All Works of HIMEKAMI

 =オリジナルアルバム&シングル(1981年〜1983年)=

は『HIMEKAMI Station』推薦曲、は当サイトの管理者が個人的に好きな曲を示します。
曲名の読み(ふりがな)は当サイトの管理者が参考のため付記したものに過ぎず、
正式な読み方を保証するものではありません。

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目次


奥の細道(シングル) [姫神せんせいしょん]

 1981.02.21 発売  7R0002(EP)  発売元:キャニオン

姫神の前身ユニット・姫神せんせいしょんの記念すべきデビューシングル。

もともとは星吉昭が何の気なしに作った曲らしいが、
当時の岩手放送プロデューサー北口惇夫の耳に留まり、ラジオで番組の合間に繰り返しオンエアされたことで
(今でいうヘビーローテーションに近い効果があった)多大な反響が起き、問い合わせが殺到。
その結果レコード化され、地元岩手をはじめ東北各地でヒット、
東北本線(当時、新幹線は未開業)の主な駅のホームで列車到着時に流されるというエピソードも生まれた。

ジャケットは後に出たアルバム『奥の細道』と同じく、茅葺き建物の背後に星空と土星の図柄。
裏面には無署名の解説とメンバー・スタッフ一覧、
そして歌詞の代わりなのか、メロディーの五線譜(!)が添えられている。
それによるとメンバーは以下のとおりで、伊藤英彦・大久保正人はこの時点でまだ加わっていない。

THE BAND
  YOSHIAKI HOSHI: KEYBOARD / IZURU ISEKI: KEYBOARD
  HIROSHI WASEKI: GUITAR / MASANORI SATO: DRUMS & PERCUSSIONS

ISEKI・WASEKI両名は本作のみのサポートメンバーと考えられなくもないが、
解説文には「編成は、ツインキーボード・ドラムス・ギター・ベース」と記されている。
当時の正式メンバーは2人か4人か、はたまた5人か?

(A)奥の細道   おくのほそみち 
アルバム『奥の細道』ヴァージョンとは別もので、テクノポップ的な色彩が濃い。
最大の違いはベースギターでなくシンセベースが使われていることで、機械的なベースラインが歯切れ良い。
また、シンセの音色やエレキギターのサウンドがかなり攻撃的で、
全体的に荒削りな感じだが、個人的にはこちらのヴァージョンの方が好きだ。
解説には「切れの良いリズムとブレイクによって、ディスコでも十二分に踊ることが出来る」とある(苦笑)。
さらに後半のメロディーラインはアルバムヴァージョンと微妙に異なるうえ、
尺八のような節回しの裏メロがかぶさっていない。
その他の相違点は、イントロのリズムマシンの音色、間奏の効果音、
エンディングでディレイ(山びこのように音が反復すること)がかかっていない点など。
なお、このヴァージョンは長らくCD化されていなかったが、
現在では2002年発売の通販限定CD-BOXセット『姫神クロニクル』で聞くことができる。
 
(B)耶馬台国の夜明け   やまたいこくのよあけ 
そもそもは『奥の細道』レコード化にあたってB面用の曲が必要となり作られたものらしい。
この曲もアルバム『奥の細道』とは別ヴァージョンで、シンセベースが使われており、ベースラインはアルバムと違う。
とはいうもののA面ほどテクノポップっぽくない。
最後のソロシンセパートではジャズのアドリブのような演奏が聞け、
ジャズプレイヤー志望だった星吉昭の片鱗が伺えるなどむしろブルージーな雰囲気がある。
2007年末の時点で未だにCD化されていない、初期の貴重なトラック。

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奥の細道 [姫神せんせいしょん]

 1981.08.?? 発売  C28R-0080(LP)
 1985.10.05 CD化  D32R-0023(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6246(CD)(『遠野』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00091(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

姫神の前身ユニット・姫神せんせいしょんのファーストアルバム。

本作はシングル『奥の細道』のヒットを受けて作られたフルアルバムで、
当初からのメンバーである星吉昭(キーボード)佐藤将展(ドラムス)に
大久保正人(ギター)伊藤英彦(ベース)が加わり、4人編成になった。
このはか星吉昭の妻である星悦子がキーボードで加わっていた時期もあるらしいが、
ユニット解散に至るまでジャケット・ライナーノートにメンバーとしてクレジットされているのは前述の4人のみである。

姫神せんせいしょんはジャズ系のミュージシャンによるユニットだったこともあって、
初期の作品ではジャズ−フュージョン的なアプローチが目立つ。
まだまだ音的には荒削りで試行錯誤の跡がみられるものの、
時代がかったアナログシンセの音色は既に独特の日本的な情趣を漂わせており、
後に代表曲となった作品も多く含まれている。
アナログシンセによるチープなSE音がいい意味で印象的。

ジャケットのイラストはシングルのものが流用され、
茅葺き建物(モチーフは平泉・中尊寺の「積善院」)の背後の星空に土星が大きく描かれている。
SF的かつ土着的な絵柄が、古くて新しい姫神せんせいしょんの音世界を象徴するようである。
LPのライナーノートには、旅日記風の短い詩に加え、
姫神せんせいしょん生みの親ともいうべき、岩手放送の北口惇夫による解説が添えられていたが、
1993年発売のCDでは音楽ライター増渕英紀の解説文に替わっている。

なお、個人的なことだが、本作が発表された直後、私は初めて、宮城県以北の東北一円へ旅する機会を得た。
そのため、私の中で「姫神の原体験」と「東北の原体験」が一体化しており、
四半世紀以上経った今もなお、旅の想い出と合わせて強烈な印象を残すアルバムとなっている。

(1)ありそ(荒磯)
イントロダクションとしての小品。楽器はシンセのみを使用している。
岩礁にうち寄せる波の様子を巧みに描写し、あとに続くトラックへの期待を高める。
尺八風のオブリガードやバックのアルペジオといった
姫神サウンドのエッセンスがこの時点で既に盛り込まれている。
アナログシンセで作った海鳥の鳴き声がいい感じ。
 
(2)奥の細道   おくのほそみち 
姫神せんせいしょんの出発点となった曲。
先に発売されたシングルヴァージョンとはアレンジが多少異なる。
アップテンポのリズムに載せたオリエンタルかつファンキーなメロディーとシンセサウンドは、
今聴いてみても十分オリジナリティーにあふれている。後半の尺八風オブリガードがよく効いている。
私見だが、この曲名は松尾芭蕉の旅のイメージからではなく、
曲が先にできてタイトルを付けるときに東北の風土を端的に表現する言葉として選ばれたもの、と考える。
ともあれ芭蕉の言葉を借りれば「これを矢立の初めとして」姫神ワールドの遥かなる旅路が始まったことになる。
なお、この曲は発売から27年後の2008年に、病没した星を除くメンバー3人で再結成された
せんせいしょんのアルバム『桃源郷』に、全く異なるアレンジで収められている。
 
(3)リ・ア・ス
これは佐藤将展の作曲。南三陸のリアス式海岸をイメージしたようだ。
ペンタトニックスケールからなるキャッチーなメロディーが印象的な、ポップな曲。
個人的には、寄せては返すような間奏の部分が好きである。
この曲も27年後に『桃源郷』の中でリメイクされている。
 
(4)紫野   むらさきの 
岩手県に伝わる『外山節』を巧みにフィーチャーした日本民謡調の佳曲。
のどかな日本の田園風景が浮かんでくる。「チャグチャグ馬コ」のBGMに合いそうだ。
京都市や岩手県紫波町に同名の、また北上市に「村崎野」という地名があるが、
曲名はそれらによらず『万葉集』の額田王の歌「あかねさす紫野行き〜」から採ったような気が、私はする。
 
(5)耶馬台国の夜明け   やまたいこくのよあけ 
シングル『奥の細道』のカップリング曲をリメイク。
間奏のシンセソロのフレーズなど、ところどころにジャズライクな雰囲気も感じさせるが、
そのサウンドには、初期の姫神せんせいしょん特有の神秘的な不気味さが漂う。
後半ソロを取る透きとおった哀しげなシンセ尺八は、これぞ姫神という音である。
星吉昭がこの曲を、畿内もしくは九州にあったとされる耶(邪?)馬台国を意識して作ったとは考えにくく、
これも曲を先に作って題名を後付けしたような感じがする。
むしろ『日高見国の夜明け』の方がふさわしいかも。
 
(6)Gun-Do   がんどう
かつてテレビ東京の『パソコンサンデー』という番組の中で使われていたことがある、
テンポの速いビートが、およそ姫神らしくない曲。
間奏のぶっといソロシンセのフレーズが聞きどころだろう。
当時ライブとかで、星吉昭はどんな表情でこの曲を演奏していたのだろうか。
タイトルは姫神山の東にある岩洞湖にちなんでおり、
LPのライナーノートに写っていた冬の岩手山はこの岩洞湖から見たアングルと思われる。
 
(7)岩清水   いわしみず 
『リ・ア・ス』と同じく佐藤将展の作曲で、バンドっぽいアレンジが施されている。
佐藤特有のポップな曲調が小気味よい。
しかし間奏ではしっかり星吉昭の民謡風ソロシンセが入っている。
岩からほとばしる清水の感じがよく出ている。
この曲もそうだが、このアルバム、
曲が先にできてあとからタイトルをつけたようなものが多いように感じられる。
 
(8)行秋   ゆくあき 
姫神ワールドを代表する初期の傑作。
郷愁に満ちた、美しく切ない旋律。アレンジも完成度が高い。
鐘の音やジェット噴射のようなアナログ合成の効果音が晩秋の雰囲気を盛り上げる。
後の時代のPCMシンセなどで演奏すると逆に雰囲気を損ねるだろう。
LPのライナーノートで、北口惇夫はこの曲に関して石川啄木の歌を引き合いに出し
「大根の花がゆれる風景が見えてこないか」と記している。
 
(9)螢   ほたる 
TBSテレビ『そこが知りたい:各駅停車路線バスの旅』で頻繁に使われたため、一般にかなり知られている曲。
8ビートのかっちりしたリズムセクションに5音音階の覚えやすいメロディーからなる、親しみの持てる構成である。
ホタルの群舞する有様が脳裏に展開する。
 
(10)やませ
『ありそ』に対応する、エンディングを締める小品。
短い前奏曲と終曲というアルバム構成はロックっぽい。
太鼓のビートを前面に押し出した最初の曲で、これが後の和太鼓使用につながっていく。
タイトルは、夏の東北地方に冷害をもたらす北東からの冷たい季節風のことで、
曲のバックに終始木枯らしのようなSEが響いているが、やませのイメージとはちょっと違う気が。

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遠野 [姫神せんせいしょん]

 1982.02.21 発売  C28R-0087(LP)
 1985.10.05 CD化  D32R-0024(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6246(CD)(『奥の細道』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00092(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

姫神せんせいしょん2作目のアルバムはタイトルからわかるとおり、
民話の郷・遠野を題材にとっている。実に姫神らしい企画である。
このアルバムの制作にあたって星吉昭は遠野に長期滞在して曲作りを行っている。
サウンド面は前作同様、日本的なフレーズがあちこちで聞かれるが、
それらが、単なる日本の原風景の描写として小さくまとまらなかったところがすばらしい。
収められた曲それぞれが、『遠野物語』さながらの謎めいた雰囲気をたたえており、
以降のアルバムと比べてみても、際だった個性と存在感を示している。
その世界は20年以上たった今聴いても全く色あせることがない。
シンセサイザーでよくぞここまでおどろおどろしい描写ができるものだと改めて感心する。

ジャケットはダイナミックな構図のイラスト。
宇宙から放たれた幾筋もの閃光が雲海と山々(右が早池峰山、左が薬師岳と思われる)を貫いている。
私は姫神の歴代アルバムジャケット中これがもっとも好きである。裏側のイラストもよい。
ライナーノートには詩人の斎藤彰吾が、評文と詩を提供している。
曲ごとに添えられた詩は、それぞれの曲のイメージをさらにふくらませてくれる秀逸なもので、
この詩と合わせて曲を味わうことも一興である。
LP版ではこれらに加えて、遠野の風景や不気味な木像の写真が添えられている。

(1)春風祭 −遠野物語への旅−   はるかぜまつり −とおのものがたりへのたび− 
村の祭囃子を思わせるリズム・パーカッションと日本的な旋律が見事に調和した、
典型的な姫神サウンドであり、初期の代表曲となっている。
サビのメロディーは何ともいえない懐かしさを感じさせる。
個人的には、リリース当時シングルカットしてもよかったのではないか、と思う。
あるいは後年歌詞を付けて誰かに歌わせたりとか。
 
(2)水光る   みずひかる 
きらきらと優しく光る水の表情に、どことなく去り行く夏を思わせるセンチメンタルな佳作。
食傷気味の表現ではあるが「癒しの音楽」という言葉がそのまま当てはまる。
特に最後のリフレイン部分では各パートが絶妙なハーモニーを織りなしており、快感。
バックで聞こえる蝉・蛙の鳴き声のようなSEもよく効いている。
 
(3)峠   とうげ
遠野盆地を取り囲む数々の峠をモチーフにしている。
シンプルなアレンジにのせた素朴なメロディーが味わい深い。
長めの音符のコードバッキングで鳴っている「ワー」というような音は初期の姫神を特徴づける音色の一つで、
これ以後の曲・アルバムでも頻繁に使われ、神秘的な雰囲気を創り出している。
山道を登り切って峠で一休みする旅人の目に映る遠野の里の風景…
 
(4)サムト 
『遠野物語』に出てくる「サムトの婆」の説話(神隠しにあった娘が数十年後、
嵐の夜に老いぼれた姿で帰って来る話)をシンセサイザーで見事に表現。
あるいはシンセだからこそ表現できたのかもしれない。
悲しげな笛の響きはサムトの婆の心の内を表しているかのようだ。
未知の国・東北の闇をかいま見るかのような鬼気迫る曲である。
 
(5)早池峯   はやちね
タイトルは言うまでもなく遠野盆地の北にそびえる早池峰山(標高1917m)にちなむ。
和太鼓風(実際に叩いているのはロー・タム?)の激しいビートにのせて、
星吉昭のソロ・シンセが疾風のごとく駆け抜けていく。
このあたりのリズムアレンジは佐藤将展の手によるものだろうか?(編曲は星吉昭名義)
佐藤のドラムスは姫神せんせいしょんのサウンドで非常に重要な存在であった。
 
(6)綾織   あやおり
日本昔ばなしBGM風のメロディーライン。
スローな3拍子のリズムがなんとなく機織りを連想させる。
遠野市内に綾織という地名がある(「千葉家の曲り家」所在地)が、本作との関連は不明。
 
(7)河童淵   かっぱぶち
馬を淵に引きずり込もうとした河童が力負けして逆に陸に引き揚げられてしまった、
というユーモラスな伝承がモチーフ(同名の淵が実在する)。
曲調もどことなくユーモラスで、ノリのよいアップテンポの曲。
当時全盛のテクノポップ的な音づくりがされている。
不規則な細かいビートを刻むシンセパーカッションがGood。
 
(8)赤い櫛   あかいくし
この曲もテクノポップっぽいのだが…
ヴォコーダーによる「シャッ、シャッ」「ヤイヤイヤ〜」というフレーズ。
音程をわざと外しているかのような摩訶不思議なメロディーライン。
冨田勲作品でおなじみの「パプペポ親父」など妙ちくりんなシンセ音が盛りだくさん。
ユニークなリズムパターン。4拍子がエンディングでは唐突に緩い3拍子になる。
…という具合に、魑魅魍魎が跳梁跋扈しているような様相を呈している。変態的なサウンド。
 
(9)水車まわれ   すいしゃまわれ?みずぐるままわれ?
佐藤将展作曲の明るいポップな曲で、アレンジはバンド色全開。
エンディングのメロディーはあまりよいとは思えないが、妙に耳に残るフレーズ。
この曲のシチュエーションにぴったりな木造の水車小屋が遠野にはまだいくつか残っている。

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姫神 [姫神せんせいしょん]

 1982.08.21 発売  C28R-0099(LP)
 1985.10.05 CD化  D32R-0025(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6247(CD)(『姫神伝説』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00093(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

姫神せんせいしょん3作目のアルバムは、
東北に限らず、日本の原風景を音で紡いだようなイメージの作品集。
デビュー直後に比べるとだいぶサウンドが洗練されてきている。
具体的に言うと、星吉昭独特のシンセのフレーズが、持ち味の素朴な和風テイストはそのままに、
バンド部分のセクションと互いにしっくり馴染んできているような感じがする。
また、シンセの音色がすっきりと抜けのいいものになっていて、前2作ほどアナログ臭さを感じさせない。
私は当時のシンセに疎くてよくわからないが、使用機材を大きく変えているものと思われる。
アコースティックギターの響きを活かしたアレンジが目立つのも特徴。
本作は後々代表作となる曲が多く含まれており、今なお充分鑑賞に堪えられるが、
唯一、アルバムのタイトルが安直なのが残念。他に付けようがあったと思うのだが…

添付のライナーノートには、姫神評論でおなじみの音楽ライター増渕英紀がコメントを寄せている。
ジャケットは1曲目の『舞鳥』をイメージしたかのような、襖絵から飛び出したカラフルな鳥のイラストで、
構図から伊藤若冲の『老松白鳳図』がモチーフと思われる。
リリース当時、若冲は再評価を受ける前でマイナーだったはず。アートディレクターに先見の明があったのか?

(1)舞鳥   まいとり? まいどり? 
オープニングを飾るにふさわしい華のある曲。
全体を通して聞ける日本的な節回しはいかにも姫神。
最後、3つの旋律が見事に絡み合うあたりは実に気持ちいい。
 
(2)七時雨   ななしぐれ 
曲名は岩手県八幡平市にある七時雨山(標高1063m)を表していると思われる。
山名は天候が変わりやすく「一日に七回も時雨れる」ことに由来すると言われる。
この曲、おそらく山そのものではなく、その名前からインスピレーションを受けて作られたのであろう。
哀愁感漂う神秘的なメロディーを、スピード感のある6ビート(3拍子)のドラムスが盛り立てている。
バンドを組んでいたからこそ生まれた佳曲といえる。
コードバッキングで「ワーン」と鳴っているアナログシンセ音が私のお気に入り。
 
(3)貝独楽   かいごま
佐藤将展の作曲。ファンキーなリズムと音色に特徴。
一部『水車まわれ』と同じコード進行がみられる。
間奏のフレーズは阿波踊り風。エレキギターの使い方がおもしろい。
 
(4)空の遠くの白い火   そらのとおくのしろいひ 
清々しく、広がりと郷愁を感じさせる、姫神ワールドの1ジャンルを確立した曲。
南米フォルクローレの影響が現れた最初の作品でもあり、
至るところで回りまくるこぶしは、もはや尺八ではなくケーナのそれである。
親しみやすいメロディーなので、歌詞を付けて歌ってもよいかもしれない。
アコースティックギターの繊細なアルペジオが効果的。
最初と間奏・最後に入るノイズは波の音か?
 
(5)月のほのほ   つきのほのお
曲は一転して、「わび」「さび」「幽玄」という言葉が似合う世界へ。
日本的なこぶしを効かせたメロディーが、おなじみの透きとおった矩形波音で奏でられる。
しかし前作『遠野』で感じられたおどろおどろしさはなく、澄みきった夜空をイメージさせる。
この曲もアコースティックギターが存在感を示している。
ライブでは間奏が省略されて演奏されることもあったが、省略しない方がよいと思う。
 
(6)えんぶり
青森県八戸市で2月に行われる豊作祈願の祭りをモチーフにしている。
和太鼓によるビートを前面に押し出したユニークな作品。
間奏で威勢の良い男たちのかけ声が聞かれる。曲中に人の生の声が使われたのはこれが最初。
ボコーダーらしき音色も使われており、姫神は当時から実験的精神に富んでいたことが伺われる。
 
(7)白い川   しろいかわ 
姫神ならではの妖気が漂う初期の傑作。
映画『遠野物語』のメインテーマとして使われ、そのサウンドトラック盤にも様々なアレンジで収録されている。
普段よりこぶしが強調されたシンセ笛の調べは幽霊が出てきそうな雰囲気。
バックのシンセストリングスの冷たい響きが怖さを増す。
クライマックスの転調の妙も聞きどころ。
 
(8)花野   はなの
昔の子守唄のような主旋律とアコースティックギターの響きに、しっとりとした日本情緒が感じられる小品。
後半に現れるシンセの音色から、わずかにおどろおどろしさが感じられなくもない。
主にシンセ琴が奏でる副旋律は青森県民謡『十三の砂山』で、
後半は副旋律の方を強調するミックスとなっている。
ただ曲の構成は全体的に平板な気もする。
 
(9)杜   もり 
テレビでもしばしばBGMに使われている、初期の代表作のひとつ。
のどかな日本の原風景が目に浮かんでくる、親しみやすく温かみのある曲。
構成は『紫野』と似ており、『八戸小唄』を引用した裏メロとの絡みが絶妙。
鬱蒼とした鎮守の森の中に、木漏れ日がぱーっと差し込んでくるイメージ。
 
(10)風光る   かぜひかる
数少ない初期ポップ路線の中では最もよくまとまっているように思う。
「姫神」ではなく、まさに「姫神せんせいしょん」という感じ。
独特のシンセ音を除けば普通のフュージョンである。
ただ、ロックやフュージョンを聴き込んでいる人からすれば
中途半端でダサいサウンドに聞こえるかもしれない。そういう作風なのでやむを得ない。
曲名はいかにも星吉昭らしい。

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姫神伝説 [姫神せんせいしょん]

 1983.12.05 発売  C28R-0115(LP)
 1985.10.21 CD化  D32R-0026(CD)
 1988.06.21 再発  D50P-6247(CD)(『姫神』と2枚組セット)
 1993.11.03 再発  PCCR-00094(CD)  発売元:ポニーキャニオン(1986年以前はキャニオン)

姫神せんせいしょんとしては4枚目の、そして最後のアルバム。

本作は東北の地に根ざした地味なモチーフや名もない人々の生活などに光を当て、
それをとことん掘り下げて作ったという印象であり、
のちの「北人霊歌」につながる曲作りの姿勢が伺える。
作風はそれまでの3作と比べると日本的な色彩が薄くなった。
デビュー直後にたたえていたある種の不気味さはすっかり消え、クリアで透きとおったサウンドに変わっている。
これは直接的には使用機材と関係がありそうだが、星吉昭の心境もまた少なからず影響しているのだろうか。
特にアルバム後半の曲には、のちのソロ期の傾向が顔をのぞかせている。
つまり、本作はテーマ設定とサウンドメイクの両面において、
姫神にとって最初のターニングポイントになったといってよいだろう。
本作の発売後まもなく、姫神せんせいしょんは解散する。

ジャケットは水晶玉がはじけて中から鼓が現れるさまのイラスト。
LPのライナーノートには北口惇夫(岩手放送)の解説が添えられている。
なお、欲を言えば、このアルバムもタイトルに一工夫ほしかった。
よりによって『姫神』の次が『姫神伝説』とは…

(1)鳥のごとく   とりのごとく
NHK盛岡放送局のオファーを受けて作った『岩手讃歌』が原曲。
従来のアルバムのオープニング曲に比べればやや抑えめの姫神節だが、泥臭い感じはあまりしない。
華やかではあるが『舞鳥』と違って落ち着いた趣を感ずる。
おなじみの透明感のあるシンセ笛が主旋律をとる。
この曲は宮澤賢治の童話『よだかの星』から曲想を得たものらしい。
 
(2)うたげ
この曲はドラムスの佐藤将展が作曲した。
ポップで歯切れのよいリズム。『貝独楽』に通じるユーモラスな感じもする。
間奏部分で姫神作品にしては珍しくギターソロが聞ける。
 
(3)遠い日・風はあおあお   とおいひ・かぜはあおあお 
すがすがしくノスタルジックな雰囲気をたたえた、姫神ならではの初期の名曲。
この系統の曲はファンの間で根強い人気があるようだ。
姫神のシンセ笛の音色はいつ聴いても気持ちがよい。
ちなみにこの曲のリズムセクションには木桶(ポリバケツという説も)が使われているらしい。
 
(4)桐の花むらさきに燃え   きりのはなむらさきにもえ
これも佐藤将展の作曲だが、従来の作風とはやや異なり、
あたかも星吉昭の書いた曲のような日本的なメロディーライン。
リズムはオーソドックスな8ビートでいかにも「姫神せんせいしょん」という感じがする。
ところで当時佐藤は星のシンセを借りて曲作りをしていたという。
 
(5)山神祭   やまかみまつり 
この曲は早池峰神楽をモチーフにしているらしい。
シンセ笛と太鼓がメインのシンプルなお囃子だが、山里の土くさい響きがする。
淡々とした曲構成で第一印象は退屈かもしれないが、
曲進行とともに微妙に遷移する笛の主旋律を追いながら聞き込むと、なかなか奥が深い。
 
(6)十三の砂山   とさのすなやま
星吉昭が津軽半島の十三湖を訪れた際のインスピレーションに基づいて作った曲。
地元に同じタイトルの民謡があるが直接の関係はないと思われる。
波音の合間から聞こえてくる哀感漂う旋律は、十三湖の淋しい海岸風景を思い起こさせる。
イントロ・間奏のメロディーや副旋律も秀逸。
ただ、私が初めて聞いたときは、サビのシンセ音が喜多郎っぽいのが気に入らなかった。
のちにアルバム『東日流』でリメイク。
 
(7)ハヤト 
A-B-Aの大部構成をとった荘重な作品。演奏時間も長め。
アレンジはギター・ベース・ドラムを伴わず、
今にして思えば、姫神せんせいしょん解散とのちの星吉昭のソロ活動への展開を暗示する作品となった。
音の厚みに欠けるのは残念。
タイトルは九州の先住民「隼人」からきているという説が有力だが真相は不明。
 
(8)北天の星   ほくてんのほし
姫神ならではの透きとおったサウンド。珍しくピアノを用いている。
この曲も星吉昭一人で作ったようなアレンジで、次作『まほろば』と共通した世界が認められる。
シンプルな響きながら夜の闇の妖気が漂う。
バックのアルペジオが星のきらめきを感じさせて効果的。
 
(9)雪女   ゆきおんな 
姫神せんせいしょんの最後を飾る曲。
テクノポップ的なアップテンポの軽快なサウンドであるが
メロディーの奥には寒く貧しい北国の哀愁が見え隠れする。
そして最後の転調が泣ける。
個人的にはこの曲のリズムから青森の「ねぶた」を連想する。

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