菜の花を見つめればけむり立つかも
初夢を零れ落ちたる泪かな
九穴の鮑を重ね初御空
年の瀬を過ぎて六角井戸へ出る
吊されし鮑の殻やけむり立つ
アスピリン喉を過ぎゆく時雨かな
猿酒に響く汽笛と思いけり
からすきの星も雀も蛤に
蛸壺の積まれて月に届かざる
六畳に掃く汐騒や月あかり
島々のひとつひとつに月点る
望月や港へ道は曲がりけり
月光にとらえられたる漁師かな
有明やトイレに六角形光る
ほんとうの水に浮かべる林檎かな
滴らす五十六億余年かな
ペーロンの舳先に夕日巴なる
雲海に墨を点じて鎮まれり
星々が滝の数ほど瞬けり
海遠くたゆたう烏瓜の花
暮れなずむ飛行機雲や浦島草
不時着のサン・テグジュペリと珊瑚かな
樟に降る光も青葉まつりかな
目薬をさすホトトギス聞きながら
雨にゆく人を見送る雨のなか
閏日やとうとう鋏見つからぬ
島の道すべてつながる春の雨
逆光のなかに虚子の忌ありにけり
こんろんへころも波打つ空海忌
崑崙に星の瞬くくしゃみかな
椿落ちてヘゴの光となりにけり
耳の日や珊瑚に雨が降っている
朽ちて咲く枇杷の花とはなりにけり
荒磯に極まって若水を汲む
群れてなお水仙凛と咲きほこる
人参に数珠つながりの朝日かな
冬の虹少しく痛いおぼえあり
ひさしぶり星を見ている鯨かな
肘を曲げ初東雲に枕せり
ジャンボ機が尻を並べる初景色
つらなって島々翔る初御空
真ん中に目ん玉のあり初霞
蓬莱へメールを運ぶ虹立てり
銀河へと目地をよぎれる翁の忌
充血の幾望したたるレノンの忌
眠れずにエアープランツ花垂らす
言の葉に花咲くことも十二月
散り残る柳が触れる心地かな
絹の道ついにきわまる那智の滝
貝殻に風を聞くのみ七面草
手を洗う闇から闇へ秋の水
ガジュマルが根っ子を垂らす銀河かな
平成15年10月
首上げて水光天に長崎忌
いなずまの光を超える速さかな
月白やさるとりいばらの葉にくるむ
迫り来る火星や色なき風が吹く
火星から光が漏れる喧嘩かな

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Copyright (C) Takatoshi Gotoh 1998.3.1