ひよこのひとりごと(14)

田辺聖子さんは婦人公論連載「ひよこのひとりごと」で
〈大人の資格〉について語られておられます。


〈人生を生きるのに、この気分を持つと、われひと共に生きやすい。

あらまほしきものは《色をつける》ということ〉と書かれておられるんです。

〈そうは言っても、今の人はニッチもサッチもいかないことでしょうから〉と、

〈色のつけ方取扱い説明書〉として一気にきめつけてしまうのではなく、

ゆっくりした抛物線で、右を見左を見て想像しつつ、

ゆるゆると結論を出すこと。

その色をつける技が大人であると、語ってくださってます。


想像するということが難しいのです。

右を見て左を見てということが私にとって

なんとも大変に難しく思われるのです。

相手のことを想像するといっても

自分の心、感情の中ですることですので
己のキーボード内という限界があります。

そのお相手の心の変換キーをそのまま自分に移すことはできないのです。

その難しい想像を少しでも汎く豊かに彩ってくれるのが、

言葉であり小説、文学ではないかと思うのです。

多くの言葉を、できれば美しいめでたい言葉を知り

身のまわりにかき集めておくことが、

〈色をつける〉ことの助けになるのではないでしょうか。

〈色をつける技〉というところでは、

お正月のエッセー『口別嬪』と重なるのです。

〈人が自分の恃んでいるところを想って言挙げをしてあげる〉という大人の技については

まさしく私にとっての“聴かされどころ”でした。

田辺聖子さんのお作品の基調としてあるこの大人の雰囲気に惹かれるのです。

白だ黒だと断定するこどもっぽい(幼児性の)捉え方ではない、

大人の技のふくいくさ、みごとさに縛られております。


−byゆめぽぷりさん−