ここはいつもの麻帆良学園学生寮。昼間は入居者が登校していて静かなものだが、今は
普段よりも少し賑やかだ。それもそのはず、今日は日曜日。長谷川千雨はコスプレ写真の
修整に総力を注ぎ込み、那波千鶴は犬上小太郎の*にネギを挿入し、早乙女ハルナは
どこぞの即売会に参加中。それぞれが休日を有意義に過ごしている。
そこの643号室、神楽坂明日菜と近衛木乃香が住まう部屋に、近頃は桜咲刹那も出入り
するようになり、今はその三人で優雅に午後のお茶会と洒落込んでいる。ちなみに、それ
よりも少し前から居候するようになったネギ・スプリングフィールドは今日も元気に休日
出勤である。郷にいれば郷に従え。子供先生だろうがなんだろうが労働基準法などぶっち
ぎるのが日本の社会というものだ。
「最近、アスナとせっちゃんはベタベタしすぎや」
さて、木乃香さんはいきなり何を言ってるのでしょうか。
「はぁ」
刹那は生返事を返すが、唐突にそんなことを言われたらそうするしかないだろう。今は
説教の時間ではなく、午後のお茶会をしていたはずなのだから。
「このままやとネギ君の教育に悪いと思うんや」
「はぁ」
二度目の生返事。
「このか、教育に悪いって何? ネギだったらむしろ、仲がいいのはいいことですね、と
か言いそうだけど」
明日菜の言うことはもっともである。何せネギ先生といえば不純同性交友上等! とい
う真性のレズ好きだ。むしろ止めに入ったりでもしたらこちらが不安になる。
「確かに仲がええことはかまへんねん……でも、仲が良すぎるのはアカン!」
バン! と机を叩いて力説する木乃香。
「昨日の晩も二人でイチャイチャして、そのせいでネギ君の○○○が大変なことになって
たやん!」
「う、まあ、昨日はなんだか盛り上がっちゃって……」
具体的にどう盛り上がったのかは読者の皆様にお任せします。僕は刹那攻めだと思いま
す。
「というより、お嬢様がなぜネギ先生のそれがそうなっていたと知っているのか気になり
ますが……」
「とにかく!」
あ、ごまかした。
「アスナとせっちゃんがベタベタするのは禁止や!」
バン! と再び机を叩いて宣言する木乃香。と、そのとき。
バシャ!
「きゃっ!」
先ほどよりも力が入りすぎてしまったのか、勢いで明日菜の目の前にあったティーカッ
プが倒れ、明日菜は牛乳まみれになってしまった。なぜ明日菜が優雅な午後のお茶会で牛
乳を飲んでいたかというと、作者の趣味といえばわかりやすいだろうか。15巻でもそんな
感じのシーンありましたよね。
「あっ、ごめん、アスナ」
「うわー、びしょびしょ」
「明日菜さん、とりあえず服を着替えましょう」
言うが早いか、刹那は明日菜の服を脱がしにかかった。その瞳は獣! 獲物を見つけた
獣の瞳だ!
「え、そんな、自分で脱ぐから、やっ、そんなとこ、ダメ、ダメだよ、刹那さん!」
「ふふ、可愛いですね、明日菜さん。そんなに頬を赤くして……さあ、こっちも……」
二人がどのような状態にあるのか、小説だと映像でお見せできないのが残念です。ああ
っ! そうこうしているうちに刹那の手が……!
「ストーップ! そこまで!」
おっと、危ない危ない、木乃香が止めに入ってくれなければ18禁になってしまうところ
でした。
「せっちゃんはアスナから離れておとなしくする! アスナは自分で服を着替える!
あーゆーおーけー!?」
「「イ、イエッサー!」」
二人は飛び退くように慌てて離れ、それぞれが木乃香に言われたとおりの行動に移った。
落ち着いたところで、木乃香がテーブルを指でトントンと叩きながら続ける。どうやら
午後のお茶会は本格的に説教の時間になってしまったようだ。
「まあ、今みたいなことが教育に悪いと思うんや」
「はい、まったくそのとおりです……」
流石に先ほどの行動はまずいと思ったのか、刹那はバツが悪そうに同意した。心なしか、
少し小さく見える。
「でも、こう言うのもなんだけど、私たちがイチャついてるのはいつものことっていうか、
今更っていうか……」
特に12巻あたりには性欲を持て余しますよね。
「そのせいでウチが……」
「お嬢様が、なんですか?」
「い、いや、なんでもあらへん」
コホン、と咳払いをして、木乃香。
「せやから、しばらくは会うのも控えるべきやな」
「お嬢様がそう仰るのであれば……」
「うーん、確かにこのかの言うとおりだよね……」
釈然としないながらも木乃香の案に賛成な二人だったが、
「それと剣の朝練も禁止や」
「ええっ!?」
「ちょ、ちょっと!」
流石にこれには反対のようだ。
「お嬢様! 剣の練習は純粋に明日菜さんが強くなりたいがためにやってるだけで、別に
イチャつくためでは……!」
「いーや、あかん!」
娘の結婚を認めてやらない頑固オヤジのように、木乃香はそっぽを向いて、刹那の説得
をまるで聞く気がない。
「そんな、お嬢様……!」
「いいよ、刹那さん」
それでも必死になって説得をしようとする刹那の肩に、明日菜はそっと触れる。
「明日菜さん、でも!」
「大丈夫。私、刹那さんがいなくてもちゃんと練習するよ。刹那さんに言われた練習メニ
ュー、毎朝かならずやるよ」
「明日菜さん……本当ですか?」
「うん。会えなくても、刹那さんのこと、ずっと想ってる。だから、安心して」
「……明日菜さん……」
「……刹那さん……」
見つめ合う二人。潤む瞳。やがてそのまぶたは閉じられ、唇と唇が触
「ストーップ! そこまで!」
惜しい! あと1センチ!
「いつもいつもそうやって二人きりの世界に入って! 少しはウチのことも……!」
と言った時点で、明日菜と刹那がにやにやしているのに気づき、慌てて口をつぐむも時
すでに遅し。
「あー、そっかぁ、そういえば最近このかのことほったらかしだったわねぇ」
「そうですね。私としたことが、うっかりしていました」
「いや、その、ちが……!」
真っ赤になりながら木乃香は否定しようとするが、もちろん二人には効いていない。に
やにやが加速するだけだった。
「じゃあ、そんなかまってちゃんなこのかを、どうしよっかなぁ」
「今まで寂しい思いをさせてしまった分、たっぷり可愛がりましょう」
本当に楽しそうに、二人はじりじりとゆっくり木乃香に近づいていき、
「あぅ、や、やめ……!」
「ごめんね、このか」
明日菜は右側から木乃香をぎゅっと抱きしめた。
「ごめんな、このちゃん」
刹那は左側から木乃香をぎゅっと抱きしめた。
「え、あ、う……」
されるがまま、木乃香はついに耳まで真っ赤になってしまった。
「このかのこと、親友だって思ってるよ」
「このちゃんは私の大切な人だよ」
そんな耳元で、二人は優しく囁く。それはだだっ子をあやす母のようでもあり、一輪の
花を愛でるようでもあった。
「うう、二人とも、ずるい……」
とは言いつつも、二人の腕を振りほどこうなどとは思わない木乃香であった。
二人がかりの抱擁はいつまでも続いた。
こうして、日曜日が終わる。神楽坂明日菜、近衛木乃香、桜咲刹那はそれぞれが友情を
確かめ、明日への活力を蓄えた。日が沈みまた昇る頃には、教室に再び皆の元気な声がこ
だまするだろう。
ちなみに、学校から帰ってきたネギ君は、室内から聞こえるあえぎ声のせいで部屋の中
に入るに入れず、その日は野宿をしたそうだ。
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