2006.9







母が電車を乗り過ごし

「湖の見えるところまで」

行ってしまいました。

待ち合わせの病院で二時間弱、

最悪の事態を想定して

生きた心地のなかった私に

「湖は靄がかかってたよ」

安堵したこともあって、

涙ぐんだ私にドクターは

「本当の認知症なら

戻ってこられませんから。

少しも悪化していませんよ」

補聴器もヘルパーさんも断るので、と言うと

「誰にでも矜持と言うものはありますからね」

耳の遠い母のために

「今ね娘さんとはこんな話をしてるんですよ」

と時々大きな声で説明してくださる・・・

もう一人の先生は

「僕も湖見に行きたかったわぁ」

すると、母は

「案外近いですよ」

最後はみんなで大笑いしてしまいました。



どこまで続いている道なのか

それは誰にもわからないけれど、母よ

笑って歩いていきましょうね。

あなたの行きたいように、

あなたの好きな道を行ってね。

私だって、

あなたの立場になればそうしたいもの・・・

 




















































「徹子の部屋」で

コートジュボワールのエイズの少年が

「最初、自分がエイズに

感染していることがわかった時は

とても怖かった。でも、今はそうじゃないんだ。

発病しても終わりじゃない。

そこからまた、何かが始まるんだ」

と、言いました。

両親ともにエイズで亡くしたという彼は

中学生くらいにみえましたが、

もう少し年上かもしれません。

「徹子さんに言いたいことがある」

と、前置きして、彼は

「誰もが忘れてしまう僕らのような子供のところへ

わざわざ来てくださって、

本当にありがとう。それが言いたかった」



人間はどんなにも弱く醜くなれるけれど、

また、強く美しくもなれる・・・・。

人間としての尊厳と光輝は

こうしてあちこちで輝いているものなのに

私は醜いものばかり探して

落ち込んでいなかったか、

したり顔のペシミストになっていなかったか・・・・

時々、ごく小さな声で語られる美しい言葉を

聞き逃さないようしなくては・・・



−2006.9.23−






秋の薔薇





ベランダに薔薇を何鉢か置いています。 

薔薇は春にも咲くけれど

秋にも咲きます。



秋の薔薇は小ぶりで、その分色も濃いように思います。

まだ我が家の薔薇は咲いてはいませんが

固い蕾が仄見えるようになりました。



暑い夏でした。

もう蕾はつかないかと思っていたのに。

春の薔薇の乙女の初々しさもいいけれど

秋のこっくりと色濃い薔薇も好き。

ゆっくり開いてね、と声をかけています。



母とあれば我も女童(めわらわ)秋薔薇(そうび) UTA



☆九月九日にアップした「ごめんなさい」は

あまり愉快な内容ではないので

削除いたします。

見ていただきたかった方にはもう見ていただいたと思いますので。



−2006/9/13−








 

松葉杖を

病院に返しました。 

セーフスという超音波の器械も

骨ができたので返しました。

私の左足への治療が終わりました。

今、私に残っている障害は

症状固定といって

ほぼこのまま残るだろうということです。

大した障害ではありません。

膝が九十度くらいしか曲がらないことと

階段の昇降が一段ずつしかできないこと

走れないし、しゃがむことはできません。

外ではまだ杖を離すことはできませんし

膝の外側の一部では皮膚感覚が戻っていません。

どれも大変といえば大変かもしれませんが

私はまあこんなものかなと思っています。

よくここまで回復したな、とも思います。

で。

田辺聖子さんのことです。

田辺先生もおみ足がご不自由です。

先生の和服地で作ったドレスは有名ですが

足が不自由だと着物を着ることが難しいんですよね。

裾さばきができないし、まず正座が無理。

草履も危なっかしいし、帯も体を縛ります。

でも、あの美しい和服の生地

やっぱり身にまとってみたいですよね。

田辺先生はとってもいいことを思いつかれたと思います。

私も高価なものではありませんが

母が持たせてくれた数だけは揃えた和服

もう着ることはないと思います。

付け下げ、訪問着、色無地、小紋

名古屋帯、袋帯、佐賀錦の草履

帯揚げ、帯どめ、替え襟・・・

それに、大きな和服タンス。

私の「ある時代」が終わって

次の時代が始まりました。

過ぎていった時代の数々の美しいものたちを

どうしようか、と迷っています。

これからの時代を生きて行くために、

美しいところだけ遺しておければいいんですが。

フジモトハルミ先生にお願いして

ひとつカクテルドレスでもつくりましょうか。

もう、還ってこないもの

諦めなければならないもの

事故に遭わなくても

きっと

こんな想いをする時は用意されていたのでしょうけれど。

−2006.9.3−



美しいもの