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インドネシアの不思議な"黄金の繭"とはいったい何なのか、簡単にご説明しましょう。
→ 繭(まゆ)であるということ
→ 黄金色に輝く秘密は?
→ クリキュラとアタカス
→ 王妃のビジョン
●繭といえば蚕(かいこ)では?
神秘的な黄金色の輝きを放つ、不思議な幻の"黄金の繭"。
ところで、繭(まゆ)といえば、一般によく知られているのは、そう、蚕(かいこ)ですね。
蚕は、蛾(ガ)の仲間で、絹の糸をとるために人工的に飼育されていて、白い繭を作ります。これが、あの絹の繊維となるわけです。
この蚕たちは人工品種で、養蚕家たち抜きでは生きていけないので、特に家蚕(かさん)と呼ぶことがあります。
この、よく知られた蚕の他にも、自然界には、絹のような繊維を吐いて繭を作る野生の蛾が何種類もいることが知られています。
このような蛾たちを、いわゆる普通の蚕=家蚕(かさん)に対して、一般に「野蚕(やさん)」と言います。
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●"黄金の繭"と「ドンドン」
さて、話は"黄金の繭"に戻ります。
これも"繭"と言うからには、蛾の仲間が幼虫から蛹(さなぎ)になるときに糸を吐いて自分を包む、あの"繭"です。
つまり、この"黄金の繭"を作るのも、実は蛾です。
この蛾、現地では「ドンドン」という名前で呼ばれており、ジョグジャカルタを中心としたインドネシア一帯からマレーシアの一部に分布する、貴重な蛾です。
そして、このドンドンも、世界的にも「クリキュラ」と呼ばれて話題になってきている、立派な野蚕の一種なのです。
●「セリシン」と木の葉
ドンドンが作る繭は、本当に黄金色に輝いています。
普通、繭といえば、糸が何重にも吹き付けられて形作られているため、繊維が表面を覆ってふわふわした印象の表面を持っています。
ところが、ドンドンの繭は本当にピカピカした黄金色の金属的な光沢を放つのです。
これは、なぜなんでしょう?
実は、全ての繭は形を保つための接着剤のような役目をする「セリシン」という動物性たんぱく質で固められています。
ドンドンが作る繭には、このセリシンが非常に強力に塗りこまれていて、これがあの光沢感を生んでいます。
ちょうど、細長い脱脂綿を透明なセメダインで塗り固めたような感じの光沢を想像してください。
では、黄金色に発色するのは、なぜでしょう?
詳しくはわかっていませんが、ドンドンが食用とする葉に含まれる黄色の色素が、繊維に入っているからであるといわれています。
●光沢が消える・・・?
繭の形になるために必要なセリシン。
糸に紡ぐには、このセリシンによる接着をはずしてやらなければなりません。
蚕の繭の場合、お湯で少し煮ることでほぐれます。
ところが、この"黄金の繭"のセリシン、光沢が出るほど強力に固められているため、多少煮る程度ではほぐれてくれないのです。
かといってあまり煮すぎると、黄金の光沢は消え失せ、ただのバラバラな細く短い繊維の集まりになってしまいます。
そこで、ほぐれた繊維に少し黄金の光沢が残るギリギリのタイミングを見極め、湯から上げます。
このとき、もともと非常に細いこの繊維にセリシンを残しているので、紡ぎやすい状態とはいえません。
これを、熟練の微妙な手の感覚によって、長い糸として使えるように紡いでいくのです。
糸に紡ぐのが難しい、セリシンを残した細い繊維。
例えば他の繊維で紡いだことのある職人がポンとやってきても、そう簡単にはきれいな糸に紡げません。
実際、ドンドンの繭から糸に紡いでいる職人は30人足らず、その中でも熟練者といえるのは、わずか数人程度とも言われています。
貴重な、光沢のある"黄金の繭"の手紡ぎ糸。
今のところ、王室が直轄生産している出荷量は、職人1人あたり、なんと1年間にやっと1kg余りなのです。
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●意外な効果
ところで、このセリシン、人間にとってじゃまなばかりの成分のように思えます。
ところが最近、昔から養蚕業の女性は手が荒れなかった理由が研究された結果、セリシンには肌を美しくする効果があることが発見されました。
これまでは捨てられていた成分ですが、すでに 『絹のセリシン』 として様々な化粧品などに使われ始めているのを、あなたも街で見かけたことがあるのでは?
●"黄金の繭"の蛾(ガ)
"黄金の繭"を作る蛾(ガ)、ドンドン。
専門の方々の間では、「クリキュラ」と呼ばれています。
このクリキュラの産業化については、非常に困難な問題がまだたくさんあり、課題が山積みになっています。
それでも、その利用法の多くはまだまだ研究が始まったばかりと言え、これからの活用がとても楽しみな素材でもあります。
●世界最大の野蚕
日本で与那国蚕(ヨナグニサン)と呼ばれる野蚕で、ジャワ島にもいます。
専門の方々の間では、「アタカス」と呼ばれています。
王室では、クリキュラの他にもう一種、このアタカスの繭の利用法も研究しています。
●自然の恵み
これまでお話ししてきたように、クリキュラはその安定しない収穫量もさることながら、製糸の難しさから生糸の生産量がとても少なく、まだまだ採算ベースに乗せる運営までには時間がかかりそうです。
王妃は、急激な開発によって副収入という立場を忘れたり、むやみに高額な商品化をもくろんだりするやり方をたいへん嫌われています。
じっくりと、これからも農業によって継続的な収入を得ながら、人々の暮らしに負担をかけずに末永く生活をサポートできるような、あくまでも自然の恵みに感謝してその恩恵を享受していく産業に育てたい…。
そこで、より製品化が容易なアタカスを同時に研究し、2つの素材の長所をそれぞれうまく利用しながら、全体として1つの大きなプロジェクトとしてそれ自体が産業として回っていけるようなビジョンを、いま王妃は描いているのです。
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