ミトコンドリア・イブとは誰でしょうか

多くの仮定の上に立つ勝手な話
〜第3話〜

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 ミトコンドリアはほとんどの細胞の中に含まれている、生体内のエネルギーを作り出す大切な小器官で、その中に体細胞の遺伝子とは異なる、独自のDNA(遺伝子)を持っています。 ヒトのミトコンドリアDNAは環状になっていて、16500対あまりの塩基配列で構成されています。
                               (ミトコンドリアについての解説)

 このミトコンドリアが持っている独自のDNAは母親からのみ受け継がれ、決して父親のDNAが子に伝わることはありません。 あなたのミトコンドリアDNAは母方の祖母から受け継いだものです。その祖母も母方の母から受け継いでいるのですから、何代さかのぼっても、ミトコンドリアを伝えてくれた先祖はたった一人なのです。 何万年遡っても同じことです。 現在地球上にすむ60億人が持っているミトコンドリアの起源をたどれば、すべてのヒトが、ヒトとして姿を現した太古の集団まですべて一本の線で繋がっているのです。

 ミトコンドリアDNAが持っている塩基配列の数は約16500対です。 アメリカのアラン・ウイルソンを中心とする研究者は、100万年あたり約2%の割合で突然変異が起こっていると推定しました。 1987年当時、世界各地の147人を無作為抽出して、そのミトコンドリアDNAの変異の内容と割合に従い系統樹を作成し発表しました。 

 各個人のつながりと変異率による年代の測定です。この系統樹は人種間の遺伝的距離を測るものでなく、あくまでも資料提供者個人間の遺伝的距離を示している点に注意してください。

 結論は、147のミトコンドリアのうちに133の異なるDNA配列が見つかり、7例のアフリカ住民の型とその他の各地の型に大きく二つに分かれ、アフリカ系は他のものに比べ、それぞれのグループ内での突然変異率が2倍だったのです。 人類はアフリカで生まれしばらくとどまった後、各地に広がっていったと解釈できたのです。  その上現代人にミトコンドリアDNAを残せた先祖様はたった一人の女性で、他の系統は消えてしまっていると結論づけました。

この名誉ある女性にミトコンドリア・イブの名称が与えられたのです。 現世全地球人共通の大祖母の誕生です。

 ミトコンドリア・イブが生きていた時代はいつでしょうか。 現存するミトコンドリアDNAの変異の数から逆算して、14万年から29万年前の間と発表しました。当時アフリカとユーラシア大陸に散在していた原人のうち、おそらくはアフリカのキリマンジャロ山の麓、大地溝帯に生存していたある原人集団の一人として誕生したのです。

 この分子生物学の分野から出した結論は、当時考古学者の間では批判的な意見が多かったようです。 今でもDNA配列の変異を利用した年代測定(分子時計といいます。)は、誤差や仮定が多すぎるとして絶対年代を出すのは難しいようです。

  2001年11月、ソニーマガジン社から「イヴの7人の娘たち」という本が発売になりました。 オックスフォード大学の遺伝学教室教授ブライアン・サイクス教授が書いた科学ドキュメントです。 1987年以来ミトコンドリア・イブをどのように探求し、いかなる結論に達したのか、非常に面白く興味深い話がわかりやすく、予備知識なしでも理解できる内容で書かれています。
 「イヴの7人の娘たち」ではミトコンドリア・イブが15万年前にアフリカで誕生し、現代ヨーロッパ人の90パーセントはイブの子孫の7人の女性を共通先祖として持っていると結論づけています。 ヨーロッパ在住の現世人類は大きく分けて7回の分裂を繰り返していることになります。 
 さらに、その後世界中の現世人類は、ミトコンドリアを調査分類の結果、35の分岐点を持つ系統樹によってわけることが可能であると発表されました。  
 1996年のサイクス教授の発表は学会に大きな波紋を投げかけ、大論争が5年近く続いたそうですが、2000年11月、ほかの研究からの結論と一致し、ミトコンドリア・イブの存在が人類学の分野で正当性を持つ説として承認されたそうです。
 ところで日本人は、95パーセントの人々が9人のイブの娘たちの子孫と判定できるそうです。 日本人が9人ものイブの娘を共通祖先を持つということは、とりもなおさず日本人の多様性を示しています。日本列島への人類の渡来の歴史について新しい知見が生まれることを期待したいと思います。     
(「イヴの7人の娘たち」紹介ページ)

 サイクス教授はミトコンドリア・イブの存在の証明はしましたが、ミトコンドリア・イブが現世人類の共通の大祖母となることができた原因についてはふれていません。 私にはそれが偶然であったとは思えません。 
 彼女は何らかの理由でイブになるべく運命づけられていたのです。 それも科学的に説明できる理由で。私はミトコンドリア・イブミトコンドリア・イブになるべき必然性を持った女性だったと思うのです。 その必然性は彼女自身のDNAの変化に起因する、突然変異にともなうものであったろうと推測しましたそれについて第5話で取り上げています。

 同時代に生きていたミトコンドリア・イブの子孫以外の人類はどうなったのでしょう。彼らはネアンデルタール人などと呼ばれていますが、おそらくは2〜3万年ほど以前にその血統が途絶えてしまったようです。その理由についても第4話でふれてみました。

 現在では毛髪が一本あればミトコンドリアDNAの塩基配列が決められるそうです。 最近報道された、歯による縄文人のミトコンドリアDNA配列の決定など、資料が蓄積されていけば、より精密な人類史が構築されることだと楽しみにしています。

 2001年2月11日ヒトゲノム(ヒトのDNA配列)がほとんど全部解析され、約3万の遺伝因子が確認されたと報道されました。同時に現存する各人種間のゲノム配列の共通性は、99.99%と非常に高い一致率を見ました。
 これは、現在地球上に住んでいる
全人類の共通の祖先は、原人以来の進化の中で、ごく近い過去に生きていたことを示しています。

 別のページではイブの子孫の増え方の計算し、彼女の存在の妥当性を検証してみました。

 

 

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 原人はインドで誕生した〜第1話〜

 100万年前日本に原人がいた〜第2話〜

    イブの子孫の増加率〜第4話〜

   イブに起こった突然変異〜第5話〜

  イブの子孫7万年前南米へ〜第6話〜 

           
     

 

参考図書

 ジェイムス・シュリーブ著 
名谷一郎訳 
ネアンデルタール人の謎
 角川書店 1996年

ブライアン・サイクス著 
大野晶子訳
イヴの7人の娘たち
株式会社ソニー・マガジンズ 2001年

  ミトコンドリア 
  ミトコンドリアの簡単な解説です

  縄文人の類縁調査