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テーマ:「WASABI」の感想

 映画には色々な見方がある。千の方法が。「WASABI」という映画をどのように見るか。
僕はユミ(広末涼子)の一点に絞って感想を書きたい。それが偏った見方だとは思わないし、むしろ自然なこと だと思う。なぜなら、この映画でもっとも輝いていたの はユベールでもモモでも山葵でもなく、まぎれもなくユミを演じた広末涼子だからだ。

 この映画に「B級コメディー」というレッテルを貼りつけ、あるいは無粋な詮無いツッコミを入れるといった見方をする人よりも、僕は確実に幸福な観客だった。 暴力シーンは確かにやや過剰ではあったが、それはリュック・ベッソンの瑕疵であって、よしんば映画全体を語る上で幾許かの瑕疵になりえても、ユミ(広末涼子)の瑕疵には断じてなり得ない。広末涼子というでっかい一等星が暴力性を優しく中和している。

 さて、スクリーン内のヒロスエは「小林ユミ」なのか「広末涼子」なのか。広末涼子の絶対的な存在感から、どんな役を演じても「ヒロスエ」として観客に受容される嫌いが今まであった。広末涼子にはなんの罪もない。これは100パーセント観客の側の問題である。広末涼子のみが持つ唯一無二の存在感ーー才能だ。

 僕は「WASABI」のユミを広末さんでもあり、ユミでもあり、と反復しながら鑑賞した。
まず表情の多彩さに惹かれた。目で演技するのは見事だった(ラスト近くモモとのやりとりなど)。
フランス語の発音は信じられないほど流麗で美しかった。聴いた言葉を正確に再現(発音)する能力は天才だし、能力を具現する努力に心を打たれた。滑らかなしゃべりは広末さんの声の美しさを際立たせた。
コギャルファッションは一際華やかでキュートだった。ユミには淀みがない。泣き、笑い、怒り、踊る。素直に感情の赴くまま振る舞う。奔放で難しい役柄を、 衒いなく気負いもなく、文字どおり自然体で演じている。広末涼子の持つ希有な透明性がユミに浸透している。
ユベールと壁紙の相談をしているさなか、きのこ曇を説明するのに口を鳴らしながら身をくねらすさまはフランス語の発声と調和して妖精のような愛らしさだった。
ファッションショーのシーンはヒロスエスマイルにドキドキした。堂々としていて、恥ずかしいような嬉しい気持ちだった。広末さんがもっとも痩せていた時期だが、ユミの役柄にビンゴだったと思う。棒のような細さはヒステリックグラマーの服に合っていたし、ベッソンのいう「蜂」のイメージにも符合していた。
鼻をかむシーンが何度かあった。普通なら不快ともいえるシーンが、広末さんが演じると微笑ましい。
海に撒骨するシーンのユミの後ろ姿は淋しく冷たい美しさがあった。
帝国ホテルのフロントにした投げキッスはドギマギした。
銀行で「本物のパパみたいッ」と甘えるシーンも天真爛漫な魅力が横溢した幸せなシーンだった。
ゴルフ場で、ユベールが父だと気がついたときの感情の爆発は胸に迫る迫力があって、本当に驚いたし圧倒された。
ラスト、空港での別れ、ジーンときてユミと一緒に唇をかんだ。受け取った万年筆を両手で胸元に握り締めるところは最高のクライマックスだった。あの水色?のワンピースがとっても可愛かった。髪を上げたスタイルも。最高の涙だった。

 単身ホームステイ、インタヴュー等から広末さんの意気込みが伝わってきて本当に期待したし、応援した。 わかりやすく、面白く、ほろっとする映画、なによりも広末さんが十全に魅力を放った映画だった。胸があつくなった。広末さんの仕事のなかでターニングポイントとして刻まれるべき作品だと思う。何度でも繰り返したい、「WASABI」で広末涼子は輝いていた。これからもっともっと輝き続けるだろう。いつまでも。

2002年02月26日 21:37  投稿者:ベスさん

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