
1983 from『This Charming Man』 1984 from『The Smiths』
1984 from『Hatful of Hollow』 1987 from『The World Won't Listen』
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This Charming Man 1983 |
| 01 This Charming Man スミス珠玉の初期シングル群の中でも、特に人気の高い1曲。元来スミスは別の作品を2ndシングルに準備していたのですが、ラフ・トレードのジェフ・トラヴィス社長がこの作品を一聴して、次のシングルに推した、という逸話は有名です。確かにスミスの作品中、最もコマーシャルな要素を備えている事は間違いありません。ですが、もちろん『ディス・チャーミング・マン』が単なるコマーシャル・ソングに終わっているわけではありません。例えば、コーラス部分におけるロークのベース・フレーズ。ジョニーの変幻自在なアルペジオに追従してか、まるでウッド・ベースの様なフレーズを展開し、プレシジョンらしいトレブリーかつ軽快なサウンドで、楽曲を非凡なものにしています。モリッシーの歌詞は、センセーショナルなほどに同性愛の世界を漂わせ、かと言って野蛮な表現でなく、影のある文学性を帯びています。そして、このシングルはスミスに成功をもたらし、カレッジ・チャートのカリスマへと変貌させたのです。 ( →『The Smiths』収録テイク) ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
03 Wonderful Woman 12インチ『ディス・チャーミング・マン』のB面に収録。トロイ・テイト版1stには収録予定でした。物憂げなジョニーのハーモニカが美しい名作です。 モリッシーお得意の女性バッシングともとれる歌詞が印象的な作品で、例えば『ウィリアム』では『結婚して指輪をちょうだい、なんて言う太った娘とよく一緒にいられるね』と歌い、『プリティ・ガールズ・メイク・グレイヴス』では女性への不信感を露にしている様に、ここでも彼は女性から逃げ出してしまうのです。 それにしても気になるのは、CDの歌詞カードと、中川五郎氏の名著『モリッシー詩集』ではまるで違う聞き取り方がされている点です。さて、どちらがモリッシーが実際に綴った言葉なのか、ご存知の方は教えて下さい。 |
| 02 Jeane 元々7インチ『ディス・チャーミング・マン』のB面に収められた作品で、1992年にワーナーからCDで再リリースされる際に、12インチ盤のB面作品と並べて収録されました。 実に初期スミスらしい、ややもすると単調と悪態をつかれかねない曲調とアレンジで、シンプル極まりないリフなど、まるでバッキングのプレイみたいに地味なんですが、ひと度ハマれば何よりも好きになってしまう魅力を持っています。今となっては最も好きな曲のひとつです。 お蔵入りの1stでお馴染みのトロイ・テイトがプロデュース、もうそれだけでもわくわくしてしまいます。 |
04 Accept Yourself ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
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The Smiths 1984 ( →アルバム・レビュー) |
| 01 Reel Around The Fountain バンド名がそのまま付けられたファースト・アルバムの冒頭を、静かに飾る名曲。ともすれば地味に捉えられがちな本作によって、批評家やファンの多くが持つ「1stアルバムは物足りない」というイメージが増強されてしまっている点は否定できないでしょう。しかし熱心な初期スミスのファンにとっては、本当にかけがえのない、大切な1曲なのです。未完成たる脆弱さが一瞬だけ放つ美しさ、そんな初期スミス特有の切ない魅力が凝縮されているからです。 モリッシーによる歌詞は、小児愛を彷彿させるとしてバッシングの対象となりました。本人によって否定されましたが、どんよりと薄暗い英国の白昼に漂う、妖しげな雰囲気は、そう解釈されて仕方がないほど出口が見えません。ですが、僅かな狂気を有したその薄暗さにこそ、アートたり得る要素があるのだとも、タブーを助長するつもりはないと前置きした上で断言したいです(犯罪的な歌ではない、と僕は信じていますから)。 メンバー以外の手によってハモンドとピアノの音色が加えられていますが、サウンドにもたらした効果は絶大と言えるでしょう。 ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
07 Still Ill 『肉体が精神を司るのか、精神が肉体を司るのか、僕にはわからない。僕は今も病気なんだろうか』の一節ほど、初期スミスの存在意義を強く感じ取れる場所はないのではないでしょうか?青臭い切なさ、その悲痛さ。『スティル・イル』は本当に泣けます。 楽曲としての魅力にも長けており、その高い文学性も伴ってスミスの代表曲のひとつとして、ずっと最後までライブで演奏されました。ジョニーのフレーズが、サビで砕けて広がり始める様は、もはや筆舌に尽くしがたいカッコよさです。 ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
| 02 You've Got Everything Now 『きみは今すべてを手にいれ、僕の人生は悲惨』と歌われる、初期のマスター・ピースのひとつ。モリッシーによる俗物への強烈な批判は皮肉たっぷりに展開し、その痛快さ故かライヴでも重用されました。 ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
08 Hand In Glove スミスのデビュー・シングルであり、この作品を彼らのベストとする向きも多い最重要曲。また、アルバムの中で『スティル・イル』から続く流れは、まさに感動のハイライトです。 『手に手をとろう、何をも怖くない』と歌われる、弱者の抵抗(つまりここではマイノリティたる同性愛者です)。ジョニーという、スミスという共同体を持ち、表現者としての自由を手に入れたモリッシーは、ついに、ここに立ち上がったのです。『ザ・スミスを始めた時、間抜けでいやらしく女々しいスティーヴン・モリッシーは死んだんだ』、後に語られるモリッシーの言葉が頭をよぎります。 でも、その儚さたるや酷いものでした。高らかに声を上げて戦った主人公は、実はその無力さをどうしようもなく分かっていたのです。『ハンド・イン・グローヴ』最後の一節は、次の通りです。 『だけど自分の運命はわかってる。たぶん、君には2度と会えないと思う。』 ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
| 03 Miserable Lie 深く打たれるクラッシュ・シンバルに導かれてゆったりとスタートした切ない曲調は、あっという間に激しくテンポアップし、挙句にはファルセットで歌いあげられるエキセントリックな終焉へと向かうという、レパートリー随一の劇的な展開を持っています。モリッシーのヴォーカルの音像処理は他にも増してチープですが、それがかえって惨めさを演出しているのだと思うのは、ファン心理というものでしょうね。 |
09 What Difference does It Make? ザ・スミスの3rdシングル。初期のシングルは全て素晴らしいものばかりですが、もともとはジョニーのフレーズによってスミス・ファンとなった僕にとっては、彼のベスト・プレイが詰まったこの作品が、スミスの楽曲中一番好きです。 実際、本作に聴くことが出来るジョニーのギターは微塵の隙もないカッコよさで、どれだけ聴いても飽きることがありません。ジョン・ポーターによると、ギターが14、5本オーヴァーダブされているそうですが、音色面での素晴らしさはこのエピソードに起因するところが大きいと思われます。一方でフレージングの良さは、音楽オタクでもあったジョニーの、サンプリング感覚と溢れるイマジネーションとが生み出した、ポップ・レコード史上の至宝であると言えるでしょう。 とりわけエンディングで繰り返されるリフの気持ちよさは圧巻で、リードが登場してからのフレーズの掛け合い(その全てをジョニーが別録りしているわけですが)は、もっともっと聴き続けていたい気持ちにさせるのです。 ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
| 04 Pretty Girls Make Graves (当時の)モリッシーの女性嫌いを語るに、もっとも手っ取り早いのは、こうした歌詞を取り上げることでしょう。性に貪欲で、下品な笑みを浮かべた女性たちに応えるには、僕は繊細すぎると歌うモリッシー。自ら(あるいは物語の主人公)を自嘲する様を匂わせることで単なる性差別を超越させていますが、コンプレックスに満ちた当時の彼が漏らした、素直な思いであったと捉えてもいいでしょう。 裏のリズムで楽曲を彩るベース・ラインと、エンディングで全体がフェイド・アウトする中で唯一旋律を奏で続けるギターが印象的です。ジョニーの手によって、『ディス・チャーミング・マン』『スティル・イル』と同時に一晩で書かれた曲であると本人がインタビューで答えていましたが、いかにジョニーやモリッシーがこの当時、アイデアに溢れていたかが伺えます。 |
10 I Don't Owe You Anything 淡々とした展開とヴォーカル、そして美しいギター・ハーモニクスが印象的な佳作。最後に打たれるシンバルにはモジュレーション・エフェクトが掛けられ、いよいよ終焉へと進みます。 |
| 05 The Hand That Rocks The Cradle シンプルな楽曲の多い1stにあって、とりわけ抑揚の少ないこの作品は、むしろ歌詞におけるインパクトによってリスナーを釘付けにした様です。『リール・アラウンド・ザ・ファウンテン』同様、どこか異質で狂気的。ですが擁護派にとっては、モリッシーの非凡な作家性ばかりを見出す結果となったのです。 |
11 Suffer Little Children 常に物議を呼ぶことで、多くのマス・メディアの攻撃対象とされてきたスミスの楽曲ですが、『サファー・リトル・チルドレン』における騒動は特に大きかったと言われています。イギリスで実在した幼児誘拐殺人事件を扱った歌詞が、多くの人々の反感を買ったことは当然とも言えることでした。モリッシーにしてみれば、これは犠牲者に想いを捧げた作品で、また事件を許したマンチェスターという土壌への怒りの表明でもあり、そこに邪な気持ちはなかったのです。とは言え、これをポピュラー・ミュージックのレコードとして販売することに意義があったかどうか。正しかったかどうか。たしかに難しいところだと思います。もしかしたら、僕がスタッフであったなら止めていたかも知れません。 この作品には、モリッシーの歌詞にいたく感動したジョニーが楽曲を書き上げた、というエピソードがあります。だとすれば、歌詞先行で作られた作品ということになります。それだけにメロディアスな印象こそありませんが、物悲しい雰囲気は他の追従を許しません。 |
| 06 This Charming Man 2ndシングルにして出世作でもある、スミス屈指の人気作品。 なお、オリジナル版『ザ・スミス』には本作は収録されておらず、ワーナーによる再発盤から本編に組み込まれました。そういった経緯から『ザ・スミス』内で『ディス・チャーミング・マン』を紹介するかどうかは散々悩んだのですが、UKオリジナル版には片面シングルが限定で付属した事実があったことと、6トラック目に収録されることで、その芸術性はまったく損なわれていないと解釈したので、ここに落ち着けることにしました。 ( →EP収録テイク) ( →『Hatful of Hollow』収録テイク) |
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Hatful of Hollow 1984 ( →アルバム・レビュー) |
| 01 William,It Was Really Nothing (特に初期の)スミスに、切ない青臭ささを求めているのなら、このシングルに勝るものはないかも知れません。そこはかとなく同性愛を匂わす、短編シネマの様な佇まい。『ねぇウィリアム、本当はどうってことなかったんだよ』の一節は、信者にとって永遠のフレーズともなっています。また、スリーヴには印刷されることがなかったサビ後の呟きや、最後のファルセットから感じ取れる物語性が、楽曲をよりアートにしている点も見逃せません。 それにしても、たった2分強で、スミスのシングルの真髄をすべて聞かせてくれる『ウィリアム』は本当に美しいです。ジョニーによる12弦ギターのカッティングと、ブリッジのアルペジオは、初期スミスの『ギター・ポップ・バンド』としての価値を決定付けるプレイと言えるでしょう。 |
09 Heaven Knows I'm Miserable Now かの問題作、『サファー・リトル・チルドレン』をカップリングしていた為、少々割りを食ってしまった形ですが、この4thシングルの格好良さは半端でなく、またそれはジョニーの繊細なギター・ワークによる恩恵です。 ギター・フレーズの全てが感涙ものの美しさですが、中でもサビ辺りで16分のカッティングに移行する瞬間は、明らかにマジックが宿っています。痺れるようなクリーン・トーンの音色も素晴らしいですが、タイミングの妙という点でもセンスは抜群です(一般人の大概が、一小節後から刻み始めるでしょう)。曲の柱は、いわゆるメジャー7th系ですが、ベースとの絡みがよく練られていて、より豊かな表現が随所に散りばめられている。それだけに、ジョニーの『リズムトラックが良くない』という発言には驚いたんですが・・・(あるいはジョイスのみを差しているのでしょうか?)。ちなみに、外出用のヘッドフォンを選ぶ時はいつも、『ヘブン・ノウズ・アイム・ミゼラブル・ナウ』のギターが粒立ち良く、キレイに鳴るかで良し悪しを決めています。 モリッシーの歌詞はパンキッシュに終始してそうで、その実、負の要素はまとったままの抵抗です。彼が『僕はもちろん逃げ出した』という方法に頼らずに饒舌に語るには、もう少しだけ時間がかかるのでした。 |
| 02 What Difference does It Make? 3rdシングルのジョン・ピール・セッション版。先にも書いた通り、個人的にはジョニーのギター・トラックに魅入られているので、ライヴや本作での『ホワット・ディファレンス・ダズ・イット・メイク?』は、オリジナルに及ばないと感じてしまいます。モリッシーが後にライブでの封印を決めてしまいますが、案外、音の薄い『ホワット・ディファレンス〜』が耐えられなかったのでは、とも勘ぐってしまうのです。 ( →『The Smiths』収録テイク) |
10 This Night Has Opened My Eyes シンプルなアレンジにあって、マイクによるハイハットを使ったブレイクが印象に残る作品で、アルバム発売の時点では、初めてレコード化された唯一の曲でした。赤ん坊の死を取り上げたショッキングな歌詞はたちまち問題視されましたが、歌詞や言動にまつわるこれまでのトラブルの歴史を見れば、当然な結果でもありました。 |
| 03 These Things Take Time 同じくラジオ用のスタジオ・セッションによるテイク。基本的に、正規品としてこうしたヴァージョンが聴ける点において、『ハットフル・オブ・ホロウ』の価値が高いことは間違いありません。事実、先の『ホワット・ディファレンス・ダズ・イット・メイク?』以外ではほとんどのラジオ・セッション版を大変気に入っています。各楽器の生っぽさや、アレンジの妙を堪能できるからです。 サビ部分でのギターが印象的な作品で、オリジナルは『ホワット・ディファレンス〜』の12インチに収められていました。 |
11 You've Got Everything Now 1stに収録されていた名曲のラジオ用セッション。劇的なイントロの素晴らしさに比べると、エンディングの物足りなさに若干の寂しさも感じてしまいます。編成の都合上、高音のギター・パートがないのがその理由です。 ( →『The Smiths』収録テイク) |
| 04 This Charming Man ジョン・ピール・セッションによる『ディス・チャーミング・マン』は、ブートなどで聴くことが出来るライヴでのそれに比べて、幾分か落ち着いた印象です。気分にもよりけりですが、オリジナルよりリラックスしていて何とも愛らしい本作の方が好きな時もしばしばです。リズム先行のイントロは少々違和感がありますが、少ない音数で高い効果を上げているアレンジには見るものがあります。 オリジナル版の項でも書いた、サビにおけるアンディの素晴らしいベース・フレーズは、ミックス上こちらのヴァージョンでより克明に楽しむことが出来ます。 ( →EP収録テイク) ( →『The Smiths』収録テイク) |
12 Accept Yourself デヴィッド・シャンセン・ショウ用のライヴ・テイク。個人的な意見ですが、アレンジや楽曲そのものに何処かスミスらしくない違和感を感じるので、初期の作品の中では珍しく、あまり積極的に聴いていません。モリッシーの詞も、もしも他人に向けて語っているのだとしたら、何だか、随分とまっとうなアドバイスですね。 |
| 05 How Soon Is Now? 明らかにこれまでのスミスとは赴きの違う、サイケデリックで不気味なバッキングを持つ作品。幾重にも重ねられた、トレモロ・ギターの壁。不安感を醸し出すチョーキング(スライド?)。後にシングル・カットもされるスミス屈指の代表曲のひとつ『ハウ・スーン・イズ・ナウ?』は、全作品を通してみても、最も特異なサウンドに満ちています。人としての愛を渇望し、孤独から逃れようとする歌詞も人々の心を揺り動かし、『これまでどこにもなかった曲』としてファンを魅了しました。 ところで、ジョニーが自らのプレイを『数小節ごとにビリっとくる電気ショック』などと形容したらしいですね、恐らくガガッ、と時折鳴らされるフレーズのことだと思います。このサウンド自体は素晴らしいんですが、電気ショックという明確なイメージがあったのなら、ギターで代用しない何かのサンプル音の方が適切だったかも知れません。よりブッ飛んだ世界を表現できた様な気がするからです。同じ印象は『ミート・イズ・マーダー』の逆回転音でも感じていて、明らかにバレバレなピアノ音なのがちょっと冷める気がしませんか?「せっかく雰囲気モノなのに、代用かぁ」って、まぁ個人的な印象なのですが。 それにしても興味深いのは、彼はこれらのサウンドを『2度と再現できない』と発言している点です。緻密に変則チューニングを使いこなす一方で、スタジオでは無鉄砲に掛け録りなどを進めていったのだろうと想像させるエピソードです。 |
13 Girl Afraid 『ヘブン・ノウズ・アイム・ミゼラブル・ナウ』の12インチ盤に収録された作品で、優れた点の多い傑作です。その幾つかを挙げてみましょう。 まずモリッシーの歌詞ですが、一組の男女間のすれ違いにスポットを当て、1コーラス目で女性目線から、2コーラス目で男性目線からひとつの出来事が語られています(こうして説明してしまうと、いかにもチープに聞こえてしまいますが・・・)。そのアートとユーモアの折り合いの良さは、モリッシーの文才面目躍如といった具合です。最後の一行、『I'll never make that mistake again,no!』の歌いまわしや、音像処理も素晴らしいですし、ドアタマのスネアのディレイも何気なく好きです。アレンジ面では、ジョニーの分散和音風のリフが、ベースとの兼ね合いも含めて実に格好いい。しかも奇をてらわない、バッキングさながらのイントロを長時間繰り返してくれるのも、ジョニーのギター・ファンには大変嬉しい構成です。得意のトレモロも、エッセンスとしてさり気なく使うあたり、さすがですね。 何より楽曲自体の出来が良くて、B面中盤のハイライトを受け持っています。 |
| 06 Handsome Devil 非常にモリッシーらしいタイトルを持った作品の、ジョン・ピール用セッション。性的な表現が相次ぎますが、果たしてここに登場する二人称は男なのか女なのか、あるいは性別を超越しているのか?諸説を生ませる罠を、モリッシーは歌詞に忍ばせました。 マーはこのライヴ感に富んだヴァージョンを気に入っていたといいます。 |
14 Back To The Old House スタジオ・レコーディングされたヴァージョンよりも、ラジオ用にスタジオ・ライブで録音されたこちらのヴァージョンの方が圧倒的に人気が高い様です。さもありなん、このふくよかなマーのアコギの音色は、本当に美しいですから。 モリッシーは、かつての情景を悲しげに歌い上げています。あの日すれ違った「きみ」への恋心が、「これまでで最も悲しい出来事」として残っている、この歪曲した青春と人格形成。『昔の家に帰りたくない』として歌い出したモリッシーでしたが、痛みと屈折とを繰り返した末に、『帰りたい、でも帰るもんか』と、心の揺れを吐露するのです。この男のどこに共感するのかわからないまま、何故か泣けてしまうのです。 |
| 07 Hand In Glove 7インチ・シングルに収められていたオリジナル・テイク。イントロ、アウトロがフェードで丸めてあるので、アルバム用のテイクとの差は一聴してわかります。個人的にはスネアからスタートする方が好きですが、中盤に気持ちの良い揺れを感じるのはこちらですね。 意味性で音楽を語るべきではない、とは重々意識しているんですが、やはりセルフ・プロデュースでハコに篭ってレコーディングしたこの『ハンド・イン・グローヴ』には、伝説の始まりという特別な神通力が宿っている気がしてなりません。 ( →『The Smiths』収録テイク) |
15 Reel Around The Fountain 本作がどれほど、スミスを愛する者にとって大切かは1st『The Smiths』での拙文を読んで頂くとして、フラットしてスタートする歌声にひっくり返りながら、今日もこのラジオ・ヴァージョンを堪能します。ドラムスのみのイントロから、いきなりヴォーカルが入るスタイルの『リール・アラウンド・ザ・ファウンテン』ですから、ライブなどでは一発ギターでコードが与えられるスタイルになっています。それを聴く度に、このテイクを思い起こすのです。 ( →『The Smiths』収録テイク) |
| 08 Still Ill ライヴでのハイライトを受け持つ『スティル・イル』だけに、こうしたスタジオ・ライヴ版には適している筈なんですが、単純にテンポのせいか、ややグルーヴに欠けます。平ウタ部分のギター・フレーズが大好きなので、それをより楽しめる意味では、『ザ・スミス』収録のテイクよりもよく聴きましたけど、ジョニーのハープは浮いてしまっている気がしますが、どうでしょう。 ( →『The Smiths』収録テイク) |
16 Please Please Please Let Me Get What I Want このあまりにも短い、感動的な作品で終わることによって、編集アルバム『ハットフル・オブ・ホロウ』の品位はますます高まるのです。『どうかひとつだけ、欲しいものを手に入れさせて下さい』というモリッシーの願い。懇願に至る理由がいろいろと述べられていますが、『長い間、夢なんてなかった』彼は、祈り方まで歪なのです。そこがどうしようもなく切ない詩作は、明らかに芸術の域に到達しています。また、ジョニーのアコースティック・ギターとマンドリン・ソロが楽曲の美しさを決定的にします。 |
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The World Won't Listen 1987 |
| 01 Panic 全英チャートで11位と好セールスを記録した、スミス12作品目のシングル曲。『ディスコを焼き払え、DJを吊るしあげろ』という歌詞が、(何故か)黒人差別と捉えられる騒動に発展したことは有名です。ジョニーらの弁によれば、チェルノブイリ事故のニュースに続いて、事もあろうにワム!の下らない曲を流したというラジオDJの配慮の無さを非難した歌詞だというのが真相らしいのですが、いずれにしてもモリッシーは大のディスコ嫌い、ダンス・ミュージック嫌いの様ですね。 しかし、好戦的で過激な言葉を、こんなにポップでバウンシーな楽曲に乗せてしまうモリッシーやジョニーの感性ってどうなっているのでしょうか(ましてや『DJを吊り仕上げろ』のリフレインなんて、子供たちのユニゾン付き!)。それでも、シリアスなメロディに乗せた時よりも辛辣なメッセージが映えてしまうのがスミスの不思議なところです。 |
10 Asleep 『心に茨を持つ少年』のB面に収録されていました。物悲しいピアノと不気味な風の音だけが鳴る空間で、モリッシーは歌います。『眠れる様に歌って。そして起こさないで欲しい。誤解しないで、僕は本当に喜んでこの世を去るんだ』。終焉は、オルゴールによる『蛍の光』。この世に希望を感じない人は聴くべきではないでしょう、それほど絶望的な、悲しい悲しい歌なのです。 |
| 02 Ask 『パニック』に続くシングル作品で、長いタイトルを得意とするモリッシーにしては何とも簡潔なタイトルのシングルが2作続いたことになります。随一の派手な明るさを持ったサウンド、その開放感は多くのリスナーに受け入れられた様で、前作に続いてのヒットとなりました。ちなみにこの明るさの正体は、あのスティーヴ・リリィホワイトによるミックスで、さらにコーラスではカースティ・マッコールが参加。スミスには慢性的に不足した「ハモリ」が持つパワーをここに証明しています。ヴォコーダーによるバッキング・ヴォーカルに掛けられた8分刻みのトレモロ効果はいかにもジョニーらしいアイデアですから、コチラはジョニー発案かも知れませんが、グレイグ・キャノン含め外様の取り込んだ新鮮な空気が宿った、異色のシングルと言うことが出来るでしょう。ジョニーのクリアでソリッドなリフも胸躍らせます。 モリッシーによる歌詞も何とも感動的だと思いませんか。『自然の言葉を読み取れないのかい?僕に尋ねてごらん。これが愛じゃないって言うのなら、それじゃ爆弾だ』。 |
11 Unloveable 『ビッグマウス・ストライクス・アゲイン』12インチ盤にのみ収められていた佳作で、7インチ派には嬉しい収録となりました。この後に続く『ハーフ・ア・パーソン』などもそうですが、中期シングルのB面には初期スミスを彷彿とさせる楽曲が多く、以前からのファンにも『ザ・ワールド・ウォント・リッスン』が支持される理由となっている気がします。 シンプル極まりないクリーンなギター・サウンドとプレイはかえって潔さすら感じる程で、自らを『可愛げのない奴だって分かっているよ』とするモリッシーの物言いまで含めて、大好きな1曲です。地味だとレッテルを貼られがちな作品ほど、スミスにしかない風情があると思います。 |
| 03 London ハードでシリアスなサウンドに乗せて綴られる物語は、短い断片でしかありませんが、痛いほど胸を締め付けるものです。家族を、恋人を残してロンドンを目指す彼の判断の是非を、冷徹にも問いただすモリッシー。『いい気になっているかもしれないが、ここを離れられない者たちは悲しんでいたんじゃない、妬んでいたんだ』と。『恋人は知っている、君が二度と戻らないんだ』と。 |
12 Half A Person 『ショップリフターズ』のB面作品。ジョニーの12弦リッケンバッカーが繊細で円やかなギター・サウンドを形成し、惨めな主人公そのままの冴えないモリッシーの歌声をサポートする。まさしく1stアルバムの頃のスタイルで届けられる『ハーフ・ア・パーソン』を僕はどうしても特別に捉えてしまいます。後期にもこんな作品をたくさん残してほしかった、と願ってしまうのです。また、こんなにリッチなサウンドで1st『ザ・スミス』を録音してくれていたなら・・・。そんな風に無いものねだりをしてしまうくらい、本作はスミスらしい屈折した青臭さに満ちた名曲だと思えるのです。 『6年間もの間、君のことを追って生きてしまった』という部分はともかくとして、恐らく『16歳で不器用で引っ込み思案。これが僕の人生。5秒だけくれたら全部話せるよ』とは、引き篭りで苛められっ子だった自らの過去と無関係ではないでしょう。規模のでかいコンサートで『The Queen Is Dead』の旗を振りかざすよりもよっぽど、こんな描写にこそ人の心を鷲掴みにしてしまうモリッシーの恐ろしいエネルギーを感じるのです。 |
| 04 Bigmouth Strikes Again 傑作の名高い11thシングルです。 |
13 Stretch Out And Wait 『シェイクスピアズ・シスター』12インチ盤に収録されていた『ステレッチ・アウト・アンド・ウェイト』の別テイク。ブラッシュ・スネアを用いたワルツで、『アンラヴァブル』や『ハーフ・ア・パーソン』同様、B面にそっと収まっていた曲でもすこぶる出来が良いのが、シングルを愛したスミスの面目躍如なところです。 アコギを刻むアレンジが、元来ギター・ポップ・バンドとして優秀であったことを再確認させるに充分です。音も実にいいですしね。 モリッシーがこうして、若者のセックスに無粋な議論など必要がないと歌うことは驚きなんですが、果たして言葉通りに受けとめるべきなのかは、未だ謎です。 |
| 05 Shakespeare's Sister この『シェイクスピアズ・シスター』は、スミスのシングルでも特に好きな作品です。2分に凝縮された「ロックのシングル、かくあるべし」といったサウンドと詞が、例えスミスが(本作直前にリリースされた『ミート・イズ・マーダー』をもって)ビッグになり始めていたとしても、そのアートたる本質を見失ってはいないことを提示しているのです。 苦悩する若者が図る身投げ。彼は『これで最愛の人に会いにいけるんだ、ママ、行かせておくれよ』と懇願し、崖下では岩々も『そんな痩せっぽちな体は、俺達の上に投げ捨ててしまうんだ』と誘います。こんなショックなモチーフを用いてても、モリッシーの想いはこうだと言います。『ポジティヴに生きた方がいいんだ』と。 それにしても見事なのは、イントロからリフの流れです。これぞジョニーが描くシングル像なのでしょう。得意のトレモロも効果抜群ですし、また本作の様にギターを中心に置かない作品でも、彼のギター・ワークの妙は何気ないところで光ってしまうものです。例えば、間奏後にはみ出した小節でのストロークなんて、最高にヤバイポイントだと思うわけです。 |
14 That Joke Isn't Funny Anymore 9枚目のシングルを、ラジオ・エディットで収録しています。 |
| 06 There Is A Light That Never Goes Out いかにも唐突な選曲の様にも見えますが、実はフランスではシングル・リリースがあったり、後にシングルCD化が成されたりしているので、「シングル作品による編集盤」というコンセプトから大きく逸れてはいないとも言えます。 |
15 Oscillate Wildly 『ハウ・スーン・イズ・ナウ』の12インチ・シングルB面収録作品で、リリース順で言えば、スミス初のインストゥルメンタルということになります。タイトルは言うまでもなく、オスカー・ワイルドをもじったもの。 ジョニーは歌モノとして作ったのですが、モリッシーがこれを拒否、しかしインストゥルメンタルとしてリリースすることになり、陽の目を見たという経緯があります。それだけに「如何にもオケ」という様相なんですが、これが幸い(?)して、僕らジョニー・マー・ファンの夢でもある「バッキングだけを心いくまで楽しみたい」という向きには最高の贈り物となったワケです。無論、ミックスはバッキングとは変えてありますが、代わりのリード楽器なんて入れないでいてくれて本当に良かったと思います。 それにしても、モリッシーは何故気乗りがしなかったのでしょうか。僕には今にも、この美しいコード進行からモリッシーの声が聴こえてくる様に感じますけれど。 |
| 07 Shoplifters Of The World Unite 1987年最初のシングルであり、後期スミスを象徴する様にブ厚いサウンドです。劇的で大袈裟、しかしキャッチーとは言い難いメロディで『ショップリフター(万引き)諸君、世界を征服しよう』と歌う作品をシングル・リリースするあたり、ちょっと異常な気もします。ただし、物珍しいタイトル(一部マスコミが「犯罪を助長している」などと野暮なことを書きたてたことは言わずもがなです)が幸いしてか、売れ行きは良かった様ですね。 とは言えやはり、ヒステリックなギター・ソロ、過激なタイトルを除けばやや地味なシングルとも言えるでしょう。 |
16 You Just Haven't Earned It Yet, Baby 装飾過多なジョン・ポーターの演出が気に入らなかったモリッシーによって、この「幻のシングル」は急遽、『ショップリフターズ』をA面に据えたシングルへと差し替えられたわけですが、どう見ても華がある『ユー・ジャスト・ハヴント・アーンド』の方がシングル向きであったことは、異論のないところでしょう(『ショップリフターズ』がシングルだなんて、それもまた一興なんですけれど)。高揚感と緊張感とを両立した楽曲は、若干力み過ぎな印象もありますが、やはり優れた作品だと思います。恐らくヒットも期待できたであろう本作が、一転してコンピレーションの片隅に追いやられてしまったことは残念です。ちなみに『ラウダー・ザン・ボム』などで聴くことが出来る別ミックスでは、さらなる派手な装飾があります。 モリッシーによる『君はまだ甘いんだ、何かを手に入れるに値しないのさ』という突き放した歌詞は、たぶん以前の彼が言われたことのある言葉を、皮肉として別の誰かに言い放っているのかも知れません。それをモリッシーに語るに値しない人間に対しての皮肉として。 |
| 08 The Boy With The Thorn In His Side 10枚目となる名シングルが、(恐らく)ピチカート音が強調されたミックスで収録されています。 |
17 Rubber Ring 『心に茨を持つ少年』12インチ盤に納められた『ラバー・リング』は大人っぽい雰囲気を持ち、ストリングス・サウンドやヴォイス・サンプルなども取り入れた意欲作と言えそうです。モリッシーは嘆きます。「君にとっての本当に大切な歌を、君が忘れていってしまうこと」を。その歌とは、やはりスミスの歌なのでしょうか。 |
| 09 Money Changes Everything リリース当初の『ザ・ワールド・ウォント・リッスン』には収録されなかった『マネー・チェンジズ・エヴリシング』が、CD再発で嬉しい収録を果たしています(カセット・テープには収録されていた様ですが)。元々は名作『ビッグマウス・ストライクス・アゲイン』のB面に収められたインストで、後にブライアン・フェリーが詞をつけてリリースしたことは有名です。 |
18 Golden Lights 現行CDのシメを飾るのはトゥインクルのカヴァーです。元々はこのアルバムには未収録でした。 それにしてもモリッシーは、マー以外の他人の曲を歌うのに向いていない人ですね。“普通”のメロディでは、良さが発揮できないのかも知れません。フェイザー掛かった加工処理もボロ隠しにしか映りませんし、『アスク』では好サポートとなったカースティの参加も、焼け石に水という気がします。ジョニーが本作をスミスの汚点と言い放ったことは有名ですが、その発言が例えなかったとしても、きっと僕らの評価は変わらなかったことでしょう。 とは言え、悲しいかなスミスの作品をコンプリートしたいファン心理というもので、やはり収録してくれたことには感謝してしまうのでした。 |