話の小匣

ミニまぐにてほぼ毎日発行している同名のメルマガ(ファンタジー系の
小説を連載中)を数日分まとめてお届けいたします。携帯だけでなく
PCでも読みたい方、毎日少しずつは面倒臭いという方、まとめて一気
に読みたい方など、ご登録いただけたらありがたいです。

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■ごあいさつ

 はじめまして、こんにちは。管理人の小津圭太です。
 このメルマガはミニまぐにてほぼ毎日連載している小説を何日分かまと
めて配信しようというものです。
 毎日少しずつ読むのは面倒臭い、一度にたくさん読みたい、携帯で読ん
でいたけれどPC版の方がいい、携帯でもPC版でも読みたい……など、
とにかく読んでいただけたら嬉しいです。
 PCで知った方は携帯版もありますので、よろしければそちらも合わせ
てお願いします(内容は変わりませんが)。
 それでは、またあとがきでお会いしましょう。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

■本文        短篇『永遠の……』


 俺はさすらいの旅人だ。ある目的があって様々な土地を渡り歩いている。
 目的――それは、恋人のハルを探す事だ。
 ハルは暖かくて、優しい女だった。けれど、決して俺に振り向かない冷
たい女でもあった。あいつは俺が追ってくるとわかっているから、自由奔
放にどこかへいなくなる。例え一時共にいても、俺が安堵する間もなく消
えてしまう。
 この関係が、一体どのくらい続いているだろうか……そして、何時まで
続くのだろうか。――それは俺にも分からない。
 とにかく、俺はハルを探す旅をしている。

               *

 港が見渡せる丘へと俺はやって来ていた。そこに、ハルを知る人物がい
るからだ。
「じゃあ、ハルがここを通ったのは間違いないんだな?」
「はい」
 小さく頷く少女はサクラと言う。彼女は母親のハルに似てとても優しく、
けれどハルよりもずっと柔らかで大人しい少女だった。
「母は、つい数日前までここにいました」
「また一歩先に行かれたか……」
 いつもそうだ。ハルはまるで俺の居場所が分かっているかのように、少
し先を行く。
 ここにいないと分かったからにはもう用はない。
 俺はサクラに礼を言って、その場を立ち去ろうとした。
 ところが、今まで俯いたままだったサクラが、意を決したように顔を上
げた。
「あのっ、……あの……」
 しかし、躊躇うようにまた俯いてしまう。
「どうしたんだ?」
 サクラに構っていられる余裕はないのだが、俺はつい尋ねていた。
「あの、お願いがあるんです。あなたがどれほど母を必要としているか知っ
ているし、母のこともよく分かっているつもりです」
 いつもは控えめなサクラが、真剣な眼差しで俺を見つめる。正直、俺は
その瞳にハルの面影を見付けて、ドキリとした。
「でも……あえて言います。どうか、どうかこのままここにいてくれませ
んか? 私の側に……いて欲しいんです」
 俺は驚いた。まさかサクラがそんな大胆な告白をするとは、思ってもみ
なかった。
「私には、母のように自分を追ってきてくれる人なんていません。正直、
母を羨ましいと思います。あなたのような人に愛されて。母もあなたが追っ
てくると分かっているから先へ進める。そんな関係が、とても妬ましく
て……ごめんなさい、こんなこと」
 サクラもまたハルの子供なのだ――俺はつくづくそう思った。
「できることなら、俺だってこの旅を終えたいと思っている。サクラの望
む事なら叶えてやりたいとも思う」
 途端に、サクラの顔がぱっと明るくなった。しかし……。
「だが、俺はあいつなしでは生きていけない。俺がこのまま残っても、お
前の側にいてやれるのはほんのわずかな時間でしかない。……分かってい
るだろう?」
「そうですよね」
 サクラはしばらく俯いていたが、やがて顔を上げた。
「分かっているんです。本当はちゃんと、全部。けれど、あまりにも二人
の関係が羨ましくて、つい言ってみたくなっただけです。ちょっと困らせ
てみたかっただけ……。私の言ったこと、気にしないでください」
 サクラは無理に明るく笑おうとしている。それが、胸に痛かった。
「サクラ、お前は一人じゃないさ。すぐ近くにいるじゃないか。ずっと、
寄り添って生きていける相手が」
 俺はそう言って、サクラの背後を指した。
「カエデ……」
 そこには、サクラとちょうど同じ年頃の少年が佇んでいた。ただ黙って
二人のやり取りを見ていたのだ。
「二人だったら、俺なんかよりもよっぽど幸せな暮らしが送れるさ。間違っ
ても放浪なんぞしないしな」
 幸せになれよ……。
 俺はそんな気持ちを胸に、空を見上げた。雲が忙しなく流れている。
 ちょうどいい風が出てきた。
「それじゃ、また来年会おう」
 そう言って、俺は大空へと羽ばたいた。
 風に乗ってぐんぐん空へ昇っていく。港の上空まで出てから、俺は後ろ
を振り返った。
 そこには満開の時期を過ぎた若い桜の木が立っている。その近くには、
秋を待つ楓の木があった。

               *

 渡り鳥は風に乗って春を追いかける……。
 その姿は永遠の片思いのよう――。〈了〉


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

■あとがき

 この作品はすでに過去ミニまぐにて発行され、HP上にも掲載されてい
るものです。
 現在ミニまぐでは長篇を連載中で、それが終了するまでは上記のような
過去の作品を配信していきたいと思います。

 ここまで読んでくださってありがとうございました。創刊準備号(事実
上の創刊号ですが)はいかがだったでしょうか? PC版メルマガの発行
は初めてのことですので、まだまだ手探りの状態です。感想・ご意見など
ありましたら、ぜひお寄せください。
 それでは、また。 

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