甲子園放浪

2003 年 6 月

もう1週間も前になってしまった、6月11日。わしの誕生日イブだったこの日。イブ?・・むかしEVEっちうタレントおったなぁ。。と調べたら、いまだに活躍中。ストリップ劇場とかに出演してるらしいが、わしより3つ年下っちうだけやぞて!んなことじゃなくてえ!この平日の昼間、珍しく甲子園球場でウエスタン・リーグの阪神・サーパス戦があるので、これをわしへのマスゲームと認定し、「なんだかんだ言っても不本意ながら正気を保ってる自分へのご褒美として」(んなことでご褒美かえ!)、1日早いが自分に恩赦を与え休日にしたのだ。まいったか。まいらないか。これはその記念日の記録である。

「ええっと・・二軍の試合がねあのね・・」なんて説明するのと、家人の「あぁ・・」ちう反応が面倒なので&怖いので、まるで会社に行くように、出勤時間に家を出るわし。つまり、仕事に行くフリね。得意ね(既に・・)。普段からシャツにチノパンだから、こういうとき便利。でも、いちおう休みだからもうちっと寝たかった・・。しかし、「平日放浪」の極意はね、秘密めいてて「すさんだ」感じなのよ。さぼってるー、ちう ちょっと心細ーいかんじが充実するのな。わかる?わからんほうがええぞ。「公認」の休み・輝かしい国民の休日なんて、わしには ぜっんぜん おもろないのよて屈折しすぎよーしゃちょさん。

 試合はもちろん昼からなので、それまでどうするのか?けっけっけ。決めてあるのだそういうことだけわ。「ながらくやっていない、ママチャリ放浪をやりたい。」 なんと・・つつましい願望やのー小市民め。むかしは神戸-京都をママチャリで走破したほどのバカ健脚のわしだが、今はどえりゃー坂の上に住んでるので自転車持ってない。さすがに高校生みたいにそこいらのを「拝借」はできないんで(チャリと傘に所有権など、ない!が持論だが・・)、市街地なのに珍しくレンタサイクルやってる阪急西宮北口駅でママチャリを借りる。1日300円也。

 係のおじいちゃんの「いってらっしゃーい」という、”久しぶりに聞く暖かい言葉”(仕事に行くと思ってるんやろな・・)に送られ、一度走ってみたかった、「武庫川サイクリングロード」へGO!なのだ。(武庫川=甲子園球場のそばを流れる、尼崎市と西宮市を南北に隔てるでっかい川。)

 きっもちえー!!薄曇っちう、ちょうどよいコンディションのもと、ひたすら平坦でまっすぐなサイクリングロードを こぎこぎ。この川はね、川幅はもちろん川岸の幅も半端やないんで、すっげー開放感あるねん。目の前に広がる悠然たる大河の光景、突然横切る新幹線、それが武庫川。。この、ペダルを漕ぐっちう単調なリズムが、お尻に伝わる大地の感触が、プリミチブな道具感覚がなんだか、いとうしい伊東四郎。それにしてもこのレンタルのママチャリ、よう整備してあって乗りやすいわ。

 川岸の広場では、ようけのお年寄がゲートボールしとるなぁ。混ぜてほしいなー。皆さん立派に人生を勤め上げた方ばっかやろけど、一人くらい「うやむやに早々にリタイア」したミナルディ(F1の)みたいな奴、混じっててもえーやん。朝もはよからゲートボールして、昼ごろ家に帰ってうつらうつらテレビ見て過ごすんやろな。ビバ!年寄り。あぁわしの年齢、中途半端っぱ。。で。ちと小便をしに入った便所の壁にびっくりやん!なんかおどろどろしい筆跡の落書きが壁一面に。内容は「小泉今日子が実は・・」とかいわゆるしょうもない「芸能界裏話」が延々と。そういうの、「あっち側」の人 好きやもんなぁ。そういや、きのう駅で朗々と芸能人の生年月日と星座を次々読み上げてた目のイってる女、おったなぁ。。

 あれやこれやの妄想を撒き散らしながら走るのが、「ママチャリ放浪」のええところ。前からうしろにぶっ飛んでいく風景に、脳みそが「もへー」と発する脈絡・時系列のない思い出とも幻想ともつかない映像をオーバーラップさせての、トリップホッープ!頭の中では聴いたことあるようなないような謎の架空BGMがループ。この感覚、高校生のときと変わらんがな。武庫川沿いに海まで出て、海岸沿いを流してるともうすっかり、チャリ・ハイな。ジグソーな。「いけない分泌物」が脳みそを侵し、「どこまででも走っていくもんねーわしー・・」って! あかんがな。もう12時近いがなー!怖いわ自分が。。

 あー。あぶなー。失踪するとこやった。自律神経出張。落ち着けどうどう。甲子園に行くんやった、甲子園に。。野球が現世との接点か?行く前になんか食い物買わんと。「ビバこうしえん」なるスーパーで うな丼、ニセうぐいすボール、ポカリスエット900mlを購入(720円也)。レジのおばばに「にいちゃん、お仕事ご苦労さん!」と言われて半笑い。にいちゃん?で、きーこきーこと甲子園に到着だー。うわ。誰もおらん。球場前より駅前のダイエー前のほうが賑やかやがな。そりゃそうやろが。ったくやる気のない「無言」の窓口のおばはんに500円(たっけー)を払い、いよいよ甲子園球場に潜入な.。

 と!いきなり売店でジュースを何本か買ってるサーパスの高卒新人、菊池クンに出くわすちう、いかにもな二軍の光景。この菊地クン、春の鳴尾浜でも表の販売機で一般人に混じってジュースまとめ買いしてたんで(それを狙って息子はサインをゲット)、まぁチーム内では パシリの身分なんだろ。そりゃ一番年下やもん。よう日焼けしてたけど、表情はまだまだ少年。「試合に出るならがんばれよ」と背中に無言で語りかける、わし。菊池は仙台育英で01年春の甲子園、準優勝やねんてな。思い出の甲子園なんやね、菊池クン。

 さて。
 あなたは無人の甲子園のスタンドを見たことがおありか?

 この日の甲子園はネット裏だけ開放してて、例の巨大なアルプススタンドや外野席は閉鎖しててまったくの無人。最近、毎日のように中継やお決まりの「今年こそ優勝やー・阪神」特集で見せられる、あの熱狂の甲子園風景とはほど遠い、なんちうか「昼間のキャバレー」のような趣き(夜のキャバレーもしらんけど)。なんか、その静けさがむしろ、迫力。どっしりと巨大な誰もいない甲子園の威容は、なんちうか、神社仏閣のノリ。いよー。確かに、他のどの球場にも感じられない、「何か」があるんよ。野球の靖国神社ちうか・・ たとえがやばいことになっていくが。

 あ、またTSUBOI 32の兄ちゃんがおる。500人くらいの観客の99%は、もちろん阪神ファン。明らかな「営業サボり中」のスーツ姿も、けっこうおる。秘密の連帯感。満員の鳴尾浜くらいの人数はいるのだろうが、さすがに「ぎゅっ」と詰め込まれた親密さはなく、わりと間延びした感じ。でもそれがわしには、ええかんじ。鬼ほど狭いイエローやオレンジシートと違って、ネット裏の椅子は人間並みサイズで座りやすいし快適。椅子で思い出したけど、「さすが」甲子園のネット裏椅子にはそのほとんどすべてに「会社名」プレートが貼ってあるのな。年間指定席ってやつね。会社にとってそれは立派な接待ツールちうことやな。GS神戸なんてねぇ、内野特別席でも「さびれた墓場」みたいに、ぽつんぽつんとプレート貼ってあるだけ。しかもそれ、「やまだ悪郎」とか ”個人名” 。

 さて、その観客が「おおっ」とざわめいたのは、スタメン発表で 4番ファースト「アリアス」♪5番キャッチャー「カツノリ」♪ とコールされたとき。アリー・・こんなとこで会えるとは。初老インディ・ジョーンズなんかと結婚するなんておまえ・・ってそれは本物のアリーマイラブ。アリアスて、自慢の「病欠」中ちゃうかったんか?調整?それよりなにより。スコアボードに縦にカタカナ表示された「カツノリ」っちう字面って、見れば見るほどマヌケじゃ。ホカ弁のメニューちうか、サザエさんの登場人物リミックスちうか・・・。ま、ええけど。さーて。。のんびり特売で399円やった”うな丼”食うて、試合開始を待つか。。んまいんまい。あ!汁、ズボンにこぼした!焦ってふいてる間に試合始まってた!

 阪神の先発・金澤、サーパスの先発・川口ともに、まずまずの出だし。まずい赤出し。へーあん川口は、あの人生のピーク、夏の甲子園を思い出してるのかえ?とかいいながらもう6年目。先制点は3回のサーパスで、そのきっかけのチーム初安打を放ったのがこの川口でね、なんかえらい立派なバッティングやったけど、「もう、うち左打者いらんからな」。しかし早くもその裏に「唐突な四球」から崩れていくパターンは相変わらず。6回にはアリアスにさすがの二塁打を浴びたあと、「何もこんな奴に」カツノリにホームランを打っていただいて、ネット裏を沸かせてくれた、川口よ。。

 サーパス打線は、5番を打ってる新人・中島が4安打と非凡セシボンな打撃を見せた以外は、どんどこ7人も投手が出てくる阪神投手陣に攻めどころなし。上村なんか2三振ですぐ代えられたんやけど、なんか珍しくバット叩きつけて悔しがってたな。いっつも三振見てるから、ちょっとびっくり。中島も上村も甲子園出てるんやね。この試合に思い入れあった?しかしさすが2軍とは言えプロ野球選手。グラウンド上に何人甲子園経験者がいるんやろ? 「調べへんけど」。

 阪神方面では、上坂がエラーしたりファインプレーしたり大騒ぎ。でも三振しまくり無安打。サード新井は相変わらず駅前留学JOMAなら!の通訳なしではわけわかんない、「はだだひっつかまそ!」「つあっせーやっとう!」とか叫ぶだけ叫んでタイムリーエラー。桜井はなぜかずうっと「カラス」(恋人?)と一緒にライト守ってて、ライト線2塁打のとき驚いて飛び上がったカラスにびびって返球遅れるし。一軍があの調子やからか、各選手わりと焦りが感じられるような気がしたぞ。場所が場所やし?

 特に「あとがない」早川(前ロッテのテスト入団)が悲惨。単なるレフトフライを見失って追わないミスをやらかした上、フォアボールで出たら、すぐ牽制頓死。ショックのあまりそのままグラウンドから起き上がれず、場内を静まり返らせとった。しかしトラジェディ・アピールもむなしく、すぐさま交代させられ、ひんやりムード。やばいでクビが。。て早川も、会社サボって昼間から野球見てる奴にこんなこと言われたないやろけど。お互い様。

 さて。試合が進むにつれ、だんだん梅雨の晴れ間で快晴の甲子園。まるで夏の大会みたいな太陽ぎらぎら。けど、ネット裏の銀桟(金さん・・)の下ってえんらい涼しいのな。ええかんじええかんじ。しっかり夏の匂いを含んだ浜風を受けながら、甲子園という舞台でいつもより緊張しているように見える二軍選手達の必死なプレイをのんびり眺める、この快感。聞こえてくるのは「野球音」と息を潜めた球場の気配。。チケットもろて見に行ったGWの狂乱の一軍試合のときより、断然ええ。心静かにこのどっしりした球場と一体化しながら野球を楽しむ、ぜいたく。「普段使いの甲子園」。甲子園球場の二軍戦ってクセになりそ。

 そして。
 2対6でサーパスが負けてた最終回。意外なドラマまで用意されていたのよ。

 九回裏の阪神の投手は、柴田。サーパスは1死後、代打高橋浩がヒット。そこで塩崎の代打にコールされたのがあらま!「パシリ」の菊地クン!スタンドで激しく拍手するアホ、たった1名。わし。菊池よ。。君の原点のこの甲子園でせめてヒット打ってええ思い出にな・・どうせ今年は1軍には上がられへんのやか・・ 『カッキーン』!! 「えええ!!」と立ち上がるアホ、たった1名。いや、サーパスベンチ前に飛び出した数名の選手と藤井コーチが、無人のレフトスタンドで跳ねるボールの行方を見届け、「えええええ!!」とわしと輪唱!!なんと!代打菊池の2ランホームラン!プロ入り第1号(二軍にしても)!

 顔をくっしゃくしゃにして全力疾走でベンチに戻ってきた「パシリの菊池」に、塩崎はじめ先輩連中の手荒い祝福。全選手、驚きつつも底抜けの笑顔・笑顔・・。ええ光景。でも菊池クンて、春のセンバツで2本もホームラン打ってるねんな。スラッガーやん。甲子園の土の香りで思い出したんやろ?なんかそういうマジックを信じたくなる場所、それが甲子園。それはグラウンドにいる選手たちもみんな、感じてたはず。しっかし菊池クン、よかった。あのジュース買ってた兄ちゃんがなぁしかし。すんごい ほのぼの気分で、そのまま試合終了。

 試合が終わってから、サーパスベンチ前で選手に訓示をたれる中沢監督。近づいて聞いてみると、「今後も・・」とか言ってる。そう。この翌日から、中沢はんは一軍に合流し、ヘッドコーチになったのね。まーしかし、訓示とか似合わんおっちゃんやで。

<参考資料:両チームスタメン&出演投手>
(サ)
6平野、4塩崎、8佐竹、3五島、5中島、9福留、
7迎、2上村、1川口
投手:川口-窪田-嘉畝-岩下-島脇
(神)
4上坂、8藤原、6斉藤、3アリアス、2カツノリ、7早川、
9桜井、5新井、1金澤
投手:金澤-杉山-福原-岡本-梶原和-石毛-柴田

S 001000012 4
T 00200310× 6

 さて。わしの記念日。素晴らしいかったわ。うれしいがな。でもまだ4時か・・。もうちょいチャリで放浪して、西宮北口のジュンク堂書店で「人間ポンプ一代記」の”続き”を立ち読みしてから帰ろ。。ちうとこで、わしの記録も終わり。無駄に年齢だけが増えていく。

追記:
薄曇とは言え、海岸沿いをチャリで走ったわしは、けっこう顔が真っ黒に。「どう。。いいわけをしようか・・」と思い悩んだ甲斐もなく、普段どおりの時間に家に帰っても、誰もわしの顔の色などには 「気づかなかった」。

ぷひ。

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