花衣ぬぐやまつわる・・・・


女流俳人杉田久女の評伝です。
久女は、様々な憶測と揶揄にまみれた悲劇の人で、
その芸術性ゆえに、人にいれられなかった不運の人でもあります。
大悪人虚子の上にも雪が降る
という虚子の句は、この評伝を読むと納得できます。
久女が敬慕してやまなかった師、高浜虚子は、
どういう風のふきまわしか、彼女について真実を語ろうとはしません。
熱の入り過ぎる、一途すぎる性格はなるほど、他人にはうっとおしいものですし、
その当人が精神病院へ入院したとあれば、戦前の差別意識の強い社会では、
不当な扱いを受けたかもしれません。
それにしても、珠玉の句を発表し続け、
その才能を一度は師に認められたこともある芸術家を、
どうして同じ芸術家が、貶めるようなことをしたのでしょうか?
田辺聖子さんは、深い愛情をもって、
精神病院の中で病死した久女を抱きとめるように、その生涯を描いています。
女が、芸術を志すということの、男にはない障壁。
特に主婦が、それも経済的に大きな余裕があるとはいえない教師の妻が、
一流の貴婦人たちに交じって一歩もひかず
その芸術作品を発表し続けるということが、どういうことなのか、
田辺さんは丁寧に追いかけていきます。
杉田久女を語りながら、田辺聖子が浮き彫りにされていきます。
この本は私にとって、聖書です。

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