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2004年5月の棚
 
星月夜の夢がたり/光原百合
文藝春秋/1,500円(税込)

夢がたりというタイトルに似合う優しい物語、32編収録。
◆基本的に文庫本しか買わない私が、買ってしまったハードカバーの本です。
手にしてもらえばきっと判ってもらえます。本当に綺麗なんです。
見る角度によって色を変える宝石のような、美しい挿し絵が沢山(しかもカラーで)使われていて、宝物を見つけたような気分になってしまったのです。
それに文庫になることがあってもこの美しさは残らないだろうと思ったからなんですけど…。
◆そして語られる物語も挿し絵に負けない素敵なものでした。
ショートショートというくらいの短い話が多いのですが、切なかったり、優しい気分になれたり…なんとも印象的です。
◆あっと言う間に読み終えてしまったのがもったいなく、寝る前に一話づつ読みかえそうかと思っています。
とても穏やかな気分になれますし、素敵な夢が見れそうな気がしてます。
ちなみに、挿し絵の鯰江光二さんのHPは★こちら★。綺麗ですよ。

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暗黒童話/乙一
集英社文庫/620円(税込)

事故で左の眼球を失ったショックから記憶喪失になり、菜深は明るく、活発な自分をも失ってしまった。
やがて眼球移植を受けたのだが、その眼が持つ様々な記憶を浮かび上がらせた。
そして行方不明の少女の写真から呼び起こされた記憶をもとに、眼球の元の持ち主のいた町へ向かった。

◆暗黒童話というのにふさわしいカラスと少女の物語が挿入されています。このへんとか、主人公である菜深が語られているあたりは、まあいいんですけど。
やはり問題は、暗黒童話の書き手がでている辺りは、ちょっと…。
グロすぎです。私はかなり苦手なタイプです。
話には聞いていたのですが、まさかここまでとは…。
特殊な能力の行き着く果てとしてのグロいシーンは確かに効果的だとは思いますが、ここまで、グロテスクな話にしなくてもよかったのではないかと思うのだけど…。
しかし、その点を除けば問題はないというか、いい話でもあるのです。
菜深の心情もすごく理解できるしラストは感動的です。
そして美しいシーンももちろんあるのです。
読まれる方は、覚悟を決めてから読んだ方がいいでしょう。

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黄金の島(上下)/真保裕一
講談社/各733円(税別)

組織を追われ、また逃げることになってしまった坂口修司はベトナムへ辿りつく。
シクロ乗りでお金を稼ぎ、黄金の島・日本へ渡ることを夢見るベトナムの若者たちのグループがあった。
そして彼等は出会った。
修司は日本語を教えながら計画の無謀さを説得するのだが…。

◆日本は黄金の島だと、TVや冷蔵庫のある生活ができるようになるのだと信じ、日本を目指す若者たち。
どんなにリスクが高くとも、命を失うことになっても、それだけが彼等の希望なのです。
そんなベトナムの若者たちがなんとも個性的で印象に残ります。
◆それに対し坂口修司の印象が今一つなんですね。
ヤクザって点を除いても、どんどん情けない男になっていくのです。
その点は日本へ帰ろうとする焦りともとれるんですけど…。
◆無駄に感じる点もありますが、嵐のシーンの緊迫感等、長い話をあきさせずに一気に読ませる作品でした。
◆しかし、女は怖い…。

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青い月の物語/小浦昇+青居 心
ダイヤモンド社/1,500円(税別)

【詩画集】
深い青と透明な輝くような青&グリーンで描かれる、静かで繊細な世界…。

なんとも柔らく輝く月がここにあります。
それはとても幻想的で、心が洗われるような美しさなんです。
これを言葉にするのはとても難しい…。
一言、絵を見て!としか言い様がありません。
詩が添えられているのですが、絵の美しさに負けてしまって印象に残らない…気がします。
でも、この絵だけで大満足なんです。

第2弾として『赤い月の物語』もあります。
こちらはそのうち入手しようと思ってます。

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陽だまりの迷宮/青井夏海
角川春樹事務所/600円(税別)

海を見渡す公園で生夫は語り始めた。
姉9人兄1人の11人兄妹の末っ子で、病気がちだった小学校の頃の思い出を。
謎を解決してくれたヨモギさんのことを…。

◆個人的にはせっかくこんなに兄妹がいるのに、末っ子の視点から描かれるため、縁の遠い姉などは余り描かれていないのが少し残念かな?
もう少し話に入ってきてもいいのではと思うけど…。
そういえば、両親に至っては印象にのこってないよ。
この設定で、兄妹の分いえ、家族の分謎が出てきたら面白いかもと思うのは私だけかな?なんかもったいない感じがします。
つまりはもっと読んでいたかったのかもしれませんね。
◆描かれるのは小さな…でも小学生の少年にとっては大きな謎なのです。
いわゆる「日常の謎」系の話です。
それをちょっと複雑な兄妹の関係が彩ります。
その辺りがとても温かく感じますので、読後感もよい話でした。

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卵の緒/瀬尾まいこ
マガジンハウス/1400円(税別)

小学生の育生は自分が捨て子だったと思っている。学校でへその緒の話を聞き、母親に見せてといった。そして出てきたのは卵の殻だった。『卵の緒』。
高校生の七子と、亡き父親と愛人の子である小学生の弟・七生と暮らすことになった。『7′s blood』の2編収録。

◆両作品ともテーマは家族です。
捨て子だと思っている子供、だからといっていじわるな母親ではないんです。ユニークだけど、大好きという感情が溢れてます。
もちろん育生もそれを感じてるし、素直な感じのよい子供なんです。ちょっと変わってるかでさわやかな感じの家族の話です。
そして『7′s blood』は好感が持てなかった弟に対して、だんだん変わっていく感情が描かれます。それはとても自然でこちらもよい話です。
どちらもさわやかで、とても心地よく読めるので読後感がとてもよかったです。
◆家族っと言うものは血のつながりではなく、心のつながりを家族と言うのだと、改めて確認させてくれる本でした。

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孤独か、それに等しいもの/大崎善生
角川書店/1,470円(税込)

『八月の傾斜』、『だらだらとこの坂道を下っていこう』、『孤独か、それに等しいもの』、『シンパシー』、『ソウルケージ』の5編収録の短編集。
◆切ないの一言にするには違和感が有ります。もっと似合う言葉を探したいのにでも思いつかないのです。
どの作品にもある死んだ者への思い、残された人の持つ苦しい程の喪失感、それらが透明で美しい言葉で綴られています。
◆中学から高校まで一緒にいた大久保くんの思い出と喪失するものにこだわる『八月の傾斜』。
亡くなった双子の妹を思う『孤独か、それに等しいもの』。
編集プロダクションで他人の旅の記事を書く女性が捕われた魂の檻『ソウルケージ』。この3編が気にいってます。(偶然にも女性が主人公のものだけだわ)
喪失感を抱えそれを乗り越えようと、新たに歩き出そうとしている彼女達が美しく感じました。

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絵が殺した/黒川博行
創元推理文庫/714円(税込)

竹林から発見された死体は、一年前に丹後半島で海に落ちた思われた日本画家黒田理弘と判明した。
吉永誠一刑事は、新米の小沢慎一とコンビを組み捜査に着手する。やがて黒田は二十年前の贋作事件に関与していたことが明らかに…。

◆軽快なテンポで交わされる関西弁と、漫才のような吉永&小沢コンビが楽しいんですよ。地味な捜査ものでなくなっているのは、このテンポよい漫才によるものの気がします。事件の方はけっこうドロドロな感じなんですが。
そのドロドロな感じは事件の複雑さとそして海千山千といった感じの美術業界が生み出しているように思います。特に美術業界ね…。
◆『絵が殺した』なんとも、その通りだけど上手なタイトルを付けたものです。

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文学賞メッタ斬り!/大森 望、豊崎 由美
パルコ出版/1,600円(税別)

文学賞の種類から賞の選定委員のことまで、痛快な切り口で語った対談本。
◆芥川賞、直木賞から地方のマイナーな賞、純文学からエンターテイメントな賞いまで、知らなかっただけでこんなに文学賞ってあったんですね。
権威ある文学賞まで俎上にあげ、各文学賞の成立、選考委員のシステム、作品の傾向まで痛快に語り合います。これがなんとも面白いのです。(と言っていいのか?)両者とも取り上げられた賞や本をただ斬るのではなく、そこには愛情が感じられるのです。悪い点だけでなくよいと思っているものはちゃんと認め、ほめています。立場や視点が明確で、その辺が爽快に感じさせるのかもしれませんね。
◆文学賞にあまり興味はなかったのですけど、ちょっと興味が湧いてきました。そして、幅広く取り上げていることもあって、「ああ、この作品はこんな文学賞からでてきたんだ」ということをあらためて知り、注目してみようかなという文学賞もできました。
また読んでみたいなと思わせる本も多く、BOOKガイドとして読んでみてもいいのでは?(ダメって言われている作品も、ある意味読んでみたい気もするけど…)

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シービスケット/ローラ・ヒレンブランド
ソニー・マガジンズ/1,890円(税込)

1920年代、大恐慌時代のアメリカの新聞が最も報じたのは“シービスケット”、一頭の馬についてだった。
自動車ディーラーとして大成功したものの子供を自動車事故で亡くした男、年老いた調教師、大恐慌によって家族と離れ競馬の世界に入った赤毛のジョッキー、そして小柄で気が荒く誰もがサジを投げた馬“シービスケット”。
この出会いが全米を騒がせることになる…。

◆ノンフィクションなんだけどなんともドラマチック!「事実は小説より奇なり」ってホントだったんだ〜。この三人と一頭のどこか一つが欠けてもこの奇跡のようなドラマは生まれなかったのでしょう。
サジを投げられ最低のレースから這い上がって行った“シービスケット”に人々が熱狂していくのも判ります。
◆原作を読む前に映画も見たんですけど、やはり原作の方がいいですね。当時の競馬事情等などもよくわかりますし、より詳しい描写や省かれてしまった話もありましたから。映画の方がよかった点はレースの臨場感かな。これは迫力でしたもの。本のレースシーンも迫力あるんですけどね。

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足のない獅子シリーズ/駒崎優
講談社X文庫

十三世紀のイギリス。貴族の子弟、リチャードとギルフォードは事件を解決して小金を稼いでいる。生まれたときに母親を亡くし、貴族の叔父に引き取られているリチャードの独立資金を稼ぐためである。
幼なじみで従兄弟、二つの荘園を持つ領主の跡取り息子であるギルフォードは、リチャードを手助けする。そんな二人のもとへユダヤ人の金貸が助けを求めに訪れた…。

◆なんていうか、TV時代劇のような(って時代劇なんだけど)感じですね。あまり歴史にこだわらずに気楽に楽しめる物語です。
犯人探しもちょっとあって個人的には好きかも。
中世騎士(見習い)物語このあたりは特に好きだし〜。
◆シリーズ作品が10冊ぐらいありますね。
古本屋にもけっこう揃ってたみたいだから買って一気読みしちゃいました…。
ミステリっぽい話もあったりとなかなか楽しめます。

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ホビットの冒険/J.R.R.トールキン
岩波少年文庫/756円、714円(税込)

平和なホビット庄のビルボのところへ、魔法使いガンダルフがやって来る。やがて13人のドワーフもやってきて、ビルボは「忍びの者」として彼らと一緒に、竜に奪われた宝を取り戻すための冒険に出ることに…。
◆先日見てきました映画『指輪物語』の序章ともいえる物語です。ビルボがいかに指輪を手に入れたかも描かれます。もちろん、この話だけでも楽しめます。
◆中年とも言えるホビット・ビルボは渋々冒険に出るし、冒険の間じゅうも自分の気持ちの良いホビット穴や美味しい食事の事を思い出してばかりですし、けっこう失敗もします。世界の平和を守るといった大義名分の冒険の物語ではありません。だからこそ、妙に人間臭く親近感も持てまし、次から次への難問につい一緒にハラハラしてるのです。
◆子供向けということになってますので、『指輪物語』よりはるかに読みやすいです。結構『指輪物語』は読みにくかった覚えが…。

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呼人/ 野沢尚
講談社/667円(税別)

呼人は同級生の厚介、潤、小春と12歳の夏休みを過ごした。
友達はそれを思い出として大人になっていく。呼人一人を残して。
呼人の体は12歳で成長を止めてしまったのだ。
12歳の子供のままで生きていくことになった呼人の出生の秘密とは…。

◆呼人は12歳で成長を止めてしまいました。でも呼人がいるのはネバーランドではないのです。現代の日本で傷付きながら生きて行かなければならないのです。
そんな彼を支えとなったのは、家族と友達。特に友人との関係に重きが置かれていますので、青春小説といえもます。
大人になるうちに忘れてしまうものを呼人は忘れない…また呼人を向き合うことで友人達は12歳の頃を取り戻すことができる…子供の頃の素直な感情であるからこそ、彼らの関係がとても魅力的に感じるのかもしれません。
◆現実を織りまぜながら綴られる物語は、ちょっとした懐かしさと時の流れを実感させます。

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大博打/黒川博行
新潮文庫/580円(税別)

大阪の金券ショップ『アイボリー』の創業者・倉石泰三老人ホームから誘拐され、身代金は金塊2トン、時価32億円が要求された。
そんな大金は払えない、父の命よりも金の方が大事という家族側、犯人を逮捕したら取り返せるという警察、緻密な計算の犯人、したたかに観察をしている被害者。
いかにして2トンもの金塊を奪取しようというのか!

◆メインの犯人と警察の攻防の他にも、被害者と犯人、被害者一家と警察とかけひきが騙し、騙されとなんとも面白いんです。
特に犯人と、被害者である老人のやり取り。ただでは転ばない老人がなんともいいキャラクターですし、二人の関係が徐々に変わって行く様子がいいんですよね。
また大阪が舞台なので、大坂弁が使われていることも軽快に感じさせる要因の1つかもしれません。
◆誘拐のほうも金塊2トンというスケールの大きさがいいですよね。一体どうする気だ?と興味はつきません。ネタバレにつながりますから詳しくは言いませんが面白かったです。

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かげろう日記/吉村達也
角川ホラー文庫/514円(税別)

町田輝樹のもとに郵送されてきた差出人不明のノート。表紙には半年前に死んだ元恋人・茜の筆跡で『かげろう日記』と書かれていた。日記の彼女は、やがてくる運命も知らずに、輝樹への思いを綴っていた。日記を読みはじめた輝樹は、彼女の死んだ日に近づくにつれ、恐怖に襲われていく…。
◆ホラー小説でも展開は、誰が日記を送ってきたのか…などミステリ風な展開もあって、読みやすかったと思います。
でも怖いよ。ホラーな部分の他にも、恋の執念による恐怖もあります。
『ひとりの人間を一途に思うことほど、ホラーな世界はないね。恋はホラーだ』と本の登場人物が言うのですが、この本を読んでるとなるほどって気がします。死んでいる女、生きている女、一体どちらが怖いんでしょうね…。
◆日記という道具がついどうなるんだという興味をひきますし、そしてなんともいえない恐怖感もあおります。ゾクりとした場面も多くありました。
ホラー慣れしてないので、時々本を落としたりも…。

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孤独か、それに等しいもの
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シービスケット
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ホビットの冒険
呼人
大博打
かげろう日記