Haieの不定期コラム

2007年9月17日 (月) 

〜 集え!サメ好き サメ祭り 〜

〜 日本板鰓類研究会主催 第一回サメ祭り サメを知ろう!〜
>パート1 サメ祭り前夜(サメ祭りへの道)
>パート2 サメ祭り・会場の様子・田中先生の話
>パート3 サメ祭り・後藤先生の話前編


★「サメの進化と多様性 テンジクザメ類」

     岩手県水産技術センター 後藤友明先生


 引き続き、後藤先生のお話、テンジクザメ類の多様性についての後編をお送りします。
 
サメの境地を開く天竺への道 パート2

歩くサメ、エポーレットシャーク

 ちょうど去年の今頃、オーストラリア周辺の海を調査した環境団体が新種と見られる海洋生物を発見し、そのニュースが世界中を駆け巡りました。
 その中で、新種と見られる『歩くサメ』が見つかったなどというトピックがありました。その歩くサメの仲間、エポーレットシャークの紹介です。

epaulette

エポーレットシャーク、実は以前に油壺サメ展のレポートでも取り上げたことがありました。→コラム第七十九回参照

 一般の方が思い浮かべる怖いサメのイメージからは程遠いくらいに愛らしいサメです。以前のコラムをご覧になられた方は、お分かりになると思いますが実に器用にひれを動かして歩くことが出来ます。これは、複雑に入り組んだサンゴ礁で自在に動き回れる行動力の獲得をした、すばらしい適応だと言えるでしょう。先生はこの仕組みについて骨格の構造をご説明くださいました。

 テンジクザメのほかの仲間、例えばイヌザメや別系統のメジロザメ目の似たような環境に住むトラザメなんかの胸ビレや腹ビレの構造とは全く異なるそうです。彼らも比較的浅い海の岩礁などにすむ種類ですが、泳がないときに海底に着地した状態を保つヒレではあっても、それを歩行へ導く動きは出来ないそうです。

 これはヒレのつなぎ目をなす部位がイヌザメなどではパタパタとしか動かせないのに対し、エポーレットシャークの場合はグリングリンに方向が変えられる上に丈夫で、接地するヒレの縁は柔らかく、クッションの役割をしているそうです。
 陸上競技で言うところのクラウチングスタートのように体重を瞬発力に変える「溜め」が出来るということですね。
 
しかもエポーレットのすごいところは、感覚器官をも環境に適応させたことです。サメならほぼすべての種類に見られる「ロレンチーニびん」。生き物の発する微弱な電位を感じる器官ですが、これが普通のサメなら頭の周辺部だけに点在しているのがなんと、体の真ん中ぐらいまで広範囲に分布しているとか。
 頭だけでは探す範囲が頭打ちなので、体の側面に分布させて指向性を広げたのです。シュモクザメが頭部を扁平にしてその数を増やしたのに対し、エポーレットは細長い体半分をセンサーに変えたというのですね。

 ちなみに前述した「新種」とされた歩くサメ。後で詳しく伺うとどうも、パプアニューギニア辺りにすむ「Hemiscyllium hallstromi」というあの辺りの海ならいてもおかしくない種類のサメの可能性が高いそうです。先生は「すぐ分かる」とおっしゃられていましたが、思うに先生ほど詳しい方がその団体にいなかったのではないでしょうか。
 しかし、新種という響きに胸が躍らされ、こうして脚光を浴びたコトで知名度が上がるのもまんざらでもないという思いがしました。研究者の方からすれば紛らわしい話をするな、という感じかもしれませんけれど。

いざ大海原へ! グローバル化した甚平どん

typus 冒頭でテンジクザメ目を紹介する際に、ジンベエザメを引き合いに出しましたが実はジンベエザメはテンジクザメ目の中ではかなり独特のサメ(1科1属1種)だそうです。
 他のテンジクザメの体長が1mから大きくても3m前後なのに対し、ジンベエザメは世界最大の魚類とも言われるように13mほどにもなるといわれています。すむ環境も全く異なり、岩礁などの浅い海をはって泳ぐのが大多数であるのに対し、ジンベエザメは世界中の温かい海を回遊しています。

 後藤先生のお話では、ジンベエが他のテンジクザメの仲間と違って発達した部位については、まず目が頭の両サイドに移動したこと、つまり広い視野を得たということですね。そして、顔の幅も大きく広がったこと、これはシュモクザメの頭部のように浮力を得るためだそうです。同時に体の骨格も、回遊するために細部にいたるまで丈夫になり、尾びれなどに見られるように泳ぎが得意な体つきになっています。
 そして、繁殖に関しても広い海での少ないランデブーを生かせるように多産になり、他の大多数が卵を産むのに対して、子どもを産むようになっています。

 細々と商売する古式ゆかしい天竺屋を飛び出し、新しい時代に誕生した甚平屋は、グローバル化の波に乗って世界進出し、大成功した大企業のような存在なのでしょう。
 大海原で、カツオの群れを率いて悠々と泳ぐ様は、広い海がもたらすロマンを見せつけられるようでもあります。

 ちなみにこの「ジンベザメ」「ジンベザメ」とどっちが正しいの? という話をよく聞きますが、一応魚類学会さんの規定する標準和名では「ジンベエ」が正しいようです。まぁ、日本語の発音からしてどちらも間違ってはいないので、あまりこだわらなくてもよさそうな気もします。
 名前の由来のごわごわした「甚平」羽織だって、戦国時代の「陣羽織」が訛ったとかいうくらいですから。まぁ、どっちでも「エ」「イ」じゃないか。

 後藤先生も時間枠を超えて熱くサメの魅力を語ってくださいました。私のようなマニアに限らず、この話でサメの魅力を感じた方は沢山おられるのではないでしょうか。同席していたReal Blackさんも「すごく面白かった」と感激されてました。
 テンジクザメの仲間は、イヌザメを始め日本の水族館にはたくさん飼育されている種類ですので、注意してみると実に面白い発見が出来るのではないかと思います。

◆次回 サメはどうやって増えるの? フカいオトナの話

<また別にテンジクネタで書き起こしたくなってきました。やっぱりサメって面白い!>



★関連リンク エポーレットシャーク
ナショナル・ジオ・グラフィックでの紹介記事(動画つき)

開催地:東海大学海洋科学博物館
 http://www.umi.muse-tokai.jp/(公式サイト)
主催:日本板鰓類研究会
 http://jses.ac.affrc.go.jp/ 

→サイト内関連リンク
東海大学海洋科学博物館主催
「海と魚の探求セミナー」(サメセミナー)報告

※解剖もあり、お食事中の閲覧はご遠慮ください


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