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2004年6月の棚
 
百万の手/畠中恵
東京創元社/1700円(税別)

子離れの出来ない母親と衝突して夏貴は家を飛び出し、親友・正哉の家へ向かった。
しかし彼の家は火事で燃えており、家にいる両親を助けようと正哉は夏貴の手に携帯電話を残し火の中に飛び込む。そして一家三人は助からなかった。
悲しむ夏貴に、残された携帯電話を通じて親友が放火犯を捕まえようと呼びかけてきたのだ…。

◆『しゃばけ』の作者による現代ミステリ。
携帯電話を通じて親友が呼びかけるなど、ファンタジー風な作品なのかと思っていたのですが、後半は一転結構重いテーマの作品となりました。
この急展開、つまり正哉の退場の仕方がちょっと残念な感じです。
できれば、最後までいて欲しかったと思うのです。
◆後半のテーマについても実は思うこともいろいろあるんですけど、これはネタバレになるのよね〜。それにすごく難しいテーマですし…。
ともかく意外な展開で引き込まれました。

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和時計の館の殺人/芦辺拓
光文社/649円(税込)

和時計に埋め尽くされた旧家・天知家。コレクターだった故人の遺言状の公開と共に事件は起こった。
遺言状の内容は、殺人を起こすものとも思えなかったが…。

◆和時計についての蘊蓄もトリックの方も、話としても面白いとは思うのですが…、いかんせん、タイトルが悪かったとしかいいようがありません。
どうしても比較してしまうんですよね〜。
比較してしまうと、くるしいかな〜と思わざるをえません。
◆問題は和時計にもあります。身の回りにあるものではありませんし、わずかな記憶と蘊蓄だけでは、どうしてもイメージがしにくいです。
こういう作品こそ、映像化向きなのかしら?
◆こうしてマイナス点が眼についてしまいますが、アイディアやトリックも贅沢なほど使われてますし、遊び心も満載です。
ただ、なんか一つ物足りないかんじなのよね。


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九つの殺人メルヘン/鯨統一郎
光文社/650円(税別)

日本酒バーのマスターと常連2人の“厄年トリオ”が語る難事件を、メルヘンを専攻する女子大生・桜川東子が推理していく。

◆アリバイトリックを9つのパターンに分類したのは有栖川有栖でした。
この9つのパターンとお馴染みのメルヘンを結び付けています。
もちろんメルヘンの方も新解釈付です。
◆そしてこの話をテンポよくしているのが“厄年トリオ”の会話でしょう。
事件とは関係ないのですが、酒の蘊蓄や懐かしの昭和○○とか…。
これが飲み屋の雰囲気を盛り上げます。次で、事件が語られ、メルヘンに置き換えられた推理が披露される…このパターンでできています。
一話づつが短いので、あっという間に読んでしましました。
しかも最後にはビックリのオチが!


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黒祠の島/小野不由美
祥伝社/690円(税込)

行方不明となったノンフィクション作家・葛木志保を探し、式部は彼女と故郷と思われる夜叉島へ辿り着いた。
しかし女二人でこの島に来たはずなのに、島の人間は誰も知らないと言う。
明治以来の国家神道から外れた黒祠の島に何があったのか…。

◆孤島・因習・猟奇殺人となんとなく横溝を思わせますが、それが道具ではなくそこに有ることを感じさせてくれます。
島の外から来た探偵役だからこそ疑問に思うことで、因習がいかに島民の身についているかが示され、そして陰陽五行を用い、神の正体までも探る…。
それをふまえた上での殺人事件なのです。
この黒祠の描き方がとても面白かったですね。
なんていうか、殺人事件をくってしまうほどに。
謎解きが珍しく当たってたせいなのかもしれないんですけど…。
◆この島の信仰は『十二国記』の世界にある意味ですが近いものがある思うのです。(極論だとおもってます)
そのせいか島民の感情をも理解しやすかった気がします。

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ふたたびの虹/柴田よしき
祥伝社/630円(税込)

女性のひとり客も気楽に入れる「ばんざい屋」を営む女将と、その店のなじみ客達の日常に起こるほんの小さな謎の物語。

◆日常の謎の連作でもありますが、恋愛小説でもあります。
それもとても上品で落ち着いたものなので、心地よく胸に響きます。
日常の謎と平行し、話が進むに連れて、女将の過去が浮かび上がってきます。
ある意味一番ミステリなのがこの女将かもしれませんね。
◆女将の過去以外の謎ももちろんよかったですよ。
クリスマスが憂鬱女性の話『聖夜の憂鬱』、緑色の桜から物語が進む『桜夢』など話は季節感たっぷりです。
もう一つ季節感を感じさせるのは「ばんざい屋」で出される料理の数々です。
これがなんとも美味しそうなんですよ。
白いごはんが好きな私は、読んでて食べたい〜と思うことしきりでありました。

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楽園 戦略拠点32098/長谷敏司
角川書店/439円(税込)

―千年におよぶ星間戦争、必死になって守られるその惑星にたったひとり降下したヴァロア。
そこは緑の草原と宇宙戦艦が幾多も突きたった大地、敵のロボット兵ガダルバと少女マリアが住む、戦場とはかけ離れた世界だった…。

◆なんとなく懐かしい感じのするSF系ライトノベル。
登場人物が3人としたこと、また―千年におよぶ戦争を文字通り背景にしたことで、シンプルな、でもよく考えられた設定で、それ故にマリアの存在や楽園の正体を際立たせているように思います。
そしてマリアの無邪気さがラストには哀しいものとなります。
ヴァロアのその後を暗示するラストの一文もよかったです。
◆途中で読みにくく感じたところや、?と思った点が実は伏線となっていたので、読み終わってみれば納得するんですけど、ちょっと気になりました。
でも切ない読後感と、雰囲気はとても気に入ってます。

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風が吹いたら桶屋がもうかる/井上夢人
集英社/559円(税込)

牛丼屋でバイトしているシュンペイは、本格派推理小説にはうるさいイッカクと超能力(低能力?)を趣味としているヨーノスケと同居している。
そしてヨーノスケの超能力の話を聞き、シュンペイのもとへ女性が助けを求めてやってくるのだった…。

◆シュンペイのもとへ女性があらわれ、ヨーノスケの超能力は時間がかかるのでその間にイッカクが推理し…というパターンの連作短編です。
ミステリらしい論理の積み重ねで出してくるイッカクの推理は、お!と思うのですが、現実はミステリのような事件は少ないということでしょうか…。
後日依頼者が答えを持ってやってくる頃、ようやくヨーノスケの超能力は答えを出します。
正しい答えではあっても役に立たないあたりが、低能力と称されるゆえんなのですが…。
ミステリの手法を逆手にとったような感じの作品で楽しめました。
◆しかし、毎度パターンが同じなのが淋しい感じもします。
いや、いっそのこと某時代劇のようにパターン化してシリーズにするというのもおもいろいかも?

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禁じられた楽園/恩田陸
徳間書店/1,890円(税込)

DVDソフト「カーテン」を世界的にヒットさせたアーティスト烏山響一。
大学生の捷と、若手芸術家の律子は彼の故郷・熊野の巨大な私設美術館に招かれた。
一方失踪した黒瀬淳を探して恋人の夏海と友人の和繁は烏山家に辿り着いた…。

◆GOG.プロジェクト、捷の姉・香織の感じた不吉の影、そして失踪した男の行方、山中にある巨大な施設…なんともミステリアスな感じもあるのですが、ホラー作品といえます。
幻想なのか現実なのか判らなくなりそうな視覚に訴える、いえ想像力に訴える怖さがあるのです。
またそれをあやつっていく烏山響一の得体の知れなさがどんどんと無気味にそして怖さに変わっていくように思います。
◆このあたり恐怖の盛り上げ方はとてもいいんですけど、個人的にはラストがちょっと気に入らないのです。
え!っと驚いた展開ではあったのですが…。
まあ、個人的な好みだと思うのですけど。

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甘露梅 お針子おとせ吉原春秋/宇江佐真理
光文社/520円(税込)

夫を亡くしたおとせは吉原の遊廓・海老屋でお針子として働きはじめた…。
突然吉原で働くこととなったおとせの眼をとおして、吉原の四季とそして人の心が描かれる短編連作です。

◆吉原の四季の彩りと物語のからめ方が、とてもよいと思うのです。
吉原故の美しいけれど人工的な四季そして行事、しきたりが、よりそこに暮らす人々の美しさの影にある哀しさを浮かび上がらせるように思います。
◆遊女たちのひそかな恋、不自由な身ではある故に誇り高くもある心意気、そんな彼女達の悲しみにも一緒になって一喜一憂するおとせの人の良さ。
そのくせ自分のことは煮え切らないところも、とても好感が持てます。
◆そしてこの物語のもう一つのメインの喜蝶の恋愛。
御法度の恋、同じ桜を見上げるシーンのなんともいえない切なく美しさ。
そして圧巻の『くくり猿』へと続くのですけど…。
この哀しい恋の分もおとせさんは幸せになって欲しいですね。

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十八の夏/光原百合
双葉社/600円(税込)

花をモチーフにした4つの作品を収録。
受験に失敗した信也は思い出す。紅美子との出会いから別れまでを『十八の夏』。
妻を亡くし子供を育てる彼が気になった女性は…『ささやかな奇跡』。
兄貴が突然の変化の原因は『兄貴の純情』。
塾の生徒であった史香の悲しい過去…『イノセントデイズ』。

◆どの作品もとても良かったのですが、お気に入りは『ささやかな奇跡』です。
ミステリ色は薄めですが、なんともいえない暖かさが心に残ります。
そして本好きとして「さくら書店」が近くに欲しいと思うのです。
◆ミステリ色が強い『イノセントデイズ』も印象的です。
切なく影のあるヒロイン、そしてなんとも悲しい話を、理想主義と言われる塾講師の主人公が救ってくれるように思います。
◆人の悪意を描いた作品も多いのですが、ドロドロと言う感じにはなりません。
より暖かな感じを引き立てているようにも思うのですけれど…。

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泣いた赤おに/浜田広介
小学館/560円(税込)

『泣いた赤おに』を含む二十三篇の童話を収録。
◆子供の頃『泣いた赤おに』を読んで涙したかたも多いのでは?
ええ、私も泣いたものです。
その作者の童話が文庫になったと知って購入しました。
『泣いた赤おに』の作者が他にどんな作品を書いたのかも興味がありましたし…。
◆初めて読んだ作品が多かったのですが、中には記憶のある作品もありました。
善意と言うもを心より信じさせてくれる温かい話、なにげないけれどどこか懐かしい話や、誰かの為であろうとする切ない話…。
できればいつまでも語り継いでいきたい童話達でありました。

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家族狩り 5部作/天童荒太
新潮社/500円

息子を事故でなくし傷つき続ける刑事、家庭を築くことを恐れる美術教師、虐待児童に心を痛める児童相談員の女性、彼等の前に現れたのは、残虐な事件だった…。
◆今年1月より毎月一冊ずつ文庫となってきました本作もようやく完結しましたので、纏めて読了しました。 3部までは発売した時に読んでましたけどね。
◆ミステリでもあるのですが、それよりも家族を描いた作品と言えると思います。
児童虐待や家庭内暴力、そこまで大きなものでなくとも『家族』の問題はあるのでしょう。そして家族の心のつながりを問うそんな作品です。
◆とても重い作品です。感想という以前に圧倒されてしまった感じで、一日おいても言葉をつけることができません。というよりこの作品に対して語る言葉ってあるんでしょうか?
もっともっと考えるべき問題を提示していると思うのです。
家族というものが、いえ、人と向き合うことがある限り『愛』ってなんなのか、それに対して形ある答えを示すことはできないと思います。
でも存在を信じている限り、きっと誰もが問い続けていくように思うのです。

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The S.O.U.P./川端裕人
角川書店/780円(税込)

オンラインRPG「S.O.U.P」開発者の一人であったプログラマーの周防巧は、コンピュータのセキュリティを仕事としていた。
そしてEGGという謎のクラッカー集団の調査を依頼される。
そして辿り着いたのは変わってしまた「S.O.U.P」の世界。
インターネットを通じた攻防が始まる。

◆ネットというものを使うようになって2年程なのです。今ではネットにしっかり浸かって生活をしてます。
この、ネットワークってなんなのか?その成り立ちとは?
難しいけど、勉強にもなります。
技術(サイエンス)と空想(ファンタジー)の組み合わせるための鍵として使われた『真の名』。これはなんとも象徴的であり、また新鮮な感じがします。
◆『指輪物語』や『ゲド戦記』を下地にしているゲーム「S.O.U.P」ということもあるので、両作品の読んでいた方がよいかも…。
読まなくても説明はあるから判りますけど…。

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しゃばけ/畠中恵
新潮社/539円(税込)

大店の若旦那で病弱な一太郎は17才になるのに、周りのものはいつまでたっても子供扱い。
祖父がつけた二人の手代は特に過保護である。
しかもこの二人、人間ではなかった。なんと正体は妖怪!
一太郎は妖怪が見えるのである。
そんな彼等の目を盗んで出かけた先で一太郎は人殺しの現場に出くわした…。

◆おもしろ〜い!
妖怪とかがでてきますが、これが闇を感じさせるものではなく、ほのぼのとしてとても自然な感じです。
そしてなんとも言えぬおかしさや、かわいらしさがあるのです。
◆一太郎も過保護に育てられたわりに素直で人がよく、世間知らずだけど、でも探偵役をがんばってつとめます。
手代を含めた周りにいる妖怪たちや、幼馴染みの栄吉など、とてもキャラクターが気に入ってます。
鳴家、かわいいかも…。
◆とて軽いノリなので、気楽に読めます。コミック的ですね。
気になった点もあるのですが、でも面白かったと本を閉じることができ、続編をさっそく図書館に予約しました。
図書館で借りたけど古本屋で見つけたら購入しよっと!

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ぬしさまへ/畠中恵
新潮社/1,365円(税込)

『しゃばけ』の続編です。妖が見える病弱な若旦那と妖達が難事件を解決していきます。
仁吉がもらった付け文の話『ぬしさまへ』、
栄吉の饅頭を食べた老人が死んだ?『栄吉の菓子』、
松之助の話『空のビードロ』、
一太郎の布団から女の泣き声が…『四布の布団』、
色男の仁吉が語る女性にふられた話『仁吉の思い人』、
いつも側に居た妖達が消えた?『虹を見し事』の6編収録。

◆これだけでも楽しめますが、やはり『しゃばけ』を読んでからの方が楽しめると思います。1作目のネタバレな話もありますからね。
◆前作で、この後どうするんだろう?と心配した松之助のことが『空のビードロ』と『虹を見し事』で語られたのはすごくうれしい。
話としても『空のビードロ』は気に入っています。
◆前作よりもいい感じな気がします。
短編というのが合っているように思うけど…。
できれば、もっと続編を読んで見たい作品です。

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煙か土か食い物/舞城王太郎
講談社/1,050円(税込)

アメリカで医師をしている奈津川四郎のもとに、母親が連続主婦殴打生き埋め事件の被害者になったという連絡がはいった。
故郷福井へと帰ってきた四郎は自ら捜査をはじめた…。

◆パズルのような謎もあるのですが、すぐに答えが出てくるので、重点は奈津川の葛藤にあります。ミステリではあるのですが、なんか違う感じ。
◆この話をなんて表現したらよいのでしょうね〜。
そうだな〜、ラップが近い感じかも?
斬新なと文章かもしれないけど、個人的には好みではなかったですね。
ただ話には合ったものではあります。
暴力的なものも多いので、このあたりも苦手です。
◆講談社ノベルズとは思えない装丁や作り(本文も1段組みなんです)です。
でも話とは合っていると思います。

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家族狩り
The S.O.U.P
しゃばけ
ぬしさまへ
煙か土か食い物