しんこ細工の猿や雉

これは「私の大阪百景」とタイトルを変えて出版されたと記憶しています。
最新刊の「楽天少女通ります」の下敷きになった作品です。
田辺さんの自伝なのですが、筆者のまだ若い頃に書かれた(恐らく50代)ものなので、
歯に衣着せぬところが興味深かったです。
それに、省略されない細かい描写が、とても滋味があって、
スルメを噛むように、やめられないとまらない、ところがあります。
ただ、現在絶版のようですので、古本屋ででも探してみてください。
新潮文庫です。

原典にあって、以後は省略されたのは次のような事件です。
田辺さんが芥川賞を貰われたパーティが、大阪で開かれます。
同人誌の仲間たちも出席してくれるのですが、
会費制の受賞パーティで、ある同人の男性が、会費を払わず出席します。
どうして?と、会費がほしいわけでもないのに田辺さんはこだわります。
この辺、私はよく理解できます。私もそうします。
どうやら男性は会費制であることを知らなかったようで、
受け付けで「貧乏やねん、貸しておいてくれ」と憎まれ口を叩いたようです。
田辺さんは彼に催促をします。すると、悪意のある手紙とともに会費が送られてきます。
田辺さんは「男の子やったら、あ、そうやったんかいな、と受け付けで支払うべきではないか。
大した額でもあるまいし」と情けない思いを書きます。
受賞して嫌な思いはこれだけだった、と。
女性からも何もないことはなかったが、一緒に物を書いてきた女同士のことは許せる、
しかし、男の子はそれでは情けないではないか、と。
これも私は実によくわかるのです。
私の中にも、恐らく、田辺さんの中にも、男の子へのロマンはこんな具合に設置されているのです。
会費なんか、請求しなくてもいいじゃないか、と言われても、
お金がほしいのではなく、どうして?!という強い思いが、
しなくてもいいことをさせてしまう・・・・わかりますっ!田辺さんっ!