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『Sweet Home』

 

 

「ただいまー」

 玄関から響く声に、私は調理の手を止め、玄関へと向かう。

「おかえり、なのは」

 笑顔で出迎えると、なのははとても嬉しそうに目を細め、もう一度「ただいま」と、照れくさそうに返してくれた。

「にゃはは、まだなんかちょっとくすぐったい感じかな?」

「うん……そうだね」

 

 私となのはが結婚して一ヶ月。

 ミッドの少し外れたところに新居を構え、私達は二人で新婚生活を楽しんでいた。

『お仕事から返ってきたときに「おかえりなさい」って言ってくれる声が欲しいの』

 そんななのはのささやかな願いを叶えるため、私は家庭に入る決意をした。

 朝早いなのはを優しく見送って、昼間は家でできる簡単な法務関係の仕事をこなす。そして夜は管理局でのハードな仕事を終えたなのはを温かく出迎える。

 なのはと肩を並べることもあった以前の職場は少し懐かしいけれど、こうして帰ってくるたびに、安心したように微笑むなのはを見ると、自分の選択は正しかったのだと確信できる。

「ご飯、もうすぐ出来るけど、先に食べる?それともお風呂入っちゃう?」

「ん〜、どっちも捨てがたいんだけどね。まずは……えいっ!」

 廊下に上がるなり、なのはの手が私を抱きしめる。 

「ちょ、なのは!まずは部屋に上がって……」

「だーめ。もうフェイトちゃん分が足りなくて一歩も歩けない」

 抱きしめる手が、さりげなくおしりをなで回す。

「ひゃっ、なのは、ほんとにだ……んむっ!?」

 一瞬怯んだ隙に唇を奪われ、激しく求められる。

 廊下に響く水音は私の意識を朦朧とさせ、なのはの与える快感だけが、身体を駆け抜けた。

「ふふっ、フェイトちゃん、キスだけで感じちゃった?」

「ち、違……っ!?」

 否定しようとするけれど、なのはの手がするりと服の中に進入してきてそれを許してくれない。

「なのは、もうお腹ぺこぺこなんだよ……フェイトちゃん、食べてもいい?」

「食べ……って、ほんとに、ダメ、あっ……」

 壁に押しつけられ、再び唇を奪われる。

 その間にも手は私の体の敏感なところを探り当て、理性を奪っていく。

「んっ、フェイトちゃん、おいしい……」

「やあっ、なのはぁ」

 激しく舌が絡み合い、身体が熱を帯びてくる。

「今日は、どう料理して欲しい?」

 意地悪ななのはの声。

 その声に、私はこれからされるであろう事をいろいろと想像してしまう。

「フェイトちゃん、なに考えたのかな?ほら……急にここが硬くなっちゃったよ?」

 私の変化に気づいたなのはが胸の頂点をきゅっとつまみ上げる。

 その瞬間、電気のように全身を走りぬける快感。

「んっ……あぁっ!」

 身体の力が抜け、床にへたり込みそうになった私を、なのはは片手で支える。

「ほーら、まだ始めたばっかりなんだから、もうちょっと頑張って?」

 がくがくと震える膝の間になのはの足が割って入り、私の体を支えると同時に、敏感な部分を刺激する。

「あ、足、動かしちゃ、いやぁ……」

「じゃあ、自分で立とうね」

 そう言いながら、片手は胸をせめ上げ、私を抱きかかえていた手はいつの間にか腰からお尻へと伸びている。

 容赦なく与え続けられる快感に私は逆らうことが出来るはずもなく、身体が沈み、なのはの太ももに体重がかかる。

「ああっ、なのはっ!もう、もうっ」

「フェイトちゃん、もうダメ?」

 なのはの言葉にこくこくと頷くと、胸を刺激していた手がすっと引かれ、お尻へと回っていた腕が解かれる。

 解放された私は壁にもたれ、荒くなった息を必死で整える。

 しかし、なのはによって灯されてしまった火は、消えない。

 火照った身体は、私の意志と反してなのはを求めてしまう。

 ――いや、認めたくないけれど、私自身がなのはを求めてしまっている。

「どうしたの?フェイトちゃん。お料理途中じゃなかったの?」

 する……となのはの温かい手が誘うように頬を滑る。

 私を見つめる瞳はいつもの優しいものではなく、鋭く射るように光る、獣の目。

 私だけが知っている、なのはの素顔。

「なのは、私……」

「ん、なあに?」

 目を細め、妖しく笑う。

 あとほんの少し、顔を寄せれば唇が触れ合うほどの距離にいるのに、それより先には決して近付いてこない。

 私が、踏み込むのを待っているのだ。なのはの檻に。

 入り込めば、なのはを満たすまで逃れられない。

 

 扉の開いたその檻から、この獣は踏み出しては来ない。

 けれど、誘い込んだ獲物は決して逃さない。

 

 どうする?となのはの瞳が問いかける。これが最後の警告。

 自分でも押さえきれないくらいの衝動を、ぎりぎりのところで我慢してくれているなのはの優しさ。

 だけど、私はその優しさよりも、痛いくらいの激情を望む。

「抱いて――欲しい」

 その先に、言葉はいらなかった。

 

 

 廊下に、お互いの荒い息づかいと時折漏れる嬌声が響く。

 肌を合わせるなんて言う甘いものではなく、服は中途半端に脱がされ、半ば犯されているような恰好で私はなのはに求められる。

「はあっ……ふぇいと、ちゃんっ」

 ただ、その行為とは結びつかないくらいの甘い声で呼ばれる自分の名前が嬉しくて。

 私はひたすらなのはの与える乱暴な快感に身を任せる。

「んっ、ああっ、なのはぁっ……」

 私のペースなんか無視した、ひどく一方的な情事。

 でも、私は知っている。この行為が、なのはの甘えだと言うことを。

 苦しいことも悲しいことも、口に出せないから、こうして行為にぶつけてしまうんだ。

 私は出来うる限りの優しさで、そんななのはを受け止める。

「ひゃっ、なのはぁ、くるっ、もうダメっ」

 くちゅくちゅと、私の敏感な部分から漏れる水音が激しくなる。

 内壁をこする指先が甘美な痛みを全身へと響かせる。

 乱暴に重ねられた唇から舌が入り込み口内を激しく蹂躙し、私を絶頂へと導く。

「んっ、んうっ!んんんんぅっっっ!!」

 唇をきつくふさがれたまま、私は全身を襲う快感の波に身体を震わせる。

 その間もなのはの舌は容赦なく私を貪り続ける。

 断続的に襲う絶頂の波を、私はきつく目を瞑りゆっくりと受け流す。

 

 不意に、なのはの唇が小さく震えてそっと離れた。

 ……離れ際、かすかに聞こえた「ごめんね」

 そして、雨のように降り注ぐ、涙。

 普段の優しさを取り戻した瞳はひどく弱々しくて、私は軽く苦笑してそっと抱き寄せる。

「大丈夫だよ」

 一言ささやきかけて、落ち着かせるように髪を撫でる。

 胸に伝わるなのはの温かさと、背中に感じるフローリングの冷たさが、ひどく対照的で私はこっそり笑う。

 大丈夫。私はなのはの全てが好きだから。

 なのはが持ってる温かさも、その奥にしまい込んだ冷たさも、みんなまとめて好きだから。

 

 そうして私は、すっかり小さくなって震えているなのはを、しばらく暖めるように抱きしめていた。

                  

                                      ――終。