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Haieの久々コラム

2012年12月19日 (水) 

サメシンポジウム in 海遊館

〜日本板鰓類研究会主催 サメシンポジウム参加報告〜

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★虫愛ずるサメgimme, I need you 寄生虫


 サメ大図鑑
 つい先日発売されたサメ本です。学習図鑑とした子供向け(小学校高学年くらいかな)の内容ながらも、本格的なものになっています。
 そして、その内容に一つのこだわりを見ることができました。
 それは、生きているサメの写真を多く用いているということ。
 種類を実物で網羅すると、どうしても血塗れの漁獲後のものや変色した標本の写真を使わざるを得なくなります。
 しかし、この本はかなりその点にこだわっているようで、水族館での写真も含みますが、生きているかっこいいサメの姿を伝えようとする傾向がみられました。これは監修者である田中先生のご意志でもあるのかなぁ、なんて思ったりしています。サメへの愛情が感じられるサメ本です。是非クリスマスプレゼントに!(マ)

 さて、田中先生はもともと水産関係のテキストなどにサメに関する寄稿をされていたりします。たまに本屋の立ち読みで不意打ちのように名前を見つけることがあります。とあるマニアックな生物の本にもお名前が挙がっておられました。(念のため言っておきますが、Haieは文系出身者です)
 その生き物とは…寄生虫。
※以下、寄生虫の話題オンリーです。食事中の方、気分を害される方は閲覧を控えてください。

わが国の板鰓類から近年見出された寄生性カイアシ類
               広島大学 大学院生物圏科学研究科

 この演題が午前最後の発表となりました。ご本人もおっしゃっておられましたが、この時間帯のチョイスにいささか懸念がある様子。
 そう、お昼の食欲を減退させる可能性がかなり高い『寄生虫』に関する発表なのです。
 発表形式は、やはり写真を多用するパターンですので、かなり気を使われたご様子。しかし、何とかならなかったのでしょうか。うん、いやいいんですけどね。

 発表自体は、真面目な変た…、いやマニアぶりを思わせる寄生虫LOVEの口ぶりに、これまたコアなお方だ、と人物への興味もそそられました。
 曰く、「サメは寄生虫の宝庫」だと。
 以前そんなこと言っておられたサメサイトのお方がおられましたなぁ…その方はマンボウがやばいと取り上げられてましたが。

 寄生虫というとサナダムシや回虫などの条虫類を思い浮かべられる方がほとんどでしょう。もちろんサメ自身の消化器官ではたくさんのそれらを見ることができるようです。しかし、皮膚に寄生するカイアシ類などもまた豊富なのです。なので、そちらを中心に発表は進みました。
 当日、お昼に麺類を予定されていた方、よかった…ですね。

▼イワシの口腔内から採取した「ウオノエ」は等脚類。ダイオウグソクムシも近縁種。
 アルコール漬けの粗悪な自前の標本です。

タイノエ
















 カイアシ類は、身近なところで言う「ケンミジンコ」の仲間です。つまりは微小な甲殻類とでも言いましょうか。しかし、サメ類に寄生するものは、肉眼でも大きさのわかる程度(数ミリ〜数センチ)でカブトガニのような見た目をしており、通称サメジラミとも呼ばれています。
 かなり鋭い鉤爪で体表・エラ・口腔内の皮膚に食い込み、体液をチューチュー吸っているそうで、外洋性のサメではほとんどが冒されているとのこと。多くは尾部に卵のうをぶら下げて張り付いているようです。
 北極海のニシオンデンザメは、目の角膜に寄生されたカイアシ類で盲目状態になるそうですが、ブラブラを疑似餌代わりに利用することもあるとか。(※ナショナルジオグラフィック 98年9月号に特集記事があります)
 一般的にウオジラミと呼ばれるものは、専門的には鰓尾(えらお)目の「チョウ」で、カイアシ類とは異なるようです。

▼ガラス瓶に張り付くチョウ。大概、宿主に害をもたらす。チョウ
 余談ですが、かなり昔に工事中の都市河川でビンドウを仕掛けていましたら、外側にチョウが付着していて驚いたことがあります。正体を知らず持ち帰って拡大鏡で見て、体の構造を観察し「可愛いやっちゃな」と思いながら調べて、判明した時は「ゲーッ、寄生虫かよ」とさらに驚きました。宿主のいないうちはフヨフヨとビンの壁面にへばりついて遊泳脚をバタつかせる小動物だったのですが…。

 さて、発表では具体例として「メガマウスザメジラミ」「ジンベエザメエラジラミ」について解説されました。
 メガマウスザメジラミは、あのハワイでのメガマウス第一個体発見の時に見つかって固有種とされたもので、日本で見つかった個体でも確認されています。メガマウス固有の寄生虫、という意味ではメガマウスの生活史を知る大きな手掛かりとなることは間違いないはずです。
 最終宿主としてメガマウスまでに到達するまでどのようなライフサイクルを送るのか、まだまだ研究の余地があるようです。

 ジンベエザメエラジラミ(和名は仮の呼び名のよう)は、1876年にインド洋で捕獲されたジンベエザメでの記録以来、世界で報告がなかったものを、ごく最近に美ら海水族館での飼育個体の診断中に発見したとのこと。その19世紀までさかのぼる記録を訪ねて、北アイルランドの博物館まで行き、見つけた当時の資料には、緻密なスケッチが残っていて、思わず感動されたそうです。およそ140年ぶりの寄生虫ラブレターを受け取りに行かれる執念は、まさに愛情以外の何物でありましょうや。

 しかし、寄生虫というアプローチでのサメの研究は、非常に遅れていることがこの一端からも見て取れます。

 漁獲物の価値を著しく下げてしまう寄生虫。サンマヒジキムシやサバのアニサキス(中毒)、カニビル(見た目)にフクロムシ(生殖障害)など水産的にはうれしくないオマケなのです。
▼料理で魚をさばく際、期せず見つけたときは…(ウオノエ)ウオノエ
 カイアシ類に限って言えば、おそらく外洋で生息するうちはサメに深刻な被害を与えることはなさそうですが、飼育下では著しく体力を奪うこともあり、なかなか侮れないようで、捕獲後は展示の際に丹念に取り除くようです。
 寄生虫の研究はもちろん、そのようなマイナス面の解消を目的にされているようですが、蚊の口器を注射針の技術に転用したような、そういった寄生行動に伴う体の仕組みなどは医学的にも応用が利きそうな気もします。高速で泳ぐサメの皮膚から離れない仕組み、高度な技術転用のニオイがしませんかねぇ。

 しかし、発表者の長澤和也先生もおっしゃられましたが、板鰓類寄生虫研究者の絶対的な数が世界でも6名と少ないことと、サメ類では献体の手に入りにくさが障碍だと述べておられました。解剖それ自体でも、内臓器官の観察を行うことが主で、そういった点に注目して行われる機会に乏しいようです。(明らかに寄生された個体は、港に着くまでに海へポイされそうですよね)
 以前のサメ祭りでもサメの解剖を行いましたが、このような点での観察はなかなか見落としがちになるようです。(条虫を見つけた女性が一人だけいましたが…)

 寄生性カイアシ類に限って言えば、浮遊性の時期があり宿主をキャッチするまでどのような生活をしているのかが気になりました。条虫類は中間宿主などの存在が浮かびますが、メスの卵のうが解き放たれて海を漂うであろうこれらの仲間がどのような生存戦略でもって生態系上位のサメたちと密接な関係をもちうるのか、大きなテーマになると思います。(個人的にはサメの回遊ルートにいてランデブーを果たすと仮定して、予めたどりそうな場所に「出待ち」する行動要素がこれらにあると思いました…どうだか?)

 会場の反応は、なかなか引き気味でしたが興味をそそられた方は少なくないはず。
この発表をされた広島大学の長澤先生は、魚類の寄生虫に関していくつか本を出版されていますので、抵抗のない方は一度お読みになってみてはいかがでしょうか。

▼関連リンク
※Amazonでは寄生虫関連の本をキーワード「長沢和也」で探すことができます。(なぜか「長澤」では出ない)
★寄生虫を愛するあなたに…目黒寄生虫館(リニューアル!)
(前回のコメントの「目黒に限る」は「寄生虫博物館」のことでした。デートコースにおすすめ!割とマジで)

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次回、サメの設計図を紐解く (堂々の更新未定宣言!!)
(用語説明ばかりになる予感。それでも立ち上げられればいいと妥協します)



開催地:大阪港天保山 大阪海遊館
 http://www.kaiyukan.com/(公式サイト)
主催:日本板鰓類研究会
 http://jses.ac.affrc.go.jp/ 

→サイト内関連リンク
2005年 日本板鰓類研究会主催サメシンポジウム(東大)


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