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Haieの不定期コラム

2016年3月24日 (木) 

海遊館 サメ講座 その2

「シャークワールド徹底解剖」
イベント参加レポート
 於:大阪海遊館


ジンベエサメを知るための水族館講座ニタリ
 シャークワールド
 ▲シャーク・ワ"イ"ルドと読んでしまった、残念な私の視力


前回のパートはこちら



 海遊館サメイベントレポートの続きです。

 ★特別展を堪能 ハンターの素顔は多種多様!

 モルディブ諸島でのエサやり見学の後は、いよいよ海遊館の25周年を記念した特別展「シャークワールド」の解説へと移ります。
 ケージダイブを模した入口には、「ハンターたちの捕食に迫る!」というサブタイトルがあります。つまりは、ただサメを集めたり羅列する展示ではなく『捕食』という明快なテーマに沿ったものとなっています。
 捕食とは生物学用語でもありますが、エサとなる獲物を捕まえて口に運ぶという意味で、彼らがどのような戦略でもってエサを探したり、捕まえたり、食べたりするのかという部分にスポットが当てられています。

 案内された展示で目を引くのはニタリというオナガザメの仲間の尾びれの標本です。1mほどでしょうか、尾びれの上側だけが異様に長いことで知られています。

 ニタリの尾びれ
 ▲ながーい、どつきあい、に欠かせぬ尾びれ。先っぽはリボン状。

 これは実際に高知にある「海遊館海洋生物研究所以布利センター(通称、OBIC 以布利センター)」で飼育されていた個体です。
 海遊館では、多くの魚類を中心とした生物をこちらで調達・餌付けなどして、展示までの準備を行っておられます。

 ニタリはそちらの定置網にかかったもので、本館での展示は叶わなかったものの、多くの観察がされた点で極めて意味のある飼育となりました。
 中でも映像として記録されたニタリが、飼育員の方が海面に投げ入れた小魚を尾びれの先でパシッと叩き付ける様子など見ることができました。
 飼育員の方の解説にも力が入るところを見ると当時の興奮が伝わってきます。
 この後での解剖では実際に触れることもできました。

 他にもオオテンジクザメの捕食、ノコギリザメの捕食、カスザメの捕食について解説板がありました。混雑時はなかなかこういった展示に注目することが難しいのですが、今回はじっくりと見られます。
 カスザメの解説を見て、隣席のMr.ジョン(前回参照)はHaieの「名刺に描かれているカスザメですね」と注目されました。
 この子ものんびりそうに海底にいるように見えますが、上目づかいに目をせわしなくキョロキョロさせて通り過ぎる魚をガバッと狙う立派な名ハンターなのです。
 私はこのカスザメが「ギャップ萌え」でお気に入りなのです。

 話はそれましたが、もう一つ解説のあった展示、ホホジロザメの頭部剥製です。
 一見よくできた作り物のように思える展示ですが、件の高知沖で定置網にかかった本物のホホジロザメの剥製です。そして、歯はすべて本物を使用しているとのこと。

 ホホジロザメ頭部剥製
 ▲プラスチックカバーは、危険防止? 盗難防止?

 解説では歯の部分に注目するもので、肉を切り裂くという意味をもつ構造「鋸歯(きょし)」というギザギザを有しているとの説明がされました。
 また、ステーキナイフを実例として、同様の構造はティラノサウルスのような肉食動物にも共通していると述べられました。
 ホホジロザメが優れたハンターである点は、歯で最も特徴的に示されているでしょう。
 歯についての流れで、複数の顎標本がショーケースに並ぶ展示がそのすぐ隣にあります。
 実に様々な顎標本が並べられています。私が注目するのは、顎だけでなく頭骨をも含んだ標本です。アオザメ、ウチワシュモクザメ、ラブカについてそれを見ることができます。なかなかじっくり見る機会のないものです。
 皆さんも見学の折りは是非この三点の標本に注目してみて下さい。特にウチワシュモクザメとラブカは進化の起点では両極端とでもいうべき関係です。見比べると面白い発見があるかもしれません。他にもジンベエザメの微小な歯があったりして、顎だけでなく何種も個々の歯も比較するという意味では興味深い展示ですね。

 さて、その歯に関連してサメの歯が生え変わる機構を示すにふさわしい展示がメガロドンの顎の復元模型。こちらの歯はフェイクですが、かなり再現度の高いものだと思います。
 一説には15mを超える大きさともいわれるムカシオオホホジロザメ、通称メガロドン。
記念撮影のポイントとして設置されたりもしますが、拡大模型としての価値もあるということですね。

 待機歯、置換歯
 ▲デカイだけの模型ではありません。しっかり観察、見てナットク。

 ベルトコンベア式の歯の交換について、待機歯(たいきし)という生え変わった際に出てくる控えの歯が裏返しに顎の中に納まっている仕組みがよくわかります。
 その一連の流れをギミックで紹介する展示もあります。
 話の流れでそちらに注目すると、女性の参加者の方がギミックを作動させている最中。
 突然注目されて「ハッ」と慌てた様子で退かれましたが、解説的には良いタイミングで動いておりました。そのまま動かされてもよかったのに…仕方なくスタッフさんが動かされ解説は続きました。
 もちろん解説をきちんと聞くのも一つ、でもこのほぼ貸切状態で自分の興味に任せるのも一つ。オープン後は、こういった一つ一つの展示に集中することも難しいので、興味を追える状況を楽しむのは限られたチャンスですね。私的には、あまりそっちのけで見るのも気が引けますが…。


 ★スタッフ直伝! 「シャークワールド」をフカく知ろう

 一応の解説はこの部屋までで、あとは参加者自身の見たい展示をじっくり見る時間を与えていただけました。スタッフさんと直にやり取りできるチャンスでもあり、方々で対話が始まっておりました。私も今回の展示の注目株、「コギクザメ」の標本を前に館長さんやサメ飼育の担当をされる北谷さんとお話しできました。

 コギクザメは、高知の定置網で捕れ、連絡を受け駆けつけた時も非常に状態がよくゆっくりと遊泳していたそうです。(展示場所でVTRも流れています)なので「生体展示を!」との思いも強かったそうですが、残念ながら本館での展示には至らなかったそうです。ですが、ここで私たちの目に触れられて、未知のサメがこの日本の海にもたくさんいることのロマンを示してくれたことでしょう。
 ちなみに今回の企画展を決めた後で取得されたとのことで、北谷さんによれば、大きいがゆえに搬入にはいろいろと苦労があったそうです。だとしたら出すのも大変かも…。

 コギクザメは、かなり珍しい種類で私もこの標本を見るまでは図鑑でしか知らない種類でした。日本では正式な記録が3例しかないとのことで、ある意味メガマウスよりも貴重かもしれませんね。

 実はこのコギクザメを含む「キクザメ」の仲間は、つい最近ある分類学者によって「キクザメ目」というそれまでの「キクザメ科」よりもワンランクアップした分類を提唱されてもいます。
 分類などあまりピンときませんが、サメの説明をするとき長年使用してきた「大きく8つの種類に分けられます」という枕詞に変化が生じてしまうことにもなります。
 それまでの本に書かれた記述が一変する事態ですので、私としては慎重に動向を見極めたいのですが、専門家の意見も参考にしないといけません。ちなみにサメの全種類を載せているコンテンツ(サメの全種一覧)について畏れ多くもお褒めの言葉をいただきました。専門家はご参考にされないとは存じますが、一般にはサメがたくさんいることをご理解いただける仕様です。※当方、非研究者です。

 館長さんによれば、このメスのコギクザメを解剖した時にある大発見をしたとのことで近々論文にしたいとお話されていました。もちろん展示されている付着していた寄生虫も大きな発見ではありますが、それ以上のものでした。
 研究という意味でも貴重な個体だったことが伺えますね。

 また館長さんはコギクザメをかなり古いタイプのサメとして認識しているとも話されました。見た目はかなり現代のサメに近いのですが、泳ぎを見ると潜水艦のように体は動かず尾びれを小刻みにゆっくり動かす様子で、あまり速く泳げないようだともおっしゃられました。確かに各ヒレの形状を見ても太めの大味な作りのものばかり。
 恐らく深海へ適応したツノザメやカグラザメとは似たような存在なのでしょう。
 私はアゴの部分がややしゃくれ気味なのが、カグラザメなどに近く感じました。歯の展示もありましたが、それらの櫛状の歯とも割と似ているようにも思えます。
 ちなみにこのメスは、胸びれに噛み跡があり、交尾でオスにかじられたと思われるものだそうです。しかも左右両方にあるとのことでオスに人気の個体だったりするのでしょうか。想像が膨らみます。
 繁殖の生態などもほぼ謎なので、この個体から得られる情報はどれも貴重なものですね。
 コギクザメばかり注目しましたが、ラブカやフトシミフジクジラ、オオメコビトザメなどの標本もあります。私はフジクジラの魅力について、Mr.ジョンにおなかが光って敵を惑わすんですよと説明してみたりもしました。
 カウンターイルミネーションという光を背に光に紛れることで自ら発光して姿を消す面白い戦略を持っているのです。LEDライトでサメをグッズ化するならこの子で決まりですね。

 こういった標本について、取得に際しては現地の漁業者の協力、そして各研究機関や大学などから貴重な提供を受けたことを館長さんは大変喜んでらして、感謝の弁を述べられました。相互の信頼が展示として開花するというのは観る側にとっても本当にありがたいことです。
 特に海遊館へ地元の魚を提供される漁師さんのありがたさを感じるとともに、貰い受けたことへの責任を感じる部分でもあるとも館長さんはおっしゃられていました。

 ただ展示されている魚を眺めるだけでは、こういった苦労や思いはなかなか伝わらないものです。改めてイベントでのコミュニケーションが、より水族館を味わう、深く知る場として大事なものだと認識を持ちました。
 特にお客さんと対話しながら解説をされるスタッフの方々の嬉々とした表情をうかがいますと、展示ブースを整えて終わるだけではもったいないな、と感じました。
 日々たくさんのお客さんが訪れる海遊館ですが、どこまで取り組みや思いが知られているか、すべての方に伝えるのは難しいでしょう。でも少しでも興味を持てばすぐそこに見えなかった事実や知への扉が開かれている。相互に手を伸ばせばそこはつながるということがしみじみと感じられました。

 余談ですが、最後にブースを移動するとき、Mr.ジョンにさかなクンの直筆サインの展示があることを教えて、写真に収める場面がありましたが、私と最後尾で集団からはぐれそうになっても、嫌な顔ひとつせずしっかり笑顔でフォローしてくださった女性スタッフがおられて、とても安心できました。


 さて次に参りますは、いよいよサメの解剖です。次回へ続きます。

※一応全三回の予定です。きちんとレポートできているかどうか、イベントを楽しみ過ぎるとその辺がおろそかになるのです。だから楽しんでいるおっさんの感想文と言われても仕方ない!...反省

関連リンク:
 海遊館 公式サイト
  http://www.kaiyukan.com/ (外部リンク)



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