朝日新聞 99.6.15

返します『外登証』 大阪の2人「常時携帯に抗議

なぜいつも、外国人登録証明書を持ち歩かなけれ
ばならないのか。いつになったら「管理の対象」で
なくなるのか一。今国会で審議申の外国人登録法
の、「改正案」は、在日韓国・朝鮮人らが求めてきた
外登証の常時携帯義務の廃止が見送られたまま成立
する可能性が高い。「どうしても納得できない」と
五日、大阪の二人が抗議の意思を込めて外登証を法
務大臣あてに送り返した。全国の在日外国人にも
「返上行動」への参加を呼びかけていく。


 大阪府豊中市の洪京子さん(四二)は十四歳の時に外国人登録をし、
初めて指紋を取られた。陰うつな気分になったのを覚えている。
二十九歳の時、友人が指紋押なつを拒否した。本名での就職も
考えられない時代だった。それでも朝鮮人として意思表示をしていく
ことで、心が解き放たれていった。
 指紋押捺拒否は1980年代に全国に広がり、逮捕者も続出した。洪さんも
「強制退去になったら、日本生まれの自分はどうなるのだろう」と本気で
考えたという。

 九年前、今度は登録の切り替えを拒否した。その時に手元に残った古い
外登証をこの日、送り返した。
 サッカーのワールドカップを日韓で共催する時代を迎え、日本の杜会も
少しは変わってきたと思う。それでも、小学生の二人の子どもは差別を受
けた経験がある。
 いま、外国人登録の年齢は十六歳。指紋押なつはなくなったものの、
子どもたちがその年を迎えるまでに常時携帯という「鎖」はなくなって
いるだろうか。法律だけでなく、「外国人は管理の対象」という価値観
自体が変わっていてほしいと思う。

 大阪市生野区の鄭雅英さん(四一)もこの日、外登証を返上した。八○年代の
相次ぐ指紋押なつ拒否に自らも加わった。それ以降、常時携帯義務の廃止
などを求めて運動を続けてきた。
鄭さんはいう。「もう在日四世、五世が生まれている時代。いつまで、管理の
対象にされるのでしょうか。若い世代に同じ苦悩を残さないためにも、声を上
げ続けるしかない」

《外国人登録法の改正問題》
 永住外国人の指紋押捺は93年に廃止され、今回の改正案では非永住者の廃止が
盛り込まれた。これで指紋押捺は全廃されるが、外登証の常時携帯義務の廃止は
見送られた。参院で携帯義務違反の罰則が刑事罰から行政罰に修正されたが、国連の
規約人権委員会が廃止を勧告している携帯義務が残されたことや、登録原票の
本人以外への開示が盛り込まれていることに、在日外国人らの反発は根強い。
法案は現在、衆院で審議されている。

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