現代俳句集成 

ま行

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  前田吐実男

   魚屋の魚寝ており春の昼          「俳句界」20057月号



  正木ゆう子

   進化してさびしき体泳ぐなり        『夏至』春秋社

   寝返りて蠍座と向き合へるかな         同

   太陽のうんこのやうに春の島          同

   水の地球すこしはなれて春の月       『静かな水』春秋社

   しづかなる水は沈みて夏の暮          同

   いま遠き星の爆発しづり雪           同

   やがてわが真中を通る雪解水          同

   人体に蝶のあつまる涅槃かな        『蝶日』富士見書房

   花野から大きな耳の垂れてくる       『肅祭』思潮社



  増田陽一

   仙人掌に見つからぬやう春の昼       『ファーブルの机』ふらんす堂

   珊瑚海海戦在りし夜の蝉            同

   降りてまた階段のあり黴の花          同



  松井国央

   沖に灯があるから寒い少数派        「山河」321

 

  松浦敬親

   聖灰へ霾る日々の歩みかな         「麻」20134月号



  松澤昭

   夏の木のかけがへのない高さかな      「四季」平成176月号

   夏の月とつても遠いひとかけら         同



  松澤雅世



  黛執

   山ねむる眠らぬ山に見守られ        「晨」平成253月号

   弾み合ひぶつかり合ひて水温む       「晨」平成255月号 



  黛まどか

   星凉しここにあなたのゐる不思議      『B面の夏』PHP

   母の日の母を泣かせてしまひけり        同

   泳ぎ来て果実のやうな言葉投ぐ         同

   入口も出口もなくて大花野           同

   風邪ひいて金魚に見つめられてをり       同

   花筵風が遊んでゆきにけり         『京都の恋』PHP

   涼しさの貴船にすすぐ旅の衣          同

   夏料理風添へられて運ばるる          同

   京扇子はるかな風を呼びにけり         同

   大文字消えて戻りし星の位置          同

   逢へぬ日を重ねて古都の月あかし        同

   星なべて月に離りし菊膾            同

   日を閉ぢ込めて春を待つ万華鏡         同

   ややありて流れはじめし雛かな       『忘れ貝』文學の森

   日溜まりのあと月光のすみれかな        同

   いろいろとの灯を抜けて来し花衣        同

   行きたい方へそれからのしゃぼん玉       同

   さくらさくらもらふとすればのどぼとけ     同

   鑑真忌波のひとつが巌を越え          同

   海の日の銀座の角を曲がりけり         同

   半身を木蔭にあづけ眠りつぐ          同

   舂くと囁き合うてかほがはな          同

   野にあれば星をたよりに百世草         同

   冬の虹消えたるあたり濡れてをり        同

   雪しまく睡眠薬は海の色            同

   冬銀河身ぬちに残る舟の揺れ          同

   あやとりの川から橋へ日脚伸ぶ         同

   わらんべも仏も濡れて花まつり       『てつぺんの星』本阿弥書店

   花よりも水に添ひたる花衣           同

   転びたる子がすぐ立てる花吹雪         同

   篁を風の離れぬ利休の忌            同

   五大堂したたる山を収めたり          同

   漆黒の硯の海も鑑真忌             同

   木漏れ日を胸に集めて三尺寝          同

     NHK「アースウォッチャー 月から見た地球」に寄せて

   その中のしたたる星として現るる        同

   くれなゐを支え切れずに薔薇崩る        同

   思案橋色なき風と渡りけり           同

   てつぺんの星が傾げる聖樹かな         同

   からゆきの島々かけて時雨虹          同



  水原秋櫻子

   啄木鳥や落葉をいそぐ牧の木々       『秋櫻子一句』水原春郎

   天使魚もいさかひすなりさびしくて       同

   瀧落ちて群青世界とどろけり          同

   天国(ぱらいそ)の夕焼を見ずや地は枯れても  同

   冬菊のまとふはおのがひかりのみ        同



  水原春郎



  皆吉司



  峯尾文世



  三村純也



  宮坂静生

   文旦に刃を入れ魂に触りけり        『雛土蔵』角川書店

   宙に花とどめ青面忿怒仏            同

   枯れ尽くすまで触れ合へり麦の禾        同

   田に塔を建つるごとくに蛙鳴く         同

   田亀をる後醍醐帝の剛気かな          同 

    志賀高原にて

   山頂に天牛とゐて夏終る            同

   茸狩しばらくこの世はなれをり         同

   春の潮ニライ・カナイへ糸電話         同

   極道にあこがるる婿すべりひゆ         同

   八月の雨からまつにみつめられ         同

   海光を撓め蜜柑を捥ぎにけり          同

   ひとの世の火の気斥け雛土蔵          同

   苧の花観音へ一つ径              同



  村田由美子

   石 穿ち

   肉 穿つ

   楔形文字

   の 反乱                 「未定」第95



  森澄雄

   われ亡くて山べのさくら咲きにけり     『所生』

   こころにもゆふべのありぬ藤の花      『天日』

   ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに     『鯉素』

   西國の畦曼珠沙華曼珠沙華           同

   年ゆくと水飮んで水しみとほり       『四遠』

   磧にて白桃むけば水過ぎゆく        『花眼』



  森賀まり



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