ZONE小説『secret base〜君がくれたもの〜』

♪感動の小説物語。恋愛、人生観、生き方を素直に見つめなおします



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歌詞を忠実に再現した青春…『僕の手紙』を完全小説化!原作:冬樹
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☆1☆
「・・見てる?」

綺麗な夕日・・

今すぐにでも写真に収めたいくらいの
素晴らしい空・・


「・・・・」

でも僕の目に空は映らなかった・・


・・最後に

・・もう一度思い出すよ
届けるために・・

僕の手紙を・・


☆2☆
「お父さん、もう大丈夫みたい」

母親が僕に言う

「いつ退院だって?」

「えっと、三日後だったかしら」

「お父さんは?」

「自分の病室に帰ったんじゃない?」

「僕、行ってみる」

「そう、じゃあお母さん帰るから早めに帰ってくるのよ」

「分かってる」


僕は鈴里勇樹

高校一年になってからもう約三ヵ月・・

夏休みを少し後に控た夏だった・・



父親がストレスによる疲労で入院してからちょうど一週間が経っていた
最近は学校のテストに追われていたので病院に顔を出すのは今日が初めてとなる、高校最初の期末テストなものだから勉強しろと母親がうるさかった・・
まったくあの時は僕までストレスで入院させる気だろうか?と思ったものだ・・
ただでさえ父親が入院なんて聞かされた時は重い病気でも隠されてるんじゃないかとストレスが溜まったのに、まぁ先ほどの母親の話からしても父親はどうやら大丈夫だった様だけど・・。

「じゃあ気をつけて帰って来るのよ」

「うん」

僕は病院から母親を見送った、時間は6時頃と夕方の時刻、だが夏だけにまだ明るく冬の頃を思い出すと不思議な感覚を覚える・・

そんな事を考えてキョロキョロしている間に母親の車は病院の前から長々と続く坂を下って行きその姿を消した、この病院は高地にあるため来る時にはあの坂が大変なんだ

しかし、その坂にはちゃんとメリットがあるし意味もある

近くには海があり、病院の入口付近では見にくいが、病院の二階以上に上れば当然のこと、そして、あの坂を下っている途中にも海がとても綺麗に見えるんだ・・
高いから空気もいいし、眺めもいい、きっと患者とお見舞いに来る家族や知人の精神を休めてくれていることだろう。

「・・さて」


僕はすぐさま父親の病室に向かった・・

病室は三階だ、エレベ−タ−から出て少し廊下を歩くと父親の病室398号室がある、ドアの開いている四人部屋の病室、僕は入口をくぐった



「父さん」

「おお勇樹っ、まだいたのか」

「今日も自転車だからさ」

「そうか、高校の方はどうだ?」

「ぼちぼち」

「テストは?」

「・・ぼちぼち」

「・・もう高校生か、早く進路を決めないとな」

「・・うん」

「もう中学の時みたいに夢ばかり見てたら駄目だぞ」

始まったか・・

「・・僕、まだ諦めてないよ」

「・・あはは、写真なんか撮って誰がお金をくれるんだ?」

「・・せっかく来たのにそんな話するなよ」

「・・そうだな」

「・・もう、いいよ、早く退院しろよな」


なんでだろう・・
父親と将来の話になるといつもこんなだ・・

心配して来たのにまったくもって後悔しか残らないお見舞いだ・・もう高校一年、子供じゃないのに・・


☆3☆
一時が経った・・


気付けば僕は父親の病室から出て各階に一つずつ備えられている休憩室に座っていた・・

気分がモヤモヤしてすぐに帰る気分にもなれず、また、父親の病室にいるのも嫌になったからだ。
休憩室はちょうど学校の教室くらいの部屋で今は僕一人しかいない、時計を見ると6時半を過ぎていた・・


(・・もう少し言い返しても良かったな)

さっきの父親との会話を思い出しそう思う


だが後悔のようで違う・・

言い返す機会は今までいくらでもあった

(・・駄目だなぁ)

自分の勇気の無さを感じる瞬間だ・・
勇樹という名前は名前負けだろうか・・


「ふぅ」

軽く目の前の長机を叩いてみる、そしてジュ−スの自動販売機へと歩きだした。

「・・・・」

僕はサイフから100円を取り出す、珍しくここの病院の自動販売機は100円なんだ、20円安いだけにしても十分得した気分になれる。

自動販売機に入っていった100円玉
お金が底まで入った音をたてると130円のボトルジュ−ス以外全てのボタンが赤く光った・・

反射的に手がコ−ラに伸びる・・。

「・・・」

しかしボタンを押す前に手が止まった・・
最近コ−ラばかりで親に言われたばかりだ、太るとか、骨が溶けるとか・・

そんなの信じない、信じないけど・・

今日はやめとこうと思った・・

まったく、勇気がないと思う・・


コ−ラの一つ下にリンゴジュ−スが見えた

・・これでいい

100%と書いてあるし体には悪くなさそうだ・・
帰ったら母親に言ってやろう、コ−ラの変わりにリンゴジュ−スを買ったと・・

「・・ん」

後ろで音がした、どうやら人が入ってきたようだ

一応振り返ってみる


(・・女)

車椅子に乗った髪が長い女の子だ、見る限り自分と同じ高校生位だろうか?
振り返った勇樹を不思議そうに見ている


そして僕の後ろで止まった

(・・あ、そうか)

たぶん自動販売機に用があるのだろう

そう気付くと急いでボタンを押す

ピッという効果音

ガランという音・・

自動販売機の普通の流れだ

だが今回はもう一つ、リンゴジュ−スのボタンに売り切れの文字が光った、自分で最後だったのだ
得はないが、なぜか嬉しく感じる

「あっ」

そんな場合ではない、後ろには女の子が待っている
リンゴジュ−スの缶を掴むとすぐにその場から横にズレた

自動販売機に女の子が近寄る・・

横目で改めて見てみるが・・可愛い・・

なぜか緊張する・・

一方自動販売機に目をやる女の子・・

「・・あ」

しかし女の子は小さな声で言った

そして、なぜか僕を見る・・

「・・ん、え?」

「あっいいえ」

顔と似合う可愛い声で言った・・
よく分からないが嬉しい気分だ・・
今、自分の顔は赤いかもしれない・・

女の子はすぐに引き返していく・・
いったいどうしたのだろうか?



「どうしたの?」

気付けば入口には女の子の母親だと思われる人が立っていた
販売機からすぐ戻ってきた女の子が不思議に思えたのだろう、顔を傾けて声をかける

「あ、ううん」

「リンゴジュ−ス、いらないの?」

「う、うんっ」


・・リンゴジュ−ス?

(・・あ)

自分の手にあるジュ−スを見た

どうやらあの子はリンゴジュ−スが飲みたかったようだ・・
だが僕で売り切れだったので当然買えるわけがなく・・

(・・あの時、僕を見たのって・・)


・・なんか悪いことしたな・・

そもそもなんでリンゴを買ってしまったのだろうか?飲みたいわけでもないのに・・
コ−ラを買えばよかったじゃないか・・


「本当にいいの?」

「う、うんっ、お母さん行こう」


女の子は一瞬僕を見ると恥ずかしそうに休憩室を出て行った・・

☆4☆
女の子が出て行った休憩室で一人たたずむ

あの子と目が一瞬あってから同じ事を考えている・・。


(可愛いかったな)


・・でも

・・たぶんあの子からすれば、僕は「リンゴジュ−スを売切れにした人」でしかない

最悪だ・・


そう考えるとリンゴジュ−スの缶を空けられなかった・・。


一息つくと休憩室を後にした、もう7時が回る、そろそろ帰らなくては・・。

僕は廊下に出て歩きはじめる、父親の病室へ顔を出そうかな?とも考えたが、先程の事を思い出し却下した。


一階に下り病院から出る、向かうのは自分の自転車を止めてある場所・・
病院の出入口を出て少し歩くと緑色の屋根がついた自転車置場がある、別に遠くはない、僕はすぐに自転車に辿りついた
ポケットからカギを出すと鍵を外す、そして僕は自転車を押し歩きはじめた。


「・・あっ」

持っていた缶ジュ−スが落ちて転がった

まったく面倒臭い・・

「はぁ」

少し遠くまで転がった缶、僕は拾うために自転車を止めた・・


・・その時・・


自分より先に缶ジュ−スを拾った人物がいる

目を疑った・・

(・・あの子)

休憩室で見た、車椅子に乗った女の子・・
なんでここにいるんだろう?母親を見送った帰りだろうか?
いや、そんなことはどうでもいい・・


「これ、あなたのですよね?」

「あ・・うん」

車椅子でゆっくり近づいてくる・・

日常でこんなドラマチックな展開があっていいのだろうか・・

僕は驚きを隠せない


「はい、どうぞ」

両手で差し出す

ひどく可愛いその仕草、それにこの偶然、僕は固まってしまっていた・・

「・・どうしました?」

「・・え?」

ハッとする

「あ、ありがとう」

そして手を伸ばす・・

「・・あっ」

だが僕はすぐに手を止めた・・

「・・?」

そんな僕を不思議そうに見る女の子・・


(・・リンゴジュ−ス)

僕は手を引いた


「それ、あげる」

なんでこんな事言ったんだろう・・

「・・え?」

いつもならこんな行動なんかするはずがないのに・・

「さっき、売切れだったでしょ?」

「え、でも、そんな悪いですよっ」

「じ、じゃあ」

すぐさま自転車に乗る

「あ、あのっ!」

僕はペダルをおもいっきり踏んだ。

そして、後は振り返ることなく病院から続く長い坂を自転車で滑り下りた・・


「・・・・・」


なぜ、僕があんな行動に出れたのか分からない・・


確かに、少し君に惹かれていた・・

・・けど

そんな君とただ仲良くなりたいとか、そんな感情じゃなかった気がする・・



・・もしかしたら

僕は分かっていたのかもしれない・・

この先のことが・・


僕は分かっていたのかもしれない・・

この運命は・・

・・必要だって



長い坂を下りながら景色を見つめる・・
白いガ−ドレ−ルが続く道、周りに障害物は無いため眺めがいい

横を眺めれば少し遠くに見えるオレンジ色の海・・そこに営業時間の長い夏の太陽がいよいよと沈もうとしている・・
何回見ても飽きないだろう、この景色・・

うん・・

君と出会った日は、素晴らしく夕日が綺麗だった・・


☆5☆
学校のチャイムが鳴る


「へぇ〜、車椅子か」

「うん」

「見てみたいなぁ」


僕は友達の村田達也と学校が終わった喜びを胸に下校していた


すでにあの日から三日が経っていた・・
今日は父親が退院する日、だから久しぶりに病院に顔を出す
当然、あの子に会えるかもしれないという期待が尽きなかった


「惚れたんだろ?その子に」

「・・そんな」

その楽しみもあり達也に前回病院であったことを話したのだ

少し後悔した
すぐ冷やかすからだ

でもまぁ達也はお調子者だが悪いやつでもない、僕と違って友達も多い、昔からの友達だからこそ仲良くしているが高校で出会った仲ならこうやって下校する友達ではないかもしれない、とにかく貴重な友達だ。

「どんな系の顔?誰かに似てるとか」

「う〜ん、そうだなぁ」

「大体でさ」

「・・あっ」

「何?」

「ZONEってわかるか?」

「ああ」

「ギタ−のミユって子に似てるかなぁ、髪長くてさ」

「あ〜そりゃまた美人だね」

「・・うん」

「絶対に彼氏いるよ〜」

「・・だよな」


学校までは歩いて登校している、10分位の距離だ


5分が経った・・

達也とはいつもの交差点で手を振り僕は自宅へと向かっている

僕は達也の言葉をふと思い出す・・


(彼氏・・か)

・・そりゃあ僕もいると思う

自然の摂理だ・・


それに比べ僕は今まで彼女ができた事は無い、女の子との会話もあまり得意ではないし、顔だってカッコイイわけではない
本当に普通の人間なんだ・・
そう、今までの恋だって告白なんてできるはず無く全てが片思いに終わった・・


(あの子のことも早く忘れないとな・・)

・・いつもこんな調子だった・・



自宅の扉を開けた、すでに母親はいない
僕は自転車が好きなため車で片道10分程度の病院までは車に乗っていかないためだ

自転車でも30分もあれば十分行くことができる



バックを一つ荷台に乗せて自宅を飛び出した自転車・・


今日も・・いい天気だ




自転車は走る・・

走る・・

走る・・


休日にでもなればこんな風に自転車で走り回る、楽しくて仕方が無い時間だ、ただ決してサイクリングが趣味なわけじゃない・・



「・・あ」


ふと空を見上げた・・


雲と太陽が絶妙なバランスで素晴らしい・・

「・・綺麗だな・・」

☆6☆
あっ勇樹」

母親の声

「うん」

あれから20分後、僕は病院に着いた・・

退院とあってベット周りがゴタゴタしている

「僕は?」

「え〜と、お母さん達は手続きがあるから片付け任せていい?」

「うん」

母親達が出て行った病室で僕は片付けを始めた・・

服をたたむ作業、意外と難しいものだ・・
袋に入れる作業、上手く入らないものだ・・まったく何か才能があってもいいのに・・


ふと気付けば一時間が過ぎていた・・
親も帰ってきて今は主治医の先生に頭を下げている・・
日本らしい風景だ・・


「じゃあ勇樹、お父さんは今から車で帰るからすぐ帰って来いよ」

父親は嬉しそうに僕に言い歩いて行った

「ふぅ」

僕は大きく背伸びをした

後は帰るだけだ


・・でも

その前に・・



僕は三日前と同じように休憩室へと身を入れた・・

あの子はまだいるのだろうか・・?
退院でもしていたら二度と会うことはないだろう・・

窓の外を見る・・

海が見える、そして夏らしく緑を生い茂らせている木々はもう沈むであろう夕日を浴びている・・
その木々から聞こえるセミの声・・。

(・・もう夕方なのに、セミは元気だなぁ)

堂々として自信に満ちたセミの声、僕はなぜか羨ましかった
まぁ・・セミにはなりたくないが。



「・・あの」

10分が過ぎた頃だろうか?

窓の外を見つめる僕の後ろから呼ぶ声・・

聞き違えるはずはなかった・・

☆7☆
「・・あ」

「・・あの、この前はありがとうございました・・」

車椅子に乗った、あの女の子・・

「・・うん」

僕はやはり少し戸惑いながら答える。

「・・それで、その」

「・・?」

「お、美味しかったです、リンゴジュ−ス」

「え?」

「いや、ごめんなさい、他人と話すのが久しぶりで・・何言ってるんだろ」

大丈夫・・
キミ以上に僕、動揺してますから

「・・少し、話す?」

相手に心臓の音が聞こえるかもしれないという恐怖を胸にやっと出たセリフだった

「あ、はい」

言って良かった
これで少しは話しができそうだ・・

僕は休憩室のイスに座った

「・・・えと」

僕から何か言うしかない

「美味しかったって言うためにわざわざ?」

本当の疑問だった

「いいえっ!」

だと思う・・

すると女の子は言った

「これ・・」

ポケットから何かを出して置く・・

それは・・

「100円?」

「はい、この前返せなかったので・・」

もう、なんて言うか

可愛かった。


「そんなっ、いいよ」

当然貰えるはずがない、いきなりあげたのは僕の方だし・・

「・・でも」

仕方なく僕は言った

「えと、僕リンゴジュ−ス飲めないんだ」

「え?」

「間違えて買ってしまって、なのに売切れにしちゃったし」

「・・そうだったんですか?」

「うん、だからお金なんて」

「・・そう言うことなら、本当にありがとうございますっ」

彼女は申し訳なさそうに言った

そして続けて言う。


「あの、お名前、いいですか?」

「え?ああ、勇樹、鈴里勇樹」

「・・勇樹」

「う、うん、えと・・そっちは?」

「私、冬美です、北川冬美」

「北川・・冬美」



初めて冬美の名前を呼んだ日だった・・


☆8☆
彼女は北川冬美・・
年齢はなんと16歳で同じだった・・

「私のことは、冬美でいいよ」

「あ、うん」

「・・そっちのことは勇樹、でいい?」

「う、うんっ」

女の子を下の名前で呼ぶのも呼ばれるのも始めての事だった・・

いや、そんな事より今は貴重な時間、何か話さないと・・

「あ、冬美はいつから入院してるの?」

「え?え〜っと、もう一週間くらいになるかな?」

「くらい?まだ一週間なのに曖昧だね」

「ごめん、私、馬鹿だからっ」

「あははっ」

意外にも弾んだ話
生まれてきて本当に良かったと実感する日だった・・

だけど一時間くらい経った頃・・。

「面会時間は9時までとなっております」

8時半、放送が鳴った

もう暗くなっていた
今日は退院の準備があったため仕方が無い

この一時間は数分間の様だった・・
まだまだ話したい事は沢山ある・・
これが鳴らなければ、僕は一生話していたかった・・。


「あっ私、部屋行かなきゃ」

「あっうん」

「・・100円、本当にいいの?」

「いいよ、リンゴジュ−スに使ってよ」

「あははっありがとう」

そして手を振ろうとしたその時・・。

「・・あっ」

僕はあることを思い出した。

「え?なに?」

「うん・・えと」

まさか実現するなんて思ってもいなかった。

「これなんだけど」

僕は自分のバックから出した物を冬美に差し出す。

「・・写真?綺麗」

「うん、来る時に空が綺麗だったから撮ったんだ」

そう・・
来る途中、空を見たあの時・・

本当に綺麗だった・・

僕はすぐに自分のポラロイドカメラで写真を撮った・・

そして、こんな綺麗な空の写真を君にあげたいと心の片隅で思ったんだ・・。

「・・いらない?」

「えっ、くれるの?私に?」

「・・うん、良かったら」

返事が怖かった・・

・・でも

「ありがとうっ、大事にするっ!」

冬美が初めて見せた、とても可愛い、満開の笑顔だった・・


「綺麗〜、写真が好きなの?」

「え・・まぁ」

「・・?」

いつもなら言わないところだが、あんな笑顔を見せられては冬美に黙っている気にはなれなかった。

「・・僕さ、写真家、目指してるんだ」

「写真家・・?」

「僕がなりたいのは、写真を撮って、雑誌とかに提供したりするフォトジャ−ナリストなんだけど・・」

写真を渡した時と同じで、やはり反応が気になった・・
変わった奴と思われても仕方がない・・

でもやっぱり君は・・

「・・へぇ〜、なんか勇樹ってすごいねっ」

笑顔を返す冬美。

「・・え?」

僕は本当にビックリした・・。

「・・ん?」

「あ、ううんっ、なんでもない」

「そう?」

嬉しいな・・

・・けど

「・・じゃあ、僕はこれで」

「・・うんっ」

今度こそさよならだ


・・これで帰っていいのか?
もう父親は退院したんだ、病院に来ることはない・・

そんなの、嫌だ・・


「・・冬美さ」

また、話しに来てもいい?

「なに?」

・・って言えない・・

「・・・・」

だってそれはもう告白ではないか?
会ってすぐに惚れたなんて最悪な男に思われるんじゃないか?
冬美だってこんな男とまた会いたいかな?
今日だって冬美が楽しかったかは分からないし・・

・・でも、言わなきゃ会えない・・


「・・勇樹?」

「・・あっ何でもない」

作り笑顔で言った・・

これでいいんだ・・

「・・じゃあ」

「・・うん」

つくづく思う・・
本当に僕は勇気が無い人間なんだ・・って



「・・勇樹っ」

そう・・

この時、君が呼び止めてくれなきゃ本当に終わりだった・・

「・・ん?」

「いい写真が撮れたら、またくれる?」

「え?」

「・・やっぱり駄目かな?」

「う、ううん!あげるよ!」

「えっ本当?ありがとうっ」


・・格好悪いな・・

自分からは何も言えない・・

☆9☆
9時を過ぎていた・・


すでに沈んだ太陽

僕は暗い夜道を自転車で急ぐ・・

帰り際の自分にはタメ息をついたが自然と笑えた・・

冬美と話せた事が何より嬉しかったからだ

写真を受け取った時の冬美の顔が忘れられない・・


(また、あの笑顔が見たいな・・)

そう、僕は写真家を目指しているんだ・・

日頃から自転車で移動するのも、休日に自転車で走り回るのも全て写真のため・・

なんで写真家かと思う人もいると思う

あれは中学1年の時だった・・

自宅の庭にはベンチが置いてあって、それに座って空を見るのが大好きだった・・
学校からの帰宅後だったり休日だったり、夜中だったこともあった、得に趣味なんて無い僕は暇があればあのベンチに座っていた気がする・・

・・綺麗なんだ

みんな落ち着いてじっくり空を見た事があるだろうか・・

毎日表情が違う空

当然、同じ空は存在しない・・
今、空を見ている人間の数は何人だろうか?と考えたり、この空は繋がっているのだから世界のみんなが同じ空を見つめているんだ、と不思議に感じたりしていた気がする・・


そして空を見ているとたまにあるんだ・・

今、ちゃんと見ておかないと後悔してしまいそうな空・・

そう、もっと沢山の人に見せてあげたい空



絵なんて書けなかった

ビデオカメラなんて買えなかった・・

僕は、カメラであの空を撮ったんだ・・

・・自分で撮った写真、僕はそれを見て何より嬉しかった・・
自分が見ていた大好きな空を、沢山の人に見せられる・・


あの日から空の写真を取り続けた・・

だが空を見つめているだけでは写真の技術も成長しない、だから僕は雑誌などを参考に自転車で色々な場所を巡り視点を変えたり背景の効果を考えることによって写真を勉強し、いい空に出会えば撮影を行うようにした、少しずつだが素晴らしい写真が撮れるようにもなってきた
お金を貯めて今使っている10万もするポラロイドカメラを買ったのも本気の証だ・・

素晴らしい写真をみんなに見せたい・・

いつしか僕は写真家を夢と名乗るようになった・・


・・でも

「邪魔になるから捨てなさい」

「写真なんかでメシが食えるはずがない」


親が僕に言う代表的な言葉だ・・

写真家、親はそれを夢とは呼んでくれなかった

カメラを買った時もさんざん怒鳴られ
将来の話しになる度に笑われ・・

あれから3年、今だに認めてもらってはいない・・
親から言えば意味の無い娯楽だ・・


・・でも親に反対されるなら僕以外にもいるだろう

だが、僕の場合友達にだって頑張れと背中を押してくれる奴はいなかった・・

みんな勉強は嫌いだと言いながらいい高校に、そして卒業したらいい大学に行くと張り切り、親はその姿を意味もなしに素晴らしいと言った・・

夢ってなんだろう・・

ただでさえ普通に生きてきた僕だからいつか挫折するだろうという考えが最初は頭の片隅にあった気がする・・

でも・・

自分で見つけた夢・・


僕は信じていた・・

この道を・・


☆10☆
鼓動と比例して加速した自転車はいつもより早く自宅へと着いていた

親は退院して機嫌がいいのか遅くなった僕に何も言わなかった


僕は部屋へ向かう

部屋に入ると机の上に散らばる写真・・


「・・・・・」

少し前を思い出す・・


「・・写真家?」

「僕がなりたいのは、写真を撮って、雑誌とかに提供したりするフォトジャ−ナリストなんだけど」

「・・へぇ〜、なんか勇樹ってすごいねっ」



・・すごい・・か


(そんな事言われたの初めてだったな・・)

冬美は初めて認めてくれた人だった・・

「ありがとうっ、大事にするっ」

邪魔な物と呼ばれ続けた写真を受け取り
満開の笑顔を返してくれた人だった・・


・・冬美・・


「・・・ふ〜」

僕はベットに倒れこんだ


(・・そういえば冬美、何処に住んでるんだろう?)

確か一週間前から入院してて来週には退院って言ってたな・・

・・来週・・か

(・・退院したら、遊べるかな・・)

冬美は僕のこと・・
・・どう思ってるんだろう?


「・・・・」

あんな可愛いんだ・・

僕のことなんか・・



目が閉じていく・・

この日は驚くほど熟睡した気がする・・

☆11☆
あれから一週間・・

夏休みを迎えた


夏休み、今までは学校が無いだけで繰り返しの毎日だっけど
今年は、違う・・


(勇樹、今日は何するんだ?)

電話先から達也の声

「あっ悪い!写真撮るんだ!」

(またか?)

「うん!今度は空けるからさ!」


あの日から毎日写真を撮りまくっている

「いい写真が撮れたら、またくれる?」

この言葉を思い出すと夏休みが輝いた・・



そして、冬美の話では明日が退院日

僕は前日のこの日に顔を出してみようと決めていた

・・でも、まだ行けない

この一週間は天気が安定せずに綺麗な写真が撮れていない・・

手ぶらで行くわけにはいかない・・

今日は晴天・・

勝負だ・・



時間は昼・・

暑い日差し・・

相変わらずなセミの声

僕はペダルを踏んだ


☆12☆
太陽・・!

雲・・!

青空・・!


今日は絶好の写真日和だ!!

だが綺麗な写真を撮るのは難しい・・
本当に一瞬の勝負なんだ・・

それに障害物が入らないように工夫しなくてはならない

今日はうんと綺麗な写真を撮ってやろう
余計に難しいが価値はある

今回は自分の物じゃないんだし・・

自転車はいつもより早く進んでいるが疲れは感じなかった・・


「・・・ふう」

額の汗を拭った・・

二時間は走っただろうか・・?

現在までに撮った写真は三枚、綺麗だけど、まだまだ納得はいかない

冬美は文句など言わないだろうが仮にも写真家を目指してる者
生半可な気持ちではあげられない・・
まぁ、一秒でも早く冬美に会いたい気持ちは隠しようのない本心なのだが


僕はペダルを踏んだ


時間は僕など気にせず進んでいった・・



「・・・あっ」


今見上げている空に出会ったのは、あれから2時間が過ぎた4時だった・・


(チャンスだ!)

この一瞬は逃さない

僕はすかさずカメラを構える


「・・・邪魔だっ」


・・だが運は僕に味方しなかった

ここからじゃ電信柱が綺麗に入ってしまう

長々と続く住宅街、ここから抜けていたら空の表情は変わってしまうだろう


・・冬美に会いたい

ここは絶対に・・


「すいません!!」


電信柱よ、僕を舐めないでほしい

写真家は常に応用を心得ている

「・・・よし!」

僕はシャッタ−を切った・・

カメラから自分の見つめていた空が一枚の紙となり姿を見せた

ここは人の家の二階、住宅街のため家は沢山ある、その中から電信柱の入らない二階建ての家に上がらせてもらえば楽勝だ、こんな事はしょっちゅうある
写真家は綺麗な写真を撮るためには手段を選ばない
以前は建設中の家にだって無理を言って上らせてもらったこともある位だ


僕は深々と頭を下げて家を後にした・・

自転車に乗る前に撮ったばかりの写真を見つめる・・

(・・やった)

ただ僕の目には三秒と空の写真は写っていなかった


代わりに映った風景は病院の中・・

あの、満開の笑顔を返す冬美だった・・


「・・行こう」


四時間動いた体だが、やはり疲れは感じなかった

むしろペダルを踏むその足は家を出た時よりも軽いくらいだ・・

・・こんな気持ちは何年ぶりかな・・

☆13☆
病院に踏み入るだけでこんなに緊張したことは無い・・

あれから一時間、僕は無事に病院へと身を入れた・・
今日はあまり人がいないみたいだ、この病院にしては珍しい、昔、夜中に高熱を出して連れて来られた時なんてひどいものだった


「・・あの」

受け付けカウンタ−の女性に僕は尋ねた

「はい」

有名なだけあって流石に愛想がいい、女性は笑顔で答えた
だけど普段の愛想はどうなんだろう?いや、関係ないことは考えないでおこう

「あの、北川冬美さんって何号室ですか?」

「北川冬美さんですね、少しお待ち下さい」

やはり笑顔で答えた女性、なにやら名簿らしい物を見るとすぐに答えた

「三階の363号室になります」

三階か・・

考えてみればそりゃそうだ、会ったのは三階の休憩室だし

僕は階段を上がった、健康などを気にしているわけじゃない、普段なら必ずエレベ−タ−を使う

でも・・

ここに来て緊張した、なんて言うかすごく緊張した・・
少しでも心の準備をする時間が欲しかった

そう言えば僕は今、好きな女の子のために写真を撮って病院まで持ってきている・・
こんなの本当に生まれて初めてだな・・

・・本当に、僕が会いに行ってもいいんだろうか・・?
冬美に彼氏がいないと決まったわけじゃないわけだから、もしかしたら来ているかもしれない・・
親がいても気まずいだろう・・
そもそも「写真をまたくれる?」なんて本心で言ったのか?お約束で言ったんじゃないかな?

隣を看護師が会釈をして過ぎて行った

そして目の前には363号室の札が待ち構えていた・・
ここまで来たんだから覚悟はできている

僕は足を入れた・・


一人部屋だ・・

窓からは海が綺麗に見える・・


一つのベッド・・

その上に一人の女の子が座っている・・

紙に何か書いているようだ・・

この数秒の間は長く感じた・・

緊張でどうにかなりそうだ・・

・・どうか顔をあげないでほしい・・

だが人が入って来たのだ・・
顔を上げないはずはない・・




「・・・・え」

目が合った

・・そう

「勇樹っ!」


「冬・・美」

想像以上の笑顔に僕は動けなかった・・


☆14☆
まさか、本当に来てくれるなんて思ってなかった・・」

5分が経つ・・

冬美はベッドの上、僕は部屋に用意されているパイプイスに腰掛けている

「勇樹、ありがとう」

可愛い・・

頭の中で描いていたより何倍も・・

この5分、冬美はひたすらお礼の嵐だ
嬉しいとか、そんなレベルの話じゃない
会えただけでも十分すぎるのに・・

「綺麗な写真が、撮れたから」

相変わらず緊張気味の僕はカバンからあの写真を取り出した

「・・・・」

冬美はただ見つめた

「・・ど、どうかな?」

少し心配になって言った僕・・だが

「・・・え?冬美?」

「・・勇樹」

冬美のその目からは涙がこぼれ出した・・

「・・綺麗、ありがとう」

涙目に一杯の笑顔を浮かべて笑った・・

「な、なんで泣くの?」

慌てて言う

「ううん、ごめん、何でもないの・・」

笑いながら目をこすった・・
まったく、どんな動作でも可愛い・・

「・・嬉しいな」

写真を見つめる冬美

その姿を見てもう一度言いたくなった・・

・・まったく、どんな動作でも可愛い・・

見とれてしまいお礼も言えなかった・・

「そうだっ」

冬美は棚からピンを取り出す
そして頭側の壁に今、僕があげた写真を貼付けた

「・・・?」

その壁を見て僕は驚いた

あれって・・

壁にはすでに一枚の写真が貼られていた

そう、もう一枚は前回あげた写真・・

・・貼っていて、くれたんだ

「こうしとけば、いつでも綺麗な空が見られるよね」

・・冬美・・

「・・冬美、ありがとう」

心の中で言うつもりが声になった

「なんで?お礼は私が言わなきゃ」

「・・ううん、僕の写真、喜んでくれたの冬美が初めてだよ」

「え〜?嘘だよ〜、こんなに綺麗な写真、みんな喜ぶよ〜」

「・・ありがとう、でも本当に嘘じゃなくて」

すると、冬美は言いづらそうに言った

「・・じゃあさ」

「・・ん?」

「・・勇樹が撮った写真、これからも私に、くれる?」

「え?う、うんっ」

「やったぁ!ありがとう勇樹っ!」


あの笑顔が、また見れた・・



「・・あっそう言えば」

僕は明日の退院の事を思い出した

「写真あげたいけど、確か退院、明日じゃなかった・・?」

「え?・・うん」

暗く返事をした・・

「・・冬美?」

「・・えと、実は退院、延びちゃって・・」

「・・え?」

「・・足の治りが遅くって、もう一時、入院することになっちゃった・・」

「そう・・なんだ」

「・・うんっ」

「・・・・」

「この病室は変わらないと思うから・・」

「・・そっか、だったら写真、持ってこれるけど・・大丈夫なの?心配だよ」

「ありがとう、でも足の骨を少し痛めただけだら平気なのっ」

「・・ならいいんだけど」

「・・勇樹、優しいねっ」

「え?いやっ」

一時暗かった冬美が笑顔を作ったのは嬉しかったが僕は照れてしまい顔をそらした・・

冬美の不幸を喜べるわけはないが
これからも病院に来れば会えるという点だけは嬉しく思ったのを覚えている・・



「あ、そうだっ」

冬美はナ−スコ−ルを手に取り言った

「散歩、行かない?」

「散歩?」

急な誘いに驚いたけど、当然嬉しかった


「・・嫌かな?」

「ううん!行こう!」

ナ−スコ−ルを押した冬美、天井からナ−スの声がする

「は〜い、冬美ちゃんどうしたの?」

すごく慣れた様子の声だ、冬美も同じく慣れた様子で天井のスピ−カ−に向かい言った

「今から散歩に行ってもいい?」

声は答える

「6時・・か、うん、いいわよ、でも面会時間内には帰ってくるのよ〜」

「は〜い」

「じゃあ、車椅子、持って行くから」

スピ−カ−から音が消えた

☆15☆
「冬美ちゃん」

数分後、一人の若いナ−スが車椅子を押して病室に入ってきた

「あっ沙織さん!」

まず反応したのは冬美、僕は軽く会釈をした

「あれ?」

ナ−スは僕を見て首を傾げる
そして言った

「冬美ちゃん彼氏できたんだ〜!」

僕は否定しない

「もう!ちがうよ!」

慌てて言う冬美、まぁそれが現実・・

「あはは、冗談だよ、この前話してた写真の人でしょ?」

「う、うんっ」

・・写真の人?冬美が僕の話をしてくれたのか?

「勇樹、この看護師さんは沙織さんって言って私によくしてくれるのっ」

「あ、そうなんだ、はじめまして勇樹です」

沙織、というナ−スは愛想のいい笑顔で言った

「はじめまして、冬美ちゃんと仲良くしてあげてね」

「あ、はい」

当然です

沙織さんは続けて言う

「でも勇樹君、冬美ちゃんは可愛いから惚れないようにね!」

「え、いや、その」

無理です

「もう!沙織さん!」

慌てる冬美が酷く可愛かった・・
本当に、幸せな時間だ


僕が久々の幸せに浸っている間に、冬美は沙織さんの手伝いで車椅子へと身を移そうとしていた

その姿を見て思う

(・・車椅子)

足の骨を痛めた・・か

骨折かな?
いや、ギプスしてないみたいだしそうは見えない、両足を骨折するなんて滅多に無いだろうし・・
気になるけど、こんな事って聞いてもいいのかな?

「勇樹君っ」

沙織さんが言った

「冬美ちゃんの車椅子、押してあげてね」

「あ、はいっ!」


☆16☆
「・・押してもらっちゃってごめんね」

「ううん、いいよ」

冬美が乗った車椅子を押し病院から出たのは数分前のこと、様々な人の僕らをカップルのように見る視線は真実と違っていても少し嬉しかった

僕は空を見る

6時頃だろう、辺りは夕色に染まり始めていた・・

長い坂を登った高地にある病院、でも病院が頂上ではない、まだ上の方へ坂は続いているんだ・・
当然僕は行ったことがないためどんな場所が上にあるのかは分からない・・
外に出てすぐ冬美が指を指した先はその坂の上だった、興味もあったし冬美が行きたいと言うのだから行かない手段は無い、僕は車椅子を押し病院からさらに上へと登っていた

「重くない?坂道だし、大変なら無理しないでねっ」

「大丈夫、それより上には何があるの?」

「・・すっごく景色がいい所、この時間は特に」

「へぇ・・」


綺麗な景色、写真家を目指す僕にとっては嬉しい言葉だ、さらに冬美と一緒に見れるなら尚更のこと、そうとなれば疲れ知らずの僕、その坂道を踏み締め進んだ

その間、冬美は持ってきた小さなバッグをずっと大事そうに見つめていた・・


「・・・・」

一時が経つ、少しずつゆるやかになってきた坂、初めて見る光景が顔を出し始めた・・


・・この時のことは、よく覚えている

感情じゃない、冬美と二人で居た・・って事を何より覚えているんだ・・

・・そう

これが二人で来た

一回目の・・あの場所


なんと言えばいいだろうか、頂上は芝の生えた広場のようになっていて木なども生えていない、スッキリ見渡せる環境と広さだ

「勇樹っ先まで行こうっ!」

「うん!」

☆17☆
空、海、夕日・・

・・素晴らしい!

一番先は崖になっていて危ないがギリギリまで行けば分かるその壮大さ!下には広がる海の絨毯!そこに夕日が浸かる絶景!
高さと広さが合わさり初めて作り出せる景色だ!

僕は無意識のうちにシャッタ−を切っていた

「・・綺麗でしょ?」

「うん!」

抑え切れない興奮で僕は頷いた

本当に綺麗だ・・
最高の一枚になったに違いない・・

「沙織さんに教えてもらって知ったんだ、でもあの坂道を一人で行くのは難しくて、いつもはお母さんに連れて来てもらってるの」

「そうなんだ、ありがとう、いい写真がとれたよ」

「・・ううん、逆、私からの写真のお礼」

「そんな、お礼なんて」

「・・もう、お礼くらいさせてよ〜・・」

車椅子から上目使いの冬美、僕がこの時目を反らしたのはそんな冬美が眩しくて見てられなかったのと、そんな君ともう一度ここに来るための言葉を探したからだった

そして言う

「えと、一人じゃ本当に大変そうだし、行きたい時はいつでも僕に言ってよ、親だっていつでもは来れないでしょ?」

「え?そんなっ大丈夫、勇樹に来てもらうなんて悪いよっ」

「いいって、僕もまた来たい場所だし」

本当に会いたい一心で言ってた気がする・・

もう二度と一緒に来られないなんて僕の方がショックで入院してしまいそうだ・・


「・・・・」

急に黙る冬美・・

「・・冬美?」

「・・・勇樹」

「・・ん?」

「今日は、なんで来てくれたの?」

「え?」

急でストレ−トな質問に驚く

「なんで・・って」

「・・なんで、会いに来てくれたの?」

「・・いや」

・・それは・・

「・・勇樹?」

言えるはずがない

「・・えと、写真あげるって約束してたし」

「・・そう、だよね」

「う、うん、どうかしたの?」

「ううん!でもなんで私のためなんかにわざわざ来てくれたんだろうな・・って」

「・・・」

・・私なんかのため?

・・ちがう・・

冬美だから、会いに来た・・

言えるものなら大声で言ってやりたかった


「勇樹は本当に写真が好きなんだねっ」

言葉を無くした僕に冬美が言った

「え?うん!」

「写真撮った時の勇樹、本当にいい顔してたもん」

「・・そうかな?」

「うん・・かっこよかった」

「・・え?」

「あっ、ううん!気にしないで!」

「あ、うんっ」

・・気にします

「・・でも、夢がある人は本当にカッコイイと思うの・・」

「・・・・」

そう言う意味か・・

でも、何にせよ僕にとっては嬉しい言葉

「写真家かぁ・・すごいなぁ」

「そんな、すごいなんて・・」

「すごいよ、自分でやりたいこと見つけて努力して・・」

僕は暗く口を開く


「・・親には、反対されてるんだ」

「え?」

「さっきも言ったけど、僕の写真喜んでくれたの本当に冬美が初めてなんだ、親には邪魔物扱いされてる・・」

「・・そうなの?」

「うん、父親とも将来の話になると喧嘩ばっかりでさ・・」

「・・そうなんだ」

「・・・・」

「・・馬鹿だね!」

「・・え?」

「勇樹の写真の素晴らしさが分からないなんて馬鹿!」

「・・冬美」

「あんなに綺麗なのに、綺麗な風景なんて誰でも好きなはずなのになんで分からないんだろう・・」

本当に悩んでいる様子の冬美・・

そして言った

「でもっ、勇樹は諦めたりしないよね?」

「・・うん!」

「あはは・・じゃあ、私がファン一号でもいいかな?」

「え?も、もちろん!」

「あははっ、やったぁ!勇樹の親にも勇樹の写真の素晴らしさ教えてあげなきゃ!」

「・・・・」

・・冬美・・

・・ありがとう・・



「あっ、そうだ」

そろそろ沈んでしまいそうな夕日を前にして冬美は思い出したかのように持って来たバックを手に取った

僕は首を傾げる

「どうかした?」

「うん・・手紙を送らなきゃ」

「手紙・・?」

「・・うん」

「・・誰に?」

「お父さんっ」

「あ、そうなんだ、じゃあ早いうちに戻らないとね」

「あ、ううんっ、ここでいいの」

冬美はいつもどうりの笑顔で言った

「・・ここで、いいって?」

当然理解できるはずがなく再び首の曲がる僕に冬美は言う

「・・私ね、お父さんの顔、見たことないの」

「え?」

・・父親を知らない?

「・・私が生まれてからすぐ死んじゃったんだって」

「・・・」

「あはは、いきなりゴメンね、ドラマのような話でしょ?」

「あ、いや」

「・・すごく優しいお父さんだったってお母さん言ってた・・」

「・・・・」

「・・私ね!信じてるんだ!」

「・・信じて?」

「うん!こんな高い所から手紙を送れば絶対に天国に届くって!」

「・・冬美」

冬美はそう言うと大事に抱えて来たバックから一つの物を取り出した・・

それは・・

手紙を書いた紙を折って作った・・


「紙ヒコ−キ?」

「・・うんっ!」


その返事と共に・・

その紙ヒコ−キは空を舞った・・

夕日へ向かって・・


一直線に突き進むその姿・・



僕達は二人・・

その素晴らしくもどこか寂しい目の前の風景を見つめた・・


「・・・」

冬美がこの場所に、時々来る理由・・

それはこの素晴らしい風景を見るためだけじゃなくて・・

手紙を書いた紙で作った紙ヒコ−キを・・
会ったことのない父親宛てに飛ばしていたんだ・・


そろそろ見えなくなる紙ヒコ−キ・・

その間、僕は何を考えただろうか・・

次に何て声をかければいいか・・とか

あの手紙はどんな内容だったのかな・・とか

そんな感じだったんだと思う・・


でも実はそんなの二割の話で・・

君は笑顔の裏に本当はすごい寂しさを抱えている気がしてひどく辛くて・・

ただその笑顔に癒され助けられているだけの自分がひどく嫌いで情けなくて・・

・・そして

「・・つまらない話、聞いてくれてありがとうっ」

こんな僕にやはり笑顔を作ってくれる君を

愛しく思った・・


☆18☆
「あ、もうこんな時間!沙織さんに叱られちゃうよ!」

さっきの夕暮れからこの言葉が発っせられるまで一時間
僕達はずっと語り込んでいた・・
父親のことは気になったが軽々と聞けるはずはなく僕はただ冬美の様々な問いに頷いていた気がする・・


もうとっくに夕日は沈んでいた、8時を回っているので夏であれ辺りは真っ暗だ・・

空には神々しく浮かぶ満月・・

今日はいい天気だったため雲に邪魔されないためか、月の輝きが増して見える・・


その夜空の下・・

僕達は病院へと向かい坂を下り始めた・・



「あ、ここからの下りは一人で大丈夫っ」

車椅子のハンドルを持つ僕に冬美が振り向いて言った

「そんな、まだ危ないよっ」

「ううん、腕、鍛えなきゃいけないし、これくらいの下りなら慣れてるから平気っ」

「・・そう?」

「うん、でも滑り落ちていきそうになったら助けてねっ」

微笑みながら冗談を言う冬美

「あははっ、うんっ」

無邪気な冬美の笑顔はこの暗闇でも眩しいくらいだ・・

本当に可愛い笑顔を作る・・

見ているだけで僕は幸せだと思える・・

「・・・・」

数秒の沈黙・・

ここで思う・・


そういや自分からは殆ど話しができてない

冬美が何か言えば当然答えるが冬美が黙ってしまえばこの沈黙・・

せっかく冬美に会うために病院まで来れたというのに臆病な所は治らないものだ・・

・・せっかく冬美といるんだし、何か話さないと・・

「・・・・」

横で車椅子に乗る冬美を見つめる・・


「・・ん?何?」

それに気付きキョトンと首を少し曲げる冬美

・・こういう細かな仕草も可愛い・・

「・・え?いや」

「・・?」

なんでもない、なんて言ったらただの馬鹿だ

・・何か・・


「・・あ、ほらっ」

僕は夜空を見上げて言った・・

「・・なに?」

冬美も見上げる・・



「・・不思議だね、月がホラッ・・今日は少し大きく見えるよ」

・・僕は何を言っているんだろう・・

・・でも、必死に探した言葉だった・・


「・・本当だ・・」

「・・え?」

「確かに不思議だねっ、言われてみるとそんな気がするっ」

冬美はまじまじと月を見つめる・・

「あ、うん、でしょ?」

「うんっ、雲がないからかな?すごいすごいっ!」

「・・・・」

無邪気だな・・

それでいて色々なことを考えていて・・
素直で、優しくて・・

見上げる冬美の横顔


できるものならこの気持ちを伝えたい・・

「・・・」

・・でも、僕が伝えたって・・

こんな僕が・・


本当に本当に幸せな今の時間・・

これが終わってしまうなら・・

今を楽しめれば、それでいい・・

ずっとずっと・・

君と仲良くしたい・・




あれから一時歩いて、もう病院だ

時間は8時半・・

僕達は再び病室へと戻ってきた


「今日は本当にありがとう」

冬美は僕の目を見て言った

「とんでもない、僕は何も」

そう、お礼は僕が言いたい・・

「・・写真、本当にまた・・くれる?」

「う、うんっ!」

「良かった・・」

また、綺麗な写真を撮らないとな・・

君の存在が本当に僕のやる気になってくれている・・

少しずつだけど・・
夢に対する不安や違和感だって薄れていっている気さえする・・

応援してくれる言葉ってどれだけ大きなことなんだろう・・


「あ、でも勇樹も夏休みだし宿題とかあるよね・・?」

冬美が思い出した様に言った

「あ・・うんっ」

・・そうだ

宿題をやらなくては親にどやされて写真どころじゃなくなる・・

去年の夏休みなんて、写真尽くしになってしまいこの歳で外出禁止なんてされたのを忘れない・・

まったく・・
不便な家庭だ・・

山のような宿題・・

写真を撮る時間も削れないし・・

そうなると終わらないうちはなかなか病院に顔を出せない・・


「・・そうだっ、一時は郵便で写真を送るよっ!」

「え?そんなっお金かかっちゃうよっ!」

「ううん、大丈夫、見て欲しいし」

「・・本当?」

「うんっ」

「・・じゃあ、お願いしてもいい?」

「うん、毎日送るよっ」

「本当に?嬉しいっ」


冬美には悪いが・・

僕の方が嬉しいはずだ


・・すると

「・・勇樹っ」

「ん?」

「これ・・」

冬美は一枚の紙を差し出す、何やら数字が並んでいる・・

「・・?」

「・・これ、この病院の電話番号なんだけど」

「あ、うん」

「一時来れないみたいだし、その間もし暇があったら、電話・・くれない?」

「・・で、電話?」

「あ、本当に暇な時でいいのっ!電話きたら沙織さんが私に知らせてくれるから・・」

「・・あ、うん!分かった!」

「なんか色々ごめんっ」

「そんなっ!」

・・電話・・

僕が・・?

冬美に・・?

この数日の間にいったいいくつの新しい経験を体験するのだろう

・・でもっ

言ってきたのは冬美の方だ・・嬉しくてたまらないのは言うまでもない!


病院内に9時を知らせる放送が鳴った

究極の幸せの時間も終わりの様だ・・

・・本当に楽しかった

「それじゃあ」

「うんっ」

こんな清々しい気持ちで帰宅することが少し贅沢に思えた・・

☆19☆
満月の空っていうのは星が少ない・・

月が明るいから、小さな光の星達は見えなくなったり目立たなくなったりするから・・


「・・・・」

僕は今、自宅へ向かい少し速い速度で自転車を走らせている

そして、あんな清々しい気持ちで病院を後にしたはずなのにあまりいい顔はしていない

それは見上げた夜空だった・・

文句のつけようがない満月の空・・
堂々と輝く月・・

その光で消える・・星


(・・僕、みたいだ)

多分、冬美は満月で

僕は、かすかに見える星・・

・・とんだロマンチストかもしれない

だが捻くれてる・・
綺麗な夜空は綺麗だって思えればそれだけでいいのに・・

・・本当に自信なんて言葉が存在しない世界を生きてきたからな

・・僕は変われるのだろうか・・?


「・・ただいま〜」

家に着いたのは30分後のこと・・

動きっぱなしだった今日だからお腹が空いている、僕はまず食卓へと向かった


「遅いぞっ!」

父親の声・・

「連絡くらいしなさいっ」

これが母親・・

「・・ごめん、でもまだ9時過ぎだよ」

父親が言う

「勉強で遅くなったなら何も言わない、お前の場合はまたくだらん写真でも撮ってたんだろ」

「・・別にいいじゃん」

さらに父親・・

「本当にいい加減にせんかっ、メシが食えないとどうしようもないんだぞっ」

母親も続く・・

「そうよ、写真家なんかじゃなくても夢なんて大学行ってからでも探せるじゃない」

・・これが、僕の家の現実だ・・

ああ・・
病院での輝きが嘘の様だ・・

別世界だ・・

「・・ほっといてよ」

僕は用意されている晩ゴハンを持てるだけ持ち部屋へ走った・・
思春期の不良少年じゃあるまいし・・


部屋のドアを力強く閉めて部屋に身を入れるとドスンと机のイスに座りこんだ

「・・はぁ〜」

ため息は幸せが逃げると言うが僕の場合は勘弁して欲しい・・
これ以上の不幸が待っていたら僕ではとても耐え切れない・・


僕はいつもカメラを持ち歩いているバックを取りひっくり返した

カメラが机の上に転がる・・

そして一枚の写真も出てきた・・

・・手に取る

「・・綺麗だな」

早く帰って、これが見たかったんだ・・

冬美とあの場所で一緒に見た・・

夕日・・

素晴らしい一枚だ・・

ずっとずっと、大切にしよう・・


「・・ん?」

机の隅に開かれた写真専門誌・・

偶然目に飛びこんだのは・・

「コンテスト・・か」

そう言えば先日このペ−ジを見たまま開きっぱなしだった・・

それは写真を送り審査され優秀な作品が雑誌で取り上げられるというなんともありがちなコンテストの内容が書かれているペ−ジ

優秀作品になれば様々な支援が受けられるので価値はあるし参加者も当然多い

「・・・・」

前回の優秀作品者のコメントが隅に書かれている

『応援してくれた親の期待に答えることができて嬉しい!このコンテストが夢を叶える第一歩になりました!』18歳 北村庄司


「・・・・」

もう一度読む・・

『応援してくれた親の期待に答えることができて嬉しい!このコンテストが夢を叶える第一歩になりました!』18歳 北村庄司

「・・・・」

気に入らない部分だけを読む・・

『応援してくれた親の期待に答えることができて嬉しい!』


・・親?

(・・縁の無い話だな)

さっきの親の態度を思い出すと気持ちが抑え切れず、目の前の雑誌を掴むと部屋の壁へ投げ付けた

雑誌はドンと壁にぶつかり、バサッと床に落ちた・・


僕はベッドに転がる

こんな時はやっぱり冬美の事を思う・・


・・でも

今日は冬美の笑顔が綺麗に思い出せない


(・・冬美)

・・父親が、いなかったんだ・・


顔も・・見たことないなんて

この歳になれば、さすがに片親なんて人とは数人くらい出会ったし噂でも知っている・・

だがさすがに人事だ

こんなに身近に感じたことはない・・

改めて考えてみると

・・死ぬほど辛かっただろう・・

あんな時に気が利く男なら何かカッコイイ言葉でも言ってやるんだろうけどな・・

まったく僕はどうしようもない奴だ・・

冬美に笑顔を与えるような人間になりたい


(・・無理だな)

こんな時は寝るに限る


明日から地獄の勉強漬けの毎日・・


僕は明日にならないよう願い目を閉じた・・


でも・・

そんな願いは当然叶うはずはなく・・

☆20☆
「・・はぁ」

溜息の僕・・

次の日の朝だ・・

いつもなら悠々と寝ている時間だが今日は違った

今日は一日中勉強をして早いうちに終わらせようと思ったからだ

目が覚めた僕が向かった先は洗面所

そこで最初に出会うのは鏡に写る自分だ・・

溜息の理由はこれ

(・・つくづく冬美とは不釣り合いだな)

・・あと少し・・

僕がカッコ良くなれたらいいのに・・



(・・でも)

・・冬美はこんな僕にいつも優しい笑顔を作ってくれる・・

そして心から夢を応援してくれる・・


・・僕はもっと変わらなきゃいけない・・

・・のに

まったく・・

「・・・っ」

僕は両手で顔にザブンと水を浴びせた・・




そして、そんな朝からすでに数時間・・


(・・暑いな〜)


真昼の時間・・


朝から宿題を相手に机へ向かった僕は意外にも集中でき机を立ったのは朝食の時だけだ

まぁよく考えれば当然のこと・・
終われば堂々と冬美に会いに病院へと行くことができる・・
励みはこれ一つで十分だった


僕は額の汗を拭う

これだけ暑いと扇風機から感じる風は温かく、逆に僕を苦しめるだけだ・・
こんな時、ふと温暖化のことを深刻に考えてしまうのは僕だけだろうか?


「・・はぁ」

・・つまらない

僕は窓の外を見る・・


(・・綺麗な空)

いい天気だ・・

夏を感じさせる入道雲は堂々と浮かぶ・・

それに隠されまいと頑張るのは僕を苦しめるギラギラ太陽・・

空の青色は雲とのコラボレ−ションを魅せている様だ・・


(・・写真、撮りたいな)

うずく体・・

僕は机の宿題を見つめる・・

思った以上に進みは早いがまだ数時間・・
終わるには程遠い事は言うまでもない・・


「・・・・」

もう一度窓の外を見つめる・・


「・・・・」

ああ・・
やっぱり綺麗だ・・

・・机に体なんか向けられない・・


(・・あ、そうだ)

僕は頭で分かっていることをもう一度思い出した

写真・・

冬美に送らなきゃいけない・・

その為の写真を撮らないと・・


(・・少しくらい息抜きしてもいいよな)

こんな時は都合のいいように考えるのが僕のクセだ・・

こんな暑い真昼に勉強しても頭に入るはずがない

それでは勉強の意味が無いのではないか?

少し涼しくなった夕方くらいからまた始めればいいじゃないか

うん・・

そうだ・・

そういう事にしよう


「・・よしっ」

僕は立ち上がった

☆21☆
今日も様々な所を回った・・

街へ出たり

小道を走ったり

時には森の中へなんかにも入ったりした


(・・よし)

なかなかいい調子だ

これなら冬美に送っても問題ないだろう

きっと・・

あの、いつもの笑顔でこの写真を見つめてくれるはずだ・・

思うだけで嬉しさが込み上げる・・


この時の僕は言うまでもなく写真を冬美に見てもらえる、という嬉しさも当然あった

でも・・

今まで誰一人として見せることの無かった写真・・

いや、見せられなかった写真・・

それを、笑顔で・・

しかも決して偽りなく欲しいと言いそれを見てお礼を言ってくれる相手がいることが本当に幸せで仕方がなかった・・


・・一秒でも早く届いてほしい・・

冬美へ・・


僕はそう願うと持ってきた病院宛ての住所が書かれた便箋に写真を入れた

目の前には最近では少し珍しい赤い筒型のポスト

僕は右手でポストの中へと入れた・・

・・ポストの底で便箋の落ちた音・・

僕はこれを聞くと目の前の坂を自転車で滑り下りた

風が気持ちいい・・

家にある扇風機よりも何倍かマシだ・・


「・・・・」

この日の少しの息抜きは数時間におよび・・

すでに空は少しずつ、オレンジ色に染まろうとしていた・・




僕が家に帰ってきたのは、あれからすぐのこと・・

親に小言を言われたのは言うまでもない・・


再び机に向かう僕

つまらないのは変わらない・・

少し涼しくなったからと言って勉強が頭に入るはずがないのも当然だった・・

・・でも明日には病院に届く写真を思うと手に握られた鉛筆は数学の問題を気持ち良く解いていた


「・・ふう」

結構進んだな・・

この調子なら一週間くらいで一段落できそうだ・・

・・でも一週間・・

その間、冬美に会えないなんて拷問に近い


会いたいな・・

冬美に・・



(・・・あ)

そう・・言えば・・

僕はある記憶を思い出した


(・・冬美から)

そしてガタガタと机の引き出しをあさる


取り出したのは・・

・・一枚の紙切れ


・・そう

病院の電話番号がならんだ・・あの紙


(・・電話・・)


つまり・・

そうすれば冬美の声が聞ける・・

冬美と、話せる・・


(確か、面会時間内ならいつでも電話していいって・・)


面会は確か8時まで

良かった、まだ少しある・・


・・けど・・

僕らしく無意味に心配してしまう・・

大丈夫だろうか・・

・・いや・・

ここで電話しなきゃ男じゃない・・よな

「・・・・」

僕は、机の上に置いてある電話の子機を静かに取った・・


左手で持つ電話を見つめる・・

やはり緊張する・・
こんな経験ないのだから当たり前だ・・

でも・・
冬美から言われたわけだし僕だって死ぬほど話したい・・

・・うん

僕は慎重に紙を見ながら右手でそっと番号を押し始めた・・

全部で6ケタの電話番号・・

1ケタ目を押す・・

そして2つ・・3つ

・・4つ・・


・・5つ・・


「・・・・」


・・押せない

あと、一つが・・


やばいくらいの緊張

・・それに一体何を話せばいいのか全然分からない・・

まさか僕が楽しく盛り上げて元気づけてあげられるはずは無い

またいつもように何も言えなかったら冬美が可哀相だし、つまらないだろう・・

そんな事でもし嫌われでもしたら・・

・・そうだよな・・

所詮は僕だ・・

入院生活なんて仲の良い友達でもできない限り退屈だと思う・・
だから偶然知り合った僕に電話番号をくれたんだろうが僕と話しても仕方が無い・・

声を聞いて嬉しいのは僕であって冬美じゃない・・


「・・・はぁ」

僕は電話をそっと机の上に戻した・・

電話は机のライトで寂しい影を伸ばす・・

僕は、その最後が押せないままの電話を見つめた・・


・・本当に臆病だと自分で思う・・

もっと、僕に勇気があれば・・

・・つくづく名前負けしている自分に腹が立つ・・

だけど腹が立つだけでそれ以上は何も無い

変わろうとすることはずっと無かった・・

僕はそんな奴だ・・


・・そんな僕が・・

君を好きでいてもいいんだろうか・・

・・いや、無意味なのは分かってる・・




・・だけど


こんな僕でも・・


一つ・・

これだけは・・

言えることがある


「・・冬美」


世界の誰よりも・・

君が好きだってこと


☆22☆
6日が流れた・・


生まれて始めて勉強を頑張ったと堂々と言える
写真だって約束通り毎日送った

10時に起床した僕は一段落した机の上の課題を見た

今日はあの机に向かう必要は無い・・


「行ってきます!」

久々に張りのある声

僕は素早く準備をすると家から出て自転車に飛び乗った

気分がいい・・

多分、懲役を終えた気分はこんなだろうと思う・・

走り出す自転車

向かう先は言うまでもない・・

「・・・・」

僕は空を見上げる・・

(今日も・・綺麗だな)

最近は落ち着いている天気・・

ありがたい・・

だからこそ綺麗な青空を冬美に送ることができた・・

ちゃんと・・
見てくれたかな・・


「・・・・」


時間潰しのために最近は遅かった自転車のスピ−ド・・
でも今日は久々に風を感じた・・

☆23☆
「あら、勇樹くんっ」

病室前の坂を勢いよく上ったのは数分前のこと

僕は病院の三階へと辿り着いた・・

「お久しぶりです」

冬美に病室に行き着く前に会ったのは沙織さんだった

「あはは、そうね、冬美ちゃんに会いにだよね?」

「あ、はいっ」

「えと、今ね、冬美ちゃん検査に行ってるのよ」

「検査?」

「うん、そうだなぁ、多分あと10分位で終わると思うんだけど」

「あ、そうなんですか」

「うん、冬美ちゃんの病室で待っててもらって構わないから」

「あ、はい、そうします」

沙織さんは笑顔を作るとステ−ションへ歩いて行った

僕も冬美の病室へと足を進める

(・・検査、か)

まぁ、患者なのだから仕方ない・・
久々のために心の準備が必要だし調度良かったかもしれない・・

(冬美、良くなってるといいんだけど・・)


僕は冬美の病室の入口をくぐった・・

久しぶりだ・・

(・・・ん?)


・・まず目に飛び込んだものがある

(・・あれ・・って)


冬美のベッドの頭側の壁・・

前回は二枚の写真しかなかったけど・・

今日は違う・・

約一週間、数枚ずつ送り続けた写真は十数枚になる

その全てが壁に張られている・・

うん・・
僕の写真だ・・

冬美・・ちゃんと張ってくれてたんだ・・

(良かった、届いていて・・)

どんな気持ちで見てくれたんだろう・・

知りたい・・

早く冬美に会いたい


僕はイスにも座らず張られた写真をずっと見つめていた・・

☆24☆
数分後・・

壁を見つめる僕を我に返したのは・・

「・・勇樹?」

「ん?」

病室の入口から聞こえた声

沙織さんが押す車椅子に乗るのは・・

「・・冬美っ」

「勇樹っ!」


眩しい笑顔

可愛すぎる・・


病室へと入って来る冬美・・

沙織さんは冬美がベッドに移るのを手伝い、それが終わるとやはり笑顔を作り早々と病室を後にした・・


「勇樹、いつ来たの?」

「えと、10分位前かな?」

「そうなんだ、待たしてゴメンっ」

「そんなっ」

「・・・・勇樹」

「・・ん?」

「・・ありがとう」

「・・・?」

冬美は壁の写真を見つめた・・

「本当に・・嬉しかった、毎日が楽しみだった」

「・・ううん、僕の方こそわざわざ張ったりしてくれて・・」

「だって・・綺麗なんだもん」

まじまじと写真を見る冬美・・

相変わらず可愛い・・

・・幸せだ・・

なんで君といるとこんなに幸せなんだろう


「・・あ、勇樹」

「・・ん?」

「えと、電話・・嫌だったかな?」

「あ、いや!ううん!そんなことないよ!勉強が忙しくて!」

「そう・・ごめんね、本当わがままで」

「そんな!僕こそ・・ごめん」

「そんな忙しいのに、写真まで・・私、最低だ」

「なんで!大丈夫!写真で大変なんて思わないから!」

「・・優しいね、勇樹」

「いや、そんな・・」

・・本当にごめん

嘘ついてる・・

電話する勇気が無かったなんて言えるはずがない・・

本当馬鹿だ・・

最低だ・・


「・・僕、何か飲み物買ってくるよ」

何を言えばいいか分からず出た言葉

「あ、勇樹、良かったらそこのジュ−ス飲んで」

「え?・・でも」

「いいの、良かったらだけど」

「・・じゃあ、もらおうかな」

「うんっ」

咄嗟の言葉だったが自転車で来たために喉が渇いているのも事実

僕は冬美からもらった缶ジュ−スあけた

「・・・・」


冬美は写真を見つめている・・

(・・そう言えば)


そんな冬美の横顔を見て、なぜか、ふと思い出した・・

あの夕日を・・

「冬美、今日はあの場所行くの?」

「え?・・どうしようかな」

「・・ん?昨日あたり行った?」

「ううん・・」

「じゃあ・・体調でも悪い?」

「ううん・・」

「・・?」

「勇樹に車椅子・・押してもらわなきゃ行けないから・・」

「え?」

「・・迷惑かけちゃう」

・・まったく

可愛い・・

「そ、そんな!僕は全然平気だよっ!」

「・・本当に?」

「うん!」

「やったぁ!ありがとう勇樹!」

・・君の笑顔を見るために生きてたって

僕は幸せかもしれない


すると冬美は棚から手紙の書かれた紙を取った

そして言う

「・・えと、勇樹」

「なに?」

「紙ヒコ−キ・・折ってくれないかな?」

「え?僕が?」

「えと、検査で使った薬のせいかな?手が少し痺れてて・・」

「・・そうなんだ、いいけど、大丈夫?」

「・・うん、平気っ、ごめんっ」

僕は手紙を受け取り紙ヒコ−キを折りはじめた・・

沈黙になる・・

それが嫌で珍しく僕は紙ヒコ−キを折りながら口を開く

「・・退院にはまだかかりそうなの?」

「え?・・退院?」

「うん」

「・・退院は・・どうなんだろう」

「まだ分からないの?」

「え?いやっ、えと、多分もうそろそろなんじゃないかな?」

「そっか、良かった」

「・・早く退院して、遊びたいな・・」

「そうだよね、一日でも早く退院できるといいけど」

「そう・・だね」

「・・?」

君がなんでそんな目をするのか・・

分からなかった・・




この日も久しぶりに会えた喜びを胸に会話を楽しんだ

そして、冬美の乗った車椅子を押し病院内を散歩したり
時には沙織さんと三人で笑い話を交わし

空がオレンジ色に染まり始めるまでの時間を過ごした・・

☆25☆
「いい人でしょ?沙織さん」

「ん?ああ、そうだね」

薄いオレンジに染まる空・・

時間も頃合い・・

僕は冬美が乗る車椅子を押し、あの場所へ向かうために坂道を登っていた・・


「優しいし、綺麗だし、あんな女性になりたいな〜」

まぁ、確かに沙織さんは優しいし美人だ、聞く話によると若いのに仕事もできるようだし色々な人に好かれるタイプだろう

・・でも

「冬美は冬美で、いいと思うけど」

君には遠く及ばないと僕は言いたい・・

「・・え?」

「ん?あ、いやっ」

しまった・・

つい本音が口に・・


「そ・・そうかな?」

「う、うんっ」

まぁ本心なんだ、いいだろう・・

妙に照れてる冬美が可愛いし・・

「あ、ありがとう」

「いや、そんなっ」


数秒の沈黙・・

僕の足音だけが聞こえる・・


「あのね」

その沈黙の中、先に口を開いたのは冬美

「うんっ」

「昨日、沙織さんに聞いたんだけど、明日、この坂を使ってお祭りがあるんだって」

「・・お祭り?」

「そこまで大きなお祭りじゃないんだけど、病院の近くだし教えてくれたみたい・・」

「あ、そうなんだ」

そう言えば・・

そんな時期だ・・

お祭りなんて何年か行ってないな・・

「それでね・・えと」

不思議と躊躇している冬美

「うん、なに?」

「沙織さんと行く予定だったんだけど・・急に仕事入っちゃったらしくて・・その」

「・・?うん」

「・・一緒に、行かない?」

「え?・・僕と?」

「う、うんっ」

・・冬美と

・・お祭り?

誘われてるのか?

僕が?

まさか・・

現実か?


「あ、い、嫌だよね!ごめん!」

・・まさか

「ううん!そんな!えと、僕で良かったら!」

嫌なはずなどない

「え?本当?無理してない?私とだよ?」

「う、うん!大丈夫!明日は何も無いし!」

「・・本当?いいの?」

「うんっ!」

「・・良かった」

「えと、一人じゃ危ないしさ」

「・・ありがとう」

「そんな、僕の方こそ」

明日・・か

相当暇人だと思われているだろうな・・

毎日写真ばかりなんだから当たっている・・気を使われても仕方が無い・・

でも嬉しい・・

過去最高の夏休みになりそうだ・・

今夜は嬉しくて眠れないだろう・・





「あっ」

僕が言った・・


冬美は黙って見つめている・・

頂上から見える・・

その夕日を・・


「・・・・」

やっぱり綺麗だ・・

そのオレンジはまるで太陽との距離が近づいたかのように偉大に感じられ、他の場所からみても必ずとも同じだとは言えない価値観を肌で感じる・・
海も清々しい青色から橙色へと変わり、まるで太陽が海に沈み沸騰している様・・

何とも素晴らしい絶景だ・・

この場所は何か特別だと思わせる・・

「先まで行こうっ」

僕達は前回同様の場所まで行き改めてその風景を眺めた・・


僕は冬美に言う

「手紙・・送ったら?」

「・・うんっ」

なぜだろう・・

今がいいって思ったんだ・・

冬美もそう感じたのかバッグを開ける・・

まだ痺れているのか、ぎこちない手・・

「・・大丈夫?」

「・・うんっ」


なんとか手に持たれた紙ヒコ−キ・・

・・そして


「・・・それっ」

空へ舞った・・




フワフワと風に乗り

夕日へ向かう・・



不思議な様だった・・


こんな高い所から手紙を送れば・・

天国に届く・・


本当に・・そう思えた


見つめながら冬美が口を開く・・

「・・自分の夢を信じて、諦めず目指す・・」

「・・?」

「それって単純だけど大事なことだよね、誰にでもは出来ない凄いことだよね・・」

「・・・」

「でも、そんな立派な人が知り合いにいます・・って、そう、手紙に書いたの」

「・・え?」

冬美は僕を見て笑顔を作った

酷く愛しいその笑顔


「・・・・」

冬美、君は僕から何を与えられて・・

僕にここまで・・
沢山の勇気を与えてくれるの・・?

☆26☆
部屋のドアを閉める

「・・・・」

床に目を移す・・


・・あった

前に壁へと投げ付けた雑誌・・

僕は少し見つめた後にそっと拾う・・


投げ付けたにもかかわらず変わっていないペ−ジ・・


(・・コンテスト)


拾ったのは当然わけがあった・・


時間は遡る・・


冬美と夕日を見た・・

・・あの後


・・・・

・・・



手紙を送り、いつものように話をした後、僕達は病院へと帰ることにした

そして坂を下り始めて5分位が経った頃だったか、隣に並ぶ冬美が僕に言った


「写真家・・って、やっぱりコンテストとかあるんだよね?」

「うん、そうだね」

「コンテストで入賞したらどうなるの?」

「ん〜、業者にも目を付けられるわけだから写真家としての独立に役立つし、上手くいけば雑誌の会社の写真担当者として就職できたりするのかな」

「へぇ〜すごいね!」

「そうだねっ」

「じゃあ、当然勇樹も出品してるんだよね?」

痛い質問・・

「え?・・僕は」

「・・してないの?」

「・・うん」

「えっ?なんで?」

「僕なんかが出品したって・・無理だから」

「・・・そんな、そんなの分からないよ」

「・・いや、でも」

「・・駄目、そんなはずない!」

「え?」

「勇樹の写真は素晴らしいよ!あんなに素晴らしいのに!なんで!」

「・・・・」

「勇樹の写真はすっごく優しいよ・・、私、心が洗われるみたいに感じる」

「そんな・・」

「ううん、多分、勇樹の優しさが写真に表れてるんだと思う・・」

「僕は・・優しくなんてないよ」

「勇樹は分かってないだけだよ!私にはそれが分かるから、勇樹に伝えたい・・」

「・・・・」


何も言えなかった・・


いつに無く真剣な冬美

なんで冬美がここまで応援してくれるのかすら分からない・・

本当に自分の事が分かってないだけなのだろうか・・

でも僕の写真のどこに魅力が・・?

コンテストなんて無意味に決まってる・・


そう冬美に言えばいいんだ・・

言えばいい・・

「・・・・」

なのに・・

やはり何も言えないのは何故だろう・・

この気持ちはなんだろう・・

涙さえ出そうな・・

この感情・・


「・・勇樹?私が保障するよ、自信なんて本当に無理だった時に無くすものだよ、ね?」

・・それは

お世辞や偽りでは無く

君が本心で言ってくれてる・・って


分かるから・・




結局あのまま何も言えず、僕達は病室へと帰ってきた・・


「・・じゃあ、僕はこれで」

冬美に言う

「・・あっ、勇樹」

「ん?」

「改めて言うけど、私と会った日、リンゴジュ−ス・・ありがとう」

「え?・・だからあれは・・」

冬美がなんで急にこんなことを言うのか分からない

飲めないから、と言ったら納得したはずだ

すると冬美が言った

「・・今日私があげたジュ−ス、何だか分かる?」

「・・え?」

・・そう言えば

「リンゴジュ−スが飲めない人なんて、なかなかいないと思うの」

「・・あ、いや」

「・・ありがとう」

「そ、そんな」

「・・ね?勇樹は優しいでしょ?」

そう言うと冬美はいつもの笑顔を作った

「コンテスト、考えてみてねっ」

「・・・・」

恥ずかしい・・

いや、嬉しいのかもしれない・・


とにかく酷く胸に響く言葉・・

・・僕は思った

君が一回でも多く笑ってくれるなら・・

無意味なこともやってやろう・・って


・・・・

・・・



「・・・・」

僕は雑誌を手に持ったまま机に座った

内容を目で読む・・


(・・明後日まで)

良かった、締切はなんとか過ぎていない・・

写真は沢山ある、明日には出せる・・

問題は何を出品するかだ・・

「・・よし」

僕は写真を選び始めた






「・・・・」

一時間が経つ・・

なかなか決まらない

やはり僕の写真では無理だろうか・・
全国から様々な人が出品するんだ、僕がどれを選んでも選考外だろうと思う・・

「・・はぁ」

椅子の背もたれに寄り掛かる

「・・・ん」

・・あれは

机の上の棚に大事そうに置かれた・・写真


・・素晴らしい夕日

冬美とあの場所へ初めて行った時に撮った写真だ・・

何度見てもこれは素晴らしい・・

「・・・・」


・・でも、この写真に決める勇気が出ない

内容によると送った写真は最優秀賞と佳作のみ返品となっている

選考外なら写真が無くなるわけだ・・

一番の自信作を送らなければ意味は無いが、これは本当に僕の宝物だ・・


「・・冬美」

君ならなんて言うのかな・・

いや・・

決まってる・・


「・・・・」

僕は夕日の輝く写真を手に取った・・

☆27☆
「・・似合う?」

冬美が聞いた

「も、もちろんっ」


すでに次の日・・


今日は日が暮れるのが妙に遅く感じた・・

久しぶりにゴロゴロして過ごした僕は夕方を感じると準備を始め、それが整うと自宅を自転車で出た

冬美とお祭りなんだから久しぶりにオシャレなんかしてみたが大丈夫だろうか・・

僕らしく心配しながら自転車に乗っていた気がする・・

だがそれも、もう一時間近くも前のこと・・

「・・・・」

今は病院・・

外は雰囲気良く色づいた空

小さな雲が所々に浮かび壮大さには欠けても美しさはある・・

鳥が飛んでいる・・

なんて言う名前だろうか・・

こんな時間だ、巣に帰るのだろう・・

こんな空も・・悪くないな・・


「・・空ばかり見て、どうしたの?」

冬美が言う

「いやっ・・なんでもない」

「やっぱり、変かな?」

「う、ううん!」

病院には待っていたのは、浴衣姿の冬美

可愛すぎる・・

照れてしまい素直に見れない・・


「本当かな〜・・」

自分の浴衣を心配そうに見つめる冬美・・

「う、うんっ、可愛いよっ」

僕にしては言ってみたほうだ・・

「・・そう?」

「うんっ!」

「ありがとうっ」


なんか本当に・・

「じゃあ・・行こうか?」

「そうだね」

ただ嬉しい・・


☆28☆
坂祭り、と言うらしい

なんともそのままのネ−ミングだ・・


もうそろそろ夕日は沈んでしまうが道は沢山の提灯で飾られているためほのかに明るい

坂のゆるやかな所に並ぶ様々な屋台から出る煙・・

お祭りを感じさせる発電機の音は心を和ませる・・

いつも二人で上る坂、そこまで大きなお祭りではないにしても沢山の人で賑う様は違う坂とさえ感じさせた

子供達・・

カップル・・

病院から近いためか、車椅子や患者らしき人も所々に目立つ・・

みんないい笑顔だ・・

それぞれの幸せを噛み締め楽しんでいるのだろう・・

僕が、そうしてるように・・


「わぁ〜すごいね勇樹!屋台が沢山だね!」

「うんっ!」

僕が押す車椅子で無邪気に騒ぐ冬美

「美味しそうだな〜、ねぇ、勇樹は何が好き?」

冬美が好きです

・・なんて

「えと・・何だろう?冬美は?」

「私は〜リンゴ飴!」

「あはは、ジュ−スもだしね」

「うんっ!あと綿菓子とか〜焼きイカとか!カキ氷も!」

「・・何でも好きなんだね」

「あははっ、うん!」

・・可愛いな

君みたいな彼女がいたなら一生幸せだと自信を持って言える・・

知らない人から見たら僕達はカップルに見えるだろう・・

幸せだ・・

まぁ、不釣り合いだと思われても仕方の無い組み合わせだが・・


「じゃあ、何か食べようか?」

僕が言う

「あ、うん!」

満開の笑顔・・

お祭りに来てここまで純粋に笑える人が何人いるだろう・・

「でも、何にしようかな・・」

考え込む冬美

「あの、さ」

そんな冬美に言う

「な、なんでも好きなもの言ってよ、僕が、買うからさっ」

そう、これが言いたかった

お祭りの代表的なことだ・・

まったく僕がよく言えたと思う・・


「そんなっ駄目だよ」

「いいよ、僕、あまりお金使うことないし」

「でも・・」

「本当、気にしないで」

「・・本当?」

「うんっ、何がいい?」

「・・・じゃあ」

キョロキョロと回りを見る冬美・・

「・・ん〜、何にしようかな」

再び考え込む冬美・・


「リンゴ飴か・・綿菓子・・」

「・・・・」

なんでどんな姿でも君はそんなに可愛いのか不思議でならない・・

「・・なら」

「うんっ」

「・・リンゴ飴・・」

「リンゴ飴?」

「・・綿菓子」

「・・綿菓子?」

「・・リンゴ飴」

「ふ、冬美?」

「も〜!決められないよ!ゴメン勇樹!待って!」

「ど、どっちも買えば?」

「え?・・いい?」

「うんっ、もちろん」

「やったぁ!ありがとう勇樹!」

本当・・

可愛い・・



そして一時が経つ・・


「楽しいな〜っ」

冬美が言う

いつの間にか坂を上りきりあの場所へと来ていた・・

さすがにここまで来れば人はいない・・

・・静かだ・・

音、と言えば虫の声くらいか・・


「ずっと、こんな楽しかったらいいのに」

「・・そうだね」

本当にそうだ・・

一生分の幸せを使ってしまった気がして心配でならない・・

「せっかくの夏休み、私のせいで潰しちゃってごめんね」

「ううん、そんなこと」

「・・・・」

「・・・・」

沈黙・・

こんな環境の中の沈黙は本当に静かだ・・


さすがに我慢できず僕が口を開く

「・・あのさ、昨日のことなんだけど」

「・・?」

「コンテスト・・出てみようと思って」

「えっ・・本当?」

「今日・・出してきた」

「本当にっ?すごい!やったぁ!すごいよ!勇樹なら絶対に大丈夫だよ!」

「・・全部、冬美のおかげだよ」

「ううん!そんなことない!」

「・・本当に」

「・・ちがうよ、決めたのは勇樹、私はその手伝いを少ししただけ」

「・・そんな」

「・・それで、いつ発表なの?」

「えと、一週間後」

「そっかぁ・・一週間かぁ」

「うん」

「・・楽しみだなぁ」


冬美が応援してくれるだけで不思議と落ち着ける・・
君と言葉の偉大さはなんと表現したらいいのか分からない・・

一つの偽りもなく・・純粋で素直な君の言葉は心に響き勇気に変わるんだ・・




・・その時

「・・・・冬美?」

急に下を向く冬美

「・・・っ」

・・頭を抑える

「・・どうしたの?」

「ごめん・・なんか頭、痛いみたい」

「え?大丈夫?平気なの?」

「・・・・」

「・・冬美?」

「・・ごめん、病院、帰っても・・いいかな?」

「うん!!」

少し痛い、って感じではないために僕は慌てて車椅子を押し坂を下る


大丈夫?と何回も問う僕に冬美は少し笑い頷くだけで病院まで一言も喋らなかった

☆29☆
病院の三階・・


「あら?勇樹君っ」

「沙織さん!」

ちょうど良かった

「冬美が、頭痛いって」

「えっ、病室!連れて行って!」

沙織さんはそう言うと慌てた様子で走って行った

僕は言われた通りに病室へと車椅子を押して行く

そして病室・・

「冬美・・大丈夫?」

「・・うん、大丈夫、少し落ち着いてきたみたい・・」

数分して沙織さんが入ってくる・・

「冬美ちゃん?大丈夫?着替えて横になろうね?」

「うん・・でも」

「・・?」

「もう少し・・勇樹と話しさせて」

「でも・・」

「・・お願い、沙織さん、少しだけ」

「・・・分かった」

沙織さんは冬美がベッドに移るのを手伝って僕を見た

「少し落ち着いてるみたいだけど、また、何かあったら言ってね」

僕は頷く

沙織さんは冬美の方を一度見ると病室から出て行った・・

冬美は横にならずベッドの端に座っている

「・・あ、イスが無いね」

冬美が言う

僕は心配でそれどころじゃない・・

「・・大丈夫なの?」

「うんっ、痛くなったら言うね」

「・・うん」

「・・ん〜、じゃあベッドに座って」

「え?気使わなくてもいいよっ」

「そんな、悪いから座ってっ」

「・・じゃあ」

僕もベッドの端に腰掛ける・・

冬美の隣だ・・

緊張する・・


「・・なんかごめんね、私、よく頭痛おこすの」

「ううん、でも、本当に休まなくていいの?」

「うん、ありがとう」

「いや、そんな」

「・・・えと、言いたいこと、あって」

「・・・?」

下を向いたまま冬美が言った

「次はさ・・こうしない?」

「・・?」

「次はコンテストの発表があってから病院に来るのっ」

「え?・・一週間後?」

「うん・・」

「な、なんで?」

「次に来た時は絶対に私をびっくりさせてよ!」

「え?」

「勇樹が入賞したって言うお土産を持ってきて!」

「・・・冬美」

「私、一週間・・楽しみにしてるから!その方が毎日楽しいし!我慢した方が嬉しさも何倍にもなるよ!」

確かに、そうかもしれないが・・

「・・でも、入賞なんて多分無理だし、待たせてしまうだけかもしれない・・」

「ううん、大丈夫、自分を、信じて・・」

「・・・・」

・・そうだ

昨日、冬美に言われたばかりだ・・

「・・うん!分かった!」

僕は頷く

冬美はそんな僕を見て笑った


僕は言う・・

「とにかく、早く・・退院できたらいいね」

「え?・・そうだね」

「退院したら・・病院に来なくても会えるし」

「え?・・私と?」

「うん、一緒にさ・・写真、撮ったりしようよっ」

「・・・・」

「あ、冬美が好きそうな綺麗な所があるんだ、連れて行くよっ」

「・・・勇樹」

「えっとそれから・・ん?」

「・・・ありがとう」


冬美の目から・・

涙が流れた・・


「えっ?な、なんで泣くの?」

「ううん・・」

「・・冬美?」

「退院したら、遊ぼうね、約束だよ・・」

「・・・うん」

冬美は改めて僕を見つめた・・

「・・・・」

・・こんなに至近距離で目が合ったのは初めてだ・・


なんでだろう・・


目線が外せない・・


僕の目を見る冬美・・




何が起こるか・・


不思議と・・


分かった・・




「・・・勇樹」



冬美の唇が・・



僕の口に触れた・・




「・・・・」


僕はその数秒の間・・


ただ、目を開けて自分の心臓が激しく鼓動を打つのを聞いていた気がする・・




「・・勇樹が、好き」


僕の口から離れた冬美の口がそう言った



当然として僕は何も言えない・・



「あ、わ、私何してるんだろ!やだっ!ごめん!勇樹!ごめん!」

我に返る冬美・・

「いや・・その」

僕も我に返る・・


なんなんだ・・?

この状況は・・?


「・・ご、ごめんね」

「う・・ううん」


気まずい・・

なんとなくお互い数秒の間黙る・・


その後に冬美が言った


「勇樹は私のこと・・嫌い?」

「・・そんな」

「じゃあ・・好き?」

「・・・・」


やけに冷静に・・

色々なことを考えられた気がする・・



本当は考える必要など無いのに・・

答えは決まってるのに




「・・駄目だよ」

僕は言った

「え?」

「駄目・・なんだ」

「・・・・」

「冬美は・・可愛いよ・・でも」


僕は・・

冬美と・・釣り合うはずがない

一体僕のどこを好きかなのか分からない・・


僕は、僕だ・・

今までくだらない人生を送ってきた鈴里勇樹なんだ・・

僕より格好良くて優しい冬美と合った人間なんて沢山いる・・

駄目なんだ・・

僕じゃ駄目なんだ・・


夢だって叶うか分からない・・

幸せになんてしてあげられない・・

いや、ちがう・・

自信がないんだ

怖いんだ・・

可愛くて優しい大好きな君と・・

向き合うのが・・



「・・冬美は、僕のことなんて好きになったら・・駄目だよ」

「・・・・」

理屈だ・・


冬美から沢山の沢山の勇気を貰ったのに・・

僕は冬美が望むことすら・・

いや、お互いが望むことすら叶えてあげられない・・

そんな勇気すら、無い

僕は何なんだ・・

本当に・・本当に・・

僕なんか無くなってしまえばいい・・のに


「本当に・・ごめん」

僕は下を向き言った

「・・ううん、いいの、私こそごめんねっ」

冬美は優しい口調で言う



この後、沙織さんが病室に来て冬美は休むこととなり
僕は面会時間もギリギリなことから帰宅することになった・・


冬美は僕に可愛い笑顔で手を振った・・


「・・・・」

そんな冬美の姿が・・


なぜかすごく・・

遠く見えた・・


☆30☆
勇樹が、好き・・


あの言葉を聞いてから殆ど何も覚えてない


(いつ・・家に帰って来たっけ)

気付けば僕は部屋の椅子に座っていた・・


ぼやけた記憶・・

ただこれだけは分かっていた・・

(・・これで、良かったんだ)

やっぱり・・

僕なんだから・・

「・・・・」

机の上に置かれた子機が目につく

(・・電話も、結局してないな)

こんな僕だ・・


自分に言い聞かすように考えを進める・・

これで良かったんだって・・

うん・・

これで・・

・・良かった・・


・・そう、良かった

・・良かった


・・のに


・・この気持ちは

なんだろう・・



「・・・あはは」


・・本当に・・

駄目な奴だな・・

馬鹿な奴だな・・


悔しい・・

悔しい・・

大好きなのに・・

世界の誰よりも・・

大好きなのに・・



僕は机に伏せる・・


(次は・・一週間後)

コンテスト発表・・か

どうせ無理なことだ

入賞してなかった時は


もう、冬美に会うのはやめよう・・



いつの間にか僕は

机に伏せたまま眠っていた・・

☆31☆
次の日も・・

その次の日も・・

いつもの様に写真を撮り続けた・・

一週間の間病院には行かないのだ
だから僕は同じように病院宛てに写真を送り続けた・・

どんな気持ちで写真を見てくれるかは分からないが・・
僕の精一杯の気持ちなんだ・・

冬美は何も悪くはないのだから・・




そんな日常は繰り返し続き・・



もう6日が流れた・・



(・・明日は登校日か)


僕はそんな事を考えながらいつもの様に自転車に乗り写真を撮っていた・・


明日は一週間後、冬美と久しぶりに会うのと同時に当然コンテストの発表日でもあるが不安が積もるばかりなのであまり考えないようにしている・・


・・もう夕方だ

「・・・はぁ」

空をつまらない顔で見る僕・・

最近2日間、天気がどうも安定しない・・

晴れの日だけにいい写真が撮れるわけでは決してないのだが何故か上手くいかない・・
今日だってもう朝から今の夕方まで何時間も経つがやはり晴れることはないし写真の枚数も弾まない・・

写真を送ったのはもう3日前になる・・

これこそ冬美がどう思うか分からない・・


病院に・・顔を出してみようか・・?

・・いや

そんなこと出来るはずが無い・・

冬美との約束だ・・


・・いい写真が撮れれば問題ないんだ、頑張ろう・・

僕は空を改めて見上げた・・


「・・・ん?」

タイミングがいい・・

雲の間から差し込む太陽の光り・・
そんな綺麗な空が顔を見せた・・


でも、今は線路沿いの道を走っており背の高い高圧電線が障害物となっている・・

まったく毎回運が無いものだ・・

ついさっきもこんな調子で見逃したばかりだし・・

・・何か方法は・・

「・・・あっ」

線路の反対側に行くための歩道橋がある・・

(・・あそこからなら!)

僕は歩道橋まで自転車を走らせると自転車から降り歩道橋を駆け登った


「・・・よしっ」

シャッタ−切る・・

「・・・・」

うん・・
なかなか綺麗だ・・

冬美に送る・・とまではいかないが満足感はある・・

「・・・ふぅ」

僕は一息ついて歩道橋の柵に寄りかかった


「・・・・」

・・手に持つカメラを見つめる・・

ふと、思う・・

・・なんでこんな事を思いついたのか・・


・・空の写真が送れないなら・・

自分の写真を送ってみては・・


「・・・・」


そっと・・

カメラを自分に向けてみる・・

透明で小さなカメラのレンズ・・

そこに僕が写る・・



「・・・はぁ」

まさか・・そんなこと出来るはずが無い・・

ため息と共に、自分へ向けたカメラを下ろした・・

「・・・・」

見上げた空はすでに表情を変えている・・

どんよりと低い空・・

よくもまぁここまで僕の心と比例してくれるものだ・・

こんな偶然はいらないからもっと幸せな偶然が欲しい・・

冬美と会えた・・

あの瞬間の様に・・



「・・ん?水?」

ふと冷たいものが額に触れた・・


(・・あ、雨だ!)

・・やばい!傘なんて持って来てないし

家までも結構ある

早く・・帰らないと!

「・・・くそっ」

どうやら遅かった

激しい夕立だ・・

まるでシャワ−

雷が鳴り急に空が怒った様・・


僕は家に向けて自転車を走らせる・・

別に急いでいない・・

もう・・雨宿りも意味が無いだろう・・

本当に・・
こんな偶然なんかいらないのに・・


・・もう少しで家に着く頃・・

「・・・痛っ!」

自転車で少し大きめの石を踏み思いっきり水浸しの道路に倒れた

なんか、本当についてない・・

今日は一体どうしたんだ・・


数秒した後で僕はゆっくり起き上がる・・


そして自転車を押しながら歩き始めた・・





そして・・家

あれから一時・・


「・・はぁ」

散々な日だった・・

さっきからもう何回のため息を吐いたか分からない・・

帰宅した僕はシャワ−を済ませ早々とベッドに横になっていた・・


明日になるのが怖い

いや、コンテストなんて初めての体験なものだから楽しみや期待も当然ある・・

まぁ毎回として粉々になる期待だから控えてはいるが・・


(・・結果は、どうなんだろう)

もし、入賞していたら冬美は何て言ってくれるかな・・

していなかったら、もう冬美に会いに行く顔など無いが耐えきれるだろうか・・

無限の考えが出来の悪い僕の頭に渦巻く・・


(・・寝ようかな)

とにかく今はそれしかない・・

気付けば明日になり

僕が何を恐れようが期待しようが運命はやってくる・・

それを受け入れるしかないんだ・・


「・・・・」

目を閉じる僕・・

・・今日は酷く疲れている

すぐに・・寝付けるだろう

☆32☆
この日がついに来てくれた・・

いや、この日が訪れてしまった、のか・・


今日は登校日

久しぶりの学校

「勇樹、お前ほんとに最近何してるんだ?」

今はクラスル−ムの時間、友達の達也が不思議そうに聞いた

「・・いや、勉強、かな」

まぁ、嘘じゃない

「・・どうしたんだよお前」

その他数人に変な顔をされたが別になんとも思わない・・

「こら、鈴里」

私語がバレ担任に注意されると友達も前を向き座り直した

まったく、なんで僕が注意されるのか・・

でもいつもならもっと叱られている
きっと朝一で出した全て終わった宿題のおかげだろう・・

僕もやれば出来るんだ

まぁ、全ては冬美がいたからだが・・


「・・・・」

少しずつ時間が流れて行く・・

今日は登校日のため短い学校、もうそろそろ終わるだろう・・

あれから全校集会があり・・

再び午後のクラスル−ムがあり・・


「さようならっ!」


学校は・・

・・終わった!



「お、おい!勇樹!」

焦って帰ろうとする僕を呼ぶ達也

「あ、ごめん!大事な用があるんだ!」

「たまには連絡しろよなっ」

「うんっ!悪い!じゃあ!」

付き合いが悪いかもしれないが仕方が無い

僕は急いで帰宅する

家に着くと急いで着替え・・


向かうのは・・
いつも利用するすぐ近くの本屋・・

自転車で5分の距離

僕は財布を握りしめ向かった・・

本屋との距離が近づくにつれ極度の緊張・・

逃げ出したくなる・・

・・10分後に僕はいったいどんな顔をしているのだろう・・

どんな結末を受け止めているのだろう・・



ここまできたら
後は信じるしかない


冬美と見た・・

夕日・・

あの写真に感じた魅力は嘘じゃない・・


「・・・・」

目の前には・・

いつもの本屋の自動ドアがあった・・

僕はゆっくりと店に入り店内を進む・・

いつも静かな店内・・

特にいつも自分が買う写真などの専門誌のコ−ナ−は殆ど毎回誰もいない

その静かな空間で

僕が見慣れた雑誌を掴む音がした・・

☆33☆
僕は雑誌の一番後ろの目次を開いた・・


(・・あった)


第63回風景写真コンテスト結果発表


(・・23ペ−ジ)


そして一旦1ペ−ジ目まで戻す・・

僕は雑誌をめくり始めた・・


5ペ−ジ・・


10ペ−ジ・・


15ペ−ジ・・


20ペ−ジ・・


21ペ−ジ

22ペ−ジ


・・23ペ−ジ



「・・・・」




最優秀賞・・





坂下宏大22歳

タイトル
「夏の緑」

「誰もが認める技術、納められた緑はまさに夏を感じさせ小鳥や虫の声、小川のせせらぎまでが伝わってくる様である・・」

長々と文章は続く・・

どこか立派な森で撮影したのか、綺麗な写真が載っている・・




(僕じゃ・・ない)




落ちた・・


一瞬にして生気が抜けていく・・



・・だが


「・・・ん?」


目入る文字・・


それは最優秀賞の隣のペ−ジ・・



佳作・・



(・・・鈴里)



鈴里勇樹16歳

タイトル
「天国への手紙」

『この写真にこのタイトルをつけたことに惹かれる、理由も正しく添え、当然として秋を主役とする夕日を正に真夏である今、ここまで素晴らしく収めた事に感服した、しかもまだ16歳と言う若さ、期待が持たれる』

記載のカメラ贈呈
及び最優秀賞、佳作者の作品は本社が発行している別冊の専門誌で紹介されます



「・・・・」


僕は読んだ・・


何回も・・

何回も、何回も・・


そのペ−ジを読んだ!



(・・・やった)


いや!


こんな言葉じゃ足りない!!
表現が違う!!

載ったんだ!!

僕の写真が雑誌に載ったんだ!!


「・・・・」


雑誌を持つ僕の手が震える・・



(・・冬美)


・・冬美に言いたい!


・・早く!早く!


そして・・!!


お礼が言いたい!!


あの笑顔が見たい!!




「ありがとうございました〜」


後ろで店員の声・・


僕はすぐさま雑誌を買うと本屋を出た




カメラを取るために家まで一旦帰らなければならない・・

僕は力一杯ペダルを踏み急いで自転車を走らせた・・




・・そして

家の前・・


「・・・うわっ!」


急に自転車がグラついた・・


「・・・?」


前輪がへこんでいる

どうやらパンクのようだ・・

昨日、石を踏んで転んだ時に傷でもついていたのか・・


まったく・・

こんな時に・・



いつも行く自転車屋は少し遠いが家から電話して取りに来てもらえばいいだろう・・


「・・はぁ」


仕方がなく家に入ろうとする僕・・

入る前にいつもの様に自宅の赤い郵便受けの中を見る・・


・・すると


「・・・あれ?」


・・これは



記念病院
363号室

北川冬美様・・


「・・・・」

僕が三日前に冬美へ送った写真の便箋・・


『あて所に尋ねあたりません』

そう赤い文字で書かれている・・


(・・住所、間違ったかな)



・・いや


・・ちがう



『あて所に尋ねあたりません』


・・僕を・・


不安が襲った・・



「・・冬美っ」


・・まさか・・



僕はパンクした自転車を見る・・


・・こんな時に!!



「・・冬美!!」


僕は家を飛び出した


☆34☆
走った!!

走った!!


いつも自転車で向かうこの道を・・!!

右に折れ

左に折れ・・


きっとすれ違った全ての人は僕を不思議に思ったに違いない


こんなに走れるなんて自分でも信じられないくらいだ・・


止まることはない・・

スピ−ドも落ちることはない・・

過ぎて行く・・

いつも子供が数人あそぶ公園・・

友達と数回行ったラ−メン屋

いつも母親達で活気づく八百屋・・

綺麗な花が花壇に並ぶ家・・

いつも船がみえる海ギリギリの川に架かった大きな橋・・




「・・・・っ」

その全てが・・

過ぎ去って行く・・



「はぁっ・・はぁっ」

数十分が過ぎて病院前から続く長い坂が見え始めた・・


「・・・・っ」

普通なら限界の体


・・でも

僕は信じてる・・

きっと・・

冬美が待っててくれるって!!

「・・・冬美っ」

僕は坂を突き進んだ






病院・・


中を走っていいわけは無いがあの調子じゃ足を止められるはずはなかった

三階・・


向かうのは・・


冬美の部屋・・!


「・・・あっ!」

その時、僕を呼ぶ声


「・・勇樹君!!」

そこには・・

「・・沙織・・さん」

「・・・・」

酷く疲れてる上に汗びっしょりの僕に驚いている・・

・・いや

どこかそれだけではない・・

寂しい・・

顔をしている・・


そんな沙織さんに僕は問う・・

「・・冬美は・・?冬美は・・どうしたんですか?何か・・あったんですか?」

「・・冬美、ちゃんは」

「・・・・・」

沙織さんは目に涙を浮かべる・・

それは僕の不安を倍増させた・・


「・・冬美ちゃんは、三日前に亡くなりました」

「     」


その言葉は一瞬・・

僕を・・殺した


「・・勇樹・・君?」

「・・・・」

「冬美ちゃんは、脳腫瘍って言う重い病気で、もう二年も入院してて、ずっと、頑張ってたの」

・・二年・・?

・・まだ

一ヵ月位のはずじゃあ


沙織さんは涙ながらに続けた・・

「・・でも今年の初めに余命半年を宣告されて、冬美ちゃん、母親と以外誰とも会わなくなって」

僕はただ聞くしかない

「・・勇樹君と会ってから本当に楽しそうだった、あんなに笑うこと無かったんだよ、だから勇樹君には・・言えなかったんだよ」


四日前の夜ことを・・

沙織さんは・・

話し始めた・・

・・・・

・・・


「・・ねぇ沙織さん」

「・・ん?」

「・・勇樹が来るまで、あと・・何日?」

お祭りの次の日から冬美ちゃんは殆ど全身が痺れてずっと寝たきりだった

タ−ミナルケアに入って・・

それは私が担当した


余命半年は裕に過ぎてるし、最近は手の痺れも強くなってきたことから・・

そろそろだろうって、担当の医者もそう言ってた・・

話すのすら辛そうで、見てるこっちも心苦しかった・・

「・・あと、四日だよ」

「・・四日・・」

「・・うん」

「・・無理・・かな」

「・・え?」

「・・私、分かるんだ、もう・・」

「・・駄目!勇樹君に言ったんでしょ?諦めたら駄目だって!一週間後に会おうって!」

「・・あはは、そうだった・・沙織さんは、厳しいなぁ・・」

「・・ごめんね」

「・・ううん・・厳しいけど・・私ね」

「・・ん?」

「私、沙織さんのこと大好きだったよ・・」

「・・冬美ちゃん」

「二年間も・・ありがとう」

「・・もう!何言ってるの!」

「・・お願い、があるんだ」

「・・お願い?」

「お母さんには直接言えなかったから・・変わりに聞いて・・くれる?」

「・・私で、いいの?」

「・・うん」

「・・分かった、何?」

「・・生んでくれて、ありがとう」

「・・・・」

「でも、病気でごめんなさい、こんな私でごめんなさい、一人にしちゃってごめんなさい、冬美はお父さんに話します、お父さんに負けない位・・お母さんさんは優しい・・人だって」

「・・冬美・・ちゃん」

「私は死ぬけど、淋し・・がらないで」

もう・・

二人で・・沢山泣いた


「・・もう、一つ」

「・・・?」

「・・勇樹に言えなかったこと」

「・・ん?」

「・・リンゴジュ−ス」

「リンゴ・・ジュ−ス?」

「うん、私が勇樹を見たのはリンゴジュ−スが売り切れだったからじゃないの・・」

「・・・え?」

「私は・・勇樹が好き」


・・・・

・・・


沙織さんは話し終わると涙を拭き言った

「私には、意味が分からなかったけど、そう言ってた・・」

「・・・・」

僕の重い口はやはり閉じていた・・


沙織さんは仕事があるからと言い歩いて行った・・

「・・・・」

僕は冬美の部屋へフラフラと向かった・・


入口をくぐる・・



ガランとしたベッド

(・・・あれは)

沢山の・・写真・・

まだ剥がされてない

お祭り以降に送った物まで・・

「・・冬美」

あれからも・・

ちゃんと貼っていてくれたんだね・・

誰もいないベッドを見ると不思議と冬美が検査から帰ってきそうな気がする・・


・・いや

・・そんなはずない


冬美は・・もう




「あああああ!!!!!!!!!」


僕は頭を抑さえ床に崩れ落ちた


冬美・・

冬美・・


僕は君に何もしてあげられなかった・・

僕は馬鹿だ・・

最低な奴だ・・

なんで君がいなくなるんだ・・

一体何が悪くて・・

一体誰が君を不必要と思い・・

・・君が・・


冬美じゃなくて僕こそが死んでしまえばいいんだ・・

なんで僕は生きているんだ・・

君のいない世界に僕は必要ない・・

「・・冬美」


その床で・・


僕はずっと・・


泣き続けた・・


☆35☆
あれから歩いて帰宅した僕・・

一体何時間かかったか分からない・・


「・・・・」


星が・・綺麗だ・・


「・・・・」


僕は家にあるベンチに座っていた・・


もうどれくらい・・

空を眺めているだろうか・・

なんか全てがどうでも良かった・・


涙の枯れた目は空だけを捕らえている・・


(もう・・君は・・いないんだ・・)


不思議だった・・

だからもう何回も何回も考えたり思い出したりしている・・


結果は変わらない


北川冬美は・・

三日前に亡くなったのだ・・


「・・・・」

どうしようもない気持ち・・



気がつけば僕は・・


自然にか自分でか分からないまま・・


静かに疲れた目を閉じていた・・




・・・・

・・・



・・勇樹っ


「・・・ん?」

「ねぇっ!勇樹!」

目を・・開ける



・・ここは


冬美と来た・・

・・あの場所


・・そして

「・・どうしたの?」

目の前にいるのは



「・・冬・・美?」

「ん?何?勇樹?」

「・・冬美、なの?」

「そりゃそうだよ、どうしたの?」

「・・だって君は」


・・それに・・

立っている・・

いつも車椅子だった君が・・

地面に両足をつけて立っている・・


僕は言う

「・・冬美、治ったの?死んだんじゃ・・なかったの?」

「・・・・」

「・・・冬美?」

「・・・綺麗だよね」

君は聞こえていない様に僕に背を向け景色を見つめて言った・・


「・・・・」



・・そうか


これは夢・・


夢を見ているんだ・・


でも・・

僕は・・

それでもいい・・


冬美がここにいるのだから・・


「・・うん」

冬美の背中に言う


綺麗な夕日だ・・

君と最初に見た・・

そう、佳作に輝いた、あの時の夕日に・・

似てる・・


「・・冬美」

さらに続けて冬美の背中に言った・・


「僕は、この夢から覚めたくない」

「・・・・」

「ずっと・・ここに居たい」

「・・・・」

「覚める必要が、無いんだ」

「・・・勇樹」

「・・・僕は」

「・・駄目」

「・・え?」

冬美は背を向けたまま首を振った

「・・それじゃあ、駄目なの」

「・・・・」

「勇樹に会いに来た、意味が無いの・・」


「・・・・」


沈黙が流れる・・


・・そして



「私ね・・お父さんの顔、見たことないんだ」

冬美が言う

「・・?」

そんなことは・・

知っている・・


・・なんで今さら


「でも・・私ね!」

「・・・?」

「信じてるんだ!」


「・・・冬美」



・・そうか




君は、言いに来てくれたんだね・・


僕に、頼みに来たんだね・・



「・・こんな高い所から手紙を送れば!絶対に天国に届くって!」


冬美は振り向き満開の笑顔で言った・・


僕は・・

涙が止まらなかった



「・・分かったよ!冬美!分かった!」

僕は冬美に叫ぶ・・


冬美は優しく笑っている・・

酷く愛しい・・

その笑顔・・


二度と見られない


冬美の・・笑顔


「書くから!!」


少しずつ風景が薄れていくのが分かる・・


それでも僕は涙一杯の顔で叫んだ・・


「手紙を送るから!!天国まで!!必ず送るから!!」


僕は生きて!!



ずっと冬美に!!




僕の手紙を!!!


送るから!!



・・・・

・・・




「・・・・」


目が覚めた僕・・

やけに冷静だった


(・・冬美・・分かったよ)




多分・・


渡すことは出来ないけど・・


今、君に・・



手紙・・書きます



「・・・・」


僕はすぐに家へと入り机に向かった・・




「・・・・」



・・すでに1時間

やはり僕だ・・

全然進まない・・

手紙なんて、書いたこと無いのだから・・



・・いや

それもあるが・・


本当は・・ちがう



苦しくて・・

苦しくて・・

ペンが震えて上手く字が書けず・・

さっきの笑顔が忘れられないから・・

どうしても涙が落ち紙に滲んで、捨ててしまうんだ・・

もう何枚目かすら分からない・・


君に・・

言いたいことがあるのに・・



「・・・・」


何時間も経ち・・

窓の外から・・


太陽が静かに昇った


☆36☆
一睡もしなかった・・


次の日の・・夕方だ



僕は直した自転車で病院へと向かう道を走った・・



手紙を一つ・・持って



これは・・


さっきのことだ・・


「・・・・・」


どうやら記憶が・・

少しずつ・・

僕に近づいて来たみたい・・


もうそろそろ・・

・・終わる


何回も何回も繰り返し思い出した・・

君との思い出・・


「・・・・」

病院を過ぎ・・

さらに坂を上がり・・

あの場所に着いた僕


ゆっくり自転車を止めると・・


冬美と二人で夕日を見た・・

一番先まで・・


歩き始めた・・



先まで行くと・・


僕はポツリと・・

呟く・・



「・・見てる?」


綺麗な夕日・・


今すぐにでも写真に収めたいくらいの

素晴らしい空・・


「・・・・」


でも僕の目に空は映らなかった・・



・・・・・

・・・・

・・・

・・



目の前に夕日が広がった・・


「・・・・」


思い出は終わりだ・・


また・・もどって来た

最後って決めたからそろそろ・・


「・・・冬美」


君に・・

手紙を送ります・・


「・・・・」

僕は紙ヒコ−キを手に持ち・・

内容を思い出す・・



『冬美へ



元気ですか?


僕は元気です


こんな有り触れた言葉しか書けないから心配です

でも冬美は優しいから笑顔で読んでくれるでしょう

父親とはもう会えましたか?

可愛い娘が天国に来たとなるとお父さんは飛んで行くと思います

二人で幸せに暮らしてください・・


急だけど冬美に言いたいことがあります

コンテスト、僕の写真がなんと佳作に輝きました

冬美と見た夕日の写真です

本当にありがとう

冬美のおかげです



「・・・・・」


・・でも


本当にこの手紙で言いたいのは、そのことじゃありません


会ってから・・

ずっと・・

ずっとずっと・・


言いたかったことがあります・・



僕は本当に最低な奴だけど・・

本当に本当に馬鹿な奴だけど・・


聞いてください・・





「・・・冬美」




僕は・・




君が・・





・・・好きです



     勇樹より』





紙ヒコ−キは空を舞った・・





届け・・



・・・僕の手紙


   − 完 −
          





感想はこちらまで↓

満点劇ホ−ムペ−ジ
http://hamq.jp/i.cfm?i=berryberryberry


☆『僕の手紙』英語歌詞のコーナー☆


 作詞・作曲 町田 紀彦


「君が好きです。」 と素直に言えず 夜空の星を眺めて
(I can not say 'I lile you' obediently,gazing at stars in night sky.)
たぶん わたすことは できないけど 今 君に 手紙 書きます…。
(Maybe,I will not be able to hand over my letter, now I am writing one for you.)
「元気ですか? 僕は元気です…。」と、ありふれた 言葉の後に
(After common words which are 'How are you?' and 'I am fine!',)
震えたペンの先、滲む涙、太陽が 静かに昇る…
(there are the trembling pen ahead and blotting tear, the sun rises quietly.)

帰り道 二人きり 何から話せば いいか 分からず
(On our way back,2 of us,I do not know how to say first words. )
「不思議だね 月が ほら、今日は 少し大きく 見えるよ…」
(You know strangely,the moon looks large a little today.)
見上げてた 横顔に 本当は 伝えたい事があるよ
(There are things which wants to be told for face of you who looked up.)
目が合った 瞬間に 自分に 自信持てない 僕がいるよ…
(when the glance intersects,I have me who have not confidence.)

だけど これだけ 言える事があるよ
(But there is just thing to tell.)
世界の 誰よりも 君が好きな事を…
(I like you better than anyone in the world.)

不器用で 臆病な 僕だけど 一つだけ 夢があるよ
(I am clumsy and cowardice,however I have an only dream.)
人は くだらないと 笑うけれど この道を信じているよ…
(People laugh that it is foolish at me,but I believe this way.)
君とは 不釣合いかもしれない 僕は 微かに 見える星
(You and I may be not balance.I am a star which is able to be seen dimly.)
だけど 必ず 輝いて見せる その時に 君に言えるよ…
(I am sure that I become shine,if it comes I will say to you.)

毎日 鏡 見て ため息ばかりの 姿が映る
(I watch a mirror everyday,it shows appearance only of sigh.)
何度も 手にしては 最後が 押せないままの 電話 見つめ
(I take the phone in my hand many times,looking the phone which is not able to be pushed finally.)

だけど これだけ 言える事があるよ
(But there is just thing to tell.)
世界の 誰よりも 君が好きな事を…
(I like you better than anyone in the world.)

もう少し 僕に 勇気が あれば変われるのに…
(If I had more courage,I would change.)
あと少し 僕が カッコよく なれれば いいのに…
(My hope is that I am better than usual.)
でも 君は そんな 僕に いつも 優しく 微笑んで
(But you always smile at me tenderly,)
たった一人だけ 僕の夢を 信じてくれたよね…。
(She is only woman who believes my dreams)

不器用で 臆病な 僕だけど 一つだけ 夢があるよ
(I am clumsy and cowardice,however I have an only dream.)
人は くだらないと 笑うけれど この道を信じているよ…
(People laugh that it is foolish at me,but I believe this way.)
君とは 不釣合いかもしれない 僕は 微かに 見える星
(You and I may be not balance.I am a star which is able to be seen dimly.)
だけど 必ず 輝いて見せる その時に 君に言えるよ…
(I am sure that I become shine,if it comes I will say to you.)


transelation by yuuki☆
☆『僕の手紙』手話歌のコーナー☆


 作詞・作曲 町田 紀彦


「君が好きです。」 と素直に言えず 夜空の星を眺めて
 (君+好き+素直+言う+難しい 夜空+星+見上げる)
たぶん わたすことは できないけど 今 君に 手紙 書きます…。
(今+渡す+難しい+だけど 君+手紙+書く+送る)
「元気ですか? 僕は元気です…。」と、ありふれた 言葉の後に
(元気+問う+僕+元気 +いつも+言葉+後)
震えたペンの先、滲む涙、太陽が 静かに昇る…
(震える+ペン+先 +染みる+涙 太陽+静か+上がる)

帰り道 二人きり 何から話せば いいか 分からず
(帰り+道+二人+だけ 最初+何+話す+わからない)
「不思議だね 月が ほら、今日は 少し大きく 見えるよ…」
(不思議+月 いつも+以上+はっきり+見える)
見上げてた 横顔に 本当は 伝えたい事があるよ
(見上げる+君+顔+本当 伝える+したい+言葉+ある)
目が合った 瞬間に 自分に 自信持てない 僕がいるよ…
(目合う+瞬間+自分 信じる+難しい+僕)

だけど これだけ 言える事があるよ
(だけど+これだけ+言う+大丈夫)
世界の 誰よりも 君が好きな事を…
(世界+みんな+以上+LoveYou+抱く)

不器用で 臆病な 僕だけど 一つだけ 夢があるよ
(生きる+下手+怖い+僕+だけど 一つ+だけ+夢+ある)
人は くだらないと 笑うけれど この道を信じているよ…
(みんな+つまらない+笑う+だけど この+道+信じる+歩く)
君とは 不釣合いかもしれない 僕は 微かに 見える星
(君+バランス+難しい+僕 だけど+小さく+見える)
だけど 必ず 輝いて見せる その時に 君に言えるよ…
(未来+絶対+輝く+君 その+時+言う+君+ILoveYou)

毎日 鏡 見て ため息ばかりの 姿が映る
(毎日+鏡+見る+溜め息+だけ+僕+映る)
何度も 手にしては 最後が 押せないままの 電話 見つめ
(何度+持つ+だけど+最後 押す+難しい+電話+見る)

だけど これだけ 言える事があるよ
(だけど+これ+だけ 言う+大丈夫)
世界の 誰よりも 君が好きな事を…
(世界+みんな+以上 君+ILoveYou+抱く)
もう少し 僕に 勇気が あれば変われるのに…
(もう少し+強い+心+仮に+変わる+だけど)
あと少し 僕が カッコよく なれれば いいのに…
(未来+少し+かっこいい 変わる+ならば+いい)
でも 君は そんな 僕に いつも 優しく 微笑んで
(だけど+君+僕 いつも+優しい+ほほ笑み+くれる)
たった一人だけ 僕の夢を 信じてくれたよね…。
(一人+だけ+僕+信じる+ありがとう)

不器用で 臆病な 僕だけど 一つだけ 夢があるよ
(生きる+下手+怖い+僕+だけど 一つ+だけ+夢+ある)
人は くだらないと 笑うけれど この道を信じているよ…
(みんな+つまらない+笑う+だけど この+道+信じる+歩く)
君とは 不釣合いかもしれない 僕は 微かに 見える星
(君+バランス+難しい+僕 だけど+小さく+見える)
だけど 必ず 輝いて見せる その時に 君に言えるよ…
(未来+絶対+輝く+君 その+時+言う+君+ILoveYou)


提供:MECKEYさん

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北里大学さん



悲しいことがあったとき

泣きたいときがあったとき

僕は階段を駆け上がって

夜空を眺めては心震わせ

町を眺めていた…


大人になるにつれて

夢をしまいこんでしまうけど

夜景は僕にあのときの

大事な想いを思い出させてくれる…


それは…




君と夏の終わり将来の夢…






※サイトを閲覧していただきありがとうございました。ここで掲載している文章の著作権は冬樹さんに帰属します。m(^^)m HP作成者連絡先はタイトルに小説と記入しこちらまで。
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