コシアブラ

学名 Acanthopanax sciadophylloides
別名 ゴンゼツノキ、ゴンゼツ、アブラギ
漉し油 分類 ウコギ科ウコギ属 (落葉高木)
幹から樹脂を取り、漉して塗料として使用したため、「漉し油」とする牧野の説が有名。金漆という塗料にまつわり、もう少し異なる説がある。「こぼれ話」参照。 原産・分布 北海道、本州、四国、九州。
神奈川県 丹沢、箱根のブナ帯にやや稀に生える。
用途 器具材
山地に生え、樹高は10〜20mになる。樹皮は灰褐色〜灰白色で、滑らか。

神奈川県
箱根町
050830
コシアブラ樹
葉は、枝先に互生でつく掌状複葉。30cm近くになる長い葉柄があり、小葉は5枚。倒卵状町楕円形で、中央の小葉が最も大きく、縁には鋭い鋸歯がある。
★食★若い芽は、山菜としててんぷら、おひたしなどにする。タラノキのような棘も無く、芽がたくさんあるので、多く採ることができる。ただし、木が大きくなってしまうと採りにくい。
枝・葉

神奈川県
箱根町
050830
コシアブラ葉
8月に、今年枝の先端に、散形花序を付け、淡黄緑色の小さな花を多数咲かせる。

秋田県
鳥海山
070828
コシアブラ花
果実は4〜5mmの球形で、11月頃に黒く熟す。

群馬県
水上町
赤谷
071104
コシアブラ実
秋の落葉前に、葉の葉緑素が抜けて、半透明のような白色になる。あまり綺麗ではないが、林の中では目立つ。 黄葉

群馬県
水上町
赤谷
071104
コシアブラ黄葉
枝は太く、小枝は少ないが、短枝を作る。写真は枝先に葉が集まり、短枝状になっている。葉痕はV字型で、枝をとりまくようにつく。
冬芽は円錐形で、芽燐が2〜3対見える。
冬芽

群馬県
水上町
赤谷
080406
コシアブラ冬芽
こぼれ話 「金漆(ごんぜつ)」
「木の名の由来」(深津正)、「古代塗料・こしあぶら(金漆)の語源」(寺田晁)から、この木の名前の歴史を見てみる。
平安時代の辞書である「和名類聚抄」にコシアブラという名前が出てくる。その中では金漆の木がコシアブラであるとされる。金漆の名は、「延喜式」にはその使用例や貢進地などが、奈良東大寺の正倉院の献物帳にそれが使用された物品の記載がある。当時は甲冑などの黄色の塗装や、刀剣など金属の錆止め、あるいは紙の防湿として使用されていた。
しかしその後の武具の変化などにより平安後期以降金漆が使われなくなり、どのような塗料で、どのように作られたかは江戸時代では既に謎の塗料となっていた。実際にコシアブラの木からはほとんど樹脂が採れないし、通常の漆を漉して文献にあるような性質の塗料にはならない。つまり金漆という言葉とコシアブラという木は存在するが、その二者の関係は謎とされていた。
最近になって寺田晁の研究により、コシアブラの木から冬期のみ樹脂を採取することができ、この樹脂から速乾性の硬い皮膜ができることが分かった。さらには同じウコギ科のタカノツメカクレミノからも同様の樹液がコシアブラよりも多く分泌することも分かった。タカノツメは地域によりコシアブラともゴンゼツとも呼ばれている。つまり「コシアブラ」あるいは金漆という塗料を採る木が地域により異なっていた、と考えられる。
それではコシアブラの語源はというと、漆はもともと漉して製するものなので「漉し油」とする説は難しい。コシアブラは「越油」であり、越(高志あるいは古志)の国の油という意味である(深津)。あるいは古代中国で日本から多くの留学生が渡った浙江省台州のことを、日本では「越の国」(呉越同舟の越)と呼んでいたので、そこから伝わった金漆の技術をそのまま「越の油」と呼んだが、転じてコシアブラになった(寺田)。と、越の場所の解釈に相違はある。
中国から伝わった金漆が「越の国の油」と呼ばれ、その油の採れる木のことをコシアブラあるいはゴンゼツと呼ぶようになった、とするのが納得できる。

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