江戸川乱歩「類別トリック集成」の密室トリック出典一覧
※ご存知のように江戸川乱歩の「類別トリック集成」では基本的に作者名しか記されておらず、作品名がわからないようになっています。このページはできる範囲で作品名を調べ、一覧にしたものです。しかし、まだまだ読書量が少ないため、作品名がわからないものがいつくかあります。ご存知の方はぜひご一報ください。

◎密室トリック
(1)犯行時、犯人が室内にいなかったもの
【イ】室内の機械的な装置によるもの
・電話機より弾丸発射(G・D・H&M・I・コール「窓のふくろう」)
・受話器に強電流(アーサー・Bリーヴ長篇?)
・壁穴ピストル装置(S・S・ヴァン・ダイン長篇)
・時計捲き発砲(ジョン・ディクスン・カー「三つの棺」内の密室講義)
・短剣落下(イーデン・フィルポッツ長篇)
・振り子仕掛け殴打(ドロシー・L・セイヤーズ短篇、飛鳥高「犯罪の場」)
・窒息ベッド(フォルチュネ・デュ・ボアゴベイ)
・毒瓦斯発生ベッド(イーデン・フィルポッツ「灰色の部屋」)
・氷の溶解又は水が凍る膨張力を動力としてピストル発射その他の仕掛け(ジョン・ディクスン・カー「三つの棺」内の密室講義)
・化学薬品による時限放火(甲賀三郎「琥珀のパイプ」)
・時計と電流の時限爆弾による放火(リチャード・ハル「伯母殺人事件」)
【ロ】室外よりの遠隔殺人
・向側のビルの窓より、短剣を銃に装填して撃つ(オースチン・フリーマン「アルミニウムの短剣」)
・遠方より窓を通して岩塩で作った弾丸を撃ち込む(ジョン・ディクスン・カー「プレーグ・コートの殺人」)
・被害者が窓から首を出したときに、上階から輪になった縄を下げ、つるし上げて絞殺、そのまま死体を地上におろし、縊死を装わしめる。(G・K・チェスタートン「ムーンクレサントの奇跡」)
・窓外より撃ったピストルを室内に投げ込み、犯人が室内にいた如く見せ掛ける。(ジョン・ディクスン・カー「孔雀の羽」?)
・レージイ・トングスで少し開いた窓のカーテンの隙間から、室内の卓上の凶器をつまんで、別の凶器ととりかえ、証拠を隠滅する。(ジョン・ディクスン・カー長篇)
・「ユダの窓」トリック。(ジョン・ディクスン・カー「ユダの窓」)
・絹紐つきの毒矢を隙間から射込んで後に外へたぐり出す。(ジョン・ディクスン・カー長篇)
・その他(ワルター・ハーリヒ「妖女ドロッテ」、ロジャー・スカーレット長篇「エンジェル家の殺人」?、ロナルド・A・ノックス「密室の行者」、ベチョファー・ロバーツ「イギリス製濾過器」、ジャック・フットレル短篇、カーター・ディクスン短篇)
【ハ】自殺ではなくて被害者自ら死に至らしめるトリック
・被害者自ら死に至らしめるトリック。(ジョン・ディクスン・カー「赤後家の殺人」、マージェリー・アリンガム長篇)・予め被害者に心理的恐怖を与えておいて、恐怖の余り半狂乱となり、過失死をとげさせる。(ジョン・ディクスン・カー「三つの棺」内の密室講義)
【ニ】他殺を装う自殺
・他殺を装う自殺。(横溝正史「本陣殺人事件」、E・ジェプスン&R・ユーステース「茶の葉」)
・密室内で一人芝居をして自ら傷つけ、悪霊の為に傷つけられたと偽る。(ジョン・ディクスン・カー「プレイグコートの殺人」)
【ホ】自殺を装う他殺。
・上階の窓から首を吊り上げて地上の枝に縊死を装わしめるもの。(G・K・チェスタートン「ムーンクレサントの奇跡」)
【へ】人間以外の犯人
・動物が犯人(エドガー・アラン・ポー「モルグ街の殺人」、コナン・ドイル「まだらの紐」、アーサー・モリスン「レントン館盗難事件」)
・「太陽と水瓶の殺人トリック」(M・D・ポースト「ズームドルフ事件」、モーリス・ルブラン「水瓶」、江戸川乱歩「火縄銃」)

(2) 犯行時、犯人が室内にいたもの

【イ】ドアのメカニズム。
・磁石で閂を動かす。(エドガー・ウォレース長篇)
・鍵はかけたまま、ドアの蝶番を外して出入りし、外から蝶番を元通りにしておく。(イズレイル・ザングウィル「ビックボウの殺人」、クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」等の作中探偵の引例)
・死体をドアにたてかけ、その重さによって密室が出来る。(エラリイ・クイーン長篇)
・犯行後、外から普通に鍵をかけ、その鍵を持って、ドアを破って室内に入る人々の中にまじり、手早く、こわれたドアの鍵穴の内側から鍵をさしこんでおく。(イズレイル・ザングウィル「ビックボウの殺人」・クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」・ジョン・ディクスン・カー「三つの棺」の引例)
・「ウースティティ」というピンセットのような道具を使う。(犯罪捜査学書所見)
・内外二つの鍵トリック。(イズレイル・ザングウィル「ビックボウの殺人」作中引例)
【ロ】実際より後に犯行があったと見せかける。
・犯行後密室内に、被害者の声を吹き込んだレコードをかけておく方法。(アガサ・クリスティ「アクロイド殺人事件」、S・S・ヴァン・ダイン「カナリア殺人事件」)
・犯行後に密室内に銃声を発せしめアリバイを作る方法。(アーサー・リース「死人の指」?、ジョン・ディクスン・カー長篇、カーター・ディクスン長篇、ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」?)
・紙袋に息を入れて強く叩いて破れる音で偽銃声を作る。(アガサ・クリスティー中篇)
・室内の大時計が倒れるような仕掛けをして、その倒れた音の時犯行があったと思わせる。(イザベル・B・マイヤーズ「殺人者はまだ来ない」)
・腹話術の利用。(ジョン・ディクスン・カーの長篇の引例)
・第三者の視覚に訴えて既に死んだ被害者がまだ生きているように見せ掛ける。腰かけて死んでいる死体の向きをかえて、窓のカーテンに写る影を見せる。(ロジャー・スカーレット「エンジェル家の殺人」?)
・黄色の大きな紙を糸でつるし、ガウンを着た人間の後姿と見せかけ、別の糸でそれをストーブの中に引き込み、焼いてしまう。(H・H・ホームズ「密室の魔術師」)
・犯行後、犯人又は共犯者が被害者に化けてアリバイを作る。(E・C・ベントリー「トレント最後の事件」、ジョン・ディクスン・カー「夜歩く」、カーター・ディクスン長篇2例)
【ハ】実際より前に犯行があったと見せかける。
・密室に於ける犯罪発見者が犯人という早業殺人。(イズレイル・ザングウィル「ビックボウの殺人」、G・K・チェスタートン「狂った形」)
【追記】
・室内の屋根の一部をジャッキで持ち上げて、すきまを作り、そこから犯人が出入りする。(ロバート・アーサー「五十一番目の密室」)
・小屋の屋根全体を万力で引上げて出入りし、又元のようにしておく。(鷲尾三郎「悪魔の箱」)
・野外で人を殺しておいて、その死体の上に大急ぎで小屋を建築して、密室を作る。(W・ハイデンフェルト「引き立て役クラブの不快な事件」 ※類別トリック集成の中でハーバート・ブリーンの作とあるのは誤り)
【ニ】犯罪発見者達がドアを押し開いて闖入した際、犯人はドアの後ろに身を隠し、人々が被害者の方に駆け寄る隙に逃げ出す。(クレイトン・ロースン「帽子から飛び出した死」)
【ホ】列車の密室(F・W・クロフツ「急行列車内の謎」、芝山倉平「電気機関車殺人事件」)。船室も同様の条件を備えている(アガサ・クリスティ「船上の怪事件」 ※クリスティには飛行機を舞台にした「雲をつかむ死」という作品もある)

(3) 犯行時、被害者が室内にいなかったもの

・犯人をかばうために被害者自ら密室を作る。(モーリス・ルブラン「テレーズとジュルメール」)
・敵の追撃を恐れるため被害者自ら密室を作る。(島久平「ガラスの家」)
・被害者が致命傷を受けたのち、その室に入り、そこへ別の犯人が来て、被害者が既に絶命していると知らず、ピストルで撃ってから、密室を作る。(S・S・ヴァン・ダイン「ケンネル殺人事件」)
・外で殺した死体を高い窓から密室の中に擲りこむ。(カーター・ディクスン長篇)

◎足跡トリック
・あとじさりに歩いて、来たのを帰ったと、また、帰ったのを来たと見せかける。(ニコラス・ブレイク「野獣死すべし」?、江戸川乱歩「何者」)
・逆立して手で歩く。(バルドウィン・グロルラー「奇妙な跡」、カーター・ディクスン「空中の足跡」)
・馬に牛の足型をはめて歩かせる。(コナン・ドイル「プライオリ・スクール」)
・竹馬に乗って足跡をごまかす。(カーター・ディクスン長篇中の引例、江戸川乱歩「黒手組」)
・全く同じ靴を二足作り、偽の足跡を残して操作を混乱させる。(F・W・クロフツ長篇)
・鉄の底に蹄鉄をうち、馬の足跡と思わせる。(ジョージ・シムズ随筆に引例)
・ケーブルカー式に空中を移動する。(高木彬光「白雪姫」)
・ブーメラングの利用(G・K・チェスタートン短篇中の引例)
・軽気球の錨が地上の人の頭を打ち殴打殺人と誤られる。(セクストン・ブレイク物語の一篇)
・その他(ジョン・ディクスン・カー「白い僧院の殺人」、G・K・チェスタートン短篇2。足跡ではないが、タイヤの跡のトリック(コナン・ドイル短篇、G・K・チェスタートン短篇)。

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