西暦20XX年、全世界において、悪の秘密結社『バース』の暴虐の嵐が吹き荒れていた。
バースは、世界各地にアンドロイドや戦闘生物といった強力な兵器を送り込み、彼らによって蹂躙された土地に住む者達は、抵抗も出来ずただ泣くばかりであった。
 しかし、バースによる世界支配を潰すべく、3人の戦士が立ち上がった。
バースによって、自分の友人とデスマッチを仕組まれた上に彼を昏睡状態にしてしまい、絶望の淵にいるところを謎の博士に拾われた、元闇ボクシングのチャンピオンぼんじゅ〜る。
バースの有羽人種フェアリー狩りによって、絶滅の危機に立たされていたところをぼんじゅ〜るを拾った博士に打倒バースを説得された、フェアリーの生き残りでありかつ女王であるまどもあぜる。
同じ博士が、各地をうろつきそこらで手に入れた、数種類の動物の毛によって造られたクローン人間とれびあ〜ん。
 彼らは、博士による強化改造を受け、それぞれ『爆発男爵』・『爆発貴婦人』・『大爆獣』となり、バースの戦闘兵器以上の力を身につけた最強の改造人間となった。
さらに、『美食戦隊薔薇野郎(グルメせんたいばらやろう)』と名乗り、世界をバースの支配から開放するために戦うのであった。
そして彼らは、バースの本拠地がある魔天都市ゼウスに乗り込んでいった…。

美食戦隊薔薇野郎

発売日:1995年9月29日   発売元:ヴァージンインタラクティブエンターテインメント
ジャンル:ACT   値段:9800円   おすすめ度3.5(素薔薇しい!!)

史上最狂の劇うまバトルゲーム

 1995年は、『ドラゴンクエストY』や『ロマンシング・サガ3』といった超大作ゲームが登場した一方、リバイバルブームに乗って『ギャラクシーウォーズ』や『平安京エイリアン』などの、往年の人気ゲームが移植されるなど、SFC業界はますますにぎわっていた。
ただ、表向きは派手さを装っているが、中身は幾分落ち着いた感があった。
それは、この年に登場したSFCソフトのうち、半分以上が続編といったシリーズ物や関連のあるゲーム、昔のゲームをリメイクしたもので占められていたためであった。
事実、その影響が全くないゲームの中で、高評価を受けたものは少なかった。
 そんな中、SFC業界の常識を覆すゲームが登場することになった。
それは、サン電子の『であえ殿様あっぱれ一番』であった。
あまりにも常識はずれなシナリオに加えて、キャラクターも常識はずれであり、タイトル画面からして奇妙なゲームをプレイヤーに見せつけた。
だが、それらに隠された高度なゲーム性やシステムは、このゲームを小馬鹿にしていたプレイヤーに衝撃を与えることになり、各ゲーム雑誌もこぞって高評価をつけるなど、マンネリ化しつつあった業界に新風を吹き込んだ。
 そして、このゲームよりもさらに常識はずれなゲームが、9月25日に発売された。

『強けりゃいいだけの格闘ゲームは、もういらない。
ステージ斬新、バトルは超過激、加えて敵は不気味でユーモラス。
しかも敵を倒せば食材が出現し、サイバーシェフの調理で究極のグルメ三昧。
メニューも多彩に、喰らえば喰らうほどパワーアップ。
一度喰ったらやめられない、激うまバトルゲーム。できたてをどうぞ。』

『美食戦隊薔薇野郎』というタイトルのゲームは、パッケージの裏に書いてある上の煽り文から既に常識はずれのゲームではないかと、プレイ前のユーザーに認識させている。
発売元の、ヴァージンインタラクティブエンターテインメントという会社は全く無名であり、あっぱれ一番以上にゲーム雑誌の関係者やSFCユーザーから、奇異な眼で見られていた。

 このゲームを文章で表すならば、『ファイナルファイト』に『超兄貴』の世界観などを加え、さらにエッセンスとして独自の要素を足したものと書くべきだろうか。
ファイナルファイトはともかくとして超兄貴は、キャラ設定・ゲームの世界観・容貌などを、悪趣味にかつ悪ふざけ気味に笑いの方向へ昇華していった、有る意味稀有なゲームである。
薔薇野郎も、バックボーンを超兄貴に倣ったものといえる。
 ゲーム内容こそ、ベルトアクション風のごくオーソドックなものだが、ゲームに登場するキャラクター全てがあまりにも奇妙すぎる連中ばかりなのだ。
特に敵キャラが、一般のアクションゲームの常識を逸脱しているといっていい。
容貌はもちろんのこと、行動のパターンが普通のゲームデザイナーの思考では考えられないものばかりだったからだ。
自爆するタイプがその主たるものだが、それも頃合を見計らってするタイプから、プレイヤーを待ち構えるタイプまである。
果ては、関係ないところに自爆するタイプもおり、この一部始終を目の当たりにしたプレイヤー達は、一瞬何が起こったのか理解できなかったことがあったという。
 さらには、何もせずにただやられるだけのキャラも存在している。
もっとも、倒した後にそれ応々のダメージを食らうことがあるが、倒した後にしばらくその敵の近くにいることで食らうので、倒してすぐ離れていれば食らうことはない。
敵キャラ設定や名前も、普通のゲームでは考え付かないほどの意味不明さにあふれている。
これを足し合わせると、ボスを含めてまともなキャラはほとんどいないということになる。
 プレイヤーキャラも同様で、容貌はともかくとして設定が悪ふざけかまじめなのかわからないほど奇妙さが増している(特にとれびあ〜ん)。
3人は、ぼんじゅ〜るがパワー型でまどもあぜるがバランス型、とれびあ〜んがスピード型となっており、必殺技もその容貌にふさわしいものとなっている。
ただし、必殺技というより特殊な投げ技といったほうがよく、出し方も相手をつかんでから(つかむことができないキャラもいる)LとRボタンを交互に押すことで発動し、LRを押した順序とタイミングによって威力が違ってくる。
とはいえ、通常技より強力であることに違いはなく入力もそれ程難しくはないので、必殺技をメインで使用したプレイヤーが多くいた。

「フッフッフッ これで地球はオレ達の物さ!」
「ワン!!」

 そして、このゲーム最大の特徴は、『グルメシステム』にあるといっていい。
この要素は、敵を倒すごとに食材を落としていき、それを拾うことによって手に入る。
こうして、ステージ中で集めた食材を、クリア後にサイバーシェフに調理させるのだ。
 調理方法は、今まで集めた食材の中から2つを選ぶのだが、食材が豊富なため様々な調理のバリエーションが存在する。
牛丼やシーフードピラフなどがその例だが、選択の方法を誤ると魚アイスや納豆オムレツといったまずいものが出来上がる。
しかも、うまいまずい問わず出来上がった料理は、どんなことがあっても食べなければならない。
つまり、ライフを上げることも下げることもプレイヤー次第なのであり、これによって次のステージ攻略が有利になるのかもプレイヤー次第なのである。
 このゲームには、残機というものが設定されておらず、やられてしまえばその場でゲームオーバーになってしまう。
とりあえず、コンテニューは導入されて入るものの、難易度を『アツい』に設定するとやられた時点で最初からやり直さなければならない。
オプションで難易度設定ができ、それぞれ『ヌルい』・『ふつう』・『アツい』に分けられているが、『イージー』・『ノーマル』・『ハード』から置き換えただけである。
クリア後のエンディングも、難易度によって違っており、ファイナルファイト同様難易度がアツい場合に真のエンディングを見ることができる。
そのオプション設定の中に、なぜかポージング設定があるのだが、ゲーム中にポージングをしても特に意味はない。
これも、このゲームを象徴する要素の1つとなっている。
 話を戻すが、ステージで残ったライフゲージは次のステージに引き継がれる。
つまり、一般のベルトアクションと違って体力が全回復することはなく、体力が少ないままでゲームを進まなければならないこともある。
その分、普段のライフの最大値よりもさらに多くストックすることができるのだ(ゲージを緑色を超えてストックすることも可能)。
 ゲームにおける回復手段は、ディナータイムを除きほとんど存在しない。
一応、敵が落とす食材を拾うことで回復は出来るものの、その量は雀の涙よりも少なく、とても回復しているという実感が沸いてこない。
これはあくまで、食材は拾い食いするものではなく調理するものだというスタンスがあるといえる。
つまり、普通のアクションゲームのように、回復アイテムを拾って回復するという、薔薇野郎から見ればあまりにも汚らわしいことはしないのだ。
 となると、体力を回復させる手段はもう1つ、分身アイテムを手に入れることにある。
そのアイテムは、でんきという名の緑色で頭に豆電球がついてる敵キャラを倒すことで手に入り、自分の分身が現れると同時に体力もかなり回復できる。
ただし、それは1人プレイのみであって、2人同時プレイではそれを落とさずプロテインが手に入る(食材の1つで、もちろん回復量は分身アイテムより及ばない)
分身アイテムを取ることに出る分身は、2Pの役割を果たしているともいえるのだが行動がランダムなため、自分の思い通りに動いてくれないこともある。
また、分身がいる状態ででんきを倒すと分身アイテムではなくプロテインが手に入る。

 これらのような、普通では考えられなかったシステムやゲーム性、それに加えて誰にでも楽しめる高い操作性は、あっぱれ一番に通じるものがあり超兄貴に通じるものがあったので、これもゲーム雑誌レビュアーによる高得点が期待されたが、キャラクターや世界観などがあまりにも濃すぎたために、高い評価を得ることができなかった。
そして、PSとSSの隆盛に伴い反比例的にSFCの勢力は衰え、薔薇野郎もいつの間にか忘れ去られることになった。
 それから3年後、ゲーム雑誌ユーズドゲームのスタッフが『美食倶楽部バカゲー専科』を出版した際、偶然にも薔薇野郎に対する評価が長々と載っていたことにより、再び注目を受ける。
この雑誌は、世間で評価されているクソゲーやバカゲーといった類を、ユーズドゲーム編集部が自分なりの視点からレビューしているのだ。
この、変わった視点による変わったレビューは、このゲームに対する評価を改めることになり、あっぱれ一番に並ぶバカゲーの双璧と評価され、バカゲーマーはもちろん一般ゲーマーも、このゲームに対し好意的に評価することになった。
現に、このゲームに対し『素薔薇しい』という表現をしていることから、常識を超えしかもシステムとゲームバランス、世界観がマッチしているバカゲーと受け止めることもできる。
 しかし、薔薇野郎に関する話題は他にもあるが、その大部分は負の話題である。
もちろん、ゲーム自体に対する話題ではなく、ゲームに関わった人物についての話題である。
このゲームを制作したスタッフの1人である、ゲームデザイナー兼イラストレーターである斉藤智晴氏は、このゲームを作る際にゲーム業界を恐怖のドン底に陥れようとしたと述べている。
その一方、このゲームが売れないだろうとも予想していた。
 ちなみに、ゲーム製作スタッフは、全員会社を辞めてしまったという。
なお、このゲームの開発元であるヴァージンインタラクティブエンターテインメントは、アメリカの大企業の1つに数えられているが、日本にも一時期進出していた。
今は、もうゲーム業界から撤退しており、再びアメリカに活動を展開している。
 また、共同開発元であるWINDSは、このゲームに対しやや不快感を示していたらしく、ここの会社に所属していた斉藤氏は既に辞めてしまった。
斉藤氏も、このゲームに対しあまりいい思い出を持っていなかったらしく、関連雑誌を見たとたんめまいがしたという。
この他にも、バカゲー専科の第1号を担当したスタッフが全員辞めてしまったり、このゲームの在庫をつかまされて泣きをみたゲームショップがあったり、このゲームをまとめ買いする客の対応に困惑した(「本当にこれでいいんですか!?」)ゲームショップの店員がいたりなど、かなりの負の話題に事欠かなかったことがお分かりいただけるかと思う。
このゲームが、いまだにプレミア価格で取引されていることについても、無関係ではないだろう。
 ところで、薔薇野郎の最重要人物の1人である斉藤氏は、2006年7月29日に滑膜肉腫により亡くなられた、38歳という若い死であった。
斉藤氏は、『カルドセプト』シリーズでイラスト等を描いたことで有名だったが、この訃報にゲーム関係者は大きな衝撃を受けた。
奇しくも、同年6月17日に斉藤氏と同じ大物イラストレーターであった堀部秀郎氏が、急性心不全により36歳の若さでこの世を去っている。
改めて、ご両人のご冥福をお祈りしたい。

 最後に、このゲームで最初話題になるものは評価ではなく、ボスを除いた敵キャラを操作できることである。
キャラ選択画面で、LRを同時に押しながらカーソル(1Pと書いてある)を動かすと、自由に移動できるようになる。
そして、キャラの名前にカーソルを合わせると、名前の位置によって使用できるキャラが変わる。
しかし、本当に使えるキャラは少なく、中には自爆してゲームオーバーになるキャラもいるため、実質ネタ扱いか2人同時プレイでのサポート役に徹するしかなかった。
 この裏技以外にも、タイトル画面でLRを押すことで出るアツい歌詞や、全ての難易度のエンディングも見れるステージセレクト技、2人プレイで残りタイムが0のときにでんきを倒すと、プロテインではなくコンガマンなる隠しアイテムが登場する裏技(オプション画面の背景にいるキャラのことで、取るとライフが大幅に回復する上に全ての食材が1つずつ手に入るが、タイムが0なので意味がない、ゲームオーバーになるので)など、いかにも確信犯的なものばかりで、このゲーム全て話題に事欠かないことを証明したといっていい。

 私と、このゲームとの付き合いは偶然ながらも、その年数は意外なほど長い。
といっても、私がこのゲームを知ったのは、薔薇野郎が発売されてから数年後になるのだが。
偶然と書いたのだが、大学生時代に大学の近くのゲームショップに試しプレイという形で、ゲームプレイに必要な設備が3台ぐらい整っていた。
その中に、薔薇野郎があったわけなのだが、意外にも偶然だったしなぜわざわざこのゲームを選んだのか理解できなかった。
大学の帰りに、いつもここのゲームショップに通ってた私だが、ただなんとなしにプレイしてみようかというのが、このバカゲーとの長い付き合いの始まりだった。
 『ヌルい』とか『アツい』といった難易度はすぐ理解できたし、食材による体力回復はある程度は理解できた。
しかし、あまりにも濃すぎるキャラクターや世界観、残機という概念がないことや一般のベルトアクションと違ってザコ敵が大勢登場するなどといった要素は、初めてプレイした私を完全に打ちのめした。
その後は、何度かのプレイの末『ふつう』までの難易度をクリアすることができた。
ただ、コンテニューが出来ないアツいはさすがにクリアすることができなかったので、他の人がプレイしているところを何度も見て、そのテクニックを盗むことにした。
そしてようやく、全ての難易度をクリアすることができたのだが、真のエンディングがあまりにも衝撃的だったことに驚いた。
 それから、昨年の元旦のレビューを書いたのだが、バカゲー・まだ私がHPを立ち上げて1年も経っていなかったこと・元旦といった3つの理由により、文章がめちゃくちゃだったり画像をかなり貼り付けたこともあって、今思えばあまりにも赤面ものだった。
レビューを修正すべく、いろんなところから情報を持ち帰ったり、このゲームをレビューしているサイトなどを回ったりもしたが、この他にもこのゲームをもう一度プレイした。
もっとも、この時期は既に大学を卒業していたので、レビューする前に近くのゲームショップで購入したのだが、さすがにプレミアソフトだけあって値段は一般の中古SFCソフトよりも大幅に高かった。
 プレイする合間に、以前にレビューしたときよりもさらに色々なことを調べていたが、新しく判明したことはこのゲームの裏の話題が負のものしかないことであった。
そして、このゲームの開発意の最重要人物だった斉藤智晴氏が、既に故人となられていたことも今しがた知ってしまった。
実は、この訃報は初めてではなくなくなってから数日後に知ったわけなのだが、そのときはどうでもいい人物だったのであまり記憶にとどめなかったが、薔薇野郎レビューを修正していく際に色々な情報をかき集めたときに、このゲームにも深く関わっていたことを知って大きな衝撃を受けた。
斉藤氏は、このゲームに対していいイメージを持ってなかったが、私がこのゲームをやりこんでかつ詳しくレビューをしていなかったら、斉藤氏の訃報にこれほど深く悲しんだりはしなかったと思う。
ある意味、偉大なデザイナーを亡くしてしまった、そんな気がしてならない。

(07/1/28修正)

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