ライトスタンドで爆悦炎上

2001 年 8 月

最終回、ランナーを2人おいてアリアスが打席に立つ。そりゃ頭ではホームランなら逆転サヨナラということはわかっていた。しかし、10日間も勝っていないのである、10日も。すかん、すかん、と空振りした時点でライトスタンドには、「やっぱりねー」というため息と三振への確信、それに備える心の準備音が渦巻いていた。悲観が身について、卑屈になってしまった我々。長年虐待された犬が、急に優しくされても尻尾を振れないように。。この日も残塁の模範演技をくり返したBWだ。ありとあらゆる技巧を駆使しての拙攻博物館にもう怒りも覚えず、私の心は解脱寸前。仏になってしまうのか、俺?と思われた刹那、「それ」は起こった!

カンッ!
明らかに それ とわかる弾道で舞い上がるアリアスの打球!
「え!」
「ああああああああ」
声にならない声で打球を追うBWファン。

ボールが舞い降りるまでが異様に長い!
「どうせ失速?」「ファウル?」
相変わらず渦巻く負のイメージ。。。

しかしグイン、と加速した打球は、ポーンとレフトスタンドで跳ねる!
ほんとに跳ねたのか?
夢か?
見まちがえ?

あわててグラウンドを見た私の目に飛び込んできたのは、
「一塁上でアリアスの突き上げる右手!」
「グラウンドに乱入するBW選手たち!」

マジ?
マジで逆転サヨナラ3ランを見たのか! 今!

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ライトスタンドは総立ちで爆悦炎上!
全員が空中浮遊だ!
10日間振り絞リ続けた弓を放した瞬間 である。
応援団は機能を停止!
私の脳内はホワイトアウト!

選手たちもファンたちも、あまりのことに半ば呆然。
オーロラビジョンに映る、本当に久しぶりの選手の笑顔が、まぶしい。

■アリー・マイ・ラブ30

記念すべき30号は忘れ得ぬホームランになった、アリアス。
ニール以来、久しぶりの心に染みる外人選手と言える。

豪快な振りとは裏腹の、繊細そうな物腰が不思議な魅力。
デリケートすぎてスランプも多いが、
応援してます、ジョージ!

■流れを変えた!佐竹のガッツ

この日もスタメンに抜擢された佐竹のなりふり構わぬガッツが、チームを変えた。
一塁守備でファインプレーを連発し、しぶといヒットも放つ!

そして9回、塁上の敵走者を返されたらもうおしまい、という場面。
松井の送りバント小フライに猛然とダッシュし、敢然と飛び込む佐竹!
ボールはグラブからこぼれたのだが、これがキャッチャー正面に転がり、アシストとなる。
3-2-5-4の珍しいダブルプレーの成立だ!

その後をパナソニック大久保が抑えて、サヨナラ勝ちの布石に。
ラッキープレイとは言え、佐竹のひたむきな気持ちが西武楽勝の流れを確かに変えたのだ。

佐竹 学 背番号25。
何年か前に一軍に定着しかけた彼も、最近はすっかりサーパス神戸(二軍)の顔。
今年29歳。もう後がない、という気概であろう。
がんばれ。

■途中で帰ったファンへのレクイエム

私の後ろの親子3人連れ。
話を聞いていると、珍しくお母さんだけがBWファンである。

父「松坂はでえへんのか?」
母「ローテーションいうもんがあるんよ。今日は出ない」
父「見たい人も多いやろ。だからプロ野球はあかんのや」
母「・・・・・」
子「早く帰りたい」

父「洋二というんか、あの選手。みんな叫んでるけど」
母「ヨージとちゃう、ジョージや。ジョージ・アリアス!」
父「庄治?」
母「・・・・・・」
子「早く帰りたい」

父「駐車場混むからもう帰ろ。負けや負けや。」
母「まだ2点差やで、あんた。最後まで見たいわ、あたしは」
子「早く帰りたい帰りたい帰りたい」

結局、親子は8回終了後に帰ってしまった。
家でニュースを見たお母さんの爆発炎上はいかばかりか。。

家庭崩壊がお伝えできないのが、残念である。


■野球の神様は能勢にいた!

サヨナラ勝ちの歓喜に沸くライトスタンドで、ウーピー・ゴールドバーグみたいなおばさんが、私に話し掛けてくる。

「涙が出たであたしは。そやけどこれ、能勢の妙見さんのご利益なんよ」
「へ?(電波系の人?)」
「アリアスが打てるように今日、妙見さんに祈ってきたんよ、あたし」
「ほ。そりゃ神さんのおかげやねぇ」
「そうや。この前、小倉が鈴木健にストレート勝負続けて打たれたやろ(妙に詳しいな。。)。あれはな、小倉が自分の力を過信してるんや。神さんへの感謝がないわ。そやさかいに小倉のぶんも拝んどいたから、明日は大丈夫」
「そっかー。野球の神様は能勢にいはるんやね」
「そ。あんた、仰木監督に会ったら妙見さんに行くよう、言っといてな」
「言っとく言っとく」
「連敗中にあたしなんか、車をブルーに買い替えたんよ。そんでな、あたしの旦那が実は腰がわるうて。。。。(以下3000文字削除)」


いやー、今年は3月の谷のてんやわんやサヨナラヒットも目撃したし(ひょっとしてあれも豊田か?)、能勢の野球の神様、ありがとうございます。
じゅうぶん、よくしていただいております。

この日、実はスタジアムに着いた時点で、「今日は何かある」という確信があったんだわ。
試合開始直前まで、珍しくベンチ前で素振りをくり返すBW選手にも感じた、何か。
平日なのに「ムリして」来たのもお導きかな。。
ええ、今だから言えるんですが。

へへへのへ。

久しぶりにスタジアムを去る人々の足取りが軽かった。
「まさかなー」「まさかやねー」 口も軽い。

ありがとう、アリアス。
あのホームラン1本で、あと1ヶ月は「ごはん*」食べれます。

*「ごはん」=負け試合

 

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