Haieの不定期コラム

2005年10月6日 (木) 

これぞ、サメ映画!


「光陰矢のごとし」、とはよく言ったものです。
何もしないと月日は、あっという間に経ってしまうものです。

気まぐれコラムも、9月の更新が1回きりになってしまって、反省しきりです。

今回のコラムも実は先々月に、上野公園内にある、国立科学博物館(通称、かはく)で行われた、野生動物のドキュメンタリーを上映するイベントで、サメを大々的に取り上げた映画を鑑賞したときのものです。

本来なら油壺レビューのあとにご紹介する予定だったのですが・・・。

このイベントは、地球映像ネットワークという団体が「世界自然・野生生物映像最優秀作品上映祭」と題し、今年度は「かはく」でも何度も行われていたイベントでした。

今回私がお目当てで行ったサメ映画は、「海を食う、サメ (Scavengers of the Seas)」というフランスで制作されたサメのドキュメンタリーです。

サメ映画というと、多くの方が「ダーダン、ダーダン、ジャジャジャジャ・・・」のメロディーを想像されますが、この映画はそんな酔狂のサメ映画とは一味も二味も違う面白さを見せてくれました。

題名にもある「Scavenge」は、掃除するとか残飯を漁るといった様な意味合いの言葉です。サメのイメージの強靭なパワーで獲物に喰らいついて、相手を丸呑みするような表現とはかけ離れています。

実際の映画の内容はどうだったのでしょうか?

映画の主な舞台は、オーストラリア東部のグレートバリアリーフに浮かぶ最後の楽園とも言われる島、フランス領ニューカレドニアです。

この島を囲う海に棲むサメたちの実に興味深い内容です。映画での映像の順に従ってご紹介しましょう。


・若イタチのトリ物帳

まずはイタチザメ。若いイタチザメはこのあたりの比較的浅い海でも生活しています。
イタチザメは、過去のコラムなどでご紹介している通り、この「Scavenger」の代表格のようなサメです。若いイタチザメが、小笠原諸島にもいるクロアシアホウドリという、水鳥を襲うシーンが見られました。
「鳥を襲うなんて、豪快に空でも飛ぶのか?」とお思いになるかもしれませんが、サメは水面で体を休めている鳥を狙うわけです。
しかし、忍び寄っても所詮は空に飛び立って逃げられてしまいますよね。そこで、サメはまだ飛ぶ力の弱い若い鳥を襲うというのです。羽の動かし方も未熟な鳥は、水面を引きずるようにしか飛び立てないので、イタチザメはまごまごしているところを狙うわけです。

映像では、サメが大きく水面から頭を上げて、鳥に向かって大きく口を開けて迫り、鳥はくちばしで必死に威嚇し、応戦するという実に面白いシーンが収められていました。

若いイタチザメの胃内容物には多く水鳥が含まれているらしく、消化しきれない羽根がモサッと出てくることもしばしば。これが大きくなるとウミガメを襲うのですから、悪食というほかなさそうですね。

・サメを食べるサメ

つづいては、ネムリブカ
ネムリブカはサンゴ礁を主な生活場所にしている1.5mほどのサメです。
このネムリブカは、沖縄にもいるのですがとある理由で漁師のカタキにされています。
網にかかった獲物を横取りする、ということだけならまだしも漁師の大切な網を見事にズタボロにしてしまうのです。

映画では、網にかかって弱っている魚を網ごと噛み付いて網を切断するという器用な動作が見られました。
網から解放された魚はここぞとばかりに逃げますが、かなり弱っているためもがき、その体から出る不規則電流を元に、探り当てられ、餌食になってしまいます。

ネムリブカはサンゴ礁ではかなりの数がいるサメです。中にはサメ同士で獲物を奪い合って傷つくものもいます。そんな弱って傷だらけのネムリブカを狙う「サメ」が同じ海にいるのです。
その名は、オグロメジロザメ。オグロメジロは、体をくの字型に曲げて相手を威嚇することでも知られる危険なサメです。

弱ったネムリブカも、先ほどの魚と同様、不規則電流が出ます。抵抗するまもなく、ネムリブカはあえなく食いつかれ、体を真っ二つにされてしまいました。ツマグロもこの捕食に参加し、ネムリブカは完全に捕食されてしまいました。

このようにサメ同士でも、食う食われるは厳然たるルールとして存在しているのです。サメを鳥類で例えるならば、スズメやハトを狙うトンビやタカのような感じでしょうか。同類(メジロザメ目)とはいえ、その食性によって序列があるのです。


・サメも競争に負ける

ツマグロも、若いイタチと同様浅い海で生活することで知られるサメです。太平洋の島では、バシャバシャと島の浅瀬を渡っていると、噛み付いてくることもあるそうです。
そんなツマグロが、砂浜の浅瀬で狙う獲物はウミガメの赤ちゃんです。ゼンマイ仕掛けのおもちゃのような動きは愛くるしいですが、格好の獲物でもあるわけです。

しかしツマグロは、この小さな獲物を上手に捕まえることが出来ません。浅瀬では、波の動きでゆらゆらしていてとても捕まえづらいのです。サメは早く泳ぐことは出来ても、小さな獲物に照準を合わせるのは苦手なようです。

悪戦苦闘をしているとどこからともなく、大きな魚が・・・。ロウニンアジです。
ロウニンアジは魚食魚で、面長のツラ構えからも分かるとおり口が前に飛び出し吸い込むような動作が出来ます。もうお気づきですね。
ウミガメの赤ちゃんは、掃除機のように吸い込まれ、ロウニンアジの餌食になってしまいます。

ツマグロは、横取りに近い形で、ウミガメのほとんどを食べられてしまいました。
生態系の頂点とはいえ、サメとて得手不得手があるのですね。


・これぞスカベンジャー!

ホホジロザメが豪快にジャンプする映像をよく見ます。そのホホジロザメもクジラの死体などを好んで食うことは、「エア・ジョーズ」というDVDでも取り上げられています。

これが、こちらニューカレドニアでは様子が変わるようです。18トン(10m前後?)もある大きなシロナガスクジラの死体。

この死体に群がるのはイタチザメ! クジラの分厚い脂肪に喰らいつき、かぶりを振って肉を剥ぎ取ります。サメの捕食によって、この死体は2週間かけて、ほぼ骨だけになってしまったようです。

映像ではホホジロの姿は全くなく、全てがすべてイタチザメでした。ホホジロも生息する海域と思われますが、互いに近づかない紳士協定でもあるのでしょうか? 不思議です。
しかし、こんな大きな獲物を丁寧に処分してくれるサメの存在というのは、実に大きなものだと思いませんか?


・フカい海にもサメはいる

続いては深海ザメ。一部のサメマニアからしかその存在が知られていないサメ分野。
400種いるサメのうち100種以上というかなり多くの種類が、おもにツノザメ目というカテゴリーの深海ザメです。サメマニアでは、最後には深海ザメを極めることが目標となるのです。これは、大きな壁です。

さて、くだらないマニア話は置いておき、作品中では深海でのサメの行動について、珍しい映像が拝めました。
クジラの死体というのは、大きな体ゆえ浮力がありますが、脂肪などがなくなった時点で、重い骨と肉の部分は沈んでしまいます。これは、深海魚や深海生物にとっては、またとないご馳走です。

この食事の後か、深海には、よくクジラの骨が墓標のように点在しているそうです。しかし、深海でのそういった過剰な資源供給を無駄なく解消するのもまたサメなのです。
映像では、深海の大型サメ、オンデンザメがこの沈んだクジラの死体に喰らいつく場面が見られました。その様子は、頭を肉に押し付けている動作です。正確には顎を大きく開けて、それを押し付けているというのでしょうか。

オンデンザメの歯を調べてみると、上顎が針状なのに対し、下あごは細かいカッターが一列に並んだようになっています。これは、肉をえぐり取るといったことの出来る構造ですね。深海ザメの歯は、多くがこのような歯をしているようです。映像にはヘラツノザメもいました。

そして、深海では、なんとサメの死体も食べられていたのです。恐らく深海ザメの1種でしょうが、コシオリエビというエビとカニの合いの子のような生き物が群がり、サメが食われていました。

深海ザメは深海の生態系では上位とされていますが、食性などを知るには至っていません。映像はそんな謎を解き明かす1コマだったのかもしれません。もしビデオがあれば、何度も見直して、新たな発見をしたいところですね。


様々なサメの表情を捉えたドキュメンタリー。上映時間の55分間は、あっという間でした。
多分、ニヤニヤよだれを垂らしながら、映像に見入っていたことでしょう。ああ、恥ずかしい。
しかし、この映像がただで(かはくの入館料のみでした)拝めるなんて・・・。
その後、3本立ての「ワニ」と「セイウチ」もしっかり見ました。なかなかどれも面白かったです。

サメマニアとはいえ、私は実際にはサメにはほとんど触れないようなエセマニアですが、こういった映像を観察し新たな発見がある喜びは、やはり他の生き物では得がたいと思いました。
「もっと知りたい!」
サメは、そんな知的好奇心を熱くさせ、想像力を刺激する生き物です。

ジョーズ止まりのサメ好きさんへ・・・
「いいかげん、目ザメなさい」。(&〇テレ)

関連コラム
>>イタチザメLOVE
>>サメ同士の捕食
>>オンデンザメの話

関連リンク
>>NPO法人 地球映像ネットワーク
>>上野公園内 国立科学博物館(かはく)




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