愛の幻滅

講談社刊


恋するということの真実がどの行間にも溢れているような、素晴らしい恋愛文学です。

柔らかで優しく、声高ではない、けれど真摯な歓びや切なさで

恋愛という歌を歌い上げてくれます。

幻滅に向かう愛は、何がそうさせたとはひとことで言えない、

けれど確たるそうならざるを得ない理由があるんですね。

ヒロイン眉子の中の愛するという細胞がつぶれていくかすかな音を、

読者もともに聴くことができます。

愛して、そして、それを失ったことがある人には、しみじみと胸に響く音です。

ひとりは生活帯ではないところで愛を語り

ひとりは愛そのものが生活となっている。

三十年近く前、この小説が書かれた頃は

そのどちらが男でどちらが女かは大体決まっていたと思いますが、

今は、どうでしょう?

どちらにしても、愛を楽しむ人と愛を生きたい人とでは、

長い時間をともに暮らすのは無理でしょうね。

最後のページで、深い溜息とともに、

人間とはどういうものであるか、ということがチラリと垣間見えた気がしました。