韓国視察・調査報告 「国民共通番号制と住民登録証のゆくえ」

              北川れん子(社民党衆議院議員)

私は、通常国会で内閣委員会において国民的議論を巻き起こしている「個人情報保護」「住民基本台帳ネットワーク」の持つ問題について質問と撤回を求めてきました。そこで、さる9月13日〜15日まで、国民総背番号制が実施されている隣の国、韓国の実情を調査するため訪問しました。

 20代〜30代の日本女性が、2人3人と連れ立って観光旅行をしているのにはびっくりしました。まるで隣町に行くような気軽さで、そこには“近くて近い国”韓国がありました。なのに私ときたら彼女たちとは全然違って、「外国は外国なんだから」と緊張して出かけました。ましてや異国の地で、住民登録証や国民共通番号制に疑義を唱え、「軽やかに」「しなやかに」抵抗運動を繰り広げている方々と出

会うのですから、気は引き締まる上にも引き締まる調査となりました。

 さて添付資料につけました、尹さんのレポート(注1)の年表からわかるように、韓国の住民登録制度は、1960年代の朴正煕軍事政権下に導入され、40年間の間に11回の改訂が行われています。

 住民登録番号が出生時に付番されることは今回の住基ネット導入の日本と変わらないわけですが、指紋押捺制度導入や、国民身分証の発給を17才(改訂前は18才)で義務化し、罰則規定の強化や所持義務(常時携帯)を押し付け、より巧妙な国民管理体制を築き上げてきています。

 目の前にいるその本人の話しよりも、所持している身分証と住民登録番号の方を信頼するという風潮が当たり前のように日常化していました。

 今回、私たちは聞き取りを主目的としたのでわずかな時間でしかなかったのですが、登録証・登録番号がどのように使われているのか、街の中へ出てみて一体それがどういうものなのかを肌で感じ検証してきました。ここで、私たちが聞き取りをした4人の方の声と実情をまずご紹介します。

 

韓国の “国民総背番号制と住民登録証” 

 

ソ・ヘヨンさん(通訳者)女性(小学生の子どもを持つ母親)

 

○ 住民登録番号は、主婦だったら家族全員の分を覚えている。

○ 主婦で収入があれば、住民登録証をコピーして一緒に税務署へ提出する必要がある。

 運転登録証(免許証)が身分証明証のかわりになる場合が多い。

 男性は検問(大学街とか教会の周辺でデモがある場合等)にあう機会が多いので、提示させられることが多い。

○ 住民登録番号は、医療保険証や銀行に子どもの口座を作るときにもいる。

○ 銀行では、実名制になってから見せるようになった。金額によるかもわからないが、小切手・送金・出金する場合は、登録証が必要。

○ 中央図書館は、本の貸し出しは出来ないがコピーは出来る。このとき住民登録番号が必要。

○ 氏名と住民登録番号を一緒に言うことが多いが、同一人物だと確認されることは滅多にないので、他人に成りすますことは可能。

○ 子どもが自分の住民登録番号が何番かと聞いてくるのは就学前で、就学後は、コンピューターゲームを申し込む時に、勝手に覚えて使っている。

○ 別にタブー視されているわけではないけれども、お互い住民登録番号のことを話し合うこともない程、日常化されている

住民登録番号は、子どもがゲームサイトに申し込むときにもいる。

住民登録証を17才(高2)でつくる時に10本の指紋をとられた。

インターネットの成人サイトに申し込むとき、親の住民登録番号だけでOKなので、未成年が成りすまして閲覧していることがあり、現在、社会問題化している。

○ 住民登録証のプラスチックカード化を拒否して申請に行かなかったら、何度も自宅へ洞役所の人が来て作って下さいと誘いかけてきた。(申込み期間中)

 

南炳俊(ナム・ビョンジュン)さん(67年生まれ。男性、衣料組合専従から現在は組合アルバイトへ)

 

○ 韓国組合の状況・・・1300万人の労働者の内、民主労組58万人・韓国労組80万人位(活動していない組合が多い)

○ 韓国は8691年まで社会民主化運動が盛り上がっており、私は学生時代から住民登録制度のことに対して関心を持っていてデモや集会には行っていた。

○ 紙の住民登録証の時には関心は広がらなかったけれどもプラスチック化・電算化において指紋押捺の問題に関心が持たれた。私はプラスチックの住民登録証の取得を拒否しています。ちなみに韓国における住民登録番号の付番は出生時です。

○ 私は運転免許証はもっていない。パスポートは拒否する以前に作っていた。紙の住民登録証は自室において使用しないが、パスポートは常に身分証明書として持ち歩いている。(次回パスポート更新の折にはどうなるか心配)

○ 身分証明証がわりになるのはパスポートと運転免許証で、保険証は写真がないため代わりにはならない。

○ 検問の場合は名前と住民登録番号を問われる。男性の場合は徴兵制施行のため、軍番を使う場合がある。(軍番は30才代まではよく使われる)

○ 拘置所に面会に行く時には、身分(住民)登録証が必要と慣例ではなっていたけれども、パスポートを見せて何時間も交渉した上で、面会はOKになった。

○ 最近は検問も多くなり、警察では、氏名、住民登録番号、指紋押捺まで要求される。

○ 行方不明=住民登録の抹消に等しい

 信用不良者・・・銀行が使えない

 ホームレス、手配者  ・・・犯罪と絡む人や、家(住所)に住んでいない人(最近は犯罪が多いので何千〜何万人もいる※A※A 自分が手配者になったことも知らないこともある。出頭して否認すれば手配者とはならない。

○ 運転するとき、免許証がいるように住民番号は、毎日、何回もいる。

○ 自分が考えつく、日常的に住民登録証が必要な場合

(イ)公式書類(ロ)検問(ハ)警察署、刑務所に行くとき(ニ)公の機関に行くとき(入口で登録証を預かられ、訪問証を胸につけて中に入る)(ホ)小切手の裏書(10万ウォン位〜)・・・番号と住民登録証がいる。(ヘ)ビデオショップ(ト)インターネット(チ)組合員になるとき(リ)大企業を訪問するとき(ヌ)請願の署名用紙等など

○ 基本的には住民登録証には切りかえ時期はない。

ただ傷がついたり、紛失したりしたときで、3ヶ月以内に撮影した写真と1万ウォン位の代金がいる。出来上がるまでに2週間位かかる。(大統領選や国政選挙が近づくと2日間位で出来上がる)

○ 集会を開催したり参加したりすると、不法に警察に連行されたことが3〜4回ある。連れて行かれて聞かれることは、氏名と住民登録番号で、氏名は言っても大丈夫だが住民登録番号を言ってしまうと「君はもう連行されるのは何回目だね」とか「何処の大学を出ているんだね」とか言ってくる。名前と登録番号で全てがわかる。だから、いろんな意味から監視をするためのプロファイルや、ブラックリスト作りはしていると思う。

 

イ・マリオさん71年生まれ。男性、映像作家) 

 

○ 私の場合は一ヶ所だけが不便。なぜならそれはパスポートを身分(住民)登録証代わりに使用しているからです。

 ただ一ヶ所不便な所は警察に於いてです。ここではパスポートが代わりとはならないからです。パスポートの切り替えになる前に運転免許を取得しようと思ったけれども、住民登録証がいるので、今は「どうしようかなぁ」と思っている。

○ 身分証明証の頂点に達するものが指紋

○ (日常化することにより)意識することなく、必要なものと思わせられてしまう

○ 住民登録カードで現に犯罪がおこっている

○ 住民登録番号と名前で詐欺などが頻繁に起こっている。

○ 情報公開用の手続きは、個人の場合はとても大変なのに、公共機関は情報入手がとても簡単

 

ユン・ヒョンシュクさん69年生まれ。男性、大学院生)

 

○ 17才のとき、指紋押捺をしました。このときは、本当に大人になれた気がしました。大韓民国の国民になれたと言う喜びで誇らしかったのです。

 99年の運動の時に、押捺を拒否して今に至ります。運転免許もパスポートもつくらずにやっているのは、代替物に甘えてしまうと考えるからです。

○ 担当する公務員によっては、パスポートの切り替え時、住民登録番号がなくてもパスポートの更新が可能な場合もあると聞いている。

○ 一番大事なことは住民登録証を一年に何回使うかということで、これは何回かしか使わないのに、毎日持つようにさせられていることに気がつくはずです。

○ 99年にプラスチックカードへと切り替え登録をさせたときは、聞いたところによると、役所の職員にプレミアを与えた。正確にはわからないが、人事課で点数を与えたり、プレミアを与えたりしたのだと思う。このおかげで2000万人が登録したと思う。班長、統長が何らかの役割を果たしたと思う。

○ 220億ウォン位のお金を指紋押捺のデータ―ベース化に使ったし、たくさんの警察官を採用したため、後戻りがしにくい。また三星など大企業も食指を示し、政府の思惑と企業の思惑が一致している。

○ 私が一番不便に感じるのは、銀行を利用する時。今博士課程にいるので、大学の中の銀行を使用。学生証もつくっていない。学生証は参政権を認められている。一回や二回の投票のことで作ってしまうにはと思って作っていない。自分を身分証明書ナシのモデルとして何処までやれるか次世代に見せたいのです。 身分証明証なしに、生活できるモデルケースになりたいと思っています。

○ 意識しての拒否者は2000人、プラスチックカードに切りかえてない人は50万人。運転免許証を持っている若い世代が多いと聞いています。

○ 確実に偽造できないと信じているがそうではない。プラスチック製にしたことで偽造は可能になった。材料さえ揃えば作れます。韓国では、住民登録証番号と氏名で詐欺とか様々な犯罪がおこっている。ICチップが読まれるようになると、もっと多くの事がわかってしまうと思う。

○ 韓国で深刻なのはNGOでさえ会員を集める時に住民登録番号を当たり前のように必要としているのです。

ビデオショップのソフトウエアの様式管理が、住民登録番号の枠を設け、記入しないと先へと進めないようになっている。

通販の時も登録証、住民登録番号、氏名が要求される。

インターネットのウェブサイトに「なぜ登録証、住民登録番号を要求するのか?」と尋ねたら、「他のインターネットウェブサイトがそうしているから」というような理由にもならにような答えが帰ってきた。

 以上、少し長くなりましたが今回聞き取りした韓国市民の総背番号制と住民登録証に対する生の声です。

 日本の人々が、生まれたときからある戸籍制度が当たり前だと思っているのと同じように、人間に番号が付番され、身分登録証を常時携帯するのを当たり前だと思っている韓国の人々。あるとき、何かが自分の身に起ったとき、その当たり前と思ってきたものがあまりにも窮屈であったり、不幸であることを押し付けていたのだと気付くとしたのなら、愚かという他ありません。

 今年、強行された住基ネットワーク化のもとの国民総背番号制。きっと戸籍も住民登録もしないで済む天皇家の人々には、番号は付番されていないのでしょう。

小泉首相には番号がついたのでしょうか。

 9月19日の新聞報道では、住基ネットワークシステムの本人選択制を実施した横浜市では「非通知」を申し込んだ市民が133,847人に達したとありました。

 私は、住んでいる尼崎市に対し、通知ハガキを「受け取り拒否」として窓口に返納し、市の個人情報保護法を改正するよう要望しました。国は来年度から、まずは希望者から電子身分登録証を発給します。(子どもも含まれるのですから、恐ろしい事です。)

 超監視・管理国家を形成させてはなりません。まず気がついた人から、その人らしさで声をあげ、行動を起こしましょう。

 日本ではウシは10ケタ、人は11ケタ、韓国は13ケタ、台湾は10ケタ。でも韓国・台湾の人々は、電子化を拒否したのです。

 一方、私たちの国は、一気に電子身分登録証の発給にまでこぎつけようとしているのです。

 また、もうお気づきの方がいらっしゃると思いますが、「個人情報保護法」があろうがなかろうが、住基ネットの問題性は、何ら変わることがなく別物だという事です。この点についてはレポートでも紹介しています。

 来年は、統一地方選です。選挙公約にこの問題を取り上げる候補者に注目しようではありませんか。皆さんの政治への関心をさらに増して頂きますようお願い致します。

 (きたがわ れんこ・衆議院議員)

 

注1 <韓国における住民登録法改定過程の検証>

(尹賢植さんレポートより抜粋)

国家が利便性や安全性、効率性を強調しながらさらに巧妙な技術的装置を利用し、個々人の情報を収集することに力を注ぎ、各種の法律体制を動員して国民に対する監視と統制を合法化してきた過程は、時代の流れとともに検証するとより明確化する。

 

1961年   朴正熙クーデターにより政権につく

1961年5月 住民登録法施行(寄留法が施行されないまま強化された形で体系的な管理システムであるのがこの法律)中央情報部設置法 → 反共法 → 寄留法 → 住民登録法という流れ

法目的は:住民に対する綿密な監視と動態把握をその内容としつつ、それを通じ「行政事務」と表現される国家行為の効率化を図ることを目的とする

1963年 民政移譲、実質的には軍事政権の維持強化を図るため、朴正熙大統領となる

1965年 韓日国交正常化、日韓条約締結、不正選挙を通じ再選 抵抗深化、北朝鮮の挑発名目に国民監視体制を一層強化 

1968年 住民登録法改定 住民登録番号の付与(12) 18才以上の者に国民身分証の発給を義務化、個人の身元状況確認のための装置として住民登録番号を利用、

1970年 住民登録法第2次改定 司法警察官に提示義務を課す。これまで行政義務においてのみ行われていた国民監視と統制を警察による常時的な監視システムとして強化

1971年 朴正熙大統領、金大中に引き落とされるところだったのを暴力で押えつけ再選

1972年10 維新(永久執権を可能にするための維新設置を断行)

1975年 第3次改定、18才→満17才に発給年令を下げ罰則規定を強化、市町や郡守に一定の権限を付与。住民登録番号一斉更新(13桁に)

1977年 第4次改定、個人別に住民登録票を作成するとともに世帯に対する管理統制

1979年 クーデターにより金斗煥政権となる

1980年 光州事件勃発。軍事政権は集会やデモに関する法律、各種労働関係法、国家保安法等を次々改悪、強化しながら国民の基本権を制限する設置をとる。第5次改定、住民登録証の所持義務が明文化、その取扱いに関して強力な義務を課す一方国家権力が任意に住民登録証を確認することのできる余地を包括的に確保

1991年 第7次改正、電算組織による事務処理の根拠を準備

1996年 住民登録証のICカ−ド化が進行されるものの留保される。

1997年 第9次改定、電子住民カードをめぐる市民の反発をかわすため所持義務は廃止、しかし警察が職務追行止、提示要求出来るという条項は残るため事実上は所持義務が残る。住民登録法の目的に、国民生活の便益増進を追加

2000年6月 現行のプラスティック住民登録証に。これは、過去の軍事政権において見られた強圧的な統制装置を脱皮。国民の便宜のための形態はとっているものの、記載される個人情報をより容易に収集、管理、利用を極めて効率的にする事が出来る様、保障した。今まで巧妙な国民管理体制に転換しつつある。

2001年 11次改正、住民登録番号付与根拠を法律で規定

 

<この過程は>

 住民登録法の制定→指紋押捺制度と住民登録番号制度の導入→住民登録証の義務的発給→登録対象者の拡大→住民登録証の機能強化を通じ国民統制の強化→住民登録証所持義務及び警察管理範囲の拡大→電子住民カード化。

 

<検証の結果>

 韓国の住民登録制度は、その制定過程自体、国民の監視、統制のためのもの。その制度強化は、政権交代しても維持強化された。一度国民管理システムが導入されると、撤廃は極めて困難なものとなり、弱まるどころか、一層強化される傾向が証明された。

 変遷過程を通じて強化される統制システムが、国民に対してどのような影響を及ぼすか、その弊害を以下にまとめる。

 

  住民登録法の個別的問題点

1)住民登録法

 世帯別及個人別的に作成される。

 個人情報が140種以上記録、これを電算化した資料には、このうち78種が整理されている

 これには、当初本人が記した以外に、居住地の移動、軍服務経歴、資格証取得事項、などpro-filingが行われている。

2)住民登録番号(13ケタ)

 生年月日、性別、出生地、住民登録申告順位、エラー番号など露出、番号変更できず。差別を可能にする憂慮とともに、この番号が各機関で個人情報を確認するためのマッチングコードとして利用される事で流出利用が無限に可能となりえる。

 情報主体の認識とは無関係に、自らの情報がいつどこからでも、発見されるという現象が発生、人権侵害は一層増加。住民登録番号を要求する法律は、実に259種に。しかし、発生する問題に対しての責任当事者を規定する法律は一つもない間に、私企業においても、この住民登録番号の使用を日常化するという現象が発生。.

3)指紋押捺制度

 在韓外国人、自国民ともに満17才となったもの全てに10指指紋採取。任意で警察資料として使われる。

4)住民登録証

 満17才となったものは、所持義務がある。発給申請表に、平面、回転20個の指紋を押捺。

 登録証には、右手親指の指紋、姓名、住民登録、番号、写真、登録機関、発給日、住民移転事項などが記載される。営まれる。ほとんど全ての社会生活に関連して使用されている。代替身分証である運転免許証、パスポート発給にも、絶対に必要とされる。

 銀行の取引や信用貸出など、経済活動、各種試験など、必ず要求される。

住民登録法改正運動の現在と問題点

 大規模な市民運動とはなり得ず

<その理由>

 
@ プライバシーに対する観念の希薄さ。

A 個人情報の国家登録制度が南北分析状況により暗黙的に正当性が認められてきた。

B 国家に対する国民の義務であるかのような錯覚。

C 一度身体で慣れてしまった慣習に対しては、問題提起すら容易になされない事を切実に感じている。

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