
ゴルビーブームの便乗作品
クソゲーメーカーの1つとして有名な徳間書店から発売されたパズルゲームで、開発は今はなきコンパイルが行った。
コンパイルといえば、ザナックやアレスタといった硬派STGの他に魔導物語シリーズなど、主に万人向けではないがその手のユーザーに受けるゲームを作っていた。
それゆえ、個性的なゲームが多い一方で知名度はさほど高くなかったものも多かった。
これから紹介するゲームも知名度が低いのだが、微妙な知名度を持っているともいえる。
というのは、このゲームに当時ソ連の大統領だったゴルバチョフ氏を登場させているためだ。
ゴルバチョフ氏は、西側諸国にゴルビーという愛称で呼ばれているほど人気は抜群で、日本でもゴルバチョフ氏自身日本大学名誉博士号を取得しているほどの親日派だったこともあり、近いうちにゴルバチョフ氏が出演するゲームが出ることは多くの人が予想していたのだろう。
もちろん、ゴルバチョフ氏が出演するゲームは『ストリートファイターU』のザンギエフのエンディングで既にゲストという形で登場している(名前は『ゴロバチョフ』となっているが)ものの、ゴルバチョフ氏がメインの役割すなわちゲームのタイトル名やタイトル画面に登場するというメインの役割を果たしているゲームとなると、この『ゴルビーのパイプライン大作戦』が初ということになる。
この他、一般の人形やマトリョーシカといった玩具にも、ゴルバチョフ氏をモチーフにしたものが多く登場し、西欧諸国はもとよりソ連の支配下にあった東欧諸国、さらにはソ連そのものにもゴルビーブームが到来していることを示していた。
何しろ、今までのソ連にはなかったことを次々と思いっきりやってのけ、東欧の民主化や冷戦終結といったノーベル平和賞さながらの活躍を見せたのだから。
もっとも、現在のロシアにおけるゴルバチョフ氏の人気は最悪で、強いソ連を崩壊した上に経済危機を迎えてしまったために低調な結果に終わってしまっているが。
また、発売の時期がかなり微妙だったということも、このゲームのネタの1つでもある。
発売から4ヵ月後の8月19日に、保守派によるかの有名な8月クーデターが勃発するもわずか2日後に失敗し、ゴルバチョフ氏の大統領辞任はもとよりバルト三国をはじめとした多くの自治体が国家として独立し、同年12月にソ連は崩壊することになった。
母体とするロシア共和国連邦はあるものの、ゲームのストーリーにある日ソ友好新時代はこれにより消滅したことは、ソ連崩壊が激動すぎたことを物語っている。




ゲームのほうはというと、パイプラインで東京からモスクワまでつなげるため、パイプを使ったパズルゲームになっている。
どういうことかというと、フィールドの右端のパイプから出る水を左端のパイプにつなげていって、規定数に達するとクリアとなる。
ではどうやってつなげるのかといえば、上から落ちてくるパイプブロックを左端のパイプにつなげるように組み合わせなければならず、それも下のほうにつなげるほうがクリアしやすい。
ブロックが、最上段まで積みあがるとゲームオーバーになる上に左端のパイプは右端より少ないので、ブロックとあわせていかにつなげていくかが鍵となる。
そのためのアイテムがあり、最下層から4段分のブルーブロックを出現させるビン、水につけるとそれに繋がっているパイプを消して実質的にクリアのパイプ接続のノルマを減らせる水滴、並びによって一定数のブロックを削るドリルの3つとなっている。
ブルーブロックはパイプをつなげたときにも発生し、次にパイプをつなげた際にブルーブロックがそれに隣接していると得点がさらにアップするというおまけつきだ。
だが、スタート地点の東京は1つつなげただけでクリアだし、他の都市も2つしかつなげられないため高得点のチャンスが最後になるのはつらい。
レベルにしても、上げるとクリア必須のパイプ接続数が上がるのかと思えば、単にブロックが落ちるスピードがアップするだけ。
そのブロック、片方が積みあがっているブロックに接続すると、もう片方のブロックはそれが落ちるまでの間自由に動くことができる。
これにより、細かい形でパイプ接続が可能になっているが、この手法は後の『ぷよぷよ』で落下したぷよの一部が下のぷよにくっつくと、くっついていないぷよが自動的に真下に落ちるところを参考にしたのかもしれない。
得点の話に戻すが、ブルーブロックを多く出現させたりやたらパイプを長くつなげようにも、先に書いたノルマの低さによりそれを達成するのが難しい。
一応高得点を達成すると、ステージ終了後にソ連の人工衛星ミールが打ち上げられるが、当時ソ連崩壊待ったなしという状況にこれは、ある意味シュールといえなくもない。
ソ連を大まかな舞台としている点でも、名作パズル『テトリス』のオマージュということもありえなくもなく、代わりにゴルバチョフ氏がお祝いのメッセージを出してくれればよかっただろう。
しかもモスクワまでつなげた時のエンディングは、パイプラインのマップで花火が打ち上げられるのみで、2周目以降はノルマのパイプの数が増えていくだけ(最初からレベルを上げるとノルマのパイプの数が大幅に増える)。
パズルゲームの定番といえばそうなるが、容量の少なさも関係しているのかもしれない。
とはいえ、日ソ友好新時代の一大計画なのだから、エンディングだけはもう少し派手にしてもらいたかった(高得点クリアの場合にも書いたが、主にゴルビーの祝いのメッセージなど)。
ゲームとしては、とりあえずまあまあのできになっているが、前にも書いたように時期的にまずかったため、失敗作に近い形になってしまった。
ゴルビーブームに便乗した形となった本作だが、ゆえにソ連崩壊寸前であることを見抜けなかったコンパイルと徳間書店の罪は多少あるかもしれない。
ゴルバチョフ氏をメインにしなければ、もう少し人気は上がっただろうが、それ以前に普通のパイプゲームに終始すればよかったのだろう。
ただし、ステージごとに毎回違うBGMはなかなかに質がよく、ステージと非常にマッチしているのが面白い(それをじっくり聴ける暇などないが)。


私は、このゲームを当時のファミマガで知ったが、特に面白そうだと思うことはなかった。
もちろんゴルバチョフ氏は知っていたし、冷戦を終結したり東欧の民主化を推し進めた偉人であることはわかっていたが、それでもこのゲームを早くプレイしてみたいと思わなかった。
ストーリーは知らなかったが、発売と同じ年にソ連が崩壊したことから、おそらくソ連を舞台にしたものではないかと予測はしていたが。
再び、ゲームの内容と画像を見ることになったのはレビューを書く5年前で、開発がコンパイルであることを知った私は、ぷよぷよがコンパイルの名物であることも前に知っていたので、あのメーカーがどうしてこんなものを作ったのかと驚きを隠せなかった。
販売元が徳間書店であることについては、『ロットロット』や『キャプテンシルバー』といった佳作だった他者の作品を、劣化もしくは微妙な移植で早くもクソゲーメーカーの仲間入りになっていることを知ったばかりで、それが原因かこの時期になってもプレイしたいという気が起きなかった。
ようやくプレイすることになったのはそれから3年後で、きっかけはこのゲームのハックロムの画像だった。
何しろ、ゴルバチョフ氏の画像を問題のある2人の政治家(名前は言えません)の顔を変えるという、タイトル画面の一発ギャグ的なことをやっているHPを見たので、ハックロムこそはあまり興味を示さなかったが元となったゲームは一度プレイしてみようかと思った。
早速、箱と説明書つきで購入してプレイしたのはよかったが、どういう形でクリアすればいいのかさっぱりわからなかった。
説明書はしっかり読んだつもりだったものの、元々理解力不足に苦しむ上に難しいパズルゲームはお手上げに近かったので、最初からゲームオーバーになることが多かった。
右端のパイプから左端のパイプにつなげることが目的だったのに、水をつなげることだけに執着しすぎたためか右端だけにつなげてしまって、それがもとでゲームオーバーになったことが何度もあった。
今を考えればお笑いものだが、当時はどういうゲームかじっくりプレイする必要があったので、こういうことは1つの経験かなと考えている。
そして現在、レビューを書くがてら今一度このゲームに挑戦しようという気持ちになり、前のような失態は繰り返さないと誓った。
とはいえ、久々にプレイしたこともあってかやはり今までと同じ失態を繰り返していたが、なんとかパイプをつなげることに成功した私は、このゲームの趣旨と得点の法則を知ることができた。
説明書を読めば何とかなっただろうが、前にも書いた理解不足のためにかなりの時間を無駄に費やしてしまった。
それからは、苦戦しながらもパイプをできるだけ長く伸ばしてつなげたりブルーブロックを増やしてパイプをつなげるなど、高得点の秘訣をプレイしながら実感できたことがうれしかった。
BGMもなかなかによかったが、エンディングが花火数発程度なのは容量が少なかったとはいえ、どうも納得できかねなかった。
どうでもいいが、このゲームの看板だったゴルバチョフ氏は今どうしているのだろうか(昨年日本のバラエティ番組に出たことは知っているが)。

本日のまとめ