ブログに書いた感想を、時々こちらで纏めています。 思いっきりネタバレ含むので、お気をつけ下さい。

 サジュエと魔法の本 (上・下巻)
 ライオンボーイ (全3巻)
 宮廷女官・チャングムの誓い
 フェリックスと異界の伝説 《2》
 フェリックスと異界の伝説 《1》
 月神シリーズ・外伝 
 月神シリーズ (全4巻)
 風神秘抄
 へんないきもの
 ドラゴンランス・魂の戦争(第1部)
 ドラゴンランス (全3巻)
   ・夏の炎の竜
 ドラゴンランス (全2巻)
   セカンドジュネレーション
 ドラゴンランス伝説 (全6巻)
 ドラゴンランス (全6巻)

 

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※ 次項にある本のタイトル ※

 ドラゴンランス 1・2
 魔空の森
 キノの旅
 時の町の伝説
 アイスウィンド・サーガ 1・2
 バーティミアス ◆ゴーレムの眼
 ダレン・シャン
 誕生日(フェリシモの本)
 千の風になって(絵本)
 龍のすむ家
 はてしない物語 
 竜の騎士
 サークル・オブ・マジック
 ハウルの動く城
 ダークエルフ物語
 龍の柩
 片目のオオカミ 
 黒龍の棺
 壬生義士伝

 

サジュエと魔法の本 (上・下巻) 著者:伊藤 英彦

 ある日、大魔法使いとして名高いおじいちゃんの家に遊びに行ったサジュエは、書斎で不思議と気を惹く赤い本を見つけた。本を手に取った途端、頭の中に呪文が浮かび上がり、サジュエの体は物凄い勢いで空を飛び、はるか彼方の森へと飛ばされてしまった。魔法を制御する術を知らないサジュエは、本の力に振り回されるままに飛び、ついには湖へ墜落する。
 そこでサジュエは薬草を取りに来ていた青年と女の子に助けられ、つかのま会話を交わすも、再び本の力により書斎へと飛び戻る事になる。おじいちゃん曰く、それは強大な力を秘めた「朱の書」と呼ばれる"風を自在に操る魔法"が記された本だった。
 
 「朱の書」「青の書」「白の書」「玄の書」、四冊をあわせて『四神経』と呼ぶ。この四冊を手にするものは世界を支配する力を手にするという。朱・青・白はそれぞれ大魔法使い達の手により護られ、玄は邪導師が持つ。そして、今はまさに邪導師が世界征服を宣言し"四神経"を集めようと暗躍しはじめた時だった――。 

 読み始めて、まずは文体に驚いた。久し振りに「ですます調」で書かれた児童書を読んだ気がする。や、読み易い文体でしたが。 
 魔法の苦手な男の子が、最初は魔法の本の力に振り回され、世界を脅かす邪導師が現れ、色んな人と出会い、協力し合い、本の力を読み解き、やがて邪導師と対決する。 
 作中様々な人物・種族が登場するけれど、それぞれキャラクターが魅力的でした。特に"盗み屋"のルイジとリンダが好きかな。このふたりは自分の弱さも引き摺っているけど、それを自覚して認めているから自身の在り方が強い。RPGをやる時に、主人公達にこの2人の名前を付けたいなぁとか思うくらい好きです(笑) 
 そして、みんな性格付けが面白い。ルイジはまさしく"兄貴"で、ぶっきらぼうでいて親切でもあり自分の芯を持った強い人。リンダとふたり、幸せに暮らしてほしいなぁ。 
 でも、一番好きなのは天狼星の剣士ことカンフィーかも。
 ルイジと出会って恩讐に捕らわれた自己の姿に向き合うようになり、そこから自分の心を鍛えなおしながら本質的な剣士へと変貌していった姿が、なんとも格好良いです。朴訥で純粋な人物だからこそだろうなぁ。 

 もちろんこの物語自体も面白かったんだけど、400字詰め原稿用紙2枚のおはなしがこのボリュームに膨らんだという後書きに面白さを覚えました。人の心の翼、空想力って凄いですよね。 

 

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ライオンボーイ 著者:ジズー コーダ

 正直言って、1巻読んであんまり面白くなかったので見切りをつけていました。でも挿絵が天野さんで、あの人の絵は見るの好きなんで、3巻完結らしいし…取り敢えず最後まで付き合ってみようと、発売されると読み続けていました。それで、3巻も読了。 

 うーん、話的にはやっぱりそんなに面白くないと思う(^^;) 
 でも、あるキャラクターが飛び抜けて可愛く、彼の行動を追っただけで、3巻は読んだ価値があったような気がします(笑) 2巻に出てる時はたいして面白みがあるようにも思えないキャラだったんだけどなぁ。(でも、キャラ設定はその時点で目を引く物ではありました。) 

 そんな訳で、私の心を鷲掴みにしたキャラクターは、カメレオンのニヌー。 
 めっちゃ可愛いです。臆病だけど優しくて、勇気を振り絞って友達の為に動く。チャーリーの指をギュッギュッと握って言外に励ましを贈ったり、この辺に惚れてしまいます。
 カメレオンは場所に合わせて体色を変える。 でも、ニヌーは、生き物に合わせて言葉まで変える。ニヌーを通訳に立てて、色んな動物たちと会話したり、こんな設定初めて見たなぁとちょっと関心しました。 
いや、マジでニヌーってキャラは魅力的だなぁ。 

 

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宮廷女官・チャングムの誓い  出版:竹書房

 好奇心旺盛で溌剌とした闊達な少女・チャングムは、自分の不用意な発言から両親を失う事になる。彼女は事情を詳しくは知らなかったのだが、両親は其々に秘めた過去をもっており、やがてそれが親から子に引継がれ翳を落し因果応報となるのだ。 
 身寄りを無くしたチャングムは、母の叶えられなかった夢を果すため宮廷に見習いとして入り女官となる事を志す。 
 しかし、宮廷にはかつて母を陥れ抹殺を企ませた一族の陰謀が未だ渦巻いていた。やがてそれはチャングムの身に振り掛かり、罪人として宮廷を追われる事になる。 
 肉親を失い、宮廷の料理人を志し、罪人として追われ、絶望し、医術を志し、またしても陰謀に巻き込まれ……、そうしてチャングムは波乱万丈の人生を歩み続ける――。 


  母が知り合いから借りてきました。上・中・下の3巻セット。 
 「面白いからよかったら読んでみて」と云われたけど、文字が小さくて読み辛いから私に読んでみろと(笑) 
 なんかこう…タイトルからして私の守備範囲外だよなぁと思いつつ、一応受取ってパラパラ頁を捲ってみる。カラー口絵が…イロイロな写真のコラージュです。どうやらテレビドラマを小説化したものらしい。しかも、海外物。日本で云う所の「大河ドラマ(歴史物)」風。 

 取り敢えず、義理でチョコッとだけでも読んでみようと思ったら、これ、意外や意外、面白かったです。3日掛けて一気読みしている自分がいました(笑) 
 因みにBSで現在放映中なんですね、このドラマ。BS映らないから見れませんが。 
 小説は、ドラマでは語られなかった部分も深く掘り下げているそうです。冒頭のチャングムの両親の話がそうらしい。でも、やっぱりこの部分があるからより深みがあるんだろうなと思う。 

 馴染みの無い名称がバンバン出てきて読み辛いけど、読み進めればまぁなんとなく慣れてくる。そんな本。 
 何事も真心と熱意と真剣さが要だなぁと、この物語に登場する人々を見ていると思います。 
 料理人を志し、医術を志す。それだけあって、料理に関するあれこれや、薬草などにかんするあれこれが事細かに語られていて、この知識を全部覚えたら凄いなぁとも思います。…チャングムは理解して覚えているんだよね。いや、ホントに凄いなぁ。 
 読み手としては、事件の繋がりや関わった人達の相関図が頭に入っているので、彼ら彼女らがその事にいつ気付くのかとヤキモキしたりハラハラしたりもしました。 
 一番最後、あの王の計らいは粋だったなぁ。 

 

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フェリックスと異界の伝説
<2>
 世にも危険なパズル
著者:エリザベス・ケイ

 石にされてしまった両親を元に戻す方法を探す為、フェリックスは再び分水界を越えて異界へ。 しかし、1年前に訪れた時とは何かが違う? ――去年フェリックスが異界にもたらした科学が、この魔法の世界に変化を与えてしまっていたのだ。 
 石化を解く魔法を知る人物を探すフェリックスは、やがて懐かしい友達と再会したり、新たな出会いを繰り返しながら旅を続ける――。

 
1巻から引き続き登場するブラズル達やシニストロム、妖精のベトニー。
 2巻から新たに登場する空飛ぶ絨毯や、ランプの妖精。やっぱりみんな其々に個性的で、読んでいて面白いです。アイアンクローとレオナ(スフィンクス)の、互いの頭脳価値を認めあった友情めいた関係も好きかな。っちゅーか、アイアンクローが相変わらずで可愛いです(笑) あれ? この巻に息子が出て来なかったけど、彼はもう出ないんだろうか…。 

 でも、この話の中で一番成長しているのは、主人を持たないシニストロム(影の野獣・悪い事しかしない生物)のグリムスパイトかな。そして、彼が一番好きで、一番応援してやりたいかも。 
 主人に命じられるまま、悪逆非道の限りを尽くすのが性分だったシニストロムが、主人を失って命令を受けられなくなり、自分がどうするべきなのか、自分で考えなくてはならなくなった。「個」の認識ですね。今までやってた事にはさほど興味を持てなくなった。自分に降り掛かった事を自分で受けとめ、自分の感じた事を他人も感じる事だと認識する。相手を思いやることを自然と覚えるのは、根が素直だからだろうなぁ。きちんと悪いと思って謝れるのは凄い事だと思う。グリムスパイトは喋り方も愛嬌があるから憎めないんだよね。 
 そう云えば…グリムスパイトの主人はアイアンクローな訳だけど、顔まで合わせてるけど、双方ともにその事実に気付いてないんだろうなぁ…。そもそも小石が無くなっているからもう関係ないのかな。 

 ところで…  フェリックスの両親にかけられた石化の魔法。あの設定って、かなり怖いですね。 
 石化した対象に振れた者が伝播して石化する。それを繰り返しジワジワと知らぬうちに石化現象が町に国にと広がってゆく。こんな恐怖があっただろうかと読んでて思いました。 
 でも、例え誰もが気付かぬ内に国中が石化しても、やがて20年もすれば石化が自動的に解けて、また何一つ変わらぬ国の営みが再開されるだけだったりしてね(^^;) まぁ外交とかあるから、眠り姫のお城のように、完全に隔絶された世界にはならないけれど。 ただ、研究に入った各国機関がお手上げ状態になって、その現象が広がらぬように国を隔離してしまう可能性はあるけれども。こう考えると、波及する石化って面白いテーマだなぁと思う。映画にこう云うテーマを扱ったものってないのかな? 

 

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フェリックスと異界の伝説
<1>
 羽根に宿る力
著者:エリザベス・ケイ

 南米コスタリカ。高い山に降り注いだ雨は"分水界"と呼ばれる地点で別れて流れゆく。一方は太平洋に、一方は大西洋に。 
 心臓を患っている少年フェリックスは、元気な内になにかワクワクする事をしたいと、家族で大陸分水界を見るトレッキングにでかけた。子供の体調を気遣う両親が途中から引き返そうと言うものの、フェリックスはそんな二人の目を盗んで先へと進む。そうして分水界を跨いで立った時、無理が祟って少年は倒れてしまった。 
 分水界という地場のもつ不思議な力が作用したのか、目覚めた時、フェリックスは異界にいた。妖精達が暮らし魔法が行われ、伝説としてお話に登場するような――あるいは架空の――不思議な生き物達が闊歩する世界。そして…驚くべきは、科学と云う不思議な力が作用する異界に生きる人間こそが伝説の生き物だと考えられている世界だった。

 文体にちょっと妙な感じがあるんだけど… 異界の雰囲気をイメージさせるための手段なのか、何なのか。でも、素直な文体でもあるので読みやすくはありました。 
 このお話し、架空の生き物がバンバン出てきます。例えばグリフィンに似た"ブラズル"。妖精に似た"タングル族"。ユニコーンに似た"ブリトルホーン"等々。伝説として御話として今まで耳にした事のある彼らとは少しずつ性質が違っていたりして、却って異界に真実味があるような。 

 数式好きというか…むしろ数式魔のブラズルがかなり好きです。何かやってる最中にもうっかり微分積分だとか色々気を取られて数式を考え始めるそうで(笑) 困ったちゃんながら愛しい生き物です。四頭ほど出てきたけど、家族の三頭が大好きだなぁ。雌も含めてみんな考え方も行動力も男前ですよ。 

 タングル族の面々も良いなぁ。ちょっと変わった女の子、べトニーも可愛らしい。お姉ちゃんお兄ちゃん含めた三姉兄妹の、石像になっちゃった両親の淡々とした扱いにはちょっとビックリですが…結構すなおで単純な種族なんだろうな。
 次巻で人間界にもどれたフェリックスとの再会は果たされるかな? どっちがどっちの世界に行く事になるだろうかとか、続巻が楽しみです。 

 

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裔を継ぐ者 (月神シリーズ・外伝 著者:たつみや章

 ポイシュマとワカヒコ、2人の少年が立ち上がり、やがて昏迷の時代に平和への礎が築かれてより500年余り――。先祖達の願いと想いは風化し、しきたりとしての奉りは受け継がれても、神々やカムイを身近に感じ受け入れ信じる術が失われつつある人々の姿がそこにはあった。 

 オオモノヌシのポイシュマの血を引く「星のしるし」の一族の末児・サザレヒコは、未だ弓を持つ事を許してくれない父親に反発し、こっそりと兄の弓を持ち出し、隠れて練習する為にムラの禁域でありカムイのすまう聖地へと踏み入った。そこで、沼向こうの草陰に潜む気配に矢を射ったのだが……。 
 ムラの守り神でもあるオオモノヌシの化身といわれている白い大蛇を射て、傷付けたまま恐怖の一心で逃げ帰ったサザレヒコは、嘘を塗り固めて自分を守ろうとし、ついにはムラから追放される。 
 己の犯した罪の償いをするため、再び禁域へと足を踏み入れ白蛇を捜し求めるサザレヒコは、ひとりの少年と出会う。彼はサザレヒコが不慣れな山の中で生きぬく術を、そして、神々やカムイと向き合うその意味を態度で以って教えてくれる貴重な存在となった。 


 読む前にパラパラと挿絵を見ていました、私。 ・・・あれ? 
 シクイルケだ〜っ! と、思いの外はやくに彼を見る事ができて感動です。しかも、人型だしv これは予想外だったなぁ。 
 この一冊を通して、サザレヒコがものすごく内面的に成長するのだけど、それは読んでいて見守る気持ちでいる私にも嬉しい事なのだけど、それ以上に、やっぱり オオモノヌシのシクイルケとポイシュマに再会できたのが嬉しかったです。ポイシュマ、オオモノヌシとしての貫禄がついてるなぁ。人間時代の彼からはちょっと想像つかないような…つくような…(笑) 
 かつて、自分を護り導いてくれた人々のように、サザレヒコを見守りながら時には厳しく、やっぱり厳しく躾をするポイシュマも、成長したんだなぁと思う。 

 さて、サザレヒコ。末っ子の甘えったれ坊主。自分勝手で礼儀知らずで我侭で、行動を見守りつつもちょっと頭が痛くなる訳ですが、でも・・・自分の中にもサザレヒコが居るなぁと思うと人事でもありません。等身大の主人公だなぁと思う。 
 神々やカムイにはらう敬意のひとつも持たなかったサザレヒコが、自分の力で生きる事を学び、自分を生かしてくれる様々な存在を認識し、自分の愚かさと対峙し、それを乗り越えていく姿がとても印象的でした。 
 自分の勇気と真剣さを証明した後の、自分の姿におきた小さな変化に声をあげたサザレヒコの素直な可愛らしさも大好きです。 

 このシリーズ、神々やカムイに捧げる祈りの言葉とかが多く、言葉遣いが綺麗だったり含みが豊かだったりするんですが、地の文が、何を語るかで自然と尊敬語になったり謙譲語になったりして、その辺も面白いです。 


 ところで、オオモノヌシ達。(考察というか…ある意味ネタバレ?) 

 ポイシュマ、『冥界を統べる重きカムイであられるオオモノヌシよ、地上を去って久しい御身が』と言われてましたが…。シクイルケのように、人としての命を終えてカムイに昇華してるんですね、やっぱり。それでもって、冥界の主ですか。すごい大役を引き受けているなぁ。 
 前作で、順番を違えてはいるが湿地のカムイの力は受けるべくして受けたものだという、あの時から既に冥界を統べる存在として定められていたのかと、感慨もひとしおです。 

 そして、シクイルケ。言葉を取り戻していて嬉しかった。相変わらず優しいカムイで、懐かしさが込み上げます。
 彼がただ独りで悪しきモノをその身に封じ続けているのは切ない。切ないからこそ、人々が失われていた真実の物語を知り、オオモノヌシを信じ、子供達が恐れず白蛇と遊びたがってくれた事が、実際に和んで遊んでいる姿を見かけられるようになった事が、すごく嬉しいです。 

 地に降りて白蛇となりて棲まう月の神の息子・オオモノヌシのシクイルケ。 
今年の十五夜には月見酒を供えて、オオモノヌシ等を偲ぼうかな。 

 

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月神シリーズ (全4巻) 著者:たつみや章

「1・月神の統べる森で」 「2・地の掟 月のまなざし」 「3・天地のはざま」 「4・月冠の巫王」 

 縄文から弥生に時代が移ろおうとしていた頃のこと。 
 月の神を奉じ神々が宿る自然を敬い拝して生きてきたムラの人々と、日の神を崇め己が利の為に自然を蹂躙してゆくクニの人々。言葉も思想も異にした文明が出会い対立し、やがて激烈な戦いの渦が巻き起こる。騒乱の続く世に平和はもたらされるか? 
 ムラの若き長アテルイと月神の地上の息子である巫者のシクイルケは、"ヒメカ"のクニとの諍いの過程で二人の少年に出会う事となった。 
 ひとりは、人の姿をしたカムイ(神)に育てられた少年、ポイシュマ。ひとりは、"ヒメカ"の将来の「ヒコ」(王様みたいなもの)でありながら、ヒメカの女王に疎まれた少年、ワカヒコ。彼らは数奇な宿命を負った時代を導く「星の子」だった。

 日本神話で殆ど語られる事が無い《月の神》について、かつてこんな信仰があったのではないかと作者が紡ぎ出した、月の神の民たちの物語。 

 ムラの人々は自然に宿る神々を敬い愛し調和を以って生をおくる。
 足るを知る生活っていうのかな? なんとなく、読めば読むほどアイヌ民族のイメージです。純粋で素直に正直に育っているポイシュマがただただ愛しい。自分が生きる為に命を分けてもらうため、あらゆるモノに折々に触れて感謝を捧げるその姿は、現代ではかなり失われているもののように思います。あそこまで様々に感謝を捧げられるかと云えば、いや、私は無理だろう…とか思いますが。でも、いつも感謝する気持ちを忘れず心に留めておく事が大切なのだと、彼らの暮らし振りを見ていると思います。。 
 クニの人々は他者を制圧し自然を自らの利の為に蹂躙している。いずれそれは自分に返ってくると思うのだけれど…他者を――自分たち以外の価値観や思想を――認めて受け入れられる懐の深さがないものは、やがて自らを蝕むことに気付かない。 

 ポイシュマとワカヒコの友情とそれぞれの成長が巻を追うにしたがって深まり、様々なクニやムラの存在が明らかになるとともに騒乱と平和に向けて絡み合い、様々な出来事を内包して大団円に向かう筋立てに圧倒されます。 
 彼らはそれからどうなるんだろう?と気になって仕方なく、一日一冊一気読みでした。

  
 色んなエピソードがあるけれど、一番心に残ったのはシクイルケがモノたちの魂の鎮めと穢れを引き受け、ポイシュマとの会話を最後に声を持たぬカムイとなる別れの場面でした。
 ポイシュマの気持ちになるととても切ない。そして、シクイルケの選んだ行動がただ静かで気高く美しい思いから出ているのがマザマザと解って、なんというのか…切ないけれど優しい気持ちになります。シクイルケがただただ尊く慕わしい。人の身のシクイルケが亡くなった時の、アテルイの嘆きの深さが今更ながらに身にしみます。あぁ、こんな人物を失ったんだ…と。
 読者の私は「人の身のシクイルケ」より「カムイとなってからのシクイルケ」との付き合いがながくなるので、1巻の半ばで早々に亡くなった時点ではまだ其処まで感情移入出来なかったんだなぁと思います。あの辺りは少年2人の思考に振り回されていたからなぁ(^^;) 

 印象的といえば、モノたちが集まり顕現した大蛇に飛び乗って櫓壁に向かっていくときの、ワカヒコをして「あれではまるで「悪しき魔物」だ」と言わしめた赤い眼をしたポイシュマかな。
 助けようとしていたムラの人達の前に姿を見せた時だけ、また元の翡翠色の眼に戻ってて、本当に自分の意志でそうしているんだなぁ、それだけの力を身につけたんだなぁと感慨深かったです。…それでもやっぱりポイシュマにはポイシュマの弱さがあって、それ故モノたちの悪しき思念を抑えきれなくて、それがシクイルケのカムイとの別れに結びつく。ぴしゃりと叱り飛ばしてくれるシクイルケの毅さと優しさが嬉しい。彼は本当に見守り導く月のような存在ですね。シクイルケは本当に面倒見が良いというか…あぁ、ひそかにシクイルケとポイシュマの父である"輝く尾を持つ星の神"との別れの場面も好きです。 

 父神からも認められ"オオモノヌシ"と真名をいただいたポイシュマ。そのまんま生き神になるのかと思いきや、立場的には巫者のようで。それじゃあ…やっぱりシクイルケのように人の身の死を以って神となるのかな。物語の結びで緩やかに時代と信仰の続いていくさまが語られてるので、これもまた嬉しかったです。 
 ポイシュマの死後、彼はオオモノヌシとして、もうひとりのオオモノヌシであるシクイルケと一緒に居るのかな? 

 

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風神秘抄 著者:荻原規子

 平安末期、源氏の御曹司・義平が首打たれた六条河原で、死者の魂鎮めの舞を舞う少女・糸世と、主君を悼む少年・草十郎が出会った。
 糸世の舞が生み出す清浄な空間に共鳴し笛の音を添わす草十郎。惹かれあう二人の生み出す音拍の共鳴が世界を紡ぐ音律に影響を与え、未来を変える力を持ちうることに気付いたのは、糸世だけだった。 
 その力を用いて源頼朝の未来を死罪から流刑へと替えたことにより、時の上皇に目をかけられた二人は、上皇の延命祈願の為に再び舞と笛を合わせる事となる。しかし、祈願が成就し未来が変わったことを予感した矢先、奉納舞の最中に糸世の姿が舞台から忽然と掻き消えた。上皇は糸世が贄として神の許に召されたのだというが――。 
 異界の狭間へと消えてしまった糸世を現世に呼び戻すため、草十郎のあてどない旅が始まった……。

 なんか微妙に色々な事を取り落としている粗筋ですが、まぁそんなお話し。 

 戦に破れ落ち延びていく源氏の郎党の姿が純粋に歴史小説らしかったけれど、違和感無く途中からファンタジーになってました。主人公の性質の所為か、なんとなく全体的に淡白に感じられる物語だけど、後でまた読み返してみたいと思う小説です。 
 読んでいて文章がイメージとして頭の中に浮かぶ点も好き。 

 話の主軸に存在するのは、腕はたつけど人馴れせずに無口で無愛想な少年・草十郎。
 母の形見である笛を無心に吹き鳴らす時、その音色を聞きに鳥や獣たちが集まってくる。本人はそれと意識してないが、彼は音拍にたいして類稀なる天賦の才を持っている。また、何故か「鳥彦王」と名乗る烏と言葉を交わすことができた。 
 草十郎と並び立つのが、鳥たちの王者・鳥彦王(現在王位継承のため修行中)と、舞姫の糸世。 草十郎と糸世の恋愛物と云うよりは、むしろ草十郎と鳥彦王の友情物+成長物語って感じですが。 
 また、彼等を支えたり見守ったり横槍入れたりと、物語りを盛り上げてくれる面々も魅力的な人物が多いです。鳥彦王の許婚三羽烏とか好きだなぁ。結局、鳥彦王は誰を嫁にしたんだろう…。正蔵にももっと活躍の場が欲しかったなぁ。最後にまた出てきてくれたら嬉しかったんだけど。 


 印象に残っているシーンは2つ。どちらも草十郎の登場シーンでした。 
 1つ目は、吉野から奥駆けの途中に日満に会いに立ち寄った時。2つ目は、河原にさ迷い出た上皇の前に姿を現わした時。どちらも、気配を感じさせもせずに次の瞬間には彼等の横に静かに立っている草十郎。元々静かな性質だけど、終盤に近付くにつれてだんだん神懸かって来る様子にちょっと鳥肌が立ちます。 

 明るい面で記憶に残るのは、やっぱり草十郎と鳥彦王の関係。ってか、鳥彦王のヤンチャで元気で面倒見が良くて偉そうな態度が可愛らしい(笑) 何気に鳥達の世界の事を聞いていて、なるほどそうだったかと納得することも多々有ります。 

 この物語、必然の流れを変えて何かを手に入れるためには何かを代償として贖う必要がある、と云う「獲得と喪失」のテーマがあると思うんですが…… 
 自分の延命の為に草十郎と糸世の力を利用した上皇は、自分の寿命と引き換えに身内の寿命を食らい、糸世を取り戻した草十郎は、鳥彦王と繋がる力を失った訳だけど、――さて、それでは死罪が流刑に転じて命を救われた頼朝は何を犠牲にしたんだろうかと云う気もします。(義経達の存在は考えないとして…)源一党は彼の運命より先に滅んでいる訳ですから。草十郎と糸世が勝手にしたことだから彼には代償が求められていないんだろうか。 

  

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へんないきもの 著者:早川いくを

 眩しい黄緑色の表紙に「へんないきもの」とタイトルが書かれたシンプルで変な本。 

 以前ラジオでDJが面白いと紹介していたのを思い出して読んでみました。 
 だいたい見開きのページの片側に解説文、もう片側に図が載ってますが、本当に変な生き物がいっぱいです。 初めて見るのやら、見た事のある生き物やら様々ですが、解説の文章が面白くて思わずぷぷっと笑ってしまいます。暇な時にこんな本をチョコチョコと読んでみるのも良いかも? 

 …なんつーか、3時間食べずにいると死んじゃうネズミ君とか、ホントに不思議です。 
 生きる為に食うんじゃなく、食う為に生きてるネズミ君。解説読んでると正しくそのとおりと思えるんだけど…あれの生存意義は何なんだろうなぁ。 
 自然の厳しさを身をもって体現してる飛びイカとかも面白い。いや、食われてしまわないよう逃げるのに必死になってるイカにとっちゃ、面白いとか言われても迷惑だろうけどさ。

 

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ドラゴンランス・シリーズ 魂の戦争 著者:マーガレット・ワイス / トレイシー・ヒックマン

 ドラゴンランス・シリーズ最新刊の「魂の戦争」第1部(中篇)を読みました。(前編・後編も読了)
 
 あぁ…何だかパリンも他の皆も、えらく痛々しいです。かのタッスルさえも痛々しく思える…。ランスシリーズでここまで暗くなるなんてなぁと、意外にも思いました。救いはいったい何処にあるんだろう。 

 この巻で一番切なさや辛さを感じたのは、パリンの一言から。 
「すまん、ジェラード!」パリンはあえぎ声で言った。「すまない!」 
暗く冷たく捻じ曲がってしまっていたパリンだけど、やっぱり彼の本質は変わらないんだよね。自分の果すべき役割は理解しているし、相手が何をしようとしているのかも理解している。どうすべきかも知っている。だから、仲間を死地に残したまま見殺しにしてもその場から逃げ出さなければならない。自分の無力さを本当に呪ったことだろうな…。 

 この話を読んでて、興味を惹かれたのが「過去と現在」の関係。ちょっと目新しい考えに触れた気がします。私はそんな事、考えもしなかったなぁ。 

話の主軸にくる仕掛けでもあるので、ネタばれを気にしない人だけ反転でどうぞ。   
  
 過去を変えることによって、未来が変わる。 
これはドラゴンランス伝説で実際にキャラモンとタッスルがやった事です。未来を知った彼等が、その未来を導く原因を取り除くというか、変えたから形成された別の未来。 

 今回は、過去から現れたタッスルが見て来たという別の未来と、今現在の世界の違いが何処の時点で分岐してできたのかを探る為、パリンが過去へと遡る。 
 …何処で分岐して未来が違ったものになろうとも、遡れば同じ過去に辿りつくだろうと思ってたんですが――、違うんですね。 
過去が存在しない。 
過去が存在しない。そんな事、今まで一度も考えたこと無かったです。 
今ここに自分は存在しているのに、その自分の過去に、自分が存在していない。 
いったいどういう事だろう。 

この仕掛けがどのように展開していって纏まるのか、続きがとても気になります。 

 

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ドラゴンランス・夏の炎の竜 (全3巻) 著者:マーガレット・ワイス / トレイシー・ヒックマン

 神々の父《カオス》は混沌と混乱そして無を愛し、秩序を嫌う。そんな訳で、彼は子供である三柱神達が生み出し見守る世界《クリン》を破壊し尽くすことにした。 
 未知の脅威の出現に、ついには今まで敵対していた者同士、種族同士が手を結び立ち向かっていくが…。 

 親世代・子世代入り乱れて、世界存続のための戦いが続きます。 
「夏の炎の竜」単品でも十分に楽しめるけど、これを読むなら、ぜひその前に「セカンドジュネレーション」を。前作は、今後の物語展開に関係なさそうな顔をしつつ、しっかりと伏線になってますし、子世代達の人物像や人物関係が把握できて、本作でよりいっそう身近に感じられます。 

 
 好きなエピソードの一つが、改装した宿屋の一角にある《レイストリンの部屋》の逸話。 
 大魔法使いレイストリンの部屋があり、彼のご利益があると噂を聞いた魔法使い達が、その宿屋に巡礼にやってくる。彼らはその場所を尊び捧げ物をしたりしていくが、実際のところそこはレイストリンの部屋ではなかったし、そもそも彼が住んでいた家でもない。――しかし、調べてみるとその部屋にあたる場所は、改装以前の時代にはフロアがあり、いつもレイストリンが好んで座っていた暖炉際の椅子のあった辺りと一致する。レイストリンとの繋がりは確かにあった――と云うもの。ちょっと鳥肌が立ちます。
 レイストリンの偉大さがじわじわと染み出すように伝わってくるし、キャラモンが昔から力無き者達のために力を尽くした弟の事を思い、これから《大審問》に挑みに行く魔法使い達に、彼への捧げ物(魔法の触媒など)を無償で貸し出してやる優しさにも嬉しさを覚える話でした。 

 レイストリンといえば――やっぱり復活しましたね。本の紹介に「そのとき、《奈落》からはレイストリンの声が…」とか書かれているので、今か今かと待ち侘びてたんですが(笑) 
 自己犠牲が楯となって《暗黒の女王》の呪いから護られているレイストリンは、《クリン》に戻ればその代償に自分の持つ魔法力を失う。
 あれほど力に固執した彼が、それでも甥のパリンを救う為に、力を失うと解っていながら《クリン》へ戻る。自分の全てを懸けた魔法力を失ってどれほど心許ないだろうかと思う。でも、より強力な魔法を修める為に蓄積していった知識も、また彼の力を成す一部なんだとつくづく思い知らされました。魔力を失ってなお、レイストリンは魔術師達に一目を置かれている。なおも他者の協力を得られるレイストリンって凄いなぁと素直に感嘆してしまいます。 

 感想がレイストリン尽くしになってしまいそうですが(^^;) 
 若手達ではやっぱりパリンとスティールに瞠目します。どうのこうの言って、良いコンビです。スティールほど熱血漢なのに冷徹で魂の気高さを感じさせる騎士も珍しいような。
 そして、タッスル。「タッスルおじさん」と呼ばれててびっくりしてしまいますが、確かに彼もそんな歳だ…。歳とっても、ケンダーは無垢で無邪気な子供のような心を持った種族なんですね。彼を見ているとなんとも和みますよ、苦笑しながらでも。  

 

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ドラゴンランス
セカンドジュネレーション (全2巻)
 
著者:マーガレット・ワイス / トレイシー・ヒックマン

 《竜槍の英雄》の子供達が活躍する短・中編集(5篇)

 タニスやキャラモン、はたまた《大審問》直後の双子といった馴染みの人物も登場して、中々面白かったです。 
 気軽に読める物語ばかりだけど、ドラゴンランス・シリーズとして後に続く物語の導入部としても秀逸で面白いので、ドラゴンランスが好きなら、彼らの子世代の物語までは読まなくてもいいや…とか思ってる方にも読んでみてほしい作品でした。 
 一番好きな話は「受け継ぎしもの」 キャラモンの三人息子のひとり・魔法を志すパリンの物語。 

 以下、個別に。
   
「受け継ぎしもの」 
 レイストリン、きた――っ! と、彼のファンは狂喜乱舞ですよ(笑) これは誰の話しだったの?と聞かれたら、彼だけの為に存在するたった一章があるゆえに「勿論、レイストリンの話だよ」と言い切りたいくらい、レイストリンでした。 
 パリンの《大審問》の為にダラマールが紡ぎ出した師の幻影。偽りのレイストリン。彼がパリンに語る内容が、まぁレイストリンらしくて やっぱり野望に魂焦がされてるんだねぇ…と思ってしまうけど、本物のレイストリンはそれ以上に あぁこれこそレイストリンだ!と嬉しくなってしまいます。 
 レイストリンが祝福を贈る場面が、なによりも一番好き。優しさと皮肉さが共存しているのが、いつもながらに凄いなぁと思う。 

「賭けるか」 
 キャラモンの三人の息子、タニン・スターム・パリンの仲の良さが微笑ましく、彼らの冒険はとても愉快だ。フィズバンはあんな人物だったけど、ダウガンもあんな面白い人物で…あの世界は神様が気軽にほっつき歩いているよなぁとついつい苦笑いしてしまう。神々は自分の作った世界を本当に愛しているんだね。 
 スターム… 名前を見るたびに騎士のスタームを思い出すけど、中身がどっちかというとキャラモンなので、そのギャップに眩暈がします(笑) パリンは叔父のレイストリンに何処となく似た気質を持つけど、間違いなくキャラモンの愛情深さを受け継いでて、こういうのもあいまって、彼ら三兄弟の仲良さや信頼関係が引き立つんだろうなぁ。 

「キティアラの息子」に出て来た、母の心と父の魂を併せ持つ青年スティールも実に興味深い魅力的な人物でした。タニスやキャラモンと同じく、彼の言動や行動の中にスタームの面影を見つけて懐かしくなってしまいます。 

 

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ドラゴンランス伝説 (全6巻) 著者:マーガレット・ワイス / トレイシー・ヒックマン

 《竜槍戦争》から数年。パランサスの上位魔法の塔の主となったレイストリンには、未だ尽きぬ野望と魔法への探究心があった。 
 レイストリンはより高位の魔法を修める為に、世紀の大魔法使いと謳われた男の許へ、過去へと時間を遡ってゆく。強大な力を手にした後に望むのは、《暗黒の女王タキシス》に挑み打ち倒し自らが世界に君臨すること。自らが新たな神となることだった――。 

  今作はレイストリンがひたすら物語りの中心にいる、彼のファンには堪らない作品。…かと思いきや、読んでみるとレイストリンがこの上なく好きになるか、とんでもなく嫌いになるかの分れ道のようなお話しですね。私は――やっぱりレイストリン好きだなぁと思いましたが。 

 むしろ、双子の兄のキャラモンの落魄れっぷりに度肝を抜かれました。
 《竜槍の英雄》のひとりとして名を知られる彼が、平和を取り戻した故郷で自分の存在意義を見失い酒に溺れてしまっている…。まだひたすら戦い続けなければならないタニスのような状況であれば、彼もシャンとし続けていられたんでしょうが。この物語、己を知り己の分を弁えられるかどうかが一つのテーマなのかな。 

 魔術師達は善の白ローブ・中立の赤ローブ・悪の黒ローブに分かれている。
 赤ローブから黒ローブに転向したレイストリンは評価も素行もあんな人なので、うっかり「悪のレイストリン」説に頷いてしまいそうだけど、実は彼は「悪」ではないと思うのです。結果的にみた感じがそう分類しやすいというだけで。彼が求めるのはあくまで純粋に力であり魔法であるだけで、魔法に全てを捧げるあまり周囲を顧みない態度が「悪」に見えても、その本質は呼吸をするように当たり前に、自然と弱者に救いの手を差し伸べる姿に顕れていると思います。……とは云え、やっぱり、やってる事見ると絶対に「善」でもないなぁ(^^;) 
 よく「力そのものには善も悪も無い。善も悪もそれを振るう人間に付随する。」とかいいますが、レイストリンの場合「レイストリンは善でも悪でもない。ただ彼をみる者が悪だと判断する。」という気がします。ついには…キャラモンまでが。 
 何故か図書館に5巻だけ置いてなかったので読み飛ばしてしまいましたが(汗)、あの辺でレイストリンの活躍(暗躍?)を見逃してたら勿体無いなぁ…。 


 今作で一番印象に残ったシーンは、やっぱりレイストリン絡みでした。
 
 最終巻。時空間移動で未来に跳ばされ世界の行く末を目の当たりにしてきた兄から、レイストリンが《暗黒の女王》を倒して世界に君臨するようになった未来の有様を知らされた時、レイストリンが自らを犠牲に《奈落》と《クリン》を繋ぐ扉を閉ざす場面。自分の犯す過ちをただすために、それによって自分に降り掛かる過酷な運命を知りながらも、毅然と自分の業を受け入れた姿が印象的でした。 

 タニスが見たとして彼の心に秘められる形で読者に告げられたレイストリンの姿。過去に遡った事によって作中のレイストリンは《大審問》以降のあの特徴的な姿ではなく普通の青年の姿に戻っていたけど、タニスが見た最後の瞬間の彼は、やっぱり金色がかった肌に白髪で金の砂時計のような瞳孔を持つ眼をした彼で、あれは本当にレイストリンの本質に従った行動だったなぁと思うと、切ないながらも誇らしい気分です。 

 辛辣で皮肉屋のレイストリンは弱い者・憐れな者・力無き者には優しい人だったけれど、神に比肩する高みまで昇ってしまった後は、もう彼と同等あるいは彼より上の力を持つ者はおらず、よって全人類が彼の憐れみと庇護の対象になってしまって、それゆえに全てを護る為の自己犠牲に繋がったんだろうか。 

 レイストのことばっかり書いてますが、今作のタッスルも大好きですよ。良いねぇケンダーって。 

 

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ドラゴン・ランス (全6巻 著者:マーガレット・ワイス / トレイシー・ヒックマン

 天空から二つの星座が欠けた――。 
 それは、暗黒の女王の地上への再臨と、暗黒の女王を追う戦士の降臨を意味していると魔法使いは言う。 
古の神々の権力争いが再び地上に影を落す中、真実を求めて冒険者達の旅が始まる。

 随分と昔に読んだファンタジー小説ですが、懐かしくなって読み返しました。 
 どうもストーリー的には内容を余り覚えておらず、兎も角「面白かった」という記憶だけがあります(^^;) あとは非常にキャラクターが魅力的で、中でもとりわけ脆弱な魔法使いのレイストリンが好きだったなぁとか。 

 齢を重ねると好みが変わるというか(笑) 今回読み返してみると、相変わらずみんな魅力的な人物なんですが、レイストリンも好きなんですが、タッスル(ケンダー)とフィズバン(老魔術師)とか、タッスルとフリント(老ドワーフ)とか、タッスルと誰かとか、フィズバンと誰かとか、その辺のコンビで話しが進む場面がすごく好きでした。子供と爺様とか、そんな組み合わせに微笑ましいものを覚えている様子です。 
 や、リーダーでありながら…すぐにこぅ、弱気になったり後悔したり仲間に対しても殺気を覚えたりしてるハーフエルフのタニスの悩みっぷりも面白いですが。 

 
以下、読んでて特に記憶に残ってる好きな場面。   
  
・レイストリンが、どぶドワーフのブープーに別れに際して祝福を贈る場面。 
「大いなる方よ、もし僕に力が――まだ明かされていない力があるものならば、どうかこの小さき者につつがなく、幸せな生涯を送らせ給え。」 
 本来の彼の姿がかいまみえる貴重なシーンですが、後に英雄達の歌の中で謳われたレイストリンの姿がコレなんだなぁと。自身が弱者であればこそ、最弱者の為にこそ心砕く者。 

・英雄的なスターム(騎士)の死と対応するように語られた、フリントのある意味穏やかな死。これは、死に方が穏やかなんじゃなく、死に逝くフリントの心持ちが穏やかなんですが。人生って色々な形があるとシミジミと思う一件です。 
 ドワーフの死に酷く落ち込んだケンダーを慰めた老魔術師の語るところの、あちらの世界でのんびりと手細工なぞしながら日々を送るフリントの姿が本当に穏やかで、うれしかったです。実は…ちょっとばかし、「指輪物語」の至福の地に渡った後の面々のイメージを重ね見てしまいます。 

 他にも色々細々と好きな点や印象的なエピソードはあるけど…、特に上の2点が今の私には記憶に残りました。 
 ってか、本当にタッスルって可愛いなぁ。純粋無垢な子供の典型のようだ。 

 

 
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