All Works of HIMEKAMI

 =オリジナルアルバム&シングル(1984年〜1985年)=

は『HIMEKAMI Station』推薦曲、は当サイトの管理者が個人的に好きな曲を示します。
曲名の読み(ふりがな)は当サイトの管理者が参考のため付記したものに過ぎず、
正式な読み方を保証するものではありません。

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目次


まほろば [姫神 With YAS-KAZ]

 1984.??.?? 発売  C28R-0128(LP)
 1985.10.21 CD化  D32R-0027(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6248(CD)(『海道』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00095(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

星吉昭がソロアーティスト「姫神」として新たな一歩を踏み出した最初のアルバム。

1984年に星は思うところあって「姫神せんせいしょん」を解消し、
ソロユニット「姫神」としての活動に移行する。
「姫神」は作品ごとに共演者を変えるスタイルをとったのだが、
本作は、パーカッションのYAS-KAZ(ヤスカズ)及びアコースティックギターの西崎憲を加えた
「姫神プロジェクト」という形をとって制作された。
ただしアルバムに記されたアーティスト名は「姫神 With YAS-KAZ」である。

サウンド面では、過去のバンド的なアレンジと訣別し、
作風も「日本の叙情」的なものから、伸びやかで大陸的なものに変化している。
これらはYAS-KAZのパーカッションによるところが極めて大きく、
(星自身も一部パーカッションを叩いているようだが)音圧の大きい太鼓の音は特に印象的。
新たなサウンドを築いていこうという意欲が伝わってくる。
またこの時期はYAMAHA DX7をはじめとするデジタルシンセが市場に出回り始めた頃で、
それら特有の透きとおった音が多用されており、
それまでのアナログシンセらしいうにょうにょした音はあまり聴かれなくなっている。

ジャケットのイラストは霧立ちこめる森に花びらが舞い落ちる様が描かれ、
付録として高橋昭八郎の素晴らしい詩『風の天爾遠波{てにをは}(まほろばへ)』が添付されている。

最後に、このアルバムは平泉をモチーフにしたという説が一般的なようだが、
私個人的には、もっと時代をさかのぼって「ヤマト政権服属前の東北」のイメージを強く受ける。
エミシたちが「日高見国」として自立していたおおらかな時代…

(1)青天   あおぞら 
どこまでも澄みわたる、高い高い空。
遠い昔の日々を思い起こさせる草笛ふうのメロディー。
音数の少ないアレンジの小品だが、個人的には大のお気に入りであり、
透明感あふれるシンセ笛のパートや大太鼓の存在感は、言葉では言い表せない。
高村光太郎の詠んだ「安達太良の空」のイメージが去来する。
 
(2)星が降る   ほしがふる
神秘的な3拍子の曲。どことなく『シルクロード』の頃の喜多郎ふうでもある。
バンド時代には見られなかったサウンドだが、
『遠野』とはまた違った独特のおどろおどろしさが漂う。
デジタルシンセならではの金属的な弦の音色が耳に残る。
後半、2小節おきに繰り返される「どんしゃーん」というパーカッションの音が好き。
 
(3)光の日々   ひかりのひび 
姫神の代表曲の1つ。
親しみやすくノスタルジックなメロ、清々しいアレンジ、まさに姫神サウンドの王道。
矩形波から作り出した笛の音が随所でハモるところなどはいかにもそれらしく、聴いていて安らぎを覚える。
『青天』と同じく、『遠い日、風はあおあお』の続編という感じだが、
過去を懐かしみつつも「前向きに進んでいこう」というふうな印象を、どことなく受ける。
 
(4)草原情歌   そうげんじょうか 
憂いを帯びた美しい旋律の曲。アジアの大平原の景観が目に浮かぶ。
オユンナあたりがモンゴル語で歌詞をつけて唄ったらハマるだろう。
前半のバッキングを務めるアルペジオがドラマティックな響き。
半ばから後半にかけて徐々にアレンジのテンションが上がり、胸を締め付けられるようだ。
2・4拍目に鳴るパーカッションや、最後にびょんびょん鳴ってるムックリ(口琴)の音もgood。
 
(5)まほろば 
組曲を別にすれば、姫神市販作品中最長の演奏時間(13分25秒)を誇る大作。
「優れた土地」「住み良いところ」を意味するとされる「まほろば」を標榜する場所は日本各地にあるが、
星吉昭がこの作品で描いたのはやはり「岩手」あるいは「東北地方」なのだろう。
アンビエントな雰囲気の序奏を経て、メロとコードバッキングの調和が素晴らしいイントロが始まる。
イントロが終わるまでで3分を超える(!)が、この序章の長さが大事である、と私は思う。
第1主題は最初シンプルなアレンジで入るが、ここの部分のアレンジは最高。
優美なメロディーが素朴なバッキングでひときわ引き立って涙腺がゆるみそうだ。
「美し国・日本」という感じがする。
リフレインでYAS-KAZならではの大太鼓などが加わり重厚さが増す。
5分過ぎからの第2主題はなにやら『新日本紀行』的な雰囲気。
爆発音のようなSE音が響いてブリッジ部分へ。
眠気を誘いかねないが、この「間」が重要。コード進行をじっくり味わうべし。
8分30秒を過ぎてからは再びイントロ→第1主題の繰り返しとなる。
眼前に「まほろば」のパノラマが広がるかのようだ。
この曲の全容を堪能してしまうと、後年『風の縄文II 久遠の空』でリメイクされた"atmosphere mix"が、
実に中途半端に思えてならない。
 
(6)夢幻夜行   まがどきをゆく
呪術的なリズム、チャルメラを柔らかくしたような変わったメロディーの音色、
…この曲の不気味さはいったい何だろう。姫神せんせいしょん時代の面影は微塵もない。
姫神はこの後どうなってしまうのか、当時は不安に駆られたものである。
後半加わるダルシマーのような音色のシーケンスフレーズがイケている。
この曲で誰かがダルシマーを実演するところをライブで見てみたかった。

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海道 NHK「ぐるっと海道3万キロ」オリジナル・サウンドトラック [姫神 With YAS-KAZ]

 1985.10.21 発売  C28R-0131(LP)  D32R-0019(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6248(CD)(『まほろば』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00096(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

テレビ番組のBGMとして、姫神の名を全国的に知らしめすこととなった記念すべきアルバム。

『ぐるっと海道3万キロ』はNHK総合テレビで1985年4月から3年間に渡って放送された番組で、
日本各地の海岸線をめぐりながらその土地の人々の暮らしや風土を紹介するドキュメンタリーだった。
当然ながら番組は全国規模で放送されたため、その音楽担当に抜擢された姫神は、
地方のマイナーなミュージシャンから一躍全国区の音楽家として認められることとなった。
この作品なしではのちの姫神はあり得なかったといっても過言ではない。
バンド解消後の星吉昭はその作風の舵をニューエイジ路線へと切っていったこともあり、
このアルバムはNHK紀行ドキュメンタリーのサントラ特有の雰囲気をたたえ、
結果的に『シルクロード』の喜多郎・『大黄河』の宗次郎と並ぶ
「日本のニューエイジミュージックの巨匠」的地位を確立するに至った。

この番組のBGMとして作られた曲をまとめたアルバムが本作である。
姫神にとって東北以外のモチーフをアルバムのテーマに据えたのはこれが初めてだが、
様々な海の情景を日本的な旋律に乗せて写実的かつ情趣豊かに描写している。
使用機材は当時一世を風靡したYAMAHA DX7の系統が主力で、
姫神せんせいしょん時代のサウンドとはほとんど別ものになってしまっている。
また、前作に引き続きパーカッションにYAS-KAZが参加しているが、
姫神のコラボレーターとして彼を超える存在はいない、と私は思う。
あのおおらかでダイナミックなサウンドはYAS-KAZにしか出せない味であり、
星吉昭のシンセとはお互いを高め合うような関係だったと言えまいか。
ちなみに私は姫神の全アルバム中、本作が最も好きである。

ジャケットは表のイラスト、裏の写真ともに海と夕陽(朝日?)の風景をフィーチャーしている。
LPのライナーノートには文章の代わりに日本各地の海の写真が掲載されていたが、
1993年に再発されたCDではNHKの吉岡民夫による解説となっている。

(1)海道を行く(Part I)   かいどうをゆく 
番組のメインテーマとして広く知られている曲。
内陸部育ちの星は、この曲を作るにあたって、「海を渡る風」をイメージしたという。
曲構成は、変拍子や転調が駆使されて変化に富んでおり、
こぶし付きの笛による流れるような主旋律と、DX7らしい繊細な音色のバッキング、
そしてYAS-KAZの効果的なパーカッションにより、雄大なサウンドが紡がれている。
なお同時にリリースされたシングル盤は多少ミックスが異なる。
タイトルは司馬遼太郎『街道を行く』に引っかけたものか?
 
(2)砂の鏡   すなのかがみ 
透明感の中に切なさを帯びた、姫神らしい小品。
この曲もメロディーラインが非常に美しく、
ことに1分55秒あたりからのハーモニーが素晴らしい。私はここでノックアウトされた。
パーカッションの入れ方がまた絶妙である。
 
(3)貝の光   かいのひかり 
この曲もまたメロディーが秀逸な作品。
本アルバムの随所で聴けるリード笛の音色が美しく悲しい。
しかし実は巧みなアルペジオパターンがこの曲のキーになっている。
穏やかなイントロから徐々に盛り上がり、
感動の大サビを経て静かに収束、という構成は100点満点。
 
(4)明けもどろ   あけもどろ
尺八ふうの日本的なフレーズが印象的な曲。
全体的には淡々と流れる感じの構成。
メロディーを奏でる減衰系のシンセ音は、この頃多用された姫神の特徴的な音である。
ディレイド・リバーブをかましたスネアドラムの音がいい味。
 
(5)与那国   はい・どなん 
沖縄の海をイメージした幻想的な曲。メロディーも沖縄音階による。
最大の聞きどころはYAS-KAZが縦横無尽に奏でるガムラン風のパーカッションで、
姫神のシンセを完全に食っている。
「はい・どなん」は「与那国」そのものではなく「南与那国」を意味する言葉で、
かつて過酷な生活環境に苦しんだ与那国島の人々が夢見た、南海の楽園島のことである。
 
(6)綿津見に寄せて   わたつみによせて 
『海道を行く』に似た表情を持つおおらかな姫神節。
うねるような大海原のイメージがわく。
この曲もアルペジオとパーカッションがポイントになっている。
サビで聴ける2つのメロディーの掛け合いが気持ちよい。
豊かな海の恵みに思いをはせる。
 
(7)青、深く   あお、ふかく
終わりそうで終わらないコード進行が続く、茫漠たる構成の曲。
海底の神秘的な雰囲気は出ている。
 
(8)夕凪の賦   ゆうなぎのふ 
姫神の名曲の一つ。
ジャケットのイメージをそのまま曲にしたかのような、描写力に富んだ作品である。
まるで唄うように表情豊かな日本的旋律は、ぜひともからだ全体で感じてほしい。
シンセの音色一つ一つに透明感が感じられる。
間奏で使われている竹のパーカッションが非常に効果的。
 
(9)流氷   りゅうひょう
日本離れしたオホーツクの流氷の風景をシンセ尺八で日本的に表現。
始めから終わりまで1コードで通しているが、尺八のフレーズがかっこいいので許せる。
流氷のきしむ音がSEとしてフィーチャーされている。
 
(10)海道を行く(Part II) 
Part Iと違って、穏やかな、しかしドラマティックなアレンジとなっている。
SEの鳥の鳴き声に旅情をかき立てられる。
エンディングで際だつアルペジオのラインが美しい。
 
(11)群星   むるぶし (PCCR-00096のみ収録)
1993年のCD再発にあたりボーナストラックとして新たに加えられたが、
前の曲とのつながりが非常に悪く、アルバム全体の構成を損ねている。
CD化するなら『時を見つめて』あたりに加えるのが適当ではなかったか。
曲そのものは悪くない。詳しくはシングル『海道を行く』の項を参照。

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海道を行く(シングル)

 1985.10.21 発売  7R0006(EP)  発売元:キャニオン

NHK総合テレビ『ぐるっと海道3万キロ』メインテーマのシングルヴァージョン。

同番組のサントラアルバム『海道』と同時発売された。
アルバム同様YAS-KAZの演奏が入っているが、なぜか「姫神」の名義で発売されている。
ジャケットは朝焼け(夕焼け?)の浜辺に蛸が干してある風景写真。
その裏にはNHK蜂谷初人ディレクターのコメントが記されている。

(A)海道を行く   かいどうをゆく
シングルヴァージョンは『海道』に入っている"PartI"ヴァージョンとほぼ同じだが、
若干異なるのは、イントロの波の音がなく、開始3分25秒(『海道』"PartI"での時間)あたりからの
メロディーラインが省略され、そのままフェイドアウトして終わるところ。
アルバムに比べるとやや中途半端な終わり方のせいなのか、このヴァージョンはその後CD化されていない。
ところで、番組の冒頭で流れていたのは、実はアルバムの"PartI"でも"PartII"でもシングルヴァージョンでもない、
第4のヴァージョン(アレンジは"PartI"に近いが曲のキーは"PartII"と同じ)で、
NHKが一時期発売していた『懐かしのNHKテーマミュージック集』に収められていた可能性が高いが、
それ以外にCD化された形跡はない。
 
(B)群星   むるぶし
番組とは無関係に作られたらしい曲で、アルバムには当初収められず、
1993年に『海道』再発売の際「ボーナストラック」という形でようやくCD化された。
初めてPCMリズムマシンが導入され、重ためのドラムスがきっちりビートを刻む、
いかにも「打ち込み」的でポップな曲。
それまでにはなかった曲調であり、多分に試作的な要素があったのではないか。
1995年には『風のうた』と改題・リメイクされ、アルバム『マヨヒガ』に収録されている。
なお、レコードB面に貼られたレーベルに「演奏:姫神 with YAS-KAZ」とあるのは明らかに誤りであろう。

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