の中、白い素肌が露わになり、わたしの鼓動は早さを増していく。

 キスの合間、荒い息がお互いの唇から漏れて、その熱に思考が溶かされる。

「んっ、ちゅっ……っはぁ……」

 フェイトちゃんからこぼれる声は、小さいけれど確かに甘さを含み始めている。

 いつの間にかすっかり力の抜けている綺麗な身体に、そっと手を滑らせていく。

「あっ……ああんっ」

 しっとりと吸い付くような肌の感触を堪能しながら、そっと胸へと手を差し向けると、フェイトちゃんはひときわ甘い声をあげた。

「相変わらず、胸、弱いんだね」

 さわさわと、触れるか触れないか程度の愛撫で焦らしていく。

 必死に声を抑えながら、眉を寄せて快感をこらえる表情は、すごく色っぽくて、わたしはもう、フェイトちゃんに触れること以外は考えられなくなってしまう。

 鎖骨にそっと小さな赤い印を残し、胸元へと唇を滑らせる。

 麓の部分から舌で舐め上げ、頂上の堅くなった小さな突起を吸い上げる。

「やっ、んあっっ!」

 快感から逃れようとよじる身体を押さえつけ、もう片方の胸を少し強めにもみしだく。

「んぅっ……そんなに強くしちゃ、いやぁ……」

 小さく呟いたフェイトちゃんのその言葉は、わたしの行為を止めるどころかむしろ加速させてしまう。

 ぴちゃぴちゃといやらしい音を立てて胸をしつこく舐め上げると、そのたびに快感が走るのか、ぶるっと小刻みに身体が震える。

 うっすらと汗の浮かんだ素肌を指先でくすぐるように撫でながら、そっとショーツに手をかける。

 けれど下ろそうとしたその手を、フェイトちゃんの手が止めた。

「だっ、だめっ」

「なんで?」

 真っ赤な顔で首を振るフェイトちゃんになるべくやさしく尋ねる。

「だって……部屋、電気つけっぱなしだから」

「大丈夫。フェイトちゃんの身体、すっごいきれいだから」

 緊張を解くように優しく身体を撫でながら耳元にささやく。

「でっ、でも、恥ずかしいよ……」

 視線をそらし、とても小さな声でそう呟く。

 不安そうに泳ぐその視線に、わたしは軽く苦笑する。

 ……どんなに身体を重ねても、この初々しさは無くならないんだよね。

 まぁ、この辺が色々意地悪したくなっちゃう原因でもあるんだけど。

 わたしはそっとフェイトちゃんの頬にキスを落とし、服を脱ぐ。

「……なのは?」

 不思議そうに見上げるフェイトちゃんに、とびきり優しい顔で微笑む。

「わたしも一緒に脱いじゃうから、それなら恥ずかしくないでしょ?」

「う、あんまり変わらない気がするんだけど……」

「じゃ、フェイトちゃんだけ脱ぐ?」

「……一緒がいい」

 渋々、といったような感じで頷いたフェイトちゃんに、わたしはゆっくりと身体を重ねる。

 素肌から伝わる、フェイトちゃんの温かさ。

「ね、下着……脱がせてくれる?」

 返事の代わりにフェイトちゃんの手が、わたしのショーツにかかる。

 少し不器用に、お互いの下着を脱がしていく。

 部屋の明かりの下、一糸まとわぬお互いの姿に、二人とも思わず無言で見つめ合う。

 どちらからともなく、静かに顔を寄せ合い、唇を重ねる。

 はじめ触れ合うだけだった唇は、やがてすりあわせるように深く重なり合い、舌はお互いの口内を行ったり来たりする。

 唇の隙間から漏れる水音が、静かな部屋にやけに響く。

「んっ……ふぁっ、なの、はぁ……」

 キスの合間に甘い声でささやかれる自分の名前に、心臓がはち切れそうなくらいに激しい鼓動を打つ。

 指を絡めるように繋いでいた手をそっと離し、太ももをゆっくりとなで上げる。

「あっ、んぅっ……」

 重なったままの唇から、少し苦しそうに熱い吐息が漏れる。

 思う存分フェイトちゃんの口内を味わって、わたしはゆっくりと重ねていた唇を離した。

 唇からこぼれた細い糸のような滴が、つうっと二人の間を結ぶ。

「フェイトちゃん……大好きだよ」

 汗ばんだ額に張り付いた前髪をかき上げてあげると、フェイトちゃんは嬉しそうに目を細めた。

 ……大好きな、優しい瞳。

 この瞳にわたしがどれだけ参っちゃってるか、フェイトちゃんは知らないんだろうな。

 じっと見つめあったまま、わたしはお腹のあたりからゆっくりと手を下の方へ這わせる。

「フェイトちゃん……触っても、いい?」

 敏感な部分に触れるか触れないかのところで焦らしながら、フェイトちゃんに尋ねる。

 最初、恥じらうように視線をそらして黙っていたフェイトちゃんは、わたしの焦らすような指先にしびれを切らしたのか、小さく首を縦に振った。

 そっと、その部分に指を這わせると、ちゅっ、と小さな水音が立つ。

「フェイトちゃん、濡れてる」

「い、言わないで……」

 わたしの言葉にフェイトちゃんは耳まで真っ赤になって、きゅっと目を閉じる。

 その反応がなんだかひどく愛おしくて、わたしはついまた意地悪をしてしまう。

 ぴちゃぴちゃと、わざと音を立てるように指を動かす。

「あっ、やっ、やぁっ! 音っ、立てないでぇ」

 恥ずかしさと快感に眉を寄せ悶えるその姿は、わたしの中でくすぶっていた欲望を燃え上がらせる。

 とろとろと透明な蜜をこぼし続けるフェイトちゃんのそこに、そっと指を沈めていく。

「はあっっ! 中っ、ダメぇ……」

 くちゅっ、と音を立ててわたしの指を飲み込んだそこは、フェイトちゃんの言葉と裏腹にきゅっと指を締め付け、さらに奥へと誘い込む。

「ふふっ、フェイトちゃんのここ、ひくひくっ、ってなってるよ」

 ゆっくりとフェイトちゃんの中を刺激しながら、耳元にささやく。

「いっ、いやぁっ、そんな恥ずかしいことっ、い、言わないでぇっ」

 切ない声を上げながら、フェイトちゃんが身体を震わせる。

 わたしはさらに指で攻めあげながら、フェイトちゃんのそこに顔を寄せ、蜜で濡れる小さな突起を舌ですくい上げた。

「ひっ、あああっっ!」

 ひときわ高い声を上げて、フェイトちゃんの腰が跳ねる。

 がくがくと震える膝を抱え込み、舌をそっとフェイトちゃんの中へと侵入させる。

「んぁっっ、やあぁ……」

 止めどなくこぼれ続ける愛液を、音を立ててすすり上げると、びくん、と全身が反応する。

「だめっ、なのはっ! そんなにしたらっ、もうっ……」

 絶頂が近いのか、フェイトちゃんの身体は小刻みに震え、わたしの腕を掴む手は、痛いくらいに握りしめられている。

 そんな反応を楽しむように、さらに追いうちをかけ、舌の動きを激しくしていく。

 わたしの口の周りはもう、フェイトちゃんからあふれた蜜でベタベタだけど、そんなことも気にせず夢中でそこに刺激を送る。

「あぁっ、もうっ、もうだめぇっ! なのはっ、なのはぁっっ!」

 舌で奥の方を刺激しながら思い切り吸い上げると、フェイトちゃんは折れんばかりに身体をのけぞらせた。

「あっ、あぁぁあぁ〜〜〜〜〜っ!!」

 絶頂を迎え、びくびくと小刻みに震える身体。

 ひどく熱いフェイトちゃんの中からゆっくりと舌を引き抜くと、とろっ、とそこから蜜がこぼれだす。

 荒く息をつくフェイトちゃんの乱れた髪を整えながら、そっと額にキスを落とす。

「フェイトちゃん、気持ちよかった?」

「……聞かなくても、わかってるくせに」

 腕で上気した顔を隠しながら、ちょっと拗ねたようにフェイトちゃんが言う。

 こういうので照れてしまうところが、すごく可愛いんだよね。

 わたしはソファーから降りると、まだけだるそうにしているフェイトちゃんをひょいと抱える。

「な、なのはっ?」

「ここじゃ狭いから、今度はベッドでちゃんとしよ?」

「ええっ!? まだするのっ?」

 腕の中で抗議するフェイトちゃんを無視して、軽い足取りでベッドへと向かう。

「だって、わたしまだフェイトちゃんにしてもらってないもん」

「うぅ、だからはじめにベッドでしよう、って言ったのに……」

 恨めしそうなフェイトちゃんの視線を受けながら、そっとベッドにその体を下ろす。

「大丈夫。夜はまだまだ長いから」

「そういう問題じゃ――んむっ!?」

 抗議を続けるフェイトちゃんの唇を自分のそれで無理やりふさぐ。

 一瞬、怒ったような顔になったフェイトちゃんも、結局しょうがないなあといった感じで受け入れてくれた。

 ……ごめんね。でも、いくら愛しても、愛し足りないくらいに好きだから。

 触れ合えば触れ合うほど、さらに求めてしまう貪欲なわたし。

 でも、こんなに好きにさせたフェイトちゃんが悪いんだから……覚悟してね?

 

 そうしてわたしはフェイトちゃんの温かさに甘えて、睡魔に襲われるぎりぎりまでフェイトちゃんを求め続けた。

                                    

                                     ――終。