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ぬまばあさんのうた

■■こそあどの森シリーズ第8弾。

誰もが知っている子どもの遊び歌「ぬまばあさんのうた」。
一度「ぬまばあさん」と言葉に出したら歌わずにいられない。

つかまえられたら さあたいへん
おおきなおなべで ぐつぐつぐつ

そんな「ぬまばあさん」に実際に会ったというふたご。彼女らはぬまばあさんに会った場所でキラキラ光るものを見つけて、再び湖の西の岸に出かけることにする。
スキッパーはふたごに用心棒に任命されて、彼女らと共にキラキラ光るものを探す事になる。

そこで出会った謎のおばあさん。
この人は本当の「ぬまばあさん」なのか??
3人はぐつぐつと大きなおなべで煮られてしまうのか??


すべての伏線が綺麗に、そしてこれ以上切なく収束するラストシーンまで、いつもながら目が離せません。



■□ 以下、ネタバレありの感想です。□■
↓↓↓

児童文学としての「こそあどの森」シリーズのすごさというか、教育者としての岡田淳さんの「姿勢」を巻を重ねるごとに感じる。
こそあどの森は、最初から食べ物にとてもこだわりを見せていたけれども、ご飯を食べる事も含めて、毎回「日常の動作」をとても大切に描写している。
夕焼けの美しさ。トワイエさんがふだん生活をしている時に使っている泉の水。ポットさんがおじいさんから教えてもらった「よく聞くことが一番大切」という言葉。魚釣りの極意。
普段遊んでばかりいるふたごが、風を読み水を感じて自在にあやつるヨット。


今日本に生きていると、「普段の生活」は、正直得体の知れないものに囲まれて何となく進んでいく。
私たちは、蛇口をひねると出てくる水が、どこから来ているのかよく知らない。
スイッチを入れると稼動するあらゆる電化製品を動かす電気が、どうやって作られてどこから運ばれているのか知らない。
今口に入れているものが、誰がどのように生産して、誰が殺して、どうやって売られているのか、やっぱり、よく知らない。

「命は大切だ」という言葉がある。
そんなことは誰だって分かっている。でも「命は大切だ」と何万回言ってもそれは頭で理解するだけで、何も心に響かない。

例えばこの物語を読んだ時に、言葉に出来ないさまざまな感情が生まれる。それを無理に言葉にするならば、「今生きている世界の美しさ」や「命がどのようにつながっていくのか」という事だと思う。そしてそこから自分への、他人への、環境への畏怖や愛おしさが生まれると思う。これをやっぱり無理に言葉にすると『「命は大切だ」という事を感じた』のだと思う。

正論を標語のように唱えられてもどうにもならない。そのお題目を具体的にするとどういう事なのか。を、岡田さんはひとつひとつ丁寧に描写し、美しくて恐ろしい自然や、人の心を鮮やかに描き出す。

今私は子どもの本は岡田さん位しか読んでいないので、児童文学界の主流がどんな物語なのか、流行はどんな本なのか分からないけれども、本当に、この作家さんの本がたくさんの子どもに読まれてほしい。と思う。

単純にわくわくするし。昔はちょっと描き込みすぎて怖かったけど、今は絵も可愛いし。
何ていうかいい大人になった今感じる、生きていて一番大切なのはディティールだよな〜という実感をとても丁寧に鮮やかに描き出す人だと思う。


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■・・・なんかすごい語ってるけど(笑)!いつものようにもうすべてが可愛くて切なくて泣けた。

■とくにぬまばあさん。
年月が経ちすぎて、色々な事が思い出せなくなって、でも「4人にスープを飲んで、魚料理を食べてもらう」事だけは覚えている所が本当に切ない。
それができないと彼女は身動きができない。このまま命が終わるかもしれない。
「いったいどういうわけで、わたしは子どもたちにスープをのませなければならないのかねぇ。どうして魚料理をふるまわなければいけないのかねえ。きっと、呪いだね、きっと。そうしなければ、呪いがとけないんだねえ。・・・ああ、もう、待ちくたびれちまったねえ。」
・・・切ない・・・。

おばあちゃん子な自分にとっては、何百年は実感するのが難しいけど、百年くらいの年月の積み重ねの感覚は分かると思うので、その月日とか、一体何のためにやってるのか分からないけどしないとどうにもならない、という感じが切なすぎて苦しい。
ぬまばあさんのラストに本当に安心して本当によかった・・・と思った。


■バーバさんの手紙に「石の記憶が読める子」の話題が書いてあって、早速練習するスキッパーが可愛い。
石に話しかけてみてもダメで、今度は心をからっぽにしようとするけど「からっぽ、からっぽ」という事で頭がいっぱいになっちゃうとか。

■仕事が進まずぼんやりするトワイエさんもいい。試験前に突然片付けしたりマンガ20巻一気読みとかした過去のある人の心にもとても響く(笑)。
ポットさんと一緒にはじめて釣りをするトワイエさんの釣りの様子も。
ポットさんがトワイエさんに説明をしようとして「まずウキ下を」と言いかけて「ウキ下」が専門用語である事に気づいて「ウキの位置を調節する」と言いなおすとか。
上で語ってるけど、こういうひとつひとつのディティールが本当に丁寧。

■ふたご=今回はクッキーとキャンデー=の傍若無人ぶりが相変わらずでうれしい。
ほしいものを手に入れるべく、スキッパーを説き伏せるところとか。
スキッパーに都合よく色々押し付けるところとか。
最初にぬまばあさんに会って逃げようとする時の緊張感高まる歌も可愛い。
人生冗談みたいなふたごなのに、ヨットに乗った時だけは風を感じ、水を感じて自在に操る所もよい。


■そしてやっぱり食べ物がおいしそう。
ぬまばあさんの魚料理を食べてみたい。


■今回のすきなさしえ。
ぬまばあさんが恐ろしげに包丁を持っている料理中。すごい怖い(笑)。
あと、何度も出てくるぼーっとするトワイエさん。なべ持ったままぼーっと階段に座っているところとか、すごい可愛い(笑)。


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