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想いがむき出しの話題の東京高裁第7民事部判決

判決全文
平成21年1月29日判決言渡・同日判決原本領収 裁判所書記官
  平成20年(ネ)第2746号損害賠償等,損害賠償等反訴請求控訴事件(原審・京地方裁判所平成15年 の)第9982号,同第21453号)口頭弁論終結の日 平成20年11月20日
          
判          決

   
       控   訴   人       矢   野   穂   積
                     (以下「控訴人矢野」という。)
   
       控   訴   人      朝   木   直   子
                     (以下「控訴人朝木」という。)

       両名訴訟代理人弁護士     
                    

   
       被  控  訴  人      千   葉   英   司

       同訴訟代理人弁護士   佐   竹   俊   之

          主          文

 1 本件控訴をいずれも棄却する。
 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

          事 実 及 び 理 由

第1 控訴の趣旨
 1 原判決中,控訴人ら敗訴部分を取り消す。
 2(本訴)
   同取消部分に係る被控訴人の請求をいずれも棄却する。
 3(反訴)
 (1)被控訴人は,控訴人矢野に対し,400万円及びこれに対す る平成15年10月8日から支払済みまで年5分の割合による金 員を支払え。
                    1

 (2)被控訴人は,控訴人矢野に対し,原判決別紙2記載の謝罪広告を,インターネット上のホームページ「創価問題新聞」(http://www.geocities.jp/sokamondai/)の表紙に,謝罪広告の4文字は14ポイント,その他の部分は 12ポイントをもって掲載せよ。

第2 事案の概要
 1 本件本訴は,被控訴人が控訴人らに対し,控訴人らが管理するインターネット上のホームページ(創価問題新聞)上に掲載した控訴人らが発行した新聞(東村山市民新聞)のバックナンバーに係る3件の記事が被控訴人の名誉を毀損するとして,損害賠償(慰謝料400万円の連帯支払)及び同ホームページヘの謝罪広告の掲載を求めた事案であり,反訴は,控訴人矢野が被控訴人に対し,被控訴人が作成して別訴において提出された陳述書が控訴人矢野の名誉を毀損するとして,損害賠償(慰謝料400万円)及び同ホームページヘの謝罪広告の掲載を求めた事案である。

   原審は,本訴について,上記3件の記事についていずれも被控訴人の社会的評価を低下させるもので,公共性及び公益性は認められるが,真実性及び真実
  と信じるについての相当性が認められないとした上,2件の記事については金銭賠償によって填補されなければならないほど被控訴人の社会的評価が低下し たとはいえないとして損害賠償を認めず,1件の記事についてのみ慰謝料10万円の限度で認容し,謝罪広告の必要性は認められないとし,反訴について, 上記陳述書が控訴人矢野の社会的評価を低下させるとは認められないとして,被控訴人の本訴損害賠償請求を−部認容し,控訴人矢野の反訴請求を棄却した。
  そこで,控訴人らは,これを不服として控訴した。

   したがって,当審における審判の対象は,本訴については,原審が損害賠償を一部認容した1件の記事についての名誉殴損の成否及び名誉穀損が成立する場合の損害額(10万円の限度での慰謝料額)であり,反訴については,陳述書による名誉穀損の成否並びに名誉毀損が成立する場合の損害額及び謝罪広告



                   2

 の要否である。

2 前提事実
  原判決の「事実及び理由」の「第2 事案の概要」2記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決6頁14行目の「東京地方裁判所における訴訟」を「控訴人ら及び明代の夫朝木大統が月刊タイムス掲載記事により名誉を穀損されたとして被控訴人らの不法行為を主張して東京都らを被告として東京地方裁判所に提起した損害賠償請求訴訟」に改め,同16行目の「提出した」の前に「書証として」を,同18行目の「本件別訴において」の次に「,東京都から書証として」をそれぞれ加える。

3 争点及び当事者の主張
  吹のとおり当審における主張を付加するほか,原判決の「事実及び理由Jの記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,本訴請求に係る主張のうち,本件記事2及び3並びに謝罪広告の必要性に係る部分を除き,原判決10頁下から4行目の次に行を改めて,「被控訴人は,本件反訳書に関する「虚偽・歪曲6改ざん」のうちの主要な部分である変造箇所について,平成16年2月24日付け「答弁書記述の補充」と題する書面で,控訴人矢野が客観的事実に反するとして指摘したとおり,これを認め,本件陳述書記載の名誉毀損記述を訂正すると主張し,もって不法行為が成立することを認めた。」を加える。

(1)当審における控訴人らの主張
  ア(経緯及び名誉毀損の不成立)
    本件転落死のあった平成7年9月2日に明代の司法解剖がされ,約3年を経過した平成10年7月21日付けでその鑑定書(以下「司法解剖鑑定 書」という。)が作成され,平成11年4月28日ころ別件訴訟において、 これが書証として提出されて,控訴人らはこれを入手し,明代の左右上腕  内側部に皮下出血を伴う皮膚変色部(以下「本件損傷」という。)が存在



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 するという新事実が判明し,この新事実に基づき法医学の専門家である鈴木庸夫医師(以下「鈴木医師」という。)に嘱託して見解を求めたところ,本件損傷は加害者ともみ合うなどして争った際に付いたものであって,その転落死は他殺であることが推認されるとの見解を得た。被控訴人は,警察官としての経験から,加害者ともみ合うなどして争った際には,被害者の上腕内側部に皮下出血を伴う皮膚変色部ができることを認識していたにもかかわらず,この新事実を知った後も,他人と争ってできた皮膚変色部は存在しないなどと主張,供述して,新事実を謙虚に受け止めようとせず,
 上記認識に反して虚偽の供述までして司法解剖鑑定書に記載された新事実を否定しようとする態度をとったものであるところ,控訴人らは,このような態度に象徴される東村山署の捜査のあり方を強く批判し事件の真相究明を求めて本件記事1等を記述したものである。

  このように,本件記事1は,本件転落死事件は明代の自殺であるとして捜査は終結されたが,その後新たに判明した事実によれば何者かによる他殺であること,東村山署が自殺の動機だと主張してきた明代に対する万引き容疑が実は確証のないえん罪であったこと等明代関係事件に関する東村山署の捜査のあり方を強く批判し,今後は更なる真相究明とともに犯人の検挙が望まれるとの事件解決をめざす控訴人らの強い決意を記述した論評であって,職務を離れた被控訴人個人の私的言動について記述したものでないから,その名誉を侵害するものではない。

イ(真実性又は相当性)
  論評たる本件記事1の前提事実の重要な部分は,「東村山署が主張した自殺説を根底から覆す新事実が発表され,何者かによる他殺であることが判明し,東村山署の捜査のあり方を批判した」というものであるところ,「東村山署が主張した自殺説を根底から覆す新事実が発表され,何者かによる他殺であること」は,上記のとおりであり,真実性又は真実であると
 


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 信じたことには相当の理由(以下「相当性」という。)がある。
  また,東村山署は,本件窃盗被疑事件の真犯人の服装(襟が立っているチャイナカラーのブラウス等)に明代の服装(襟が寝ているフラットカラーのブラウス等)が一致しているか否かを確認できたのに,これを確認しないで,単に犯人は明代だとする戸塚の供述を鵜呑みにして,真実に反し明代を犯人として書類送検したのであり,その後,明代が万引き犯でないことを裏付ける目撃者妹尾トシの供述を得たのに,この事実を隠匿し,その後も明代を万引き犯人扱いし,本件転落死を自殺としていたのであるから,本件記事1の「被控訴人の捜査が全くデタラメだったことが判明」との記述には,真実性又は相当性がある。これらの点については,控訴人ら及び朝木大統が被控訴人らの不法行為を主張して東京都らを被告として提起した別件訴訟(いわゆる潮事件)において,明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りない,明代を本件被疑事件の犯人と断定するには足りないなどと判示認定され,事実上東村山署の捜査結果を否定しているから,これによっても,被控訴人が指揮し明代を万引き犯とし,自殺扱いした東村山署の捜査のあり方が適正とはいえずデタラメと評価されることには,真実性又は相当性がある。
  さらに,「誰がみても,グルになっている風景」との記述についても,被控訴人が創価学会と−体の人物,雑誌記者である字留嶋瑞郎と共に本件洋品店に未だに出入りしていること等から,真実性又は相当性がある。

ウ(信義則違反)
  被控訴人が控訴人矢野を被告としてラジオ放送における控訴人矢野の発言が名誉穀損に当たるとして提起した別件訴訟(いわゆるFM放送事件)において,司法解剖鑑定書記載の新事実及び鈴木医師の意見書に基づき控訴人矢野が明代の本件損傷が他殺を疑わせる証拠となると信じたことについて相当な理由があると判示認定されて,被控訴人は敗訴し,これが確定



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    しているから,被控訴人の本訴請求は,確定した前訴の蒸し返しにすぎず,信義則に違反して許されない。また,これによっても,被控訴人が指揮し明代を万引き犯とし,自殺扱いした東村山署の捜査のあり方が適正とはいえずデタラメと評価されることには,真実性又は相当性がある。

 (2)被控訴人の反論
   ア 控訴人らは,平成7年9月2日の司法解剖後に執刀医から解剖所見を直接開いていて,同月27日付け東村山市民新聞に「遺体には無数の外傷や皮下出血がある」と記載しているのであり,本件損傷が存在するとの事実は新事実ではない。
     そして,司法解剖鑑定書には,「争った跡の皮下出血痕がある」との記載は一切なく,控訴人らから依頼された鈴木医師の「皮下出血痕は他人と争った跡」とする意見書は,現場の状況や他の客観的状況に応じた検討を 全く行っていないものであって,信憑性は乏しいといわざるを得ない。
   イ 本件転落死が殺人事件であるのか否かなどを争点とした多くの別件訴訟においても,殺人事件であるとするなどの控訴人らの主張はことごとく排斥されているのであり,真実性はもちろん,相当性も認められない。

第3 当裁判所の判断
 1 当裁判所も,当審における審判の対象である被控訴人の本件記事1に係る本 訴請求は原判決が認容した10万円の限度で理由があり,控訴人矢野の反訴請 求は理由がないものと判断する。
    その理由は,以下のとおりである。

 2 本件記事1に係る本訴請求について
 (1)本件記事1は被控訴人の社会的評価を低下させるか(争点ア)について
    一定の記事の一般 の読者の普通の注意と読み方を基準として,当該記事が特定人の社会的評価 を低下させるものと認められるかどうかにより判断すべきであるところ,こ
 

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 れを本件記事1について検討するに,本件記事1は,被控訴人について,「朝木議員殺害を,自殺扱いした千葉元副署長」と記載し,被控訴人(千葉元副署長)が「『冤罪』の朝木明代議員を『万引き犯』ときめつけた戸塚洋品店主の」「尋問を傍聴」し,「尋問終了後,戸塚店主夫婦と…人目もかまわず,法廷の外で公然と打合せ」していたもので,「誰がみても,グルになっている風景」,「千葉元副署長の捜査が全くデタラメだったことが判明しました」と記述している。
  このような記述に照らすと,本件記事1は,東村山署副署長として捜査に当たった被控訴人が,殺人事件(他殺)である本件転落死を自殺扱いしたとの事実,及び明代が万引きをしていない(えん罪)にもかかわらず,明代を被疑者として本件窃盗被疑事件を捜査した事実を摘示し,これらの事実を前提として(捜査の具体的な内容については事実の摘示を全くしていない。),被控訴人のした捜査が全くデタラメであったという控訴人らの意見ないし論評を表明しているものと認めるのが相当である。
  したがって,本件記事1は,これを読む者をして,被控訴人が,えん罪事件を捜査し,殺人事件を自殺扱いしたもので,捜査を指揮する者としてあってはならない不適正な捜査をしたとの印象を与えるものであり,被控訴人の社会的評価を低下させる内容のものであることが明らかである。
  これに対し,控訴人らは,本件記事1は東村山署の捜査のあり方に対する批判言論たる論評であり,被控訴人個人の社会的評価を低下させるものではないと主張するが,本件記事1は』上記のとおり捜査機関として被控訴人のみを名指しし,被控訴人自身の行為に着目する形で記事が構成されているもので,被控訴人個人を批判するものと認められるから,控訴人らの上記主張は理由がない。
(2)名誉毀損阻却事由(違法性阻却事由(真実性)又は責任阻却事由(相当性))が認められるか(争点イ)について



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 民事上の不法行為たる名誉毀損については,その行為が公共の利害に関す事実に係り(公共性),専ら公益を図る目的に出た場合において(公益性),示された事実が主要な点において真実であることが証明されたときは(真性),同行為には違法性がなく,また,摘示された事実が真実であること証明されなくても,その行為者においてその事実を真実と信じるについて当の理由があるときは(相当性),同行為には故意又は過失がなく,これの場合には,不法行為は成立しないと解されるので,以下に,これらの点ついて判断する。

ア 公共性及び公益性について
  本件記事1は,明代関係事件に関連し,当時東村山署副署長として明代関係事件に関する捜査指揮及び広報の責任者であった被控訴人の行為をその内容とするものであるから,事柄の性質上,公共の利害に関する事実に係るものといえ,また,専ら公益を図る目的に出たものに当たらないとまではいえない。

イ 真実性及び相当性について
(ア)証拠(甲11,20,25,27,乙1,3,4,19,26,31
  ないし34,50の1ないし3,51,52,53の1,54,55,
  62,65,69)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。
  a 被控訴人は,東村山署副署長として,明代関係事件の捜査を指揮し たところ,東村山署は,ブラウス(Tシャツ)の万引き被害にあった
   戸塚から,当時現職の東村山市議会議員で選挙ポスターにより人相をよく知っていた明代と認識する女性がブラウスを万引きして脇の下に挾んで立ち去るのを防犯ミラーで目撃し,同女を追跡して呼び止めて万引きの事実を追及したところ,同女は犯行を否認したが,脇の下から同ブラウスを落として,近くにあるイトーヨーカドーの店内に逃げ 込んだため,追跡を断念したなどの事情聴取をしたほか,当日客とし
 


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 て本件洋品店に居合わせて本件窃盗事件を目撃した者からも事情聴取をして,戸塚の供述の裏付けを取り,明代を本件窃盗被疑事件の被疑者として任意で3回取り調べたところ,犯行を否認し,控訴人矢野と確認した結果として,本件窃盗被疑事件発生時には控訴人矢野と共に食事をしていたとのアリバイを申し立てたが,明代がアリバイの裏付資料として提出したレジジャーナル(レシートの写し)はアリバイを裏付けるものではなかったため,被控訴人は,明代を本件窃盗被疑事件の被疑者と認め,署長の決裁を得て,平成7年7月12日,同事件を東京地方検察庁八王子支部検察官に送致(書類送検)した。同検察官は,平成8年3月,同事件について,被疑者死亡により不起訴処分
 とした。

b 明代は,平成7年9月1日午後10時ころ,6階建マンションの5
 階と6階の間の非常階段から地上に転落し,本件転落死した。東村山署の捜査により,同時刻ころ,同マンション1階のハンバーガー店の店員が転落した明代を見かけたが,酔っぱらいではないかと思い気にとめなかったこと,午後10時30分ころ,同店店長が血を流して倒れている明代を発見し,明代に「大丈夫ですか」と声をかけたところ,明代は「大丈夫」と答え,店長が「落ちたのですか」と尋ねると,明代は顔を左右に振り「違う」と否定し,同店店員が「救急車を呼びましょうか」と申し出たのに対して,明代はIいいです」と答えて断ったが,同店店員は午後10時42分ころ,警察に通報したこと,上記転落発生前後に,現場付近で争うような声や物音を聞いた者がなく,同マンションの5階から6階に至る非常階段の壁に明代のものと思われる手指痕跡が発見され,他に争った痕跡がなかったこと,転落現場の鉄製フェンスが同手指痕跡の真下で折れ曲がっており,これは明代の転落により折れ曲がったものと認められたこと,明代の悲鳴及び墜



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 落した音を聞いた同マンションの住民が,その際に人が争うなどの気配はなかったと供述していること等が判明し,また,同月2日に司法解剖が行われ,その結果,明代の死因は多発性肋骨骨折,肺損傷,左右腓骨骨折,左脛骨骨折等による出血性ショック死とされ,執刀医の所見は右側全身に認められる損傷は人力では不可能であり墜落による損傷とみて不自然な点はないとされた。
  東村山署長は,以上の捜査結果に基づき,本件転落死につき他人が介在する状況にはなく,犯罪性はないと判断し,平成7年12月22日,その旨の意見を付して本件転落死事件を被疑者不詳の殺人事件として,東京地方検察庁八王子支部検察官に送致(書類送検)し,同検察官は,平成9年4月14日 自殺の可能性が高いと判断し,同事件を不起訴処分(嫌疑不+分)とした。捜査を指揮した被控訴人は,上記のとおり,犯罪`性はなく,明代が本件窃盗被疑事件を苦にして飛び降り自殺した可能性が高いと推測した。

c 上記明代の司法解剖について平成10年7月21日付けで作成された司法解剖鑑定書(乙19)には,鑑定結果として,「死因 本屍の死因は多発外傷に基づく出血性ショックを主体とする外傷性ショックと思われる。」,「創傷の部位,程度 本屍の胸腹部,左右上肢,左右脱,皮下及び筋肉内出血を認め,内部において,胸腔内出血,多発性肋骨骨折,肺損傷,外傷性クモ膜下出血,類推損傷,左脛骨及び腓骨骨折,右腓骨骨折を認める。」,「凶器の種類,その用法 本屍に認められる前記創傷は何れも鈍体による打撲,圧迫,擦過等により形成されたと思われる。本屍の胸部及び左右下肢には外力が強力に作用したものと思われる。これら部に作用した当該凶器の性状を詳らかにするのは困難である。」等と記載され,上記上肢の損傷として,『左上腕部内側下1/3の部に,上下に7cm,幅3cmの淡赤紫




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色及び淡赤褐色皮膚変色部。加割すると皮下出血を認める。」,「右上腕部内側,腋窩の高さの下方11cmの部を中心に,上下に5cm,幅9.5cmの皮膚変色部を認める。加割すると皮下出血を認める。」と記載されている。

d 東村山署は,本件窃盗被疑事件の書類送検後に,万引き現場を通りかかった妹尾トシが当時の状況を目燈しているとの情報を得て,平成7年7月17日,妹尾トシから事情聴取し,その結果を捜査資料として追送致した。妹尾トシの月繋内容は,ヨーカドーを出ると,前方の 道路端で2人の女性が言い合っていて,そのうちの黒っぽいスーツ姿 の1人がすぐにヨーカドーの方に歩いていってしまった,その後,本件洋品店前に行くと,女性が1人いて,あれは朝木市議(明代)だと 言い,店の人(戸塚)に警察に行けと言っていたというものであった (乙34)。

e 控訴人ら及び朝木大統が被控訴人らの不法行為を主張して東京都らを被告として提起した別件損害賠償等請求訴訟(東京地方裁判所平成  8年(ワ)第15300号,平成9年(ワ)第16055号)において,平成12年6月26日,おおむね上記a,b等の事実が認定され,
  @被控訴人が明代関係事件についてした広報は,実施された捜査の内容,広報時点で把握できていた状況証拠等の客観的状況からみても副 署長の当然の職務行為として適法かつ妥当なものである,A戸塚の本件窃盗被疑事件の認識は,戸塚が万引き犯が明代ではないと知りながら,被害届出をしたり,万引き犯は明代に間違いはない旨の発言をしたことをうかがわせる証拠はないなどとして,控訴人ら及び朝木大統の請求をいずれも棄却する旨の判決(甲20)がされた.
 
F 東村山署は,本件窃盗被疑事件の書類送検後に,明代が本件窃盗被疑事件が発生したとされる時刻前に銀行のキャッシュサービスコーナ
 
 
 
 
 


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に寄ったことについて裏付け捜査をし,銀行の監視カメラにより明
代を斜め後方から撮影した白黒の映像(写真)を入手し,捜査資料と
して追送致した。これに対し,控訴人らは,その写真の閲覧ができなかったため,控訴人朝木において明代が当日着用していたとする服装を着用して再現写真(乙31)なるものを撮影,作成した。

  そして,上記eの訴訟において平成12年2月7日に実施された戸 塚の被告本人尋問において,戸塚は,明代の服装について,グリーン グレーのパンツスーツに黒の襟の立ったチャイナカラーのブラウスに 黒っぽいバックを持っていた,監視カメラの写真と上記再現写真とは服装の雰囲気が違うような気がするなどと供述した(乙33)。また,同日に実施された被控訴人の証人尋問において,被控訴人は,上記再現写真は監視カメラの写真と服が同じか断定できないが,雰囲気としてよく似ている,監視カメラの写真の服装等と戸塚の供述はほぼ一致していた,司法解剖の際に警察医と検案した結果,上腕部に内出血が解剖所見で出たことは認識しているが,これらの損傷が争って(もみ合って)できたものではないと認定したなどと供述した(乙51)。
  なお,控訴人らは,平成10年3月3日にも,明代の服装の再現写真(乙32)なるものを撮影,作成しているが,2枚の再現写真の服装が同一であるとは判定できない。

g 控訴人ら及び朝木大統が被控訴人らの不法行為を主張して東京都らを被告として提起した別件損害賠償等請求訴訟(いわゆる潮事件。東京地方裁判所平成9年(ワ)第12860号)において,平成14年3月28日,おおむね上記a,b等の事実が認定され(なお,被控訴人が取材記者に対し「明代がアリバイ工作を図った」と述べた事実を 認定し,これを否定する被控訴人の供述部分は信用することができないとした。),@上記aの事実等に照らすと,明代が本件窃盗被疑事
 




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件の犯人の可能性は相当程度に達するものと思われるが,明代が市議会議員で各別生活に困窮していた事実は認められず低価格の日常品を窃取する動機に乏しいこと等を考慮すると,なお明代を本件窃盗被疑事件の犯人と断定するには足りないが,取材記者において明代が本件窃盗被疑事件の犯人であると信じたことには相当の理由がある,A上記bの事実等に照らすと,明代の死因が自殺であるとみる余地は十分にあるが,司法解剖の結果明代の左右の上腕内側部に皮膚変色(本件損傷)が認められたこと等の事実を総合すると,なお明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りないが,取材記者において明代が自殺したと信じたことには相当の理由がある,B戸塚が上記aのとおり明代による万引きを現認した旨取材記者に話したことに違法はない,@被控訴人がその捜査結果を踏まえて発言したことは,その職務を遂行するについての注意義務に違反したと認めることはできず違法でないなどとして,控訴人ら及び朝木大統の請求をいずれも棄却する旨の判決(乙3)がされた。

h 控訴人らは,明代関係事件が起きた当初から,明代が万引きをしたとの本イ|:窃盤被疑事件はえん罪であること,明代の本件転落タは何者かに殺害されたものであることを一貸して主張しており(平成7年9月4日付け東村山市民新聞(甲11)には,「朝木明代議員が殺されました。」と,同月27日付け同新聞(甲25)には,「遺族が執刀
 した医師に直接会って確認した」,「遺体には無数の外傷や皮下出血 がある」等とそれぞれ記載している。),これを前提として,多数の損害賠償請求訴訟を提起し,また,明代関係事件を取り上げた「東村 山の闇」と題する書籍(乙26)を平成15年11月10日に発行し, 同書籍において,本件記事1等と|司様に,明代が万引きをしたとの本件窃盗被疑事件がえん罪事件であること、明代の本件転落死が殺害事



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 件であること,司法解剖鑑定書の上腕部内側の皮膚変色部(本件損傷)の記載が他殺の決定打であること,明代が万引きをし,万引きを苦にして自殺したことは上記gの判決で否定されたこと等を記述した。
 i 本件別訴(いわゆる月刊タイムス事件)において,平成15年11
 月28日,おおむね上記a,b等の事実が認定され,雑誌記事の一部(何度か明代の万引き癖が噂されたことがあったということを内容とする記事及び明代関係事件とは直接関係のない事柄に関する記事)について被告出版社,編集・発行人及び執筆者に名誉毅損による不法行為責任の成立が認められたが,明代関係事件については,@同被告ら において,明代が本件窃盗被疑事件の犯人であると信じたこと,明代 が虚偽のアリバイ主張をし,控訴人矢野が虚偽のアリバイ工作に関与したと信じたこと,明代が控訴人矢野の関与のもとに主張していたアリバイも虚偽であることが判明し,本件窃盗被疑事件を苦に自殺したことが真実であると信じたこと,控訴人矢野が明代の自殺を偽って他殺であるとけん伝したと信じたことにいずれも相当の理由がある,A 戸塚が本件窃盗被疑事件の犯人は明代に間違いないなどと話したことは,自ら認識している事実をそのまま話したもので,戸塚の勝手な思い込みや不注意といった過失があったとは認められない,B被控訴人の明代関係事件についての庄報は,捜査結果を踏まえた結果であり,その職務を執行するについての注意義務に違反した違法はないなどとして,その余の控訴人ら及び朝木大統の請求をいずれも棄却する旨の判 決(乙50の1)がされ,被告出版社の控訴棄却 に』50の2),上告棄却及び不受理決定(乙50の3)がされて確定した。
 j 被控訴人が控訴人矢野を被告として控訴人矢野がラジオ放送した内 容が名誉穀損に当たるとして提起した別件損害賠償請求訴訟(いわゆるFM放送事件。東京高等裁判所平成18年(ネ)第6133号。原





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審・東京地方裁判所八王子支部平成17年(ワ)第2181号)にお
いて,平成19年6月20日,放送で摘示された事実の重要な部分は,
@アザ(本件損傷)があったこと,Aそれが他殺を疑わせる証拠となるようなものであること,B控訴人はそのようなアザはないと言い続けたことであるところ,@は司法解剖鑑定書により認められ,Bは争いがなく,Aについても「上腕内側は,一般に,転落による外力などが作用しにくい箇所であること」,「他人ともみ合い,上腕を強くつかまれたような場合には,上記箇所に皮膚変色部(皮下出血)が生ずる可能性があること」に照らすと,少なくとも控訴人矢野がアザが他殺を疑わせる証拠となるようなものであると信じたことについては相当な理由があるとして,被控訴人の請求を棄却した原判決を相当として,被控訴人の控訴を棄却する旨の判決(乙1)がされ,これが確定した。
 控訴人らは,司法解剖鑑定書記載の本件損傷について,鈴木医師に鑑定意見を依頼し,鈴木医師は,平成18年8月20日付けで,「倒れていて,救急隊などにより担架に乗せられる際,両腕を揉まれた可能性の他,他人と操み合って上腕を強く揉まれた可能性が推認できる。」,「転落現場で救急隊により担架に乗せられる際,両腕を揉まれた可能性の他,他人と操み合って上腕を強く揉まれた可能性も推認できる。仮に,救急隊が現着して,担架に乗せる際,両腕を揉んだ事実がないとか,或いは,救急隊現着時,既に心肺停止状態であったと、すると,後者の可能性が高くなる。」との意見書(乙52)を作成し,次いで,被控訴人が控訴人らを被告として上記hの書籍が被控訴人の名誉を毀損するとして提起した別件損害賠償請求訴訟(東京地方裁判所平成16年(ワ)第21628号)において,平成20年4月15日,本件と同様の争点(真実性)の判断において,「上記の皮下出血






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がいつ生じたかについては,これを正確に認定するに足りる証拠はなく,他人と操み合うという状況以外に自分以外の者から腕を強くつかまれるという事態が一切生じたことがなかったと認めるに足りる証拠もなく,また,上記意見書は,皮下出血の位置が自分の手の届く範囲内にあることを前提として,それが生じた原因となる事態の可能性については言及していない。」と判断された(乙62)ことから,控訴人らは,この点を反駁するために,再度,鈴木医師に鑑定嘱託し(乙55),鈴木医師は,平成20年5月26日付けで,「左右上腕の皮下出血部は,その位置は,いずれも,自分の手の届く範囲であるが,正常の人なら,自分の上腕内側を自分で皮下出血が生ずるほど強く掴まなければならない様な事態が生ずることはあり得ない。」,「皮下出
  血を伴う上腕部内側の皮膚変色部が生じた原因は,自分で強く掴むと
  か,救急隊員が搬送する際に強く掴むとか,落下の際,手すりにより生じたことも,落下の途中で排水縦パイプに衝突して生じたこととか,落下して地面のフェンスとか,排気ロとの衝突で生じたこともあり得ず,従って,他人と操み合った際に生じたことが最も考え易い。」等とした鑑定書(乙54)を作成した。

(イ)真実性及び相当性について

  a 本件における真実性及び相当性の対象となる事実は,被控訴人が殺人事件(他殺)である本件転落死を自殺扱いしたこと,及び明代が万引きをしていない(えん罪)にもかかわらず,明代を被疑者として本件窃盗被疑事件を捜査したことであるところ,被控訴人が本件転落死を自殺扱いしたこと,及び明代を被疑者として本件窃盗被疑事件を捜査したことは,当事者間に争いがないから,真実性及び相当性の証明の対象となる事実は,本件転落死が殺人事件であること,及び明代が万引きをしていないこと(本件窃盗被疑事件がえん罪であること)で



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 ある。そこで,以下,この点についての真実性又は相当性の証明があるかについて検討する。

b 本件転落死が殺人事件(他殺)であることについて

(a)真実性について
   控訴人らは,司法解剖鑑定書記載の本件損傷の存在により本件転落死が他殺であることが推認されると主張する。
   しかしながら,司法解剖鑑定書(乙19)には,本件損傷が他人と争ってできた可能性があることをうかがわせる記載はなく,本件損傷の存在からは,鈴木医師の意見書に記載されているとおり,その生成原因として,明代が他人ともみ合って上腕を強くつかまれた可能性があることが認められるだけであり,明代が他人に突き落とされて本件転落死したことまで推認できるものでないことは明らかである。また,鈴木医師が控訴人らの鑑定嘱託を受けて作成した鑑定書には,本件損傷が生じた原因について,「自分で強く掴むとか, 救急隊員が搬送する際に強く掴むとか,落下の際,手すりにより生 じたことも,落下の途中で排水縦パイプに衝突して生じたこととか, 落下して地面のフェンスとか,排気口との衝突で生じたこともあり  得ず,従って,他人と操み合った際に生じたことが最も考え易い。」 とされているところ,「自分で強く掴む」ことがあり得ないことは, 「正常の人なら」そのような事態が生じることはあり得ないとする ものであるが,明代が正常な状態でなければ(明代が自殺したとす れば,正常な状態でなかったということができる。),そのような 事態が生じることがあることを否定していないと考えられ,また, 他の可能性を否定する根拠も十分なものでないといわざるを得ず  (鈴木医師が控訴人らから提供されて検討したとする乙56のlな いし8,57ないし61によって,他の可能性を否定することはで



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きない。),鈴木医師の鑑定書の上記記載は採用することができな
い。
  そして,司法解剖鑑定書の記載に加えて,前記、b認定の明代の転落前後の状況(明代が転落前に人と争った気配はないこと,明代が転落後に意識があるのに,救助を求めていないこと,明代が落ちたことを否定したこと,明代が転落箇所から真下に落下していること等)を併せ考慮すると,明代が他人に突き落とされたもの(他殺)ではないことがうかがわれる。
  以上によれば,本件転落死が殺人事件であると認めることは到底できず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(b)相当性について
  控訴人らは,本件損傷の存在,さらには,鈴木医師の意見書及び 鑑定書の記載により,本件転落死が他殺であると信じるについて相当の理由があったと主張するものと解される。
  ところで,本件記事1に係る名誉毀損行為は,その平成12年4月1日付け東村山新聞を平成15年2月19日にインターネットホ
 ームページ「創価問題新聞1(旧新聞)に掲載したことであるから,相当性の判断は,同日を基準としてされるべきものであるところ,鈴木医師の意見書及び鑑定書は,平成18年8月20p及び平成20年5月26日に作成されたものであるから,同各書面は,控訴人らの相当性判断の証拠資料とすることはできない。

  そして,控訴人らは,鈴木医師の意見を求める前の上記掲載当時,本件損傷のような皮下出血が人に上腕部を強くつかまれることにより生じる可能性があることを知っていたことから,本件損傷の存在から,これが加害者ともみ合うなどして争った際についたものであり此本件転落死は他殺であると信じたものと認められるが,本件損


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傷の存在からは,前記(a)説示のとおり,その生成原因として,明代が他人ともみ合って上腕を強くつかまれた可能性があることが認められるだけであるところ,控訴人らは,明代の転落前後の状況として,その提起した前記(ア)e,g等の別件訴訟の結果により,同bの事実を知っていたのであるから,これらの事実を無視又は等閑視して,本件損傷の存在から,本件転落死が他殺であると信じるについて相当の理由があったということはできない。

明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件がえん罪である)ことについて

(a)真実性について
  控訴人らは,本件窃盗被疑事件の真犯人の服装と明代の服装が異なること,及び明代が万引き犯でないことを裏付ける目撃者妹尾トシがいることから,明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件がえん罪である)と主張する。
  しかしながら,控訴人らが明代の服装として作成した再現写真と明代の監視カメラの写真について,戸塚は,服装の雰囲気が違うような気がすると供述し,被控訴人は,服が同じか断定できないと供述しており(前記、f),控訴人らは,明代の服装の再現写真として同一とは判定できないものを作成しているところ,控訴人らは,アリバイの裏付資料としてアリバイを裏付けることのできないレジ ジャーナルを提出する(同a)などしていることに照らすと,明代 の服装の再現写真なるものは必ずしも採用することができず,他に 本件窃盗被疑事件の真犯人の服装と明代の服装が異なることを認めるに足りる証拠はない。また,妹尾トシの目撃内容(前記、d)は, 明代が本件窃盗被疑事件の犯人であることをうかがわせるものであり,明代が万引きをしていないことを裏付けるものということはで



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きない。
  そして,戸塚は,前記(ア)a認定のとおり明代が万引きをしたこと を明確に供述しており,控訴人らが提起した別件訴訟においても, いずれも戸塚の供述に信用性を疑わせるものはないとされている (前記(ア)e,g,i)。
  以上によれば,明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件が えん罪である)と認めることはできず,他にこれを認めるに足りる
 証拠はない。

 (b)相当性について
  控訴人らは,上記真実性についての主張と同様の理由により,明 代が万引きをしていないと信じるについて相当の理由があると主張するものと解されるが,本件窃盗被疑事件の真犯人の服装と明代の 服装が異なると信じるについて相当の理由があることを認めるに足
 りる証拠はなく,また,妹尾トシの目撃内容は,上記説示のとおり
 明代が本件窃盗被疑事件の犯人であることをうかがわせるものであ
 るから,明代が万引きをしていないと信じる相当の理由にはならない。
 そして,他にも,控訴人らにおいて,明代が万引きをしていない
と信じるについて相当の理由があると認めるに足りる証拠はない。
 別件訴訟における判断について
控訴人らは,別件訴訟のいわゆる潮事件判決及びいわゆるFM放送事件判決によっても,真実性又は相当性が認められると主張するものと解される。
しかしながら,いわゆる潮事件判決(前記(ア)、g)は,明代が本件窃盗被疑事件の犯人の可能性は相当程度に達するものと思われるが,なお明代を本件窃盗被疑事件の犯人と断定するには足りない,明代の死


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因が自殺であるとみる余地は十分にあるが,なお明代が自殺したとの事実が真実であると認めるには足りないとしたものであり,本件転落死が殺人事件である(明代の化因が他殺である)こと,及び明代が万引きをしていない(本件窃盗被疑事件の犯人でない)ことが真実であるとしたものではなく(明代が万引きをし,万引きを苦にして自殺したことは同判決で否定された旨の控訴人らが出版した書籍(前記(ア)h)の記述は,当たらない。),その上記説示に照らすと,控訴人ら主張の真実性を否定する趣旨であることが明らかである。次に,いわゆるFM放送事件判決(前記(ア)j)は,アザ(本件損傷)が他殺を疑わせる証拠となるようなものであることについての相当性について判断しただけであり,その真実性については判断しておらず,まして,本件転落死が殺人事件である(明代の死因が他殺である)としたものでないことが明らかである。
 また,相当性が肯定されるということは,事実を摘示して名誉毀損行為をした者が当該摘示された事実を真実であると信じるについて相当の理由があるということであるところ,いわゆる潮事件判決は,控訴人らの名誉を毀損したとされる相手方取材記者において明代が本件窃盗被疑事件の犯人であると信じたこと,及び明代が自殺したと信じたことには相当の理由があるとしたもので,本件における相当性を判断したものではない。次に,いわゆるFM放送事件判決は,上記のとおり,アザ(本件損傷)が他殺を疑わせる証拠となるようなものであることについての相当性について判断したものであり,本件転落死が殺人事件である(明代の死因が他殺である)ことについての相当性について判断したものではないから,同判決を基に本件において相当性があるということはできない。したがって,控訴人らの別件訴訟判決における判断を基にして真実


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 性又は相当性がある旨の主張はいずれも理由がない。

ウ  以上のとおりで,本件記事1において摘示された事実の主要な点について真実性及び相当性が認められないから,本件記事1を掲載した控訴人らに名誉毀損の不法行為が成立する。

(3)信義則違反(当審における控訴人らの主張ウ)について
  本訴といわゆるFM放送事件とは,いずれも明代関係事件に係るもので当事者(被控訴人と控訴人矢野)を共通にするものの,両事件で対象とされている控訴人ら又は控訴人矢野の名誉毀損の不法行為は異なる機会に異なる媒体をもってされたものであり,しかもその不法行為の内容も同一ではないから,本訴をもって,確定した前訴(いわゆるF M放送事件)の蒸し返しということはできず,信義則に違反して許されないものとは到底いえない。

(4) 損害額(争点ウ)について
  以上のとおりで,本件記事1は,被搾訴人の社会的評価左低下させるもので,控訴人らに名誉穀損の不法行為が成立すると認められるところ,本件記事1の内容が東村山署副署長としての被控訴人の職務執行,すなわち東村山署という組織の活動に対する批評としての側面を有していること,本件記事1の記載内容が比較的抽象的なもので,本件記事1が掲載された媒体に照らして,被控訴人の社会的評価を低下させる程度が大きいとはいえず,社会に与える影響も大きいとはいえないこと,控訴人らにおいて既に旧新聞を閉鎖することにより本件記事1等を削除していること等本件において認められる諸般の事情を総合的に考慮すれば,控訴人らが本件記事1を掲載したことにより被控訴人が被った精神的苦痛に対する慰謝料は,10万円とするのが相当である。

 反訴請求について

(1)本件陳述書は,控訴人矢野が書証として提出した本件反訳書の記載内容に多くの虚偽・歪曲や改ざんの事実があるとし,その具体的な内容として,会
 

 
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 話の内容を変造したものとして,被控訴人において控訴人矢野がした反訳が間違っていると考える箇所を指摘しているものであるところ,当該間違いの指摘自体は何ら本件反訳書の作成者の社会的評価を低下させ,その名誉を毀損する趣旨を含むものと認めることはできないし,また,被控訴人の不法行為の成否が問われている事件で,相手方当事者である控訴人矢野が作成,提出した書証に対する反論の書面として作成し,書証として提出された陳述書という書面の性質に照らして,そこに「多くの虚偽・歪曲や改ざん」等の多少誇張した表現が含まれていたとしても,これをもって本件反訳書の作成者である控訴人矢野の社会的評価を低下させ,その名誉を穀損するものという ことはできない。

(2)また,被控訴人は,平成16年2月24日付け「答弁書記述の補充」と題する書面をもって,本件反訳書の内容が間違っていることを指摘した本件陳述書の記載内容について,「矢野」と「朝木」とを指し違えた誤植があるとして訂正したところ,その訂正の趣旨に照らして)被控訴人において控訴人の名誉を毀損したことを認めたものといえないことは明らかであるから,この点についての控訴人矢野の主張は理由がない。

(3) したがって,その余の点について判断するまでもなく,控訴人矢野の反訴 請求は理由がない。
 よって,本件控訴の対象とされた原判決の結論は相当であり,本件控訴はい ずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。
  
 東京高等裁判所第7民事部


裁判長裁判官    大    谷    禎    男
    裁判官    杉   山    正   巳
    裁判官    吉   村     真   幸
 


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