掲載日 1999年3月11日(木) 朝刊
--------------------------------------------------------------------------------

指紋押なつ・在日外国人の身になって


 「外国人を犯罪者扱いするものだ」などと批判が強かった指紋押なつ制度が、九日午前の閣議で決まり、全廃されることになった。しかし、外国人登録証の常時携帯義務廃止は見送られた。新たに入管難民法改正で不法滞在罪が新設されることになった。

 全廃を打ち出した法務省に対し、治安・防犯的立場から存置を強く主張する警察庁の考え方が対立していたが、警察庁側が歩み寄る形で全廃となった。

 押なつは一九五五年、朝鮮戦争後の治安対策として設けられたといわれる制度で、在日朝鮮・韓国人や人権団体などの反対運動の高まりを受けて改正を繰り返してきた。

 今回の指紋押なつ全廃は「九二年に在日韓国・朝鮮人ら日本に永住する人をはずした時点で、意味を失い過去の遺物になった」(政府関係者)ことから、指紋押なつ全廃は流れとして既に固まっており、当局の照準はボーダーレス化の中で急増する中国人密航者や不法滞在者対策に移行、その他の改正となった。

 外国人登録証の常時携帯義務については、兵庫県の在日朝鮮人らが抗議の意思を表すため外登証を政府に返上したところ、法務省と自治体がその後八年以上も何の措置もせず放置したことが、二月に発覚したばかり。この間は゛政府公認゛で不携帯状態だったことになり、制度の形がい化を裏付けた格好になった。

 外登法、入管難民法改正の背景には、偽造旅券で出入国を繰り返す中国人マフィアや窃盗団、不法滞在のイラン人による覚せい剤密売など、外国人問題の主役が「来日外国人」問題に変わっているという実態がある。

 来日外国人犯罪は年間三万件を超し、この十年で六倍近くに急増している。中国の「蛇頭」などが絡む集団密航事件で摘発された密航者は九〇年の十八人から九七年には千三百六十人に達し、昨年も千人を超えた。

 現在の入管難民法には、正規のビザなしに密入国して暮らす不法滞在者に対する罰則がなく、密入国しても密航者には強制退去しかなく、三年以上滞在すると時効になる。

 水際での摘発が難しいことから、不法滞在罪を新設して法の抜け穴をふさぐ手を打ったものだ。

 政府が指紋押なつ制度を四十四年も続けた理由の中に在日外国人に対する潜在的差別意識はなかったか。

 携帯義務についても特別永住者・永住者を含め外国人にだけ固有の身分証明を求めていることに内外の批判は強く、全廃が見送られたことで問題として残ることになった。

 国連規約人権委員会も「法の下の平等を定める国連人権規約違反」と政府に廃止勧告していた。

 日本に住む外国人に対し、差別や人権の面で問題はないかどうか、政治的な権利の問題も含めて根本から見直すべき時にきている。