All Works of HIMEKAMI

 =オリジナルアルバム&シングル(2003年〜2004年)=

は『HIMEKAMI Station』推薦曲、は当サイトの管理者が個人的に好きな曲を示します。
曲名の読み(ふりがな)は当サイトの管理者が参考のため付記したものに過ぎず、
正式な読み方を保証するものではありません。

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目次


青い花

 2003.01.29 発売  TOCT-24910(CCCD)  発売元:東芝EMI

2002年に姫神がポニーキャニオンから東芝EMIに移籍した後、初めてリリースされた、
2年2ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。

このアルバムを、無理を承知で一言で表現すれば、「姫神の作った日本民謡」。
ところどころで既存の日本民謡を交えながら、姫神なりの新たな日本民謡を生み出そうとした跡がうかがわれ、
姫神にとって原点回帰を狙ったアルバムであると考えられる。
アレンジは生楽器・シンセともに軽い感じに仕上がっており、『風の縄文II 久遠の空』に近い印象。
ヴォーカルは日本語と意味不明のスキャットがほぼ半々。
後者にはおそらく特別な意味がなく、音の響きだけを考慮してヴォイスに歌わせていると思われ、
取りあえず意味を持たせていた縄文語の頃とはアプローチが異なっている気がする。
またヴォイスの唱法は『神々の詩』の頃のような「クセ」があまり感じられないが、
民衆の日々のなりわいと結びついた唄を追求した結果であろうか。
ブルガリアンヴォイスなどをかなり研究したように思える。
ジャケットのデザインはタイトルどおりの青い花のイラスト。
なお、本作品は姫神初のCCCD(コピー・コントロールドCD)仕様。
一般にCCCDは音質の悪さを指摘されることが多いが、
通常仕様の『feel3』『feel4』と聴き比べると、心なしか音がこもっているようだ。

(1)青い花   あおいはな 
姫神らしい清々しさに満ちた佳曲。姫神ヴォイスが日本語で歌っている。
歌詞は、曲のテーマである「本当のさいわい」を北上山地の青い花に見立てて書かれているという。
メロディーは沖縄音階で作られているが、個人的にはこの曲に沖縄のイメージを持っていない。
透明感あふれるサウンドからは、北東北の爽快な空気、澄み渡った空を感じる。
『feel4』にも収録されている。
 
(2)あの遠くのはるかな声   あのとおくのはるかなこえ 
ミディアムテンポのブレイクビーツに乗せて姫神ヴォイスがおおらかに歌う。
大地に根ざして働き、生きていく人々の息吹が感じられる。
本アルバムのコンセプトが凝縮されたような一品。
『みち遥か』というテレビ番組のテーマ曲として使われたそうだが、全国ネットではなく、詳細は不明。
『feel5』にも収録されている。
 
(3)暁のかげろう   あかつきのかげろう
アコースティックな響きのスローなナンバー。
中島和子の情感あふれるスキャットをフィーチャー。
暁というよりは晩秋のイメージを受ける。
主旋律を奏でるのはモンゴルの擦弦楽器モリンホール(馬頭琴)、奏者はライ・ハスロー。
以前使った中国の二胡よりも癖のない音色で自己主張の程が過ぎず、今回の楽器選択は成功していると思う。
 
(4)コキリコ 
富山県五箇山に伝わる有名な民謡を姫神風にアレンジ。
佐野より子が初めてソロパートをとっている。彼女のヴォーカルは日本民謡そのものである。
素朴で哀調をたたえた原曲の旋律が、音数を絞ったアレンジで引き立っている。
隔絶された山奥の集落の慎ましやかな暮らしぶりが見えてくるようだ。
バッキングが細かいビートを刻んでいるためせわしなく聞こえるかもしれないが、
実は地元の人が歌う元唄のテンポよりも遅い。
 
(5)海の子守唄   うみのこもりうた 
本アルバム中、最も日本的な情感が感じられる曲。メロディーがすばらしい。
ピアノ、シンセ笛、モリンホールのみの伴奏で、中島和子がスキャットで歌い上げる。
『夕凪の譜』と同じような海辺の情景が脳裏に浮かんでくるが、
こちらの方が人の営みをより強く感じさせる。
 
(6)火祭りの夜   ひまつりのよる
ヴォイスの使い方や歌詞の響きなどに縄文色が漂う曲。
メロディーラインはよくある姫神風小夜曲だが、機械的なビートを強調したアレンジを施している。
前後の曲の流れから浮いている気がする。
 
(7)朽葉の道   くちばのみち
例によってメリハリのない旋律・展開の間奏曲的な曲で、このアルバム中インスト曲はこれだけ。
メロディーを奏でるのは普通のヴァイオリン。演奏は山本友重。
モリンホールを使わなかった意図はよくわからない。
 
(8)海明かり   うみあかり
茨城県大洗の民謡『磯節』の姫神ヴァージョン。
『明けの方から』を軽快にした感じの、3連シャッフルのダンサブルなリズムアレンジ。
姫神ヴォイスの艶っぽい合いの手が聴きどころだが、これは原曲が座敷唄だからなのか。
他サイトでも指摘のとおり、2コーラス目のメロディーフェイクはやり過ぎのような気が…
 
(9)雨のかんざし   あめのかんざし 
宮城県周辺に伝わる民謡『さんさ時雨』をフィーチャーした曲。
グラウンドビートふうのバックトラック(ベースラインが渋い!)に乗せて、
子守唄のような懐かしさと温もりを覚える、優しくもの悲しいメロディー。
姫神には珍しく雨をモチーフにした曲で、陰鬱な空の色、そぼ降る雨の情景が巧みに表現されていると思う。
なお『さんさ時雨』の部分は原曲の歌詞によらずスキャットで歌われている。
 
(10)遥かなる旅路(アルバム・ヴァージョン)   はるかなるたびじ
『feel 3』に提供した曲を再録したもので、
もともとこのアルバムのコンセプトから外れているため、違和感を禁じ得ない。
いちおう「アルバム・ヴァージョン」と銘打っているが、フェイドアウトが早いくらいでほとんど差違がない。
曲そのものについては『feel 3』の項を参照。
 
(11)讃歌〜種山が原へ   さんか〜たねやまがはらへ 
これぞ清明清浄。姫神の愛する故郷の青い空と緑の大地が広がっていく。
姫神ヴォイスの歌に縄文まほろば合唱団の男声コーラスが加わり、厚みとあたたかさを加えている。
歌詞は意味不明だが、東北地方の方言のように聞こえてこないこともない。
リズムトラックはもっとシンプルな方が歌が映えるのではないか。
なお題名にある「種山が原」は、岩手県奥州市から住田町にかけて広がる、宮澤賢治ゆかりの高原。

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風の伝説

 2004.04.21 発売  TOCT-25370(CCCD)  発売元:東芝EMI

姫神22作目の、そして星吉昭にとって遺作となったオリジナルアルバム。

サウンドの傾向は前作『青い花』から大きな変化はないが、
最も特徴的なのは、ブルガリアンヴォイスを導入した点である。
『フィリップ・クーテフ・ブルガリア国立合唱団』の女性コーラスを、姫神独自の解釈を加えつつ織り込んでいる。
そのほかの主な曲は姫神ヴォイスが歌っているが、前作と違って既存の日本民謡をそのまま歌ってはいない。
あからさまに東北モチーフを前面に出した曲は少ないが、
ブルガリア人の日々の営みから生まれ出た唄が再構成されてブルガリアンヴォイスが創り出されたように、
星は本作をきっかけに、姫神ヴォイスを、
東北の風土に根ざした「みちのくヴォイス」に昇華させようとしたのではないか…?
志半ばで病に倒れたことが返す返すも残念でならない。
なお、本アルバムの通しテーマは、星自ら作詞した3曲の配置とその歌詞から思うに、
「人を愛する(愛されることに非ず)ことを求めて生き続ける、人のありよう」ではないだろうか。
ブルガリアンヴォイス入り3曲をとばして1曲目から通しで聴くとわかりやすいかもしれない。
ジャケットは朝焼けまたは夕焼けを描いたイラストで、通常のCDケースとは表裏が逆になっている。CCCD仕様。

(1)めぐり逢う星の夜   めぐりあうほしのよる
本アルバムのテーマを提示するかのような、日本語の歌詞。素朴で親しみやすい曲。
中島和子・志和純子・藤井智子の3人が、わりと素直に歌っている。
 
(2)海を愛した日   うみをあいしたひ 
沖縄音階のゆったりしたメロディーの曲。燦々と太陽が海原に降り注ぐイメージ。
ブルガリアンヴォイスのコーラスが、スキャット(エンディングでは日本語らしき言語)で歌っている。
唱法やヴォイシングが本来のブルガリアンヴォイスとはやや異なり、星吉昭が自分なりにアレンジしているようだ。
ただ、黒澤博幸奏でる津軽三味線を三線代わりに用いるアイデアは不自然な感じがする。
星によれば「東北の音楽なので東北の楽器にこだわってみた」ようだが、
津軽三味線の良さが全く発揮されていない使い方である。
 
(3)風に消えた歌   かぜにきえたうた
荘厳でドラマティックな展開の曲。
アルバム『東日流』につながる、大陸的な匂いがする。
中島のメリハリのあるスキャットは聴きごたえがある。サビはまさに絶唱。
 
(4)青い河へ   あおいかわへ 
あの『最上川舟唄』をブルガリアンヴォイスが歌う!――ハマり過ぎ。
星吉昭らしい、実験的な試みはまずまず成功したと言えよう。
ブルガリアンヴォイスの持つ特徴を存分に活かしており、
ビブラートがかかった独特の哀感あふれる声質と和声の効果で、山形県民謡がブルガリア民謡と化している。
難を言えば、この曲、アカペラのため、姫神の作品という感じがしてこない。
なお編曲にあたっては元唄のうち「ヨーイサノマッカーショ〜」で始まる掛け声の部分のみを使用し、
そこ以外は星の創作と思われる。
 
(5)砂山・十三夜   すなやま・じゅうさんや 
津軽・十三の砂山が舞台の東北新民謡。歌詞が付いている。
あまりにも美しい、そして切ない旋律。
ヴォーカルは、くわはらあまね(桑原周?)と中島が声質を活かしてAメロとBメロを歌い分け、
大サビで絶妙なハーモニーを聴かせる。
山本友重のソロヴァイオリンと抑えめの伴奏も効果的。
愛を求める女が日本海のさびしい砂浜にたたずむ姿、脳裏にくっきりと浮かんでくる。
こんな秀逸なメロディーが、もうこれ以上生まれてこないのかと思うと…
 
(6)潮騒   しおさい
このアルバムも例に漏れず、単調でインパクトの薄い、ブリッジ的なインスト曲が収まっている。
とりあえず、タイトルと曲調が今ひとつ私の中で結びつかないことだけ記しておく。
 
(7)野辺は澄み渡り   のべはすみわたり 
いかにも姫神らしい、清明清浄感にあふれた軽快なチューン。『この草原の光を』の続編といった趣。
姫神ヴォイスの中島・藤井・佐野より子が優しくスキャットで歌う。
本来ならファンとして文句の付けがたい、晴れやかで希望に満ちた曲調なのだが、
私はこの曲を聴くたびに、ぽっかり大きな穴が空いたような「喪失感」を覚えてしまう。
 
(8)大地はほの白く   だいちはほのしろく
1990年代前半の頃のような懐かしさを感じる、スローテンポの曲調。
これも構成がやや平板なきらいがあるが、徐々に白んでいく朝焼けの雰囲気は出ている。
ジャケットのイラストをそのまま曲にしたようなものだ。
5曲目でたっぷり哀感を味わわせておいて、その後前向きな曲が続いている。
 
(9)神々の詩(ブルガリアン・ヴァージョン)   かみがみのうた
おなじみの曲をブルガリアンヴォイスが歌っているのだが、
姫神ヴォイスを意識させすぎて、ブルガリアンヴォイスらしさがスポイルされているように聞こえるので、
私はこの試みをあまり評価しない。
イントロや間奏のスキャットは優美。バックトラックは海流ヴァージョンに近い。
後に『feel best』『feel voice』にも収録された。
 
(10)風の人   かぜのひと 
図らずも、これが星吉昭が生前世に出した最後の曲となってしまった。
日本語の歌詞を落ち着いた曲調に載せている。ヴォーカルは中島和子のソロ。
つらい日々を乗り越えて約束の人に巡り会えた喜びが歌われている。
輝かしい光の日々の始まりを歌いあげるはずが、まさか今生の別れの曲となってしまうとは…

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