十徳ナイフ

ハンドルと、スプーン、フォークはチタン製。
スプーンパーツとフォークパーツに分離可能。
軽量で、たたむとシェラカップにすっぽり入るサイズ
十徳ナイフ・多徳ナイフ…これらの単語はアーミーナイフ、あるいはツールナイフという言葉に押され、死語になりつつあるようですが、このスプーンやフォークなど食器類が付いたナイフに関しては、ツールナイフという名称はピンときません。これはまだ多徳ナイフという名称がふさわしいと私は思います。ただなんとなくですけど…
十徳ナイフといえば、硝子切り付きナイフを思い出します。私が見かけたのは1970年代、場所は上野不忍池の弁天堂前あたりでした。日曜祭日に行くと、必ず露天商のおじさんがこの十徳ナイフを売っているのです。このナイフには、ナイフの他に缶切りや耳掻きなどが付いているわけですが、中でも看板スター的機能がガラス切りです。それは小さな車輪のような形と構造のもので、おじさんはどこからか調達してきたガラスの破片を、それは見事な手さばきで、自在に切断して見せます。こんな工具、冷静に考えれば使い道などありません。しかしその華麗なパフォーマンス?に魅了される人は多く、いつも人だかりができていました。そしてついつい財布を取りだしてしまう人も後を絶たなかったようです。私を含めて…
お世辞にも上等とはいえないナイフでしたが、当時500円ほどで、中学生だった私でも無理なく購入することができました。このナイフが私のナイフ歴の原点だったかもしれません。無精だった私はあっという間に錆びさせ、使い物にならなくしてしまいました。
 そういえば、修学旅行で関西に行ったときにも、このガラス切りの大道芸を見かけて驚いた記憶があります。ネットの中でも、この十徳ナイフと硝子切り芸を縁日で見たという話がいくつか見られますし、ひょっとすると日本全国の主要都市ででこの形態の露天販売を展開していたのかも知れません。(あのおじさんたちって、ナイフ製造会社の社員?あの芸ってどこで修得したの??研修???)
このナイフの後に買ったのがウェンガー社製スイスアーミーナイフです。04年現在キャンパーUというモデルで、買った当時(76年頃)はクライマーという名前でした。スイスアーミーはどういう訳か、やたら名前が変わります。このスイスアーミーの値段は十徳ナイフの十倍くらいもしましたが、比べものにならないほど高品質でした。
大変重宝したナイフでしたが、これ以上使うとハサミが壊れそうというところまで使い込んであるので、現在は引き出しの奥で休んでいます。

スイスアーミーには、ウェンガー社とビクトリノクス社があり、どちらのメーカーからも可能な限りツールを搭載した、チャンピオンとかチャンプとかいう名の最上級モデルがあります。これらのモデルはアウトドア・プロフェッショナルのみなさんや、ナイフ通の人たちには毛嫌いされているようで、『無駄なツールがつきすぎていて、使いにくいし重い。絶対こんなナイフを選ぶのは避けた方がいい』と口を揃えて言いす。中には『このクラスのアーミーナイフはメーカーが技術の高さを誇示するために作られているもので、実際に使うためのものではない』とまで言い切る人もいます。これは本当でしょうか。
私の感想では、確かに使いやすいとは言えませんが、使い物にならないレベルにあるかというと、そうも思えません。
そもそもツールナイフというのは、いかに軽量コンパクトに工具類を持ち運ぶかということに主題が置かれているものであって、使いやすさは二の次とまではいわないまでも、最優先に持ってくる必要はない気がします。
通常どんな目的にナイフを使うかといえば、細引きを切る、封を開ける、食品を切り分ける、野菜や果物の皮をむく…結構この程度の作業ばかりです。使いやすさを絶対条件にするほどアーミーナイフを使い込む人は、むしろ少数派なのではないでしょうか。
使いやすさを追求する人は、アーミーナイフは工具と割り切り、メインに使うナイフを別に用意しているのが現状だと思います。
重さにしても、これだけの機能を詰め込んでいるにしては驚異的なほどの軽さです。これはレザーマン系のプライヤーツール等を手にしてみると、しみじみと感じることです。
不要なツールが付きすぎていると言いますが、なにが必要でなにが不要かは、使ってみなければわからない部分もあります。人それぞれどんなツールが必要かは違ってくるわけですし、使っているうちに新しい使い道を発見する可能性もあります。とりあえずこのスイスチャンプを使ってみて、自分にはどんな機能が必要かを探る。そして二本目、三本目のナイフで自分に最適のナイフを選ぶ、というのも一つの道ではないでしょうか。

他によく言われるチャンプの欠点の一つ…手入れの厄介さ、面倒さ…これについてはまったく否定のしようがありません。つまり、『ナイフしか使っとらんのに、ハサミも、ヤスリも、プライヤーも…み〜んな掃除せにゃならん』という羽目におちいる点です。これはナイフのメンテが三度の飯より好きという人以外は結構わずらわしい問題です。
ナイフが一番汚れるのは食品関係に使用するとき。ですから、食品専用のナイフを別に用意すれば問題はかなり改善されます。でもそうなると『これ一本あれば』というスイスチャンプの趣旨を外すことになる気がするし…むずかしいところです。

ただこのスイスチャンプ、いじくるのが非常に楽しい。私もその昔、アウトドア雑誌や釣り雑誌を眺めながらこのチャンプをいじくり回し、あれこれ使い道を想像するのが至福の時間でした(今でもほとんど進歩ありません)。こんな楽しい時を提供してくれるというだけでもこのクラスのスイスアーミーを手に入れる価値はあると私は思うのですが。


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